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薬ができるまで

現在使用されている薬の多くは、動物実験と人間での臨床試験から発見されたものです。一方、現在開発中の薬の多くは、特定の病気の改善を目的として設計されています。病気が引き起こす異常な生化学的反応や細胞の変化が突き止められたため、これらの異常だけを阻害したり修正する化合物を設計できるようになりました。有望な化合物が見つかると、通常はその構造を何度も修正しながら最適化を図ります。目標とする部位をうまく狙えるか(選択性)、その部位にうまく付き続けるか(親和性)、効き目の強さ(効力)、その結果としての有効性と安全性を最適化していきます。その化合物の腸壁からの吸収性や、体内組織や体液中での安定性など、他の因子も考慮されます。これらの因子には、体が薬に及ぼす作用(薬物動態)(薬の投与法と体内での動き: はじめにを参照)と、薬が体に及ぼす作用(薬力学)(生体に対する薬の作用: はじめにを参照)があります。

薬は標的部位に対して高度に選択的であるのが理想です。薬が体の他の組織にはほとんど作用しなければ、副作用が最小限ですむことになります(薬による有害反応: はじめにを参照)。また、薬は非常に効き目が強く有効であるべきで、そうすれば治療が難しい病気にも少量を投与するだけですみます。薬は口から服用して効果があるものが望ましく(投与が容易)、これには消化管からよく吸収され、体内組織と体液中で適度に安定している必要があり、さらに1日1回の投与ですめば理想的です。

薬の標準投与量や平均投与量は開発中に決まりますが、薬に対する反応のしかたは人それぞれです。年齢(高齢者の服薬上の注意を参照)、体重、遺伝子構成、他の病気の有無といったさまざまな要因が、薬の反応に影響するからです(薬に対する反応に影響する因子: はじめにを参照)。医師が特定の患者に対する投与量を決めるときは、これらの因子を考慮しなければなりません。

研究室から医療の現場へ

病気の治療に役立ちそうな薬が発見されたり設計されると、まず研究室で動物を使った実験などが行われます(前臨床試験)。前臨床試験では薬がどのように作用してどのような効果をもたらすのか、生殖能力や子孫の健康に影響を及ぼすような毒性がないかといった情報を集めます。多くの薬は毒性が強すぎたり有効性がないことが明らかになり、この段階で失格になります。

前臨床試験の終了後も有望な薬については、治験薬として政府機関に申請を行います(訳注:米国では食品医薬品局[FDA]、日本では厚生労働省)。治験薬は人間での臨床試験でさらに多くの試験を受けます。臨床試験は薬の有効性を明らかにするだけでなく、副作用の種類や発生頻度、これらの副作用を起こしやすくさせる要因(年齢、性、他の疾患、他の薬物の使用など)の解明も重視しています。

これらの試験で薬の有効性と安全性が証明されると、新薬としての申請(動物と人間での試験データ、薬の製造工程、添付文書情報、製品ラベルなど)を政府機関に提出します。政府機関ではすべての情報を審査し、その薬が有効で安全な製品として販売できるかどうかを決定します。承認された薬は患者の治療に使えるようになります。米国の場合、このプロセス全体で約10年間かかります。平均的な目安としては、研究室で検討した4000種類の化合物のうち約5種類だけが人間での試験を受ける段階へと進み、人間で試験された薬5種類のうち承認されて販売できるようになるのはわずか1種類程度です。

新薬が承認されると、メーカーは新薬の使用をモニタリングし、販売前には見つけられなかった新たな副作用があれば、すぐに政府機関に報告しなければなりません。医師や薬剤師は、新薬のモニタリングに参加するように奨励されています。こうしたモニタリングが重要な理由は、薬を販売する前はたとえ包括的な試験を行ったとしても、比較的よくみられる副作用(1000回に1回程度起こるもの)しか検出できないからです。1万回に1回起こるような(あるいはもっと頻度が低い)重大な副作用は、多くの人々が薬を使うようになるとき、つまり販売後にしか発見できません。薬が重大な副作用を引き起こす証拠が新たに見つかった場合には、承認が取り消されることがあります。たとえば、ダイエット補助薬のフェンフルラミンは、服用した一部の人に重度の心臓障害が生じたことから販売中止になりました。

被験者群

目的

期間

前臨床試験 研究室環境(細胞培養や動物など) 新薬の化学的および物理的特性を解明して、生体に対する新薬の安全性と有効性を評価すること 2〜6.5年
臨床試験      
第 I 相
健康なボランティア10〜100人 新薬のさまざまな投与量で得られた基本的な安全性と血中濃度を確立すること 1.5年
第 II 相
新薬が治療の対象にしている病気の患者50〜500人 新薬の有効性と用量範囲の確立、薬物動態の解明、副作用の特定をそれぞれ行うこと 2年
第 III 相
新薬が治療の対象にしている病気の患者300〜3万人 最も効果的な投与方法を確立し、新薬の有効性と副作用についてさらに詳細な情報を得ること 3.5年
FDA審査 前臨床試験および臨床試験から得られた全データ 新薬の有効性と安全性が立証されたかどうか明らかにすること 0.5〜1年
市販後調査 新薬の全服用者 第I相、第II相、第III相では見つからなかった問題点、たとえば長期間の使用後に起こる副作用やきわめてまれな副作用などを確認すること 市販後継続的に実施
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