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市中感染肺炎

市中感染肺炎を起こす最も一般的な細菌が肺炎球菌です。そのほか、インフルエンザ菌レジオネラ菌、マイコプラズマ、クラミジア、ウイルスなども市中感染肺炎を起こします。ブドウ球菌が市中感染肺炎を起こすことはまずありませんが、病院内感染肺炎を起こすことはあります。市中感染肺炎は主に幼児や高齢者に発症します。

肺炎球菌性肺炎: 肺炎球菌性肺炎は肺炎球菌によって起こります。かぜやインフルエンザなどの上気道ウイルス感染症にかかり、気道の防御機能が損なわれると、その部分が細菌に感染し、発症します。発熱後のふるえや悪寒、たんを伴うせき、息切れ、感染した側の肺に起こる呼吸時の胸痛などがみられます。吐き気、嘔吐、疲労感、筋肉痛などもよく起こります。たんは血液の混じった赤褐色をしています。

肺炎球菌性肺炎はほぼ完治しますが、幼児や高齢者、重い病気がある人がかかると、死亡することがあります。肺炎球菌性肺炎は生命にかかわる血液の感染症(敗血症)を引き起こすことがあります。多くの患者で、胸膜腔(胸膜という肺を覆う2層の粘膜の間の空間)に胸水(胸膜疾患: 胸水を参照)とよばれる液体がたまります。まれに、肺炎球菌による感染症は脳を覆う髄膜に広がることがあり、肺炎球菌性髄膜炎を起こします。髄膜炎では精神錯乱、頸部の硬直、ひきつけを起こし、昏睡状態に至ることがあります。

肺炎球菌には80種類あることが知られており、そのうちの1種類にかかった場合、その種類の肺炎球菌への再感染に対する部分的な免疫は獲得しますが、他の種類の肺炎球菌に対する免疫は得られません。感染症を起こす肺炎球菌の中で、その頻度が高く重い症状を起こす23種類については、感染を防ぐワクチン(予防接種: 肺炎球菌感染症を参照)があります。

肺炎球菌性肺炎は、ペニシリンやセファロスポリンなど、数種類の抗生物質で治療しますが、最近10年間でこれらの抗生物質が徐々に効きにくい(薬剤耐性)タイプの肺炎球菌が出てきています。薬剤耐性の肺炎球菌に感染した場合、またはペニシリンに対してアレルギーのある場合は、エリスロマイシン、フルオロキノロン、その他の抗生物質を代わりに使います。

インフルエンザ菌性肺炎: インフルエンザ菌は、インフルエンザを起こすインフルエンザウイルスと名前は同じですが、異なる細菌です。インフルエンザ菌b型は最も毒性が強く、主に5歳未満の子供に対し、髄膜炎や喉頭蓋炎、肺炎などの重い病気を引き起こします。しかし、インフルエンザ菌b型ワクチンの普及により、インフルエンザ菌による重い病気は減少しています。この肺炎は、アメリカ先住民、イヌイット、黒人、鎌状赤血球症の患者、免疫力が低下している人によくみられます。これらの症例のほとんどは、インフルエンザ菌b型ワクチンに含まれている種類とは異なるインフルエンザ菌によって発症します。

感染の徴候は、発熱、たんを伴うせき、息切れなど、典型的な肺炎の症状です。

米国では、インフルエンザ菌b型ワクチンを、すべての子供に接種しています。接種は、生後2カ月、4カ月、6カ月後の3回に分けて行います。

インフルエンザ菌b型肺炎の治療には抗生物質を使います。普通は経口用のトリメトプリム‐スルファメトキサゾール(ST合剤)が使われます。他の抗生物質も同様の効果があります。

レジオネラ症: レジオネラ症は、レジオネラ‐ニューモフィラや他の種類のレジオネラ菌が原因で発症します。レジオネラ症は、肺炎全体の約1〜8%、病院内で感染する重症な肺炎の約4%を占めます。レジオネラ菌は水の中で生息しており、空調システムやシャワーなどの送水設備を通じて広がったときに、ホテルや病院で大発生します。どの人からどの人へ直接感染したのか特定できません。

レジオネラ症は年齢を問わず発症しますが、中高年以上によくみられます。タバコを吸う人、ステロイド薬を服用している人、慢性的な腎疾患の患者、臓器移植を受けた人などではさらにリスクが高くなります。レジオネラ症は命にかかわることもあります。

疲労感、発熱、頭痛、筋肉痛などの初期症状は、感染から2〜10日後に現れます。乾いたせきはその後、たんの絡むせきに変わります。重症の場合は、ひどい息切れを起こし、下痢や精神障害などもみられます。

診断を確定するために、たん、血液、尿のサンプルが検査されます。レジオネラ‐ニューモフィラに感染するとこれに対する抗体がつくられるため、血液検査でこれらの抗体の増加がわかります。しかし、肺炎がある程度進行するまで抗体検査で結果は得られません。

治療には、フルオロキノロン、エリスロマイシン(リファンピシンと併用または単独で)、アジスロマイシンなどの抗生物質が使われます。この病気の死亡率は約20%ですが、病院内で感染したり免疫力が低下している患者では、死亡率はもっと高くなります。

マイコプラズマ肺炎: 肺炎マイコプラズマは、5〜35歳の人で最もよくみられる肺炎の原因ですが、他の年齢層ではあまりみられません。流行は学校、軍隊、家族などの限られた集団でみられます。潜伏期間が10〜14日間と長いため、流行はゆっくりと拡大する傾向があります。この肺炎は、春に流行するのが一般的です。

マイコプラズマ肺炎の初期症状は、疲労感、のどの痛み、乾いたせきなどのため、インフルエンザに似ています。症状はゆっくり悪化します。ひどいせきの発作により、徐々にