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狭心症

狭心症とは、心臓の筋肉へ供給される酸素が不足するために起こる、一時的な胸の痛みや圧迫感のことです

米国では650万人近くが狭心症にかかっており、毎年約35万人が新たに狭心症と診断されています。狭心症の発症年齢は、男性よりも女性の方が高い傾向にあります。狭心症は平均すると、白人女性の3.9%、黒人女性の6.2%、ヒスパニック系女性の5.5%、白人男性の2.6%、黒人男性の3.1%、ヒスパニック系男性の4.1%でみられます。

アテローム(脂肪性の沈着物)あるいは何らかの異常によって動脈が狭くなると、血流が阻害されて心筋に十分な量の血液と酸素が供給されなくなります。心臓への血液供給が不足すると(虚血)、狭心症が起こります。初めは運動をしているときや感情的な緊張があるときに起こりますが、これは心臓が普段より激しく働き、より多くの酸素を必要とするためです。動脈に狭窄が起こって血流が減少すると、こうした酸素の需要量の増加に応じることができません。動脈のかなりの部分(普通は70%以上)がふさがると、心臓の酸素需要量が最も少ない安静時でさえも狭心症が起こるようになります。

虚血がある人は、すべて狭心症を起こすわけではありません。狭心症を伴わない虚血は、無症候性虚血と呼ばれています。どうして虚血が無症状で起こるのかはわかっておらず、一部にはその重要性を疑う議論もあります。しかし、ほとんどの専門家は、無症候性の虚血も狭心症と同じくらいの重症度だと考えています。

夜間狭心症とは、夜間、睡眠中に起こる狭心症のことです。

安静時狭心症とは、夜間に限らず横になっているときに起こる狭心症のことで、明らかな原因はありません。体を横にすると重力によって体液が移動するため心臓の負荷が大きくなり、その結果、狭心症が起こります。

異型狭心症は、心臓表面の太い冠動脈の1本がけいれんするために起こります。異型と呼ばれるのは運動中ではなく安静時に痛むことと、発作中は心電図に特徴的な変化がみられるためです。

不安定狭心症とは、症状のパターンが変化する狭心症のことです。狭心症の特徴からみて、症状が安定していた患者に、痛みがひどくなる、発作回数が増える、あまり運動していないあるいは安静にしているのに発作が起こる、などの変化が現れた場合は危険です。普通はこのような変化は、アテロームの破裂や血栓の形成により冠動脈の狭窄がひどくなり、冠動脈疾患が急速に悪化していることを示すものだからです。心臓発作を起こす危険性が高くなっているため、不安定狭心症は緊急に治療する必要があります。

原因

狭心症の原因は冠動脈疾患です。

突然、一時的に起こる動脈の締めつけ(動脈れん縮)によって、血液と酸素の供給量が急激に減少すると、狭心症が起こります。重症の貧血も狭心症の原因となります。貧血では、酸素を運ぶ分子であるヘモグロビンを含む赤血球の数やヘモグロビンそのものの量が正常以下になります。その結果として、心筋へ供給される酸素の量が減少します。

シンドロームXとは、大きな冠動脈のれん縮も、明らかな閉塞もないのに起こる狭心症のことです。一部の患者では、もっと細い冠動脈が一時的に狭窄を起こしたことが原因です。一時的な狭窄が起こる理由はよくわかっていませんが、心臓内の化学物質の不均衡、あるいは細動脈の機能不全による異常がかかわっています。この症候群は、他の病気によるシンドロームX(代謝性シンドロームX、インスリン抵抗性症候群(さまざまな病気を引き起こす代謝性症候群を参照))と区別するために、心臓シンドロームXと呼ばれることもあります。

狭心症のまれな原因には、重度の高血圧、大動脈弁狭窄、大動脈弁逆流(大動脈弁から血液が漏れる)、肥大型心筋症(心室の壁が肥厚する)、特に閉塞性肥大型心筋症(心室を隔てている中隔が肥厚する病気)などがあります。これらの病気では心臓にかかる負荷が増えるために、心筋はより多くの酸素を必要とします。心筋での酸素の需要量が供給量を上回ると、狭心症が起こります。冠動脈の入口は大動脈弁のすぐ後ろにあるため、大動脈弁に異常が起こると、冠動脈への血流が減少します。

