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拡張型心筋症

拡張型(うっ血性)心筋症とは、心室が拡張しても体に必要な量の血液を送り出すことができず、結果として心不全を起こす1群の心筋障害です。

拡張型心筋症は年齢を問わず起こりますが、特に20〜60歳の人に多くみられます。約10%は65歳以上の人にみられます。この病気は女性よりも男性で3倍、白人よりも黒人で3倍も多くみられます。毎年10万人あたり5〜8人が拡張型心筋症を発症します。

米国で、確定できた拡張型心筋症の原因として最も多いのは、広範囲にわたる冠動脈疾患です。このような冠動脈疾患では心筋への血液の供給が不足し、心筋は永久的な損傷を受け壊死します。結果として、心臓は力強く拍動できなくなります。壊死した心筋は線維化(瘢痕[はんこん]化)した組織に置き換わります。残った損傷していない心筋は失われた機能を補おうと、伸びて厚くなります。心筋は伸びれば伸びるほど、より力強く収縮しますが、これには上限があります。限界を超えると伸長や肥厚では十分に機能を補うことができなくなり、拡張型心筋症となって心不全を起こします。

ウイルス感染症による急性の心筋炎が拡張型心筋症の原因となることがあります。このような心筋症はウイルス性心筋症と呼ばれます。米国では、コクサッキーB群ウイルス感染症がウイルス性心筋症を起こす最大の原因となっています。ウイルス感染により心筋が弱くなります。冠動脈疾患でみられるように、弱くなった心筋はそれを補うために伸張し、結果的に拡張型心筋症となって心不全を起こします。ときには、細菌感染症によって拡張型心筋症が生じることもあります。

拡張型心筋症の原因にはほかに、長期間あまりよく調節されていない糖尿病や甲状腺疾患などの特定の慢性的な内分泌障害があります。また、特にアルコール(摂取量が多く、栄養不良でもある場合)、コカイン、抗うつ薬、一部の化学療法薬などの特定の薬物の使用によって拡張型心筋症が生じることもあります。まれに、妊娠や関節リウマチなどの結合組織障害によって拡張型心筋症が生じることもあります。

症状

拡張型心筋症でよくみられる最初の症状は、運動時の息切れと疲れやすさです。これらの症状は心拍出力が弱まって、心不全(心不全を参照)になると生じます。感染症による心筋症では最初、急な発熱やインフルエンザ様症状がみられることがあります。拡張型心筋症の原因が何であれ、最終的には心拍が速まり、血圧が正常または低値となって脚や腹部に体液が貯留し、肺が体液で満たされます。

心臓が拡張すると、心臓弁がきちんと閉じなくなります。左心房から左心室内へ向けて開く僧帽弁と、右心房から右心室内へ向けて開く三尖弁で漏れが生じます。漏れによって心雑音が生じ、聴診器で聞くことができます。心筋が損傷して伸張するため、不整脈が生じる場合があります。弁の漏れと不整脈によって、心機能はさらに損なわれます。

拡張した心臓に血液がたまると、心室の壁に血液のかたまりが形成される危険性が高くなります。血液のかたまりが砕けて塞栓となると、心臓から全身のどこかの血管に移行し、それを閉塞させます。脳に至る血管が詰まると、脳卒中が起こります。

診断

診断は症状と診察の結果に基づいてなされます。心電図検査(ECG)(心血管系の病気の症状と診断: 心電図検査を参照) は心臓の電気的活動の異常を検出できます。しかし、こうした異常だけでは診断を確定するのに不十分です。超音波を使って心臓の画像を作成する心臓超音波検査(心エコー)(心血管系の病気の症状と診断: 心臓超音波検査とその他の超音波検査を参照)は、心臓の大きさと機能を示せる最も有用な検査法です。MRI検査(心血管系の病気の症状と診断: MRI検査を参照)は心臓の非常に詳細な画像を作成できるため、診断を確定するのに役立ちます。

診断に疑問が残る場合は、侵襲性の高い方法ですが、心機能について詳しい情報が得られ、診断の確定に役立つ心臓カテーテル検査(心血管系の病気の症状と診断: 心臓カテーテル検査と冠動脈造影検査を参照)を行います。この検査では心臓の内部にまでカテーテルを挿入するため、心室内圧が測定できます。さらに、検査中に顕微鏡検査(生検)用の組織標本を採取することもできます。生検によってときには、発症したばかりのウイルス感染症といった拡張型心筋症を起こす何らかの障害に特徴的な顕微鏡的な変化を確認でき、診断を確定できることがあります。しかし、たいてい生検の結果は診断に役立つほど特徴的なものではありません。

経過の見通しと治療

拡張型心筋症では、約70%の患者が症状の出現から5年以内に死亡します。心臓の壁が薄くなるにつれて、さらに心機能が衰えるにつれて、経過の見通し(予後)は悪くなります。不整脈も経過を悪化させます。全体的にみると、男性の生存期間は女性の半分にすぎず、黒人の生存期間は白人の半分にすぎません。死亡の約50%は突然死で、おそらく不整脈によるものと考えられています。

禁酒によってアルコール依存を治したり、抗生物質の使用で細菌感染症を治療するなど、心筋症の原因を取り除くことで寿命を延ばすことができます。

冠動脈疾患がある場合は、その治療も必要です。冠動脈疾患の治療には、硝酸薬、ベータ遮断薬(ベータ‐ブロッカー)、カルシウム拮抗薬( 冠動脈疾患の治療に使われる主な薬を参照)などが使われますが、カルシウム拮抗薬は心臓の収縮力を弱め、拡張型心筋症に伴う心不全を悪化させる可能性があります。十分な休養をとり、ストレスを避けることも心臓の緊張を減らすのに役立ちます。

不整脈を防ぐために抗不整脈薬(不整脈の主な治療薬を参照)を投与する場合があります。ほとんどの抗不整脈薬は低用量で処方されます。用量を少しずつ増やしていくのは、抗不整脈薬には心臓の収縮力を低下させる作用があるため、高用量で処方すると心不全が悪化する可能性があるためです。

心不全は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、ベータ遮断薬、ジゴキシン、利尿薬(心不全の治療に使われる主な薬を参照)などで治療します。しかし、拡張型心筋症の原因を特定して治療しない限り、心不全は結局のところ致死的なものです。経過が悪いことが、拡張型心筋症に心臓移植(移植: 心臓移植を参照)を行う最大の理由です。心臓移植が成功しても、合併症や制限があります。

拡張型心筋症の原因にかかわらず、心室の壁に血液のかたまりができるのを防ぐためにワルファリンなどの抗凝固薬を投与します。

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