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自殺行動

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自殺行動とは、自らを傷つけようとする行動のことで、自殺未遂と自殺を遂げることの両方が含まれます。

自殺は思春期以前の子供に起こるのはまれで、主に青年期の若者、特に15〜19歳の間と成人期に多い問題です(自殺行動を参照)。しかし子供にも自殺はみられるため、思春期前であっても見過ごしてはなりません。青年期の若者では自殺は事故に次ぐ死亡原因で、米国では毎年2000人の若者が自殺しています。自動車事故や銃器の事故で亡くなったとされている人の多くが、実は自殺である可能性もあります。

実際に自殺する若者の数よりずっと多い数の自殺未遂が起きています。米国疾病対策センター(CDC)が行った調査では、高校生の28%が自殺を考えたことがあり、8.3%は自殺未遂の経験があることが示されています。

米国の青年期の若者においては、女子よりも男子の方がはるかに自殺者が多く、4倍以上にのぼります。しかし自殺未遂に関しては女子の方が多く、男子の2〜3倍となっています。

危険因子

自殺を思い立ってから自殺行動に至るまでには、通常、複数の要因が相互に関連しています。潜在的な精神面での問題と、引き金となる多大なストレスを与える出来事が非常にしばしばみられます。ストレスを与える出来事としては、愛する人の死、失恋、慣れ親しんだ環境(学校、近所、友人など)との別れ、家族や友人による侮辱、成績不振、法的トラブル、などがあります。このような出来事は子供にとっては珍しいものではありませんが、ほかに何か潜在的な問題がない限り、自殺行動につながることはめったにありません。潜在的問題としてよくみられるのは、うつ病とアルコールや薬物乱用の2つです。うつ病の青年期の若者は絶望感と無力感にとらわれていて、目の前にある問題を解決する別の方法を思いつくことができなくなります。アルコールや薬物使用は、危険な行動に対する抑制力や結果を予測して思いとどまる力を弱めます。衝動を抑制する力を弱めてしまうことが、自殺行動につながる要因になります。自殺を企てる青年期の若者は家族や友人に対して怒りを抱いていることが多く、その怒りを抑えることができずに自分に向けてしまうのです。

子供の自殺行動は他者の行動をまねた結果として起こることもあります。たとえば有名人が自殺して広く報道されると、後追い自殺や自殺未遂がよく起こります。遺伝的に気分障害を起こしやすい家系では自殺が多く起こることがあります。

予防、診断、治療

親や医師、教師、友人は自殺しようとしている子供を発見することができる立場にあります。最近、行動に変化があった子供は特に注意が必要です。子供や青年期の若者は友人にだけ打ち明けることがよくありますが、その子供が本当に自殺してしまうという悲劇的結果を招かないように、打ち明けられた場合には、秘密を守らずだれかに告げることを促してやらなくてはなりません。「自分なんか生まれてこなければよかった」あるいは「眠ったまま目が覚めなれければいいのに」など、あからさまに自殺をほのめかす気持ちを表す子供には注意が必要ですが、もっと微妙で目立たない徴候を示す子供もいます。そのような子供は引きこもったり、学校を留年したり、大切にしていたものを手放したりします。医療専門職には2つの役割があります。1つは自殺行動のある子供の安全性と入院の必要性を判断すること、もう1つはうつ病や薬物乱用などの潜在的問題を治療することです。

自殺のリスクがある子供に自殺の考えや計画について直接尋ねることは、子供が自殺を試みようとするリスクを高めるのではなく、むしろ減らします。自殺を考えていることを認識すれば思いとどまることもできるからです。地域社会にはたいてい24時間体制の緊急ホットライン(ホットラインで自殺を防ぐを参照)が設けられており、思いやりのあるスタッフがすぐにカウンセリングに応じたり、ケアを受けるための支援活動を行っています。このようなサービスによって自殺による死亡が減少していることを証明するのは困難ですが、子供と家族が適切な援助を受けるにはこのようなサービスが必要です。

自殺未遂をした子供は病院の救急治療室で治療を受ける必要があります。どんな種類の自殺未遂も深刻に受け止めなくてはなりません。自殺をした人の3分の1は、それ以前に自殺未遂を起こしているからです。自殺未遂は手首に引っかき傷が複数あったり、薬をほんの数錠飲んだ程度のごくささいなものであることもあります。親や周囲の人が自殺未遂をけなしたり軽く受け止めると、子供は挑戦されたように感じて再び自殺を図るリスクが高くなります。

命の危険が去ったら、医師は子供を入院させる必要があるかどうかを判断します。判断にあたっては、家に戻すことでどの程度リスクが残っているか、家族がどの程度子供に支援と身体的安全を提供してやれるかを考慮します。自殺未遂の深刻さは、その自殺未遂が衝動的なものではなく入念に計画されたものであったか、発見されないような工夫がされていたか、自殺の手段として選んだ方法、実際に何らかの傷を負っているか、などの要素からも判断できます。子供の意思と実際の行動とを区別することは非常に重要です。たとえば無害の錠剤を致死性のものだと信じこんで服用した青年期の若者は、非常にリスクが高いとみなすべきです。入院の必要がないと判断された場合、家から銃器をすべて取り除き、薬剤や刃物類も家に置かないようにするか、鍵がかかる場所にしまうようにします。

子供と青年期の若者の自殺の危険因子

  • 病的な想像で頭がいっぱいになる
  • 衛生状態や身のまわりに気を配らなくなる(突然の変化の場合)
  • 銃や処方薬を求める
  • アルコールや薬物の乱用
  • 自殺の家族歴
  • 気分や付き合う友達、成績に劇的な変化がある
  • 落ちこんだ雰囲気、食欲低下、睡眠障害
  • 以前に自殺を試みたことがある

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