症状

狭心症は普通、胸骨下の圧迫や痛みとして感じられます。また、痛みは、肩から腕の内側、背中、のど、あご、歯へも広がることがあります。多くの人がこの感覚を、痛みというよりは不快感や重圧感と表現します。

高齢者では、症状の現れ方が異なるために診断を誤りやすくなります。たとえば、痛みは胸骨下よりも背中や肩に出ることが多いため、関節炎のせいにされることがあります。また、特に食後には消化を助けるために多くの血液が必要となり、胃のあたりが痛むことがあります。このような痛みは、消化不良や胃潰瘍と間違われることもあります。また、錯乱や痴呆がみられる高齢者では痛みがあってもそれを伝えることができません。

女性の場合も症状の現れ方が異なります。女性はあまり一般的ではないタイプの胸の不快感として感じることが多いようです。

典型的な狭心症は、運動によって引き起こされ、数分以上続くことはなく、安静にすると治まります。中には特定の運動量を超えると発作が起こることを予測できる人もいますが、他の人では発作は予期せず突然に起こります。狭心症は、しばしば食後に運動すると悪化します。寒さも悪化の原因となり、風の強い日の散歩や暖かい部屋から寒い外気への移動によって狭心症が起こることもあります。精神的ストレスによって狭心症が起きたり悪化したりすることもあります。安静時の強い感情の動きや睡眠時の悪夢も狭心症の原因となることがあります。

診断

狭心症は主に本人の症状の説明に基づいて診断します。診察や心電図検査(ECG)(心血管系の病気の症状と診断: 心電図検査を参照)だけでは狭心症はほとんど検出できません。それは、発作と発作の間で異常がない場合であっても、発作中でも、冠動脈疾患が広範囲になった患者でさえも同様です。発作中は心拍数がわずかに増えて血圧が上がるため、聴診器で心拍の変化を確認できることがあります。心電図は心臓の電気的活動の変化を検出します。

症状が典型的な場合は、医師は容易に診断できます。痛みの種類、痛む場所、運動・食事・気候との関連性などが診断の参考になります。冠動脈疾患の危険因子の存在も診断を確定するのに役立ちます。運動中に胸が痛む場合は、医師は試験的にニトログリセリン(血管拡張薬)を舌下投与します。その痛みが狭心症によるものであれば3分足らずで軽くなります。

以下の方法は、心筋への血液供給がどの程度不足しているかを調べ、冠動脈疾患であるかどうか、どの程度進行しているかを評価するのに役立ちます。

運動負荷試験(心血管系の病気の症状と診断: 運動負荷試験を参照)では、トレッドミルの上を歩いているとき、あるいは自転車式エルゴメーターをこいでいるときの心電図を記録します。この検査法は冠動脈造影検査や冠動脈バイパス術が必要かどうかを判断するのに役立ちます。運動できない人の場合は、心臓にかかる負荷を上げる薬を注射して、心電図を記録します。

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運動負荷試験

運動負荷試験

核医学画像検査(放射性核種イメージング)(心血管系の病気の症状と診断: 核医学画像検査を参照)では、微量の放射性物質を静脈に注射します。この検査では虚血を起こしている部位とその範囲、および心筋に供給されている血液の量を確認できます。この検査は運動負荷試験と組み合わせて行うこともあります。

心臓超音波検査(心エコー)(心血管系の病気の症状と診断: 心臓超音波検査とその他の超音波検査を参照)では、超音波で心臓の画像を描出します。この検査では、心臓の大きさ、心筋の動き、心臓弁を通過する血流、弁の機能を確認できます。この検査は安静時と運動時に行います。虚血がある場合には、左心室のポンプ機能に異常がみられます。

