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やけど

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やけど(熱傷)とは熱、電気、放射線、化学物質によって組織に損傷が生じることです。

やけどは通常は火、蒸気、タール、熱湯などの熱が原因で生じます。化学物質によるやけどは熱によるやけどと似ていますが、放射線(放射線障害を参照)や日光(日光と皮膚の障害: はじめにを参照)、電気(電気や落雷による傷害: 電気による損傷を参照)によるやけどは、かなり性質が異なります。

熱や化学物質によるやけどは、皮膚などの身体表面の一部が熱や化学物質と接触することで起こります。損傷のほとんどは皮膚に生じますが、重症の場合にはやけどが体表だけでなく脂肪や筋肉、骨にまで達することがあります。

やけどによって組織が傷つくと、損傷した部分の血管から体液が漏れ出し、腫れや痛みが起こります。また損傷した皮膚や粘膜は、微生物の侵入を防御できないため感染を起こしやすくなります。

米国では年間200万人以上がやけどの治療を受け、3000〜4000人が重度のやけどのために死亡しています。やけどは高齢者や年少の小児に特に多くみられます。

化学物質によるやけど

化学物質によるやけどは、腐食性物質が皮膚に付着することで起こります。腐食性物質は、アルカリ液(排水パイプ用洗剤や塗料剥離剤に含まれる)、フェノール(消臭剤、殺菌剤、消毒薬に含まれる)、次亜塩素酸ナトリウム(消毒薬や漂白剤に含まれる)、硫酸(トイレ用洗剤)など、家庭用品に多く含まれています。工業的に使用される化学物質や、兵器として使われる化学物質も多くはやけどを引き起こします。湿ったセメントを皮膚につけたままにしておくと、重度のやけどが生じます。

化学物質による損傷の進行を止めるためには、付着した衣類を取り除き、乾いた粒子を払い落とします。次に大量の水ですすぎます。最初に接触してから相当時間がたっても損傷が起こるので、少なくとも30分間以上、洗浄を続けるべきです。工業的に用いられている化学物質の中には(たとえば金属ナトリウム)、水でやけどが悪化するために水を使って洗浄してはいけないものも、ごくたまにあります。またある種の化学物質は、皮膚の損傷を防ぐために専門の治療が必要です。化学物質によるやけどの治療は、熱によるやけどの治療と同様です。

特定の化学物質によるやけどの治療に関して、さらに詳細な情報が必要な場合は、地域の中毒情報センターに連絡をしましょう。

やけどの分類

やけどには厳密な分類基準があります。この基準は医師の間では広く受け入れられていますが、一般の人の認識とは一致しないこともあり、たとえば患者自身は軽いやけどだと思っていても、重度に分類されることがあります。やけどは、組織の損傷の深さと面積によって分類されます。

やけどの深さは1度熱傷、2度熱傷、3度熱傷の3段階に分けられます。1度熱傷は表面的な浅いやけどで、損傷は皮膚の一番表面の層(表皮)だけにとどまっています。2度熱傷では皮膚の中間層(真皮)にも損傷が広がっています。3度熱傷では表皮、真皮、脂肪層のすべてに損傷が及び、汗腺、毛包、神経終末も破壊されています。

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1度の熱傷

1度の熱傷
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2度の熱傷

2度の熱傷
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3度の熱傷

3度の熱傷

やけどの面積の推定法

やけどの面積の推定法

やけどの重症度を判定するには、やけどの範囲が体表面積のどの程度の割合に相当するかを推定します。成人の場合、「9の法則」が利用できます。これは体全体を9%またはその2倍(18%)の部分に区分する方法です。小児には年齢に応じた換算表(ルンド‐ブラウダー表)を用います。体の各部分の成長速度はそれぞれ異なるので、補正が必要になります。

