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致死的な病気で生じる症状

致死的な病気の多くで、痛み、息切れ、胃腸の障害、失禁、皮膚の損傷、疲労などの症状が共通して生じます。うつ、不安、錯乱、意識不明、身体障害も生じます。

痛み

死に直面すると、ほとんどの人は痛みを恐れます。しかし、意識がはっきりとしていて、現実世界とのつながりがあり、落ち着いている間は、通常痛みをコントロールできます。

癌からくるある種の痛みは、放射線で癌を小さくし、増殖を防ぐことでコントロールできます。軽度の痛みのコントロールには、理学療法やアセトアミノフェン、アスピリンなどの鎮痛薬が用いられます。痛みを和らげるのに、催眠療法や、大きな悪影響が生じない治療法であるバイオフィードバック法(痛み: 薬によらない痛みの治療を参照)が効果を示す人もいます。しかし、コデインやモルヒネなどの、麻薬が必要になることもしばしばあります(痛み: オピオイド鎮痛薬を参照)。麻薬を口から服用すると、数時間は効果的に痛みを和らげてくれます。強い麻薬は、皮膚用パッチ剤、注射、静脈への点滴で与えます。痛みに耐えられなくなるまで使わないのではなく、早くから十分な量の投薬を行い、薬物中毒になる心配はありません。麻薬に通常投与量というものはありません。少量で効果がある人もいれば、大量に必要な人もいるからです。

息切れ

もがく思いで息をしなければならないのは、生きるにしても死ぬにしても最悪な状態ですが、この息切れもコントロールできます。呼吸を和らげる方法はたくさんあります。たとえば、水分の貯留を取り除く、姿勢を変える、酸素補給を行う、気道をふさいでいる腫瘍を放射線やステロイド薬投与で縮小するといった方法があります。軽い息切れがずっと続いている人は、痛みがなくても、麻薬を使えば呼吸が楽になります。寝る前に麻薬を飲めば、何回も目を覚ましてもがかなくてすむので、快適に眠れます。

こうした治療が効果を示さず、患者が息切れに苦しみ続けている場合、ホスピスに勤務するたいていの医師は、患者が意識不明になる可能性があったとしても、息切れを感じなくなるのに十分な量の麻薬を投薬することを決めます。終末期に息切れで苦しみたくないと望む患者は、治療が原因で意識不明になる、あるいは死期が幾分早まる可能性があったとしても、医師がこの症状を完全に治療してくれることを確認しましょう。

消化器の障害

口の渇き、吐き気、便秘、腸閉塞、食欲不振といった消化器の障害は、重病患者でよくみられます。これらの障害の中には、病気が原因で生じるものがあります。便秘は薬の副作用でも起こります。

口の渇きは湿らせた綿棒やあめ玉で和らげることができます。唇の荒れを和らげる製品もたくさん市販されています。虫歯にならないように歯を磨き、マウススポンジで歯、歯ぐき、ほおの内側、舌を小まめに掃除しましょう。

吐き気や嘔吐の原因は、薬、腸閉塞、病気の進行などです。薬を変えてもらうか、吐き気を抑える薬(吐き気止め)を処方してもらいましょう。腸の閉塞が原因のむかつきも、吐き気止めやその他の処置で治療します。

便秘は非常に不快なものです。食事制限、運動不足、ある種の薬が原因で、腸の機能が鈍ります。腹部にけいれんが起きることもあります。便秘を治すには、麻薬が原因の場合は特に、便秘薬、下剤、浣腸を使います。病気が末期であっても、通常は便秘の軽減には効果があります。

腸閉塞は手術が必要な場合があります。しかし、患者の全体的な病状、推定余命、閉塞の原因によりますが、腸を麻痺させ、胃液の分泌を減らす薬を使った方がよいでしょう。この場合、胃をきれいに保つために、ときどき鼻腔胃吸引(鼻から管を通して胃の内容物を吸い出すこと)を行います。痛みを和らげるには麻薬が効果的です。

嚥下困難(食べものをうまく飲みこめなくなる障害)が、脳卒中を起こした人、痴呆が進んだ人、癌で食道が閉塞した人に起こる場合があります。食事中の姿勢を保ったり、飲みこみやすい食べものを選ぶことによって、再びものをうまく飲みこめるようになることもあります。この障害が解決しない場合は、チューブ栄養を行うかどうかの決断が必要になります。

食欲不振は、死期が近づいている患者のほとんどに、いずれ現れます。食欲がなくなるのは自然なことで、そこから肉体的な障害が生まれるわけではありません。また、家族は心配かもしれませんが、おそらく死を楽に迎えるために役立っていると思われます。死期が近づいている患者は、無理をして食べても体力を保つことはできません。しかし、少量なら、好きな家庭料理を楽しむことができるでしょう。

数時間または数日中に死ぬことがなさそうなら、点滴や鼻から胃に通したチューブで、栄養補給または水分補給をしばらくの間試みることがあります。こうして、患者の気分、意識の明瞭さ、活力を改善する効果があるかを確認します。しかし、たとえ効果があったとしても、こうした栄養補給を望む人はあまりいません。いずれにせよ、患者と家族は、こうした処置は何を期待したものなのか、効果がなかったらいつ処置をやめるのかといった問題について、医師と明白な合意を得るべきです。

