メルクマニュアル家庭版
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セクション

凍傷

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凍傷は低温により体の一部が凍ってしまう障害です。

凍傷による障害は、いくつかの要因が重なって起こります。まず凍結によって、一部の細胞が破壊されます。また寒さで血管が収縮するので、凍傷部の周辺組織は、それ自体は凍っていなくても血流量が減少するためにダメージを受けます。さらに寒さにより細い血管内に血栓が生じることがあります。この血栓により血流が阻害され、組織が壊死(えし)します。患部への血流が再開すると、傷ついた組織から炎症を引き起こす化学物質が放出され、炎症によって損傷がさらに悪化します。さらに、凍結した組織が温められると、毒性のある物質が血流に放出され、不整脈を起こすことがあります。このため心機能のチェックと血液中の毒性物質の濃度を調べる必要があります。

氷点下の外気にさらされると、体のどの部分でも凍傷のリスクが生じます。凍傷の程度は、気温の低さと寒さにさらされている時間により決まります。凍傷のリスクは、(1)糖尿病や動脈硬化、(2)血管れん縮(喫煙、神経疾患の一部、ある種の薬が原因)、(3)きつすぎる手袋やブーツによる血液循環障害がある場合に高くなります。手足や顔は最も凍傷になりやすい部位です。またぬれたものや金属に触れると、さらに凍結しやすくなるので特に危険です。

症状

凍結した組織の深さと量によって症状は異なります。浅い凍傷では感覚のない白斑が生じ、温めるとはがれます。やや深い凍傷では水疱と腫れがみられます。より深い凍傷では手足の感覚がなくなり冷たく硬くなります。患部は青白くなります。しばしば水疱が現れます。水疱の内部の体液が透明であれば、血が混じっている場合よりも軽症です。

手足が灰色で軟らかくなることがあります(湿性壊疽)。進行すると、湿性壊疽を起こした手足の切断が必要になります。より頻度が高いのは、黒くガサガサの革のような状態(乾性壊疽)です。

治療と診断

凍傷は典型的な外観と、深刻な冷気にさらされた後に起きたことから診断されます。

凍傷患者は低体温症も起こしている可能性があるため、まず温かい毛布で覆い、温かい飲みものを与えます。患部を適温の湯(38〜40℃)に浸し、できるだけ早く温めます。雪などで患部をこすると、かえって損傷が広がります。患部は感覚がないので、ストーブや暖炉の火の前で温めたり、暖房器具や電気毛布などを使ってはいけません。温めると患部に強い痛みが生じるため、オピオイド鎮痛薬の注射が必要になります。水疱はつぶさないように慎重に扱い、つぶれた場合には抗生物質の軟膏(なんこう)を塗って保護します。

一度溶けかかった組織が再凍結すると、凍結したままでいるよりも損傷はさらに大きくなります。凍傷患者が再び寒気にさらされる場合、特に凍傷になった足で歩かなければならない場合には、患部は凍ったままにしておきます。溶けかかった足で歩くと、損傷がひどくなります。もしも救助を求めるために歩かなければならない場合は、損傷した組織を保護するためのあらゆる努力を行い、患部をこすったり締めつけたりしないよう細心の注意を払います。

一度組織を温めたら、患部をていねいに洗って乾かし、滅菌した包帯で覆って、清潔で乾いた状態に保つよう注意して感染を防ぎます。炎症を緩和するには、抗炎症薬のイブプロフェンを経口で服用させたり、アロエベラのジェルを患部に塗布します。感染を起こした場合は抗生物質を使用します。重症の凍傷患者にはすべて抗生物質を投与すべきだという意見もあります。患部の血液循環を改善させるため、低分子量デキストランやヘパリン、フェノキシベンザミンを静脈投与することがあります。ただし、この治療が有効なのは凍傷を負ってから数日以内に限ります。

多くの場合、数カ月かけて徐々に状態は改善しますが、壊死した組織を除くため手足の切断が必要になる場合もあります。一般に凍傷は、受傷直後は広範囲に広がり重症のようにみえます。切断を行うかどうかの決定は、数カ月たって患部が十分に治癒してからにします。

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