やけどの重症度は軽度、中等度、重度に分類されます。この分類は治癒の見込みや合併症の起こりやすさを示すもので、やけどを受けた部分が体表に占める割合に基づいて判定されます。判定には、全身の各部位が体表面積の何%に相当するかをまとめた表を用います。たとえば成人では、腕は体表面積の約9%にあたります。小児は体表面積の構成比が成人と異なるので、別の表を用います。すべての1度熱傷と、2度熱傷のうち体表の15%未満の場合は、たとえ本人には重症だと感じられても、たいていは軽度のやけどに分類されます。3度熱傷で体表の5%未満の場合は顔、手、足、性器に損傷がない限り軽度に分類されます。これらの部位に損傷があるか、または損傷が深い層にまで達し広範囲にわたっている場合は、中等度または重度に分類されます。

症状と診断

1度熱傷では皮膚は赤く湿っていて、火腫れを生じ、痛みを伴います。患部は軽く触れると白っぽく(青白く)なり、水疱は生じません。2度熱傷では皮膚は赤く湿っていて、火腫れと痛みがあり、水疱が生じて透明な体液がにじみ出します。患部は触れると白くなります。3度熱傷では神経が破壊されているため、痛みはほとんど感じません。皮膚は硬い革のようになり、白色か黒色、鮮やかな赤色になります。患部に触れても白くはならず、体毛が痛みを感じることなく毛根から簡単に抜けます。水疱はできません。患部の外観や症状は、やけどを受けた後の数時間、ときには数日間にもわたって悪化していきます。

煙の吸引

火事でやけどをした人の多くは、煙を吸いこんでいます。皮膚のやけどはない人でも、煙を吸いこんでいることがあります。煙の吸引による影響の多くは重症にはならず、長く影響を受けることもありません。ただし高温の煙や濃い煙の場合、また長時間吸いこんだ場合には、深刻な問題が生じることがあります。高熱の煙に触れると気管がやけどをして腫れることがあり、気管が腫れて狭くなると、肺への空気の流れが妨げられます。塩化水素、ホスゲン、二酸化硫黄、アンモニアなど、煙の中に放出された化学物質によっても、肺や気管の腫れや損傷が生じます。やがて肺へ通じる細い気道まで狭くなると、空気の流れがさらに滞ります。煙の中には一酸化炭素(中毒: 一酸化炭素中毒を参照)や、シアン化合物など、体細胞にとって有毒な物質が含まれていることもあります。

気管や肺の損傷により、24時間以内に息切れが起こります。気道の腫れによる空気の流れの閉塞は、喘鳴(ぜんめい)を引き起こし、息切れを悪化させます。ばい煙が口や鼻から入ったり、鼻毛が焼けていたり、口の周辺にやけどがみられることがあります。肺の損傷により胸痛、せき、喘鳴が生じます。煙のために酸素の供給が奪われると、意識がなくなります。血液中の一酸化炭素の濃度が上昇すると、錯乱や見当識障害がみられ、命にかかわることもあります。

気管のやけどの範囲をみるためには気管支鏡で観察を行います。胸部X線検査や血液中の酸素濃度を測定し、肺の損傷度を診断します。

煙を吸いこんだ人に対しては、フェースマスクから酸素を供給します。気管支のやけどが疑われるときは、気管が腫れて気道がふさがる事態に備えて、鼻または口からチューブを挿入します。喘鳴が始まった場合は、アルブテロールなどの気道を広げる薬を霧状にして酸素とともにフェースマスクから吸入させます。この方法を行っても息切れがみられる場合は、人工呼吸器の使用が必要です。呼吸のための負荷を軽減することで体力を温存し、回復や治癒が早められます。

合併症

軽度のやけどの多くは表面的なもので、合併症は起こりません。しかし2度熱傷や3度熱傷では、患部が腫れて治癒に時間がかかり、瘢痕(はんこん)が生じることがあります。瘢痕とは組織の損傷部分が線維化してできた傷あとで、治癒するにつれて収縮し、ときにひきつれ(拘縮)を起こします。関節部分に瘢痕ができて拘縮すると、関節の動きが制限されることがあります。