食べものや水分を取る量が減っても、容態が悪化することはありません。それどころか、心臓と腎臓の機能が低下しているときに通常量の水分を取ると、その水分が肺の中にたまってしまい、息切れが生じます。食べものや水分を取る量が減ると、のどにたまる水分も減るので、吸引処置の必要性が減ります。また、癌の周りのむくみが減るので、癌患者の痛みを和らげる効果があります。さらに、鎮痛作用のある天然の化学物質、エンドルフィンを大量に放出させる効果もあります。ですから、死期が近づいた患者に無理に飲食させてはいけません。特に、静脈チューブや入院といった制限が必要になるならなおさらです。

失禁

死期が近づいた患者の多くは、腸や膀胱の機能をコントロールできません(失禁)。このことが原因で、病気になることもあれば、全身が衰弱することもあります。失禁には、使い捨ておむつや、注意深い衛生処置で対応します。

床ずれ

死期が近づいた患者は床ずれ(褥瘡)を起こしやすくなります。床ずれは痛みの原因となり、感染症を引き起こす可能性があります。ほとんど動かない人、寝たきりの人、ほとんど座って過ごしている人は、床ずれを起こすリスクが非常に高くなります。座っているとき、あるいはシーツをすって動くときに皮膚に加わる普通の圧力で、皮膚を裂いたり、傷つけたりすることがあります。皮膚を守るためにできるだけのことをし、皮膚が赤くなったり傷ができたりしたら、すぐに医師に知らせましょう(床ずれ(褥瘡)を参照)。頻繁に姿勢を変えれば床ずれは起きにくくなります。

疲労

重い病気のほとんどは患者を疲労させます。死期が近づいた患者は、本当に大事なことのためにエネルギーを取っておきましょう。診療所を訪ねるとか、もはや役に立たない運動を続けるといったことは、必ずしも必要ではありません。そうした活動で、より満足を得られる活動のためのエネルギーを消耗してしまうのならなおさらです。ときには興奮剤が役に立つでしょう。

うつと不安

人生の終わりを考えれば悲しくなるのは当然で、この悲しみはうつではありません。うつの人は、今起こっていることに興味がもてず、人生の暗い面ばかりを考え、感動することがありません(うつ病と躁病: うつ病を参照)。死にゆく患者と家族は、こういった気分が生じたときには医師に相談し、うつを発見して治療してもらいましょう。治療では薬とカウンセリングを併用しますが、たとえ人生最後の1週間でも効果があり、患者に残された時間の質を向上してくれます。

心配が通常よりもひどくなると不安症と呼ばれます。不安症では、日常生活の妨げとなるほど、心配や恐れの気持ちがひどくなります(不安障害: はじめにを参照)。情報を知らされていないと感じたり、ものごとにくじけたりすると不安が起こりますが、介護人に情報や助けを求めれば不安は軽くなります。ストレスがたまっているときに不安を感じやすい人は、死期が近づいたときにはもっと強い不安を感じるようになります。安ど感を与えたり、薬を飲ませたり、心配な気持ちを生産的な活動に振り向けたり、といった昔からある方法が、終末期の患者にも役立つかもしれません。不安症の終末期患者は、カウンセラーに相談したり、抗不安薬を服用したりするとよいでしょう。

錯乱と意識不明

重病患者は錯乱を起こしやすくなります。錯乱は、薬や軽い感染症がきっかけで起こりますが、生活環境が変わっただけで起こる場合もあります。安心させたり、改めて事情を説明することで錯乱は軽減しますが、治療可能な原因を見つけるために医師に報告しましょう。錯乱がひどい場合は、軽い鎮静薬を服用させたり、介護人に常に付き添ってもらったりする必要があります。

錯乱した患者は、自分に死期が近づいていることがわかりません。死期が近づくと、錯乱した患者が明瞭な思考を一時的に取り戻すことがあります。こうした出来事は家族にとっては大変意味深いものですが、病状が改善したという誤解を生むことがあります。患者の家族はこうした出来事に備えておくべきですが、過度の期待はしない方がいいでしょう。

死期が近づいた患者の約半数は、最後の数日間のほとんどを意識不明のまま過ごします。たとえ意識不明でも話が聞こえると家族が信じるのなら、患者が聞いているつもりで、お別れを言うのもいいでしょう。意識不明のまま永遠の眠りにつくのは、穏やかな死に方といえます。やるべきことはすべてやり終え、患者も家族も心が安らかならなおさらです。

身体障害

命にかかわる病気は、多くの場合、進行性の身体障害を伴います。患者は次第に、家やアパートの手入れ、食事の支度、家計の処理、歩行、自分の身支度などができなくなります。終末期患者のほとんどは、死ぬ前の数週間は介助が必要になります。こうした身体障害に対しては、車いすでも出入りしやすく、介護する家族に近い家を選ぶなどして、先手を打っておきましょう。作業療法や理学療法、在宅看護などのサービスを利用すれば、障害が進行しても自宅に残れるでしょう。

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