冠動脈造影検査(心血管系の病気の症状と診断: 冠動脈造影検査を参照)では、放射線を通さない造影剤を注射した後に動脈のX線撮影を行います。冠動脈造影検査は冠動脈疾患を診断するのに最も正確な検査であり、診断の確定ができない場合に行います。この検査は、冠動脈バイパス術と血管形成術のどちらが適切であるかを決定するのに役立ちます。血管造影検査は血管がけいれんを起こすかどうかも確認できるため、検査中にけいれんがみられない場合はけいれんを起こす薬を使用することもあります。

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冠動脈造影写真

冠動脈造影写真

狭心症の典型的な症状があり、運動負荷試験で異常がみられる場合でも、冠動脈造影検査で冠動脈疾患の有無を確定できない人もいます。このような人の中にはシンドロームXがみられる人もいますが、ほとんどは心臓の障害による症状ではありません。

ホルター心電計(ホルター心電計による心電図の連続記録を参照)による心電図の連続記録では、症候性あるいは無症候性虚血と安静時に起きる異型狭心症を発見できます。

経過の見通し

狭心症の治療成績を悪くする主な要因には加齢、広範囲に及ぶ冠動脈疾患、糖尿病、喫煙、激痛などがありますが、最も重要なのは心臓が血液を送り出すポンプ機能の低下です。たとえば、冠動脈疾患が広がるほど、あるいは冠動脈の閉塞が大きいほど経過の見通し(予後)は悪くなります。心臓のポンプ機能が正常な安定狭心症では、経過は驚くほど良好です。ポンプ機能が低下すると、予後は劇的に悪化します。シンドロームXの人の見通しは、冠動脈疾患がない人のそれと変わりません。

狭心症以外に危険因子がない人の死亡率は毎年約1.4%です。高血圧、心電図の異常、心臓発作の既往歴などの危険因子がある人の死亡率はもっと高くなります。

治療

治療は冠動脈疾患の進行を遅くすること、あるいは危険因子による影響を抑えることから始めます。高血圧や高コレステロール血症などの危険因子はすぐに治療します。禁煙は不可欠です。脂肪が少ない、いろいろな種類の食品を食べること、そして、ほとんどの人には運動が勧められます。必要なら減量も指導されます。

狭心症の治療は、症状の安定度と重症度によってある程度は決まります。症状が軽度から中等度で安定している場合は危険因子を改善し、特定の薬で治療するのが最も有効な方法です。急速に症状が悪化している場合は、普通はすぐに入院する必要があります。危険因子を改善するために食生活を含む生活習慣を変え、薬で治療しても症状が治まらない場合は、血管造影検査を行って、冠動脈バイパス術や血管形成術が必要かどうか、どちらがより適しているかを調べます。しかし、手術は緊急事態に対処するための機械的な手段にすぎず、原因となっている病気を治すものではありません。総合的な治療結果を改善するには、危険因子の修復も必要です。たとえば、薬物療法で可能な限りLDLコレステロール値を低下させると、6カ月以上も血管形成術と同じ程度に狭心症を軽減する効果が得られます。

安定狭心症の治療は、虚血を予防あるいは軽減し、症状を最小限に抑えることを目的とします。ベータ遮断薬(ベータ‐ブロッカー)、硝酸薬、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、抗血小板薬の5種類が用いられます。

シンドロームXの患者は、普通、硝酸薬かベータ遮断薬を投与して症状を軽減させます。

不安定狭心症の人は、普通、入院した方がよいため、薬の効果を注意深く観察し、必要であれば他の治療法を適用します。これらの患者には、血液の凝固傾向を抑える薬が投与されます。こうした薬には、ヘパリン(静脈内投与する抗凝固薬)やアスピリン(抗血小板薬)があります。アスピリンアレルギーの患者には、チクロピジンかクロピドグレルを代用します。また、別の種類の抗血小板薬である糖タンパクIIb/IIIa阻害薬、たとえばアブシキシマブやチロフィバンを投与することもあります。ベータ遮断薬や静脈注射用のニトログリセリンは心臓の負荷を減らすために投与されます。薬物療法が効かない場合は、可能なら血管形成術か冠動脈バイパス術に先立って冠動脈造影を行います。医師は、病気の重症度と患者の特性(年齢など)を含むさまざまな要因を考慮した上で、血管形成術を行うべきか冠動脈バイパス術を行うべきかを決定します。

