メルクマニュアル家庭版
印刷用画面

セクション

落雷による損傷

-
-

落雷による損傷は、雷のきわめて強い電流に短時間さらされたことによって起こります。

雷は、わずか1000分の1秒の間に大量の非常に危険な電的気パルスを送ります。電流を浴びている時間が短いため、皮膚の外傷は少ない場合がほとんどです。体内のやけども感電した場合よりも少なくなります。しかし心臓や脳に瞬時に電流が達するため、死亡する場合もあります。落雷による死亡は、米国では嵐に関連する死因の第2位です。

落雷は、樹木、展望台、塔、避難所、旗竿、外野席やフェンスのような高い物体を直撃します。広場などでは、人間が一番高い物体となります。金属や水は電気を容易に伝えます。落雷からの電気は、電線や電話線を通じて電気機器や電話線に流れることがあります。

被害の受け方はさまざまで、直接人に落ちることもありますし、雷が落ちた物体に触れたり、近くにいたりして、電気が流れることがあります。電流が地面を伝って人に流れる場合もあります。衝撃によって投げ出され、外傷を負うこともあります。

症状

落雷を受けた人は、心拍が停止したり乱れたり、呼吸が停止したりします。心拍は自然に再開することもありますが、呼吸が再開しないと酸欠状態になります。酸素が不足し神経系が損傷を受けていると、心拍は再び停止します。

脳が損傷を受けると、意識を失います。脳の損傷が激しいと昏睡状態となります。意識を取り戻しても、多くは損傷を受ける前に起こったことを思い出すことができません。患者は混乱していて思考が遅く、集中できなかったり、最近の出来事を思い出せなかったりすることがあります。性格が変わることもあります。

鼓膜が破れることもよくあります。眼の損傷は白内障に進行することがあります。両脚が一時的に麻痺し青白くなり、感覚を失う(雷撃麻痺)こともあります。皮膚に羽毛状または枝分かれ状のパターンを示す軽度のやけどを負うことがあります。このパターンは、タバコによるやけどのような小さい点の集まりか、または流れる汗が沸騰して蒸気になったあとの筋状の連なりになっています。

予防

雷雨の季節には天気予報を注意して聞き、屋外での活動を中止したり、非常事態を想定することが大切です。特に屋外イベントの主催者にとって重要です。

強い風、雨、雲は、雷を伴う嵐が近づいてきていること示しています。雷鳴の音が遠くから近づいてきたり、雷鳴と稲妻の間隔が30秒より短くなった場合には避難所を探さなければなりません。展望台のような小さい開放構造になっている避難所は安全とはいえません。大きくて閉め切った建物の内部や、窓を閉めた乗用車やバン、トラックのような、金属でできている乗り物の中の方が安全でしょう。雷や稲妻が去っても30分以内は危険ですので野外活動を再開しないようにします。

屋外にいるときに雷による傷害を防ぐには、周囲より高い場所や金属性の物体、水のある場所、広場のような開けた場所は避けます。開けた場所からすぐに逃げられない場合は、可能な限り姿勢を低くして、しゃがみこむようにします。ただし地面に寝そべってはいけません。避難場所を探しながら林の中を移動するときは(1本の大きな樹の下には行かないようにします)、お互いに約4.5メートル以上離れるようにします。

屋内では、水との接触、電話での会話、コンピューターの使用、ヘッドホンの使用などを避けます。雷を伴う嵐が来る前に電気装置のスイッチを切り、コンセントからプラグを抜きます。さらに窓やドアから離れると安全性が高まります。

治療と経過の見通し

落雷による被害では、しばしば目撃者がいません。そのため雷雨時に屋外で意識を失った状態で発見された場合には、落雷による損傷が疑われることになります。

落雷を受けた人に電気は残っていないため、応急処置の際の危険はありません。脈がない場合や、呼吸をしていない人には、ただちに心肺蘇生(CPR)(知っておきたい応急処置: 応急処置を参照)が必要です。人工呼吸を行い、心拍の維持に必要な酸素を送ります。落雷の被害に遭うのは健康な人が多いので、すぐにCPRを行えば、回復の見込みは高くなります。病院では心臓が正常に鼓動しているかを判定するため心電図(ECG)を取ります。必要に応じてやけどやそのほかの障害の治療を行います。最初の40分以内に蘇生できなかった場合には、生存の望みはありません。

落雷に遭った人のうち10%は死亡しますが、死亡原因のほとんどは心停止か呼吸停止です。逆に心拍と呼吸が再開すればほとんどの人は助かります。最近の記憶が損なわれ、思考の遅延がみられる場合には、脳に永久的な障害を受けている場合があります。雷撃麻痺は通常数時間のうちに治まります。

個人情報の取扱いご利用条件