メルクマニュアル家庭版
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旅行先で起こる問題

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到着後に起こる問題は海外では特に重要です。多くの人は、海外旅行を検討する場合に感染症のことを最も心配しますが、海外旅行者の死亡原因の中で最も多いのは心臓病です。心疾患は、旅行者に限らず米国では死亡原因の第1位であり、旅行中の病気を予防するには、出発前に自分の健康状態について的確な注意を払うことが最善の方法です。

外傷

外傷は海外での死亡原因の第2位で、車や水の事故によるものがほとんどです。常識を働かせれば、こうした外傷の多くを未然に防ぐことができます。たとえば、交通ルールの違い(米国などは右側通行、日本やイギリスで左側通行など)がある慣れない土地での運転に不安を感じるのであれば、バスや地下鉄を利用するか現地の道路や交通規則に慣れた運転手を雇う方法があります。旅行者は混み合ったタクシーやフェリーなどは避け、夜間の運転や暗い場所での水泳をしないようにします。また旅行中は自分で運転しない場合にもシートベルトを必ず締めます。運転や水泳をする前の飲酒は、たとえ法律で正式には禁止されていなかったり法律の及ばない場所であっても厳禁です。

多くの大都市は日没後は危険ですし、昼間でも危険な場所もあります。そのような都市では暗い道や人通りの少ない道を1人で歩いてはいけません。特に旅行者が明らかによそ者であるとわかる土地では避けるべきです。

旅行中の下痢

旅行中の下痢は、海外旅行者がかかる多くの感染症の1つです(胃腸炎: 旅行者下痢症を参照)。旅行中の下痢は、以下のことを実行すればある程度防ぐことができます。(1)飲み水や歯磨き用にはミネラルウオーターやろ過処理または塩素殺菌した水を使う、(2)飲みものに入っている氷は避ける、(3)沸点以上まで加熱した調理したての料理を食べる、(4)果物や野菜は殻に入っているものや皮のむけるものを食べる、(5)屋台で売っているものは食べない、(6)頻繁に手を洗う、(7)ハエがたかっていた可能性があるものは食べない。

旅行中の下痢は多くの場合、自然に治まりますが、脱水症にならないようにしっかり水分を摂取することが必要です。このほか、必須ではありませんが以下に挙げる薬が役に立つことがあります。1つは、次サリチル酸ビスマスの1日4回内服です(訳注:日本では次硝酸ビスマスが使われます)。この薬は下痢の予防と治療の両方に有効ですが、小児やアスピリンを飲んでいる人は服用してはいけません。治療に役立つ下痢止め薬として、市販薬ではロペラミド、処方薬ではシプロフロキサシン、オフロキサシンなどがあります。小児が旅行中に下痢を起こした場合には、抗生物質のトリメトプリム‐スルファメトキサゾールが使われることがあります。

旅行中の携帯に便利な粉末タイプの経口補液剤も市販されています。これがないときは少量の塩、ベーキングソーダ(重炭酸ナトリウム)、砂糖または蜂蜜を水に溶かして経口補液を作ることもできます。

マラリア

マラリアはアフリカ、東南アジア、南米の一部にみられます(寄生虫による感染症: マラリアを参照)。最良のマラリア対策は、予防することに尽きます。明け方と夕方など蚊が活動的な時間には長袖のシャツと長ズボンを着用する、蚊帳の中で寝る、殺虫剤のペルメトリンをしみ込ませた衣類を身につけるなどの対策で、マラリアを防ぐことができます。ジエチルトルアミド(DEET)の入った虫よけ剤も重要で、デング熱、黄熱病など蚊が媒介する他の病気も防ぐことができます。こうした対策をとる場合でも、抗マラリア薬のメフロキン、クロロキン、アトバコン/プログアニルを出発前、旅行中、帰国後に服用することは必要です。

住血吸虫症

住血吸虫症はアフリカ、東南アジア、中国、南米の東部でよくみられ、重症になる可能性の高い感染症で、これらの地域の川のよどみに生息する寄生虫が原因で発症します。住血吸虫症は水の中を歩くときに靴とソックスをはき、住血吸虫症が多い地域で淡水に入ることを避けることで予防できます(寄生虫による感染症: 住血吸虫症を参照)。

シラミと疥癬

シラミと疥癬(かいせん)は、不衛生な宿泊施設などでよくみられ、ペルメトリン、マラチオン、リンデンローションなどで治療できます(寄生虫による皮膚感染症: 疥癬を参照、寄生虫による皮膚感染症: シラミ寄生症を参照)。しかしこれらのローションを予防薬として使用してはいけません。

性行為感染症

性行為感染症(STD)には、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)への感染や、淋菌感染症、梅毒、トリコモナス症、ときにB型肝炎などがあり、開発途上国でより多くみられます。どの病気もセックスを自制するか、コンドームを正しく使用することで防ぐことができます(コンドームの正しい使用法を参照)。HIVやB型肝炎は血液や針からも感染するので、海外旅行先では感染症の検査済みである保証がない限り絶対に輸血を受けてはいけません。また注射を受ける場合は、1回ごとに使い捨てる注射針を使用することが必要です。

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