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湾岸戦争症候群

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湾岸戦争症候群は、1992年の湾岸戦争で戦った米兵、英兵、カナダ兵のうち10万人を超える兵士が経験したとされる一群の症状を指します。

湾岸戦争症候群はまだ十分に解明されていません。ペルシア湾から帰国して数カ月のうちに、米国、英国、カナダ各国の兵士は頭痛、疲労感、不眠、関節痛、胸痛、皮膚の発疹、下痢などさまざまな症状を訴えはじめました。しかし、ほとんどのケースでは本人が訴えた症状、特に頭痛や吐き気などを、医師が客観的に確認することはできませんでした。皮膚の発疹など症状が確認できたケースでさえ、原因の特定には至っていません。

湾岸戦争症候群の原因は不明です。湾岸戦争で戦った兵士たちは化学兵器、生物兵器、劣化ウラン兵器、殺虫剤、油田火災による煙など、多数の有毒物質にさらされていたと考えられます。また、刺激性の高い石油精製品、放射能や有毒ガス汚染を除去する除染液、さまざまな空気中の浮遊分子などによりアレルギーが生じた可能性もあります。湾岸戦争での細菌戦に備えて米兵には炭疽菌ワクチン(細菌による感染症: 予防と治療を参照)も接種されており、このワクチンが原因である可能性も指摘されています。しかし、米兵以外で接種した人には湾岸戦争症候群の症状は出ていません。化学兵器による致死的影響を防ぐために使用されたピリドスチグミン錠も原因の1つとして指摘されています。しかし、いずれの因子も湾岸戦争症候群との関連は十分に説明されていません。

症状

神経系の症状が顕著で、記憶力、論理的思考力、集中力、注意力などの低下、不眠、うつ状態、疲労感、頭痛などがあります。そのほかの症状には、身の回りを認識する能力(見当識)の喪失、めまい、勃起障害(インポテンス)、筋肉痛、筋肉疲労、脱力、しびれ、下痢、皮膚の発疹、せき、胸痛などがあります。

診断、治療、経過の見通し

診断法や治療法が確立されていないため、症状の軽減に重点がおかれます。

湾岸戦争症候群の症状を訴える兵士らの入院率および死亡率は、同世代で比較した場合に、特に高いということはありません。

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