メルクマニュアル家庭版
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鉛中毒

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米国では、1977年に鉛を含有する塗料の使用が禁止され、ガソリン中の鉛も大半が取り除かれたため、鉛中毒は少なくなっています。それでも特に米国東海岸地域の都市などでは、鉛による中毒は公衆衛生上の大きな問題となっています。鉛を扱う職業に従事している人や、鉛入りの塗料がはげていたり鉛管を使っている古い家屋に住む小児は、鉛中毒のリスクが高くなります。年少の小児は、はげた塗料のかけらを口にして鉛中毒を発症することがあります。鉛は、脳、神経、腎臓、肝臓、血液、消化管、生殖器官など体のさまざまな部分に影響を与えます。発達中の神経系は最も障害を受けやすいため、特に小児の感受性は高くなっています。

血液中の鉛の濃度が非常に高い状態が数日間続いた場合は、突発的な脳の障害(脳症)が起こります。これより低い濃度でも、長期間続いた場合には、長期的な知的障害を起こすことがあります。

症状と診断

軽度の鉛中毒では、多くの場合、症状はありません。症状がみられる場合も、数週間後かそれ以上経過してから現れます。症状は周期的に再燃することもあります。

鉛中毒の典型的な症状としては、性格の変化、頭痛、感覚の喪失、脱力、金属的な味を感じる、歩行困難、食欲不振、嘔吐、便秘、激しい腹痛、骨や関節の痛み、貧血(貧血: はじめにを参照)などがあります。腎臓障害は、しばしば無症状のうちに進行します。

年少の小児の場合は、ぐずったり、活発に遊ばなくなったりする状態が数週間以上続きます。突然脳症を発症し数日間で悪化することがあり、持続的な激しい嘔吐、錯乱、不眠を起こしたり、最終的にはけいれん発作や昏睡を生じます。

成人の場合は性欲減退、不妊、男性では勃起機能不全(インポテンス)が多くみられます。成人が脳症を発症することはまれです。

症状の中には、鉛が体に入ってこなくなると消失し、再び鉛が入ってこない限り悪化しないものもあります。

鉛中毒は、血液検査を行って診断します。鉛を扱う職業に従事する人は、血液検査を定期的に受けるようにします。古い家屋が多く、鉛を含有している塗料のはげ落ちが多い住宅街に住む子供も、血液検査を受けて鉛の量を調べましょう。小児の場合、しばしば骨と腹部のX線検査を行うと鉛中毒の徴候がわかります。

治療と経過の見通し

治療は、これ以上体内に鉛を取りこまないようにすることと、体内に蓄積された鉛を取り除くことです。鉛の除去には鉛に結合する薬を投与して、尿中に排出させます(キレート療法)。鉛の除去に用いられる薬はすべてゆっくりと作用し、重い副作用を起こすことがあります。

軽い鉛中毒の場合はサクシマーを経口投与します。重い鉛中毒の場合は、入院してジメルカプロール、サクシマー、ペニシラミン、エデト酸カルシウム二ナトリウムなどのキレート剤を注射します。キレート剤は亜鉛や銅、鉄など体にとって大切なミネラルも取り除いてしまうので、これらのミネラルを補います。

治療を行った後も、脳症を発症した小児の多くが、恒久的な脳の損傷を起こします。腎臓に永久的な損傷が残ることもあります。

予防

家庭用の塗料、陶器、飲料水の中に含まれる鉛を調べる試験用キットが市販されています。窓の下枠のほこりは1週間に1度はぬれたぞうきんでふいて、塗料に含まれる鉛を含んだほこりを取るようにします。鉛を含有する塗料がはげた場合は修復しておきます。大規模な改装などで鉛を含有している塗料をはがす場合には、大量の鉛が家屋内に入る可能性があるので、専門家に依頼します。飲料水中に含まれる鉛は市販の浄水器でも大半が除去できます。

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