薬物療法

ベータ遮断薬は、心臓などの臓器に対するエピネフリン(アドレナリン)とノルエピネフリン(ノルアドレナリン)の作用を阻害します。これらのホルモンは、心臓を刺激して強く速く拍動させ、ほとんどの動脈を収縮させるため、結果として血圧が上昇します(高血圧: 薬物療法を参照)。そのため、ベータ遮断薬は安静時の心拍数と血圧を下げ、運動中の心拍数の増加と血圧の上昇を抑えることによって酸素需要量を減らす効果があります。また、心臓発作や突然死のリスクを減らす効果もあるため、冠動脈疾患の人の長期成績を改善します。

ニトログリセリンなどの硝酸薬には、血管を拡張させる作用があります。短時間作用型でも長時間作用型でも使用できます。短時間作用型の硝酸薬であるニトログリセリンは、狭心症の発作を1〜3分で緩和し、その効果は30分間続きます。ニトログリセリンには舌下投与用の錠剤と、口から吸入するスプレーがあります。舌下錠は歯ぐきのわきに入れることもあります。慢性の安定狭心症のある人はニトログリセリンの錠剤かスプレーをいつも携帯する必要があります。狭心症を誘発する運動強度に達する前に、ニトログリセリンを服用するのが有効です。

イソソルビドなどの長時間作用型硝酸薬は1日に1〜4回服用します。数時間以上にわたって薬が皮膚から吸収される、硝酸薬の皮膚用パッチや塗り薬も有効です。長時間作用型の硝酸薬を定期的に服用すると効かなくなる可能性があります。多くの専門家は、発作が起こらない限り普通は夜間に、毎日8〜12時間は薬を服用しないよう勧めています。この方法で、長期にわたって薬の有効性を維持できます。ベータ遮断薬とは異なり、硝酸薬は心臓発作や突然死のリスクを減らしませんが、冠動脈疾患のある人では症状を大幅に軽減できます。

カルシウム拮抗薬は、血管の狭窄を防ぐ作用と、冠動脈のれん縮を阻止する作用があります。これらは異型狭心症の治療にも有効です。カルシウム拮抗薬はどれも血圧を低下させます。そのうちのいくつか、たとえばベラパミルやジルチアゼムには心拍数を減らす作用もあります。この作用は多くの人、特にベータ遮断薬を服用できない人に有用です。

ラミプリルなどのACE阻害薬は、狭心症も含めて冠動脈疾患がある患者に投与されます。これらの薬には心臓発作のリスクと冠動脈疾患による死亡リスクを減少させる効果があります。

アスピリン、チクロピジン、クロピドグレルなどの抗血小板薬には、血小板の性状を変化させて血管壁に凝集させないようにする作用があります。血小板は血液中を循環し、血管が損傷を受けたときに血栓の凝集を促進しています。しかし、血小板が動脈壁のアテロームに集まってしまうと、血栓が動脈を狭くしたり閉塞して心臓発作を起こします。アスピリンには血小板を不可逆的に変性させる作用があるため、冠動脈疾患による死亡リスクを減少させます。医師は冠動脈疾患の患者に、小児用アスピリン1錠、成人用アスピリン半錠、あるいは成人用アスピリン1錠を毎日服用して、心臓発作のリスクを減らすことを推奨しています。アスピリンアレルギーのある人は、代わりにチクロピジンかクロピドグレルを服用します。狭心症の人には、出血性の病気など特に理由がない限り、抗血小板薬を投与します。

