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動脈瘤

動脈瘤は、動脈の壁内にできる膨隆(拡張)のことで、普通は大動脈にできます。

動脈瘤は動脈壁の弱くなっている部分に発生します。動脈壁の弱くなっている部分が血流によって圧力を加えられると外側に向けてふくらみます。動脈瘤を治療しないで放置すると、破裂して内出血を起こす危険性があります。

大動脈に沿ってどの部位でも動脈瘤は起こり得ますが、大動脈瘤の4分の3は腹部を通過する部分(腹部大動脈)に、残りは胸部を通過する部分(胸部大動脈)に発生します。動脈瘤は膝の裏側にある膝窩動脈、太ももの主要動脈である大腿動脈、頭部へ血液を供給する頸動脈、脳へ血液を供給する脳動脈、心筋へ血液を供給する冠動脈にも発生することがあります。高齢者では、たとえば、腹部大動脈が腸骨動脈と分岐するような動脈の分岐部や、膝窩動脈などの圧迫されることが多い部位に動脈瘤ができやすくなります。動脈瘤は丸い嚢状の場合も、チューブのような紡錘状の場合もありますが、多いのは紡錘状です。

大動脈瘤の主な原因は、動脈壁をもろくするアテローム動脈硬化です。まれな原因には外傷、大動脈炎、マルファン症候群のような遺伝性結合組織障害、梅毒などの感染症があります。マルファン症候群による大動脈瘤は、心臓に最も近い上行大動脈に最も多く発生します。高齢者の大動脈瘤は、ほとんどがアテローム動脈硬化によるものです。高齢者に多い高血圧と喫煙は動脈瘤のリスクを増大させます。

大動脈瘤の好発部位

大動脈瘤の好発部位

動脈瘤は大動脈のどこにでも発生する可能性がありますが、最も多いのは腹部大動脈です。残りは胸部大動脈に起こり、その中では上行大動脈に最も多く発生します。

動脈瘤の内部では血流が滞りやすくなるため、しばしば血栓(血液のかたまり)が形成されます。血栓は動脈瘤の壁全体に広がることもあります。このような血栓がはがれて落ちて塞栓になって流れ、他の部位で動脈に詰まることもあります。膝窩動脈に発生した動脈瘤は、他の動脈に発生したものよりも塞栓を生じやすくなります。ときには、動脈瘤の壁に徐々にカルシウムが沈着することもあります。

腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤とは、大動脈の腹部通過部位(腹部大動脈)に発生する動脈瘤のことです。

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腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤はどの年代にもみられますが、50〜80歳の男性に最も多く発生します。腹部大動脈瘤は家族性の傾向があり、高血圧の人、中でも喫煙者に特に多くみられます。最終的には腹部動脈瘤の約20%が破裂します。

症状

腹部大動脈瘤がある人は、しばしば腹部の拍動感に気づきます。また、動脈瘤は体の深部や主に背中に感じる突き刺すような痛みを引き起こすこともあります。動脈瘤から血液が漏れ出している場合は、ひどい痛みが続きます。

腹部動脈瘤が破裂すると、まず下腹部と腰に非常に激しい痛みが起こり、動脈瘤のあるあたりに圧痛を感じます。破裂による内出血が重い場合は、急速にショック状態に陥ります(ショックを参照) 。腹部大動脈の破裂は死に至ることの多い病気です。

診断

痛みは診断に役立ちますが、遅くなってから現れる手がかりです。しかし、動脈瘤では症状が現れないことも多く、定期健康診断や別の病気でX線検査や超音波検査などを行った際に発見されます。触診では、腹部の正中線に拍動するかたまりを触れることができます。聴診器をこの部位にあてると血液が動脈瘤を勢いよく流れるときに生じるシューという雑音が聞かれます。しかし、肥満の人では大きな動脈瘤があっても発見できないことがあります。動脈瘤が急速に大きくなって破裂しそうになると痛みが生じ、腹部を触診すると圧痛を感じます。

