メルクマニュアル家庭版
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旅行前の準備

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体調を崩して旅行に支障を生じないためには、出発前の準備はとても重要です。健康な人でも、自分なりの健康を守る適切なプランを立てることは必要です。旅行中の病気の治療費に比べれば、出発前の適切な準備にかかる費用など、はるかに安いものです。

旅行用キット

旅行用キットとは、応急手当用品、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬などの痛み止め、点鼻薬、制酸薬、ロペラミドのような下痢止めなどで、軽いけがや体調不良の際に役立ちます。もっと大きな病気も、しばしば常識的な事前対策で防げます。受けた予防接種や服用中の薬などを詳しく書いた医療情報の書類(旅行用診断書)を用意しておけば、旅行中の緊急時に非常に役立ちます。

旅行保険

旅行保険は国内旅行でも海外旅行でも重要です。しかし旅行保険は、その適用範囲に制限がついているものがあり、自分が加入した保険契約の適用範囲を正しく知っておく必要があります。

この適用範囲は国内よりも海外旅行で問題になります。入国するのにある種の予防接種の実施を要求する国もありますが、日本の健康保険は海外旅行目的の予防接種や予防薬の処方に適用されず、自費扱いとなります。米国の高齢者医療保険であるメディケアは、国外でかかった治療費を保障しません。海外では、旅行者が加入している保険の確認ができないため、治療前に前金または全額の即金での支払いを求める病院があります。

海外で高額の治療が受けられないという不幸な事態を回避するために、海外旅行保険がカバーする範囲、治療を受ける場合には事前の許可が必要かどうか、どのように保険金を請求すればよいかなどを事前にチェックしておく必要があります。海外旅行保険には、トラベルサービス窓口やクレジットカード会社を通じて、帰国のための医療搬送費用もカバーするものもたくさんあります。理想的な海外旅行保険とは、(1)緊急治療費、(2)治療のための移送費、(3)帰国移送の費用、(4)移送中の医療器具や付き添いの費用、(5)歯科治療、(6)出産前後の医療、(7)すべての薬剤費、(8)医療通訳などをカバーするものです。

その他にも役立つ情報源を探すことができます。各国の英語を話せる医師の住所氏名一覧表は、種々の機関やインターネットのウェブサイトで入手できます(情報源と支援団体を参照)。旅行先にある各国の領事館は、それぞれ自国民の身元を確認し、緊急時に必要な医療サービスが受けられるよう手助けをします。

予防接種

予防接種は、多くの開発途上国への旅行には重要で、黄熱病の予防接種が入国に必要な国もあります。ワクチンで予防できる病気には、A型・B型肝炎、ポリオ、黄熱病などがあります。ワクチンの中には効果が出るまでに最長で6カ月かかるものがあり、早めに接種の計画を立てる必要があります。国際予防接種証明書は予防接種の種類と接種日を文書で証明するものです。証明書は携帯に便利で、米国ではトラベルクリニックや連邦政府の印刷局で発行されます(情報源と支援団体を参照)。

海外旅行に必要な予防接種*,†,‡

感染症

予防接種が推奨される地域

備考

A型肝炎 中南米、アフリカ、中東、アジア、東欧 完全な免疫が得られるまでに4週間を要するため、出発まで4週間未満の場合は肝炎免疫グロブリンの接種を行う。妊婦にも安全に接種可能
B型肝炎 アラスカ、カナダ北西部、北極海の西半球側の島、南および西太平洋の島、アマゾン川流域、中国、中央および東南アジア 主に現地住民との性的接触、血液や血液製剤に接触することが予想される旅行者には予防接種が勧められる。妊婦にも安全に接種可能
日本脳炎 中央および東南アジア、極東、トーレス海峡(オーストラリア) 流行期にアジアの農村地帯に1カ月以上滞在する場合に限り予防接種が勧められる。妊婦への接種は勧められない
髄膜炎菌感染 サハラ砂漠以南のアフリカ北部 流行地域へ旅行する場合も感染のリスクは高くないが、予防接種により感染防御効果は高まる。メッカ大巡礼(ハッジ)の時期にサウジアラビアに入国する際は予防接種が必要。妊婦にも安全に接種可能
狂犬病 米国を含む世界各国 動物にかまれる危険のある旅行者には接種が勧められ、郊外でキャンプする人、獣医、野外研究者、へき地に滞在する人なども対象。この予防接種をしていても、動物にかまれた後には予防効果を高めるための追加接種が必要となる
腸チフス 中南米、アフリカ、中東、アジア、東欧 予防接種は完璧ではないがかなりの効果がある。食べもの、水、衛生状態に細心の注意を払うことで予防効果は向上する。5年後に再接種が必要。錠剤と注射の両方があるが、錠剤には毒性を弱めたウイルスが含まれるため妊婦への接種は危険
黄熱病 南米、アフリカ まれな病気だが、多くの国で入国時の予防接種が求められている。妊婦への接種は危険

予防接種も参照。

†海外旅行に出かける際は上記の予防接種のほか、はしか(麻疹)、おたふくかぜ(ムンプス/流行性耳下腺炎)、風疹、破傷風、ジフテリア、ポリオ、肺炎球菌感染、インフルエンザ、水ぼうそう(水痘)などの予防接種は必ず済ませておく必要があります。成人の旅行者で熱帯地域に旅行する人、南半球に4〜9月に旅行する人、団体旅行をする人にはインフルエンザの予防接種が勧められます。

‡これらの勧告は変更されることがあります(米国での最新情報は米国疾病対策センターで入手可能)。

持病のある人の旅行

病気をかかえている人が旅行する場合は、病状に応じた準備が必要です。旅行前に必ず主治医の診察を受け、容態が安定していることをチェックし、薬の変更が必要かどうかを検討します。服用している薬の名前とその用量、治療年月日、病気の経過をまとめた書類は、旅行先での緊急用に必要です。医療用のアラートカードやメディカルブレスレットも同様の役目を果たします。医療保険書類も携帯するべきです。

緊急時に正確な薬剤名や服薬方法の指示を再確認できるように、必要な薬はもとのパッケージに保管しておくべきです。薬の商品名は国によって違うため、薬の一般名の方が商品名よりも役に立ちます。

飛行場で預けたスーツケースの紛失や盗難、乗り継ぎによる荷物の遅れ、帰りの便の遅れなどに備えて、機内持ち込み手荷物にも薬の予備を入れておきましょう。オピオイド薬や注射器、大量の薬は警備員や通関職員に疑われることがあるため、これらが医療上必要であると説明する医師の証明書を必ず携行します。注射器は、その注射器で使用する薬と一緒に所持していなければなりません。また、こうした薬剤を持っていても支障なく旅行するためにこれ以外に準備すべき文書があるかどうか、空港、航空会社、訪問国の大使館などに照会するとよいでしょう。

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