薬の種類

薬剤名

副作用

備考

抗凝固薬

 
  • エノキサパリン
  • ヘパリン
  • ヒルジン
  • ワルファリン
出血(特に、アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬など類似の作用のある薬と併用した場合) 血液が固まるのを防ぐ作用がある。不安定狭心症、心臓発作の治療に使用

抗血小板薬

 
  • アスピリン
  • クロピドグレル
  • チクロピジン

出血(特に、抗凝固薬など類似の作用のある薬と併用した場合)

アスピリンでは、胃痛

チクロピジンでは、そしてさらに少ないがクロピドグレルでも、軽度の白血球数の減少リスク

血小板の凝集と血栓の形成を防ぐ作用がある。心筋梗塞のリスクも減少する。安定狭心症、不安定狭心症、心臓発作の治療に使用。アスピリンは心臓発作が疑われたらできるだけ早く服用する必要がある。アスピリンアレルギーの患者は代わりにクロピドグレルかチクロピジンを服用する

糖タンパクIIb/IIIa阻害薬(抗血小板薬の1種)

 
  • アブシキシマブ
  • エプチフィバチド
  • チロフィバン
出血(特に、抗凝固薬や血栓溶解薬など類似の作用のある薬と併用した場合)、血小板数の減少 血小板の凝集と血栓の形成を防ぐ作用がある。不安定狭心症の治療、心臓発作後の経皮経管的冠動脈形成術(PTCA)で使用

ベータ遮断薬

 
  • アセブトロール
  • アテノロール
  • ベタキソロール
  • ビソプロロール
  • カルテオロール
  • メトプロロール
  • ナドロール
  • ペンブトロール
  • プロプラノロール
  • チモロール

気管支けいれん、徐脈(心拍数の異常な低下)、心不全、手足の冷え、不眠、疲労、息切れ、抑うつ、レイノー現象、鮮明な夢、幻覚、性機能不全

一部のベータ遮断薬で、中性脂肪値の上昇

心臓の負荷を減らし、心臓発作と突然死のリスクを減らす。安定狭心症、不安定狭心症、シンドロームX、心臓発作の治療に使用

カルシウム拮抗薬

 
  • アムロジピン
  • ジルチアゼム
  • フェロジピン
  • イスラジピン
  • ニカルジピン
  • ニフェジピン(徐放剤のみ)
  • ニソルジピン
  • ベラパミル

めまい、足首のむくみ(浮腫)、顔面紅潮、頭痛、胸やけ、歯ぐきの腫れ、不整脈

ベラパミルでは、便秘

短時間作用型のカルシウム拮抗薬には(長時間作用型にはない)、心筋梗塞による死亡リスク増大の可能性(特に、不安定狭心症の人、あるいは最近心筋梗塞を起こした人)

血管の狭窄を防ぎ、動脈れん縮を阻止する効果がある。ジルチアゼムとベラパミルは心拍数を減少させる。安定狭心症の治療に使用

硝酸薬

 
  • 硝酸イソソルビド
  • 一硝酸イソソルビド
  • ニトログリセリン
顔面紅潮、頭痛、一過性の頻脈

狭心症を軽減してその発作を予防し、心筋梗塞と突然死のリスクを減少させる効果がある(しかしリスクの減少効果はベータ遮断薬より少ない)。安定狭心症、不安定狭心症、シンドロームXの治療に使用

薬の効果を長期間維持するため、毎日8〜12時間は服用しない時間を設ける必要がある

オピオイド

  モルヒネ 起立性低血圧、便秘、吐き気、嘔吐、錯乱(特に高齢者) 心臓発作の患者で、他の種類の薬を使用しても痛みが続く場合、不安感と痛みを軽減するために使用

血栓溶解薬

 
  • アニストレプラーゼ
  • 遺伝子組み換えTPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)(アルテプラーゼ)
  • レテプラーゼ
  • ストレプトキナーゼ
  • テネクテプラーゼ
外傷後の出血、まれに脳内出血 血栓を溶かす。心臓発作の治療に使用