ときには腹部X線検査によって壁内にカルシウムの沈着した動脈瘤が見つかることもありますが、この検査法からはほとんど情報が得られません。その他の検査は、動脈瘤の発見と大きさの測定に役立ちます。普通は、超音波検査で動脈瘤の大きさを明確に知ることができます。動脈瘤が見つかった場合には、超音波検査を数カ月おきに行い、動脈瘤が大きくなっているかどうか、どのくらいの速度で大きくなっているかを判定します。X線を通さない造影剤を静脈内に注射して行う腹部造影CT検査では、超音波検査よりも正確に動脈瘤の大きさと形状を確かめることができますが、費用は高価です。MRI検査も正確ですが、超音波検査やCT検査よりもさらに高額の費用がかかります。

治療

直径が約5センチメートル未満の動脈瘤が破裂することはめったにありません。このような動脈瘤に唯一必要な治療は、降圧薬( 主な降圧薬を参照) で血圧を下げることです。動脈瘤が拡大する速度を測り、手術が必要かどうか判定するには画像検査を行います。最初のうちは3〜6カ月おきに行いますが、検査の間隔は動脈瘤が拡大する速度に応じて変わってきます。

直径が約6センチメートルを超える動脈瘤は破裂することが多いため、危険すぎて手術ができない特定の患者を除いて普通は手術が勧められます。手術では動脈瘤を修復するために人工血管を挿入します。それには2つの方法があり、従来の手術法では全身麻酔をかけ、胸骨の下からおへその真下まで切開します。動脈瘤を覆うように人工血管を大動脈に縫いつけ、切開創を縫合します。米国では、この手術にかかる時間は3〜6時間とされ、入院日数は5〜8日です。もう1つはステント移植と呼ばれる新しい侵襲の少ない手術法です。この方法では腰から下の感覚がなくなる局所(硬膜外)麻酔を使用します。鼠径部(そけいぶ)を小さく切開し、長く細いガイドワイヤを大動脈に挿入して動脈瘤まで進めます。メッシュのストローのような折りたたみ式のステントを装着したカテーテルをワイヤに沿って動脈瘤の内側に挿入します。ステントを中で開くと、安定した血流路が形成されます。米国ではこの手術にかかる時間は2〜5時間とされ、入院日数は2〜5日です。手術中の死亡率はおよそ2〜5%です。

腹部大動脈瘤が破裂、あるいは破裂寸前の場合は緊急手術が必要です。動脈瘤破裂による手術中の死亡率は約50%です。動脈瘤が破裂すると腎臓が損傷しますが、これは腎臓への血流が途絶えたり、血液が失われたりしてショックを起こすためです。手術後に腎不全が起きた場合は生存率が低くなります。腹部大動脈瘤の破裂は治療しなければほぼ死亡します。

胸部大動脈瘤

胸部大動脈瘤とは、大動脈の胸郭(胸部)通過部位に発生する動脈瘤のことです。

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胸部大動脈瘤

胸部大動脈瘤

胸部大動脈瘤は、他の病気のスクリーニング法として胸部CT検査が普及したことから、以前よりも頻繁に見つかるようになりました。一般的な胸部大動脈瘤では、大動脈の壁が変性して嚢胞性中膜壊死と呼ばれる状態になり、心臓に最も近い部位が肥大します。この肥大は心臓と大動脈の間にある大動脈弁の機能不全を起こし、弁が閉じているときに血液が心臓へ逆流するようになります。この異常を大動脈弁逆流といいます。このタイプの大動脈瘤がみられる人の約半数は、マルファン症候群を併発しています。残り半数の人では、その多くが高血圧にかかっていますが、原因ははっきりしません。また、まれに心臓に近い部位で、梅毒による動脈瘤が発生することもあります。心臓から離れた部位に発生する胸部大動脈瘤は、胸部の打撲による損傷により起こることがあります。

症状

胸部大動脈瘤は何の症状もなく大きくなります。動脈瘤が大きくなり、周囲の組織が圧迫されるようになって初めて症状が現れます。したがって、症状は動脈瘤の発生する場所によって異なります。典型的な症状は痛み(普通は背中の上部)、せき、喘鳴(ぜんめい)です。まれに、気管支やその付近の気道が圧迫されたり、ただれたりすると喀血(かっけつ)がみられます。動脈瘤によって食道が圧迫されると食べものを飲みこめなくなります。喉頭へ行く神経が圧迫されると声がしわがれます。胸部の特定の神経が圧迫されると、ホルネル症候群 ( まぶたが下がるホルネル症候群を参照)と呼ばれる一群の症状、瞳孔の収縮、まぶたが垂れ下がる、顔の片側に汗をかくなどの症状がみられます。胸部に感じる異常な拍動は胸部大動脈瘤を示唆します。動脈瘤による気道の圧迫はX線検査で診断できます。