深いやけどでは、広範囲にわたって体液の損失や組織の損傷が生じ、重い合併症を引き起こします。やけどをしてから合併症を発症するまでに数時間かかることもあり、合併症がみられる時間が長いほど大きな問題を引き起こします。年少の小児や高齢者は、その他の年齢の患者に比べて合併症が重くなる傾向があります。

傷ついた組織から体液がにじみ出すため、やけどが広範囲にわたっていると脱水を起こし、ひどい場合はショックと呼ばれる状態になります(ショックを参照)。3度熱傷では筋肉組織の破壊(横紋筋融解症)が起こります。筋肉組織からタンパク質の1種であるミオグロビンが血液中に流出します。血液中のミオグロビン濃度が異常に高くなると腎臓に障害を与えます。横紋筋融解症は、血液検査や尿検査で診断できます。

3度熱傷では、皮膚の表面が厚く硬くなり焼痂(しょうか)という状態になります。痂皮(かひ)により皮膚が張りつめると正常な組織への血液供給が遮断されたり、呼吸障害が起こります。

治療

やけどの治療を行う前に、まず原因となっている物質を取り除き、損傷がそれ以上広がらないようにします。たとえば、火が燃えていたら消します。衣服は、特にくすぶっていたり(化学繊維のシャツが溶けている場合など)、熱いタールがついていたり、化学物質がしみこんでいる場合など、すぐにすべて取り除きます。

適切な治療を受けるために入院が必要となる場合もあります。たとえば重度のやけどでは腕や脚を心臓の位置より高く持ち上げて腫れを防ぐことが必要で、入院した方がこうした対応は容易にできます。やけどによって歩行や食事などの日常生活に支障がある場合も、入院が必要になります。重度のやけど、深い2度熱傷や3度熱傷、乳幼児や高齢者のやけど、顔、手、足、生殖器のやけどの場合は、熱傷治療の専門施設で治療を受けるようにします。熱傷センターや熱傷ユニットといった専門施設は、やけどの治療のための専門設備とスタッフを備えています。

軽度の浅いやけど: 体表面だけの軽いやけどの場合は、できればすぐに冷たい水に浸します。患部をていねいに洗浄して感染を防ぎます。土などが深く入りこんでいる場合は、鎮痛薬を投与するか、局所麻酔をかけてから、ブラシを使って患部をよく洗浄します。

多くの場合、治療はスルファジアジン銀など抗生物質のクリームを塗るだけで十分です。抗生物質クリームは傷口をふさいで細菌が入るのを防ぎ、感染を予防します。滅菌包帯を巻いて、患部が不潔になったりそれ以上傷つくことがないように保護します。必要な場合は破傷風ワクチンを接種します(予防接種: 破傷風を参照)。

自宅で手あてする場合は、やけどをした部分を清潔に保ち感染を防ぎます。多くの場合、オピオイドなどの鎮痛薬を少なくとも2〜3日は使用します。患部は包帯や滅菌ガーゼで保護します。交換の際は、まず水に浸すとガーゼがうまくはがれます。

小さな浅いやけど

軽いやけどの応急処置は、自宅で行うこともよくあります。実際、小さな浅いやけどで清潔なものならば、治療は簡単な応急処置だけで十分です。一般に、やけどした部分がきれいな皮膚だけで泥の破片や食べものなどが付着していなければ、清潔とみることができます。冷たい流水を患部にかけると痛みが和らぎます。市販の抗生物質入りの軟膏を塗り、滅菌包帯で患部を覆って感染を防ぎます。

破傷風ワクチンの接種が必要な場合には、医師の診察と治療が必要です。以下のいずれかに該当するやけども、医師に診てもらう必要があります。

  • 手のひらよりも大きなやけど
  • 水疱ができている
  • 皮膚に黒ずみや亀裂がある
  • 顔、手、足、生殖器のやけど
  • 清潔でない
  • 痛みがあり、アセトアミノフェンで緩和されない
  • やけどをして1日たっても痛みが改善されない

