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はじめに

腫瘍(しゅよう)とは、癌性(悪性)であれ、非癌性(良性)であれ、異常な増殖物のことをいいます。心臓から増殖が始まった腫瘍は、原発性心臓腫瘍と呼ばれます。この腫瘍は、癌性のものも非癌性のものも、心臓組織のあらゆる部位から発生する可能性があります。原発性心臓腫瘍は、2000人に1人発症するかどうかという程度のまれな病気です。成人において最も多くみられる非癌性の原発性心臓腫瘍は粘液腫で、全体の約50%を占めます。乳児や小児において、最も多くみられる非癌性の原発性心臓腫瘍は横紋筋腫で、全体の約40%を占めます。次いで、乳児や小児に多くみられる非癌性の原発性心臓腫瘍は線維腫で、これら以外の腫瘍は、きわめてまれです。

粘液腫は、心臓壁の内層(内膜)にある胚細胞から発生し、左心房内で増殖します。群発性でみられる横紋筋腫は、心筋細胞から直接的に発生し、心臓壁に付着して増殖します。横紋筋腫は、乳児や小児によくみられますが、結節硬化症と呼ばれるまれな病気の一部として発生することがあります。単発性でみられる線維腫は、心臓の線維性組織細胞から発生し、心臓弁上で増殖します。

体のほかの部分、主に肺、乳房、血液、皮膚から増殖が始まり、心臓へと広がった(転移した)腫瘍は続発性腫瘍と呼ばれ、常に癌性です。続発性心臓腫瘍は、原発性心臓腫瘍の30〜40倍多くみられますが、それでもあまり頻繁にみられる病気ではありません。最も発生率の高い癌である肺癌や乳癌の患者で約10%、徐々に発生率が高くなっている悪性黒色腫(メラノーマ)の患者では約75%に心臓への転移がみられます。

症状

心臓腫瘍では、症状がみられない場合もあれば、軽度の症状がみられる場合もあり、突然発症する他の心臓病と共通するような致死的な心機能不全がみられる場合もあります。たとえば、腫瘍は、心不全、不整脈、心臓を覆う心膜内への出血による血圧低下などを引き起こします。粘液腫や線維腫のように、心臓弁の上部やその近くに発生する腫瘍がある場合は、その約半数で心雑音が聞かれますが、これは血液が弁を正常に通過できなくなるためです。非癌性腫瘍でも、癌性腫瘍と同じく心機能を低下させるものは致死的です。

心臓腫瘍、特に粘液腫は退縮して砕かれ、小片となり血流に乗って移動し、塞栓となる可能性があります。塞栓が細動脈に詰まると血流を遮断します。さらに、粘液腫などの腫瘍の表面で形成された血液のかたまり(血栓)がはがれて塞栓となり、動脈を閉塞させる可能性もあります。塞栓による症状は、閉塞した動脈がどの組織あるいはどの臓器に血液を供給しているかによって異なります。

診断

原発性心臓腫瘍は、比較的まれな病気で、さらにほかの多くの病気と症状が似ていることから、診断が困難です。心雑音、不整脈、説明のつかない心不全症状、原因不明の発熱(粘液腫による可能性がある)のある患者では、原発性心臓腫瘍を疑います。続発性心臓腫瘍は、体のほかの部位に癌がある人で、心機能不全の症状がみられる場合に疑います。

腫瘍が疑われる場合、心臓超音波検査(心エコー)(心血管系の病気の症状と診断: 心臓超音波検査とその他の超音波検査を参照)を行って診断を確定します。この検査では、超音波を出すプローブを胸にあてて、心臓の構造を描出します。別の角度からみた心臓の画像が必要な場合は、プローブをのどから食道に入れ、心臓の真後ろから信号を記録することができます。この検査法は経食道心エコー検査と呼ばれています。CT検査(心血管系の病気の症状と診断: CT検査を参照)やMRI検査(心血管系の病気の症状と診断: MRI検査を参照) ではより詳しい情報を得ることができます。冠動脈造影(心血管系の病気の症状と診断: 冠動脈造影検査を参照)では、X線画像上に心臓腫瘍の外形が得られますが、この検査が必要になることはまれです。

心臓の右側部分に腫瘍が発見された場合は、顕微鏡検査のために小さな組織標本を採取します(生検)。組織は多くの場合、脚の静脈から心臓に挿入したカテーテルで採取し、この方法を心臓カテーテル法(心血管系の病気の症状と診断: 心臓カテーテル検査と冠動脈造影検査を参照)と呼びます。この検査は、腫瘍の種類を確認して適切な治療法を選ぶのに役立ちます。ただし、心臓の左側部分に発生した腫瘍の生検は、有益性よりもリスクが大きいため、実施されることはまれです。

治療

単発性の小さな非癌性原発性心臓腫瘍は、手術で切除することができ、普通は治癒します。大きな非癌性原発性心臓腫瘍によって心臓を通過する血流が著しく減少している場合は、腫瘍の心臓壁内で増殖していない一部を切除することで、心機能が改善することがあります。しかし、心臓壁の大部分が腫瘍に侵されている場合は、手術を行うことはできません。

非癌性横紋筋腫のある新生児の約半数では、腫瘍は治療しなくても小さくなり、残りの半数でも、腫瘍はそれ以上大きくなることはないので、治療は必要ありません。乳児や小児の線維腫は、腫瘍が心室と心室の間の壁(中隔)まで及んでいなければ、完全に切除できます。腫瘍が中隔に及んでいる場合は、心臓の電気刺激伝導系も侵されており、手術はできません。このような腫瘍がみられる小児は、普通は幼いうちに不整脈のために死亡します。線維腫が大きくて、血流を遮断したり、周辺組織にまで広がっている場合は、心臓移植が必要です。

原発性癌性心臓腫瘍は、手術による切除が不可能で、普通は致死的です。

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