胸部大動脈瘤が破裂すると背中の上の方に激痛が起こります。この痛みは破裂が進むにしたがって背中の下の方へ、さらに腹部へと広がります。また、心臓発作の際のように胸や腕に痛みを感じることもあります。患者は急速にショック( ショックを参照) 状態に至り、内出血のため死亡します。

診断

胸部大動脈瘤は症状から診断されることも、定期健康診断で偶然に発見されることもあります。また、何らかの理由で行った胸部X線検査で動脈瘤が発見されることもあります。動脈瘤の正確な大きさを調べるにはCT検査、MRI検査、経食道心エコー検査(超音波を発信するプローブをのどから食道へ入れて行う検査)を行います。手術が必要かどうか、必要ならばどのような手術を行うべきかを決定するためには大動脈造影検査(X線を通さない造影剤を注射してX線画像を撮り、動脈瘤の輪郭を確認する検査)を実施します。磁気共鳴血管造影(MRA)やCT血管造影検査(CTA)を行うこともあります。

治療

胸部大動脈瘤の直径が6センチメートル以上ある場合は普通、腹部大動脈瘤と同様に人工血管を使って手術を行います。手術前にはベータ遮断薬(ベータ‐ブロッカー)やカルシウム拮抗薬などの降圧薬(主な降圧薬を参照) を投与して、心拍数を減らし、血圧を下げ、動脈瘤破裂のリスクを減らしておきます。米国での入院日数は、従来の手術(胸部を切開する方法)では5〜8日、ステント移植(鼠径部の小さな切開創から大動脈へ折りたたんだグラフトを挿入する方法)では2〜5日です。マルファン症候群を併発している場合は破裂の危険性が高く、小さな動脈瘤でも医師は手術を勧めます。

胸部大動脈瘤を修復する手術中の死亡率は5〜15%ですが、破裂後の手術中の死亡率は約50%です。胸部大動脈瘤の破裂は治療しなければほぼ死亡します。

他の動脈での動脈瘤

動脈瘤は大動脈以外の動脈、たとえば膝の裏側の膝窩動脈、太ももにある大腿動脈、心臓の周りの冠動脈、まれに首の頸動脈にも発生します。これらの動脈に発生する動脈瘤は若い人よりも高齢者に多くみられます。

これらの動脈瘤の多くは、先天的な動脈壁の欠陥か、アテローム動脈硬化が原因です。他には刺傷や銃創による外傷、動脈壁への細菌や真菌の感染症なども原因となります。動脈の感染症は体の他の部位から始まるものが多く、典型的なのは心臓弁障害(感染性心内膜炎を参照)です。

膝窩動脈瘤および大腿動脈瘤のほとんどは無症状です。しかし、動脈瘤の内部で形成された血栓がはがれて流れ出し、塞栓となって下肢や足の動脈に詰まることがあります。頸動脈瘤からの塞栓が脳の動脈に詰まると脳卒中が起こります。膝窩動脈、大腿動脈、冠動脈頸動脈の動脈瘤が破裂することはめったにありません。

動脈瘤は拍動のあるかたまりとして触れることができます。心臓超音波検査(心エコー)かCT検査で診断を確定できます。直径が約2.5センチメートル以上の膝窩動脈瘤は普通、手術を行います。大腿動脈瘤や頸動脈瘤も、手術で修復するのが普通です。

動脈瘤は脳動脈にも発生することがあります。脳動脈瘤が破裂すると、脳組織への出血(脳内出血)を起こし、脳卒中を来します。脳動脈瘤は脳の近くに発生し、普通は小さいため、診断も治療も他の動脈瘤とは異なります( 脳卒中: 症状と診断を参照)。感染を起こした脳動脈瘤は特に危険で、早期に治療する必要があります。治療には手術による修復が含まれますが、かなりの危険を伴います。

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