冠動脈形成術

血管形成術(経皮経管的冠動脈形成術:PTCA)は侵襲度が少ないため、冠動脈バイパス術よりも頻繁に行われています。しかし、冠動脈の病変の位置と範囲、カルシウムの蓄積量、その他の状態によっては血管形成術が適していないこともあります。医師は形成術が適する候補者を慎重に決定します。病変部がはっきり確認できる場合や重症の患者の場合は、血管造影をしながら血管形成術を行います。この手術には全身麻酔の必要はありません。

血管形成術の方法

血管形成術では、まず先端にバルーンのついたカテーテルを太い動脈(通常は大腿動脈)に挿入し、動脈の接続部から大動脈を通って冠動脈の狭窄部位あるいは閉塞部位まで進めます。次に、バルーンをふくらませてアテロームを動脈壁に押しつけ、動脈を開通させます。カテーテル先端のバルーンに折りたたんだステント(金属メッシュの筒)をかぶせて挿入する方法もよく行われます。この方法ではカテーテルをアテロームまで進め、バルーンをふくらませてステントを開きます。ステントが開いたらバルーンの空気を抜き、カテーテルを除去します。ステントはそのまま留置して動脈を広げておきます。

血管形成術を実施中の死亡率は1〜2%未満で、非致死性の心臓発作の発生率は3〜5%です。血管形成術の直後に冠動脈バイパス術が必要になる人は2〜4%です。

血管形成術では、まず太い末梢動脈から、普通は大腿動脈(太ももの動脈)に太い針を挿入します。その針を通して長いガイドワイヤを動脈に入れ、最終的には大動脈を通じて冠動脈の狭窄部位まで進めます。次に先端に小さな風船(バルーン)のついたカテーテルをガイドワイヤに沿って冠動脈の狭窄部位まで進め、そこでバルーンを数秒間ふくらませます。バルーンをふくらませてはしぼませる作業を数回繰り返します。

バルーンをふくらませるたびに狭窄した冠動脈の血流が一時的に遮断されるため、形成術の間は患者の状態を注意深く監視します。血流が遮断されることによって胸痛を起こし、心電図に電気的活動の異常がみられることもあります。バルーンがふくらむと動脈を狭くしているアテロームが圧迫されて動脈が広がります。血管形成術が成功すれば狭窄は大幅に軽減されます。80〜90%の人では狭窄した動脈が開通します。

形成術を受けた人の約20〜30%は術後6カ月以内に、しばしば数週間以内に、再び冠動脈の狭窄を起こします。2度目の血管形成術が実施され、長期にわたり冠動脈疾患をうまくコントロールできることもしばしばです。動脈を開通したままにしておくにはステント(金属メッシュの筒)を動脈内に挿入します。この処置で、同じ場所に再狭窄が起こるリスクが半減します。ステントは血管形成術を受けた人の60〜85%で適用されています。

血管形成術と薬物療法の結果を比較した研究はほとんどありません。血管形成術の成功率はバイパス術と同程度と考えられています。バイパス術と血管形成術とを比較した研究では、手術後の回復にかかる時間は血管形成術の方が短く、2年半にわたる研究期間中の死亡リスクおよび心臓発作の発症リスクは同程度でした。糖尿病の患者では、血管形成術よりもバイパス術の方が治療成績が良いようです。

冠動脈バイパス術

冠動脈バイパス術は単にバイパス術とも呼ばれ、狭心症と冠動脈疾患の患者にきわめて有効です。この手術により、運動量を増やし、症状を軽減させ、必要な薬の種類あるいは用量を減らすことができます。バイパス術が最も有益なのは、薬物療法が効かない重症な狭心症の人、心機能に異常がない人、心臓発作を起こしたことのない人、慢性閉塞性肺疾患などの手術によって悪化するような病気がない人などです。このような人では、緊急時以外のバイパス術による死亡率は1%未満で、手術中の心臓障害(心臓発作など)の発症率は5%未満です。患者の約85%は、手術後に症状が完全に治癒あるいは劇的に改善します。

