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肥大型心筋症

肥大型心筋症とは、心臓への負担が増えていないにもかかわらず、心室の壁が厚く(肥厚)なり、かたくなる1群の心疾患です。

一般的に、肥大型心筋症の発症率に男女差はありませんが、女性の方が男性よりも長生きすることから、高齢者では女性に多くみられます。高齢者の約4%に肥大型心筋症が起こります。

肥大型心筋症には、出生時から存在する先天的なものと、後に生じる後天的なものがあります。先天的な肥大型心筋症は、親から受け継いだ遺伝子欠損が原因です。後天的な肥大型心筋症は、良性の下垂体腫瘍(しゅよう)などによって成長ホルモンが過剰分泌される先端巨大症や、ホルモンのエピネフリンが過剰分泌される褐色細胞腫などの病気によって起こる場合があります。遺伝性疾患の神経線維腫症も肥大型心筋症が起こる原因となります。

症状と診断

肥大型心筋症の症状には、失神、胸痛、息切れ、不整脈による不規則な心拍の自覚(動悸[どうき])などがあります。失神は普通、運動後に起こりますが、これは心臓が脳へ十分な血液を供給できなくなるためです。たとえば、不整脈やかたく肥厚した心室のために、心臓に血液が十分に満たされず心臓からの血流が妨げられると、十分な量の血液が供給できなくなります。運動後に失神が起こりやすいのは、運動中は心拍数が増えてより多くの血液が送り出され、ある程度は血流の障害を抑えているためです。運動後は、心拍数が低下して送り出される血液の量が減少し、血流障害が生じます。

肺の内部に体液がたまると息切れが起こります。体液がたまるのは、肥大してかたくなった心臓が肺からの血液を十分に受け取れなくなり、肺静脈内に血液がずっと滞留するためです。

心室の壁が厚くなると、左心房から左心室内へ開く僧帽弁が正常に閉じなくなり、少量の漏れを生じることがあります。この変化は肥大型心筋症の患者が感染性心内膜炎(感染性心内膜炎を参照)を発症するリスクを高めます。一部の人では、肥厚した心筋が心臓から出る血流を大動脈弁の手前で遮断します。この心筋症を閉塞性肥大型心筋症と呼びます。

肥大型心筋症は普通、診察の結果によって検査前に予測できます。たとえば、聴診器を通して特徴的な心音が聞こえます。診断を確定するには心エコー(心血管系の病気の症状と診断: 心臓超音波検査とその他の超音波検査を参照)が最適です。心電図検査(心血管系の病気の症状と診断: 心電図検査を参照)や胸部X線検査も診断に役立ちます。侵襲的な心臓カテーテル検査は、手術が考慮されている場合にかぎり、心室内圧を測るために行います。

経過の見通しと治療

毎年肥大型心筋症の患者の約4%が死亡します。死亡は普通、突然死でおそらく不整脈によるものと考えられています。慢性心不全による死亡はあまりみられません。遺伝によって肥大型心筋症を発症したと知った人の中には、家族計画を立てるときに遺伝カウンセリングを望む人もいます。

先端巨大症が原因の場合は、成長ホルモンの分泌を抑えるために合成ホルモンのオクトレオチドを投与します。褐色細胞腫が原因の場合は、エピネフリンの作用を抑えるためにアルファ遮断薬かベータ遮断薬(主な降圧薬を参照)を投与します。また、ホルモンを産生する腫瘍を手術で取り除いたり、放射線療法で破壊することもあります。

肥大型心筋症の治療は主に、拡張期に心臓が血液で満たされることに対する心臓の抵抗を減らすことを目的としています。主な治療法は、ベータ遮断薬およびカルシウム拮抗薬を単独あるいは併用で投与することです。これらの薬はともに心筋の収縮力をある程度弱めるため、心臓の収縮は弱くなります。その結果、心臓はより多くの血液で満たせるようになり、肥厚した心筋が血流を遮断していた場合は、心臓からの血液の流出が楽になります。また、ベータ遮断薬と一部のカルシウム拮抗薬は心拍を遅くするため、心臓に血液を満たせる時間が長くなります。時には、心臓の収縮力を弱めるジソピラミドを使用する場合があります。

肥厚した心筋の一部を切除する手術(心室筋切除術)によって心臓からの血流を改善できますが、この手術は薬物療法では症状が改善しなかった場合にのみ行われます。手術によって症状が緩和しても、死亡するリスクは減少しません。

歯の治療や手術を行う前には、感染性心内膜炎のリスクを減らすために抗生物質を投与します(予防的な抗生物質の投与を必要とする処置を参照)。

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