軽度の深いやけど: 表面的な浅いやけどと同じように、軽度の深いやけども抗生物質クリームで治療します。クリームを塗る前に、壊死した皮膚やつぶれた水疱などは取り除きます。腕や脚のやけどが深くまで達している場合は、最初の数日間は心臓より高い位置で保つことで、腫れや痛みが軽減されます。深いやけどの場合は病院や診療所で頻繁に診察を受ける必要があり、できる限り最初の数日は毎日通院します。

皮膚移植が必要な場合もあります。移植の多くはやけどした部分に代わりの皮膚を移植するものですが、自分の皮膚が再生されるまで、一時的に表面を覆って保護するために皮膚移植を行う場合もあります。皮膚移植の処置には、(1)患者自身のやけどを受けていない健康な皮膚(自家移植片)、(2)他人の皮膚や死体の皮膚(同種移植片)、(3)人間以外の動物の皮膚(異種移植片)――が使われます。異種移植片としては、人間の皮膚に最も近いことからブタの皮膚が多く使われます。壊死した組織を取り除き、患部を確実にきれいにしてから、移植皮膚片を縫いつける手術を行います。自家移植の場合は、恒久的なものです。同種移植や異種移植では、10〜14日後に体の免疫システムにより拒絶反応が生じます。最近は人工皮膚片の開発が進み、損傷した皮膚の代わりとして用いられます。皮膚移植は、やけど後の数日以内であればいつでも行うことができます。

関節周辺のやけどでは、瘢痕化によって関節が固まるのを防ぐため、理学療法や作業療法が必要となります。ストレッチ体操は、やけどをしてから数日以内に開始します。副子をあてて関節を伸ばした状態で固定し、拘縮が起こりにくい状態に保ちます。関節を動かすとき以外は、副子をあてたままにしておきます。皮膚移植を行った場合は、移植後5〜10日が経過し、移植皮膚片の定着を妨げないようになってから理学療法などを開始します。包帯を厚く巻いて患部を圧迫すると、瘢痕が大きく広がるのを防ぐことができます。

重度のやけど: 生命にかかわる重度のやけどは、すぐに治療を開始する必要があります。静脈から大量の輸液を行い、脱水状態になるのを防ぎます。脱水によるショック状態に陥った場合は、フェースマスクをあてて酸素の吸入も行います。

筋肉組織が損傷を受けている場合にも、静脈から大量の輸液を行います。これは血液中のミオグロビン濃度を薄めて、腎臓への損傷を防ぐためです。場合によっては、重炭酸ナトリウムの静脈内投与によってミオグロビンを溶解し、腎臓の損傷を防ぎます。

焼痂によって、末梢への血液の流れが遮断されたり、呼吸障害が起こっている場合には、焼痂切開術と呼ばれる手術を行って切開します。瘢痕切除術は出血を伴いますが、皮膚内部の神経終末がやけどで損傷されているため、ほとんど痛みは感じません。

皮膚の損傷部分から感染を起こしやすいので、患部を清潔に保つことが非常に大切です。そのためには、弱い水流で患部を定期的に洗います。包帯は日に1〜3回交換します。

適切な食事によりカロリー、タンパク質、栄養素をきちんと摂取することも大切です。食事からの適切なカロリー摂取ができない場合は、液状のサプリメント(栄養補助食品)を飲んだり、鼻から胃に挿入した管(経鼻胃チューブ)や、静脈栄養によって補給します。ビタミンやミネラルの補充も大切です。

重度のやけどは治癒までに時間を要し、ときには治るまでに何年もかかることがあります。また、外見が損なわれることもあり、患者がうつ状態になることがあります。うつ状態になった場合は薬物療法や心理療法などで治療します。

経過の見通し

1度熱傷や2度熱傷は数日から数週間で治癒し、傷あとも残りません。2度熱傷のうち傷が深いものや、直径約2.5センチメートル未満の小さな3度熱傷は、治癒に数週間かかり、瘢痕が残ります。それより広範囲の3度熱傷では皮膚移植が必要になります。体表面積の90%以上、高齢者では60%以上のやけどは、命にかかわります。

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