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血管形成術を理解する

血管形成術を理解する
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冠動脈バイパス術:手術室

冠動脈バイパス術:手術室
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冠動脈バイパス術:手技

冠動脈バイパス術:手技

冠動脈バイパス術

冠動脈バイパス術

冠動脈バイパス術では、動脈あるいは静脈の一部を冠動脈につなぎ、新しい血流ルートを作ります。その結果、血液は冠動脈の狭窄部位や閉塞部位を迂回することになります。静脈よりも動脈が好んで使われますが、これは動脈の方が後に閉塞を起こす可能性が少ないためです。バイパス術の1つの方法は、2本ある内乳腺動脈の片方を切断し、その一方を閉塞部位を越えたところで冠動脈につなぎ、もう一方は結んでおきます。動脈が使えない場合や冠動脈に閉塞部位が複数ある場合は、鼠径部から足首に行く伏在静脈の一部を切り取って使用します。場合によっては、これら2つの方法を組み合わせて行うこともあります。

左心室が血液を送り出す機能が低下している人、以前の心臓発作のために心筋が損傷している人、その他の心血管障害のある人では手術に伴うリスクがいくぶん高くなります。しかし、これらの人でも手術が成功すれば、長期生存の期待度が改善します。

バイパス術では、体の他の部分の静脈や動脈を、冠動脈や大動脈(心臓からの血液を全身に運ぶ主要動脈)へ移植します。つまり、血流は狭窄部位や閉塞部位を飛び越えて迂回して流れるようになります。静脈は普通、脚から取ります。動脈は胸骨の下あるいは前腕の動脈を使用します。動脈の移植片が冠動脈疾患を起こすことはまれで、90%以上は移植後10年を経ても適切に機能します。しかし、静脈の移植片はアテロームのために徐々に狭窄し、5年後には3分の1以上が完全に閉塞してしまいます。

手術は、移植する血管の数によって2〜4時間かかります。バイパス術前の3枝病変、4枝病変といった呼び方は、バイパス術を実施する動脈の数(3本あるいは4本)を示しています。この手術は全身麻酔で行います。胸の中央を首の付け根から胃の上端まで切開して胸骨を外します。このような手術法は開心術と呼ばれています。普通は手術を行いやすくするために心臓を停止状態にさせます。人工心肺装置を使って血液を血流中に送り出します。移植の必要な血管が1〜2本だけであれば、心臓を動かしたまま手術することもあります。米国での入院日数は5〜7日が典型的で、人工心肺を使用しない場合はそれよりも少なくて済みます。

新しい技術を利用すれば、胸の切開創ははるかに小さくなり、冠動脈バイパス術の侵襲度も最小限にできます。その1つがロボット工学を応用した手術法です。外科医はコンピューターの前に座り、鉛筆程度の太さのロボットアームを操作して手術を行います。アームには、外科医の手のように複雑な動きをする特殊設計の手術器具が備えられています。外科医はスコープを通して手術の状況を拡大された3次元画像で監視します。したがって、外科医が患者と同じ部屋にいる必要はありません。この手術を行うには3カ所、つまり左右のアーム用に1カ所ずつと、スコープと連結しているカメラ用に1カ所を約2.5センチメートルほど切開する必要があります。手術時間と入院日数は普通、この新しい技術の方が開心術よりも少なくて済みます。

経皮的同所冠静脈動脈化術と呼ばれる実験的な手法では、開胸手術をせずにバイパスを形成します。冠動脈の閉塞部位あるいは狭窄部位にカテーテルを挿入し、近くにある冠静脈と連結します。連結された静脈は動脈として機能し、心臓へ血液を供給します。

その他の手術法

その他にも小型のブレード、バー、レーザーなどを使用して、肥厚したアテローム、線維質のアテローム、カルシウムの沈着したアテロームを切除したり、削ったり、押しつぶしたり、溶かしたりすることによって除去する方法があります。これらの手法のいくつかはまだ評価段階にありますが、今までのところ、特に長期経過に関しては期待通りの結果は得られていません。

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