メルクマニュアル家庭版
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炭水化物代謝異常症

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炭水化物は糖類です。糖類には構造が単純なものも複雑なものもあります。ショ糖(砂糖)はブドウ糖とフルクトースという2つの単純な糖でできています。乳糖はブドウ糖とガラクトースでできています。ショ糖も乳糖も酵素の働きで単純な糖に分解されます。そうすると体はそれらを吸収し、利用することができます。パン、めん類、米などの糖質を多く含む食物中の炭水化物は、単純な糖分子が長くつながったものです。これらの糖分子も体内で分解されなければなりません。ある糖の分解のプロセスに必要な酵素が欠損していると、その糖は体内に蓄積して異常を引き起こします。

糖原病

グリコーゲンは、多くのブドウ糖分子が結合してできています。ブドウ糖は心筋を含む体の筋肉や脳のエネルギー源です。エネルギーとしてすぐに使わないブドウ糖は、肝臓、筋肉、腎臓の中にグリコーゲンの形で貯蔵され、体が必要とするときに放出されます。

糖原貯蔵症ともいわれる糖原病にはいろいろなタイプがあり、それらはローマ数字で表します。糖原病が起こるのは、ブドウ糖をグリコーゲンに合成したり、グリコーゲンをブドウ糖に分解するのに不可欠な酵素の1つが先天的に欠損しているためです。乳児はおよそ2万人に1人の割合で、どれかのタイプの糖原病を発病します。

糖原病の中にはほとんど症状が出ないものも、命にかかわるものもあります。タイプによってその症状、発症年齢、重症度はかなり異なります。II、V、VII型では、主症状は筋の脱力です。I、III、VI型では、症状は血液中の低血糖と腹部の突出(過剰または異常なグリコーゲンによって肝臓が肥大するため)です。低血糖によって脱力、発汗、錯乱が起こり、発作や昏睡(こんすい)が起こることもあります。ほかにも発育不全や頻発する感染症、口や腸内の潰瘍(かいよう)などが起こります。老廃物の尿酸が関節にたまって痛風が起きたり、腎臓にたまって腎結石が起こったりする傾向があります。I型糖原病では、10代以降に腎不全が多くみられます。

筋肉や肝臓などの生検を行って特定の酵素が欠損していることがわかれば、診断が確定します。

治療はタイプによって異なります。しかし多くの場合、炭水化物に富んだ食事を毎日少量ずつ何回にも分けて摂取することで、血糖値が下がるのを防ぐことができます。低血糖を起こす糖原病患者では、生のコーンスターチを昼夜4〜6時間ごとに取って血糖値を維持します。炭水化物の溶液を胃チューブで一晩中投与して、低血糖が夜間に起こるのを防ぐこともあります。

糖原病の分類と特徴

病名と分類

障害される器官など

症状

O型 肝臓、筋肉 肝細胞に脂肪が蓄積して肝臓が腫れる(脂肪肝)、空腹時に低血糖が起こる(空腹時低血糖)
フォン・ギールケ病(IA型) 肝臓、腎臓 肝臓と腎臓の腫れ、成長が遅い、重度の低血糖、酸、脂肪、尿酸の血中濃度が異常に高い
IB型 肝臓、白血球 フォン・ギールケ病と同じだが重症度は低い、白血球減少、反復性の口内や腸管の感染症、あるいはクローン病
ポンペ病(II型) すべての器官 肝臓の腫れと心肥大、筋力低下
フォーブス病(III型) 肝臓、筋肉、心臓、白血球 肝臓の腫れまたは肝硬変、低血糖、筋肉や心臓に障害がみられることもある
アンダーセン病(IV型) 肝臓、筋肉、ほとんどの組織 若年型での肝硬変、成人(遅発)型での筋障害と心不全
マッカードル病(V型) 筋肉 運動時の筋けいれんまたは筋力低下
ハース病(VI型) 肝臓 肝臓の腫れ、空腹時に低血糖が起こる、症状が出ないことも多い
垂井病(VII型) 骨格筋、赤血球 運動時の筋けいれん、赤血球破壊(溶血)

ガラクトース血症

血液中のガラクトース値が上昇するガラクトース血症は、乳糖(ラクトース)中のガラクトースの代謝に必要な酵素の1つが欠損しているために起こります。毒性の代謝産物が肝臓や腎臓にたまり、眼の水晶体も損傷を受けます。そのため白内障が起こります。

ガラクトース血症の新生児は出生時に正常にみえても、数日または数週間以内に食欲の喪失、嘔吐、黄疸(おうだん)、下痢などが起こり、成長が止まります。白血球の働きが低下して重症の感染症が起こります。治療が遅れると成長が止まって精神遅滞が起こり、死亡することもあります。

ガラクトース血症は血液検査でわかります。この検査は新生児におけるルーチンのスクリーニングとして米国のほぼすべての州で実施されており、特に家族にこの病気をもつ者がいる場合に行われます。

この病気の治療は、ガラクトース源である牛乳と乳製品を食事から完全に除去することです。ガラクトースは一部の果物、野菜、海藻のような海産物にも含まれています。これらに含まれる少量のガラクトースの長期摂取で、異常が出るかどうかは明らかではありません。この病気の人は一生を通じてガラクトースの摂取を制限しなければなりません。

ガラクトース血症が出生時に認められても適切な治療が行われれば、肝臓や腎臓での異常は起こらず初期の精神発達も正常です。しかし適切に治療されても、この病気の多くの子供は知能指数(IQ)が兄弟姉妹より低く、言語障害もみられます。女子の多くは卵巣機能不全になり、自然に妊娠できるのはごくわずかです。しかし男子の精巣機能は正常です。

遺伝性フルクトース不耐症

この病気では、フルクトースを使うのに必要な酵素が欠損しています。フルクトースは砂糖(ショ糖)や多くの果物の中にみられる糖です。その結果、フルクトースの代謝副産物が体内にたまり、グリコーゲンを合成したりエネルギーとして使うブドウ糖に換えたりする代謝が妨げられます。わずかな量のフルクトースやショ糖を摂取するだけで血糖値が低下する低血糖を引き起こします。発汗や錯乱が起こり、またけいれんや昏睡が起こることもあります。フルクトースを含む食べものを摂取し続けると、腎臓や肝臓が障害されて黄疸、嘔吐、精神遅滞、発作などが起こり死亡します。慢性的な症状には、小食、成長障害、消化器症状などがあり、肝不全や腎障害もみられます。

肝臓組織サンプルの化学的検査で必要な酵素の欠損が明らかになれば、診断が確定します。治療ではフルクトース(主に甘い果物に含まれる)、ショ糖、ソルビトール(砂糖の代用品)を食事に含めないことが必要です。急性の発作にはブドウ糖を静脈内投与します。低血糖の軽症の発作は、ブドウ糖の錠剤で治療します。遺伝性フルクトース不耐症の人はこの錠剤を携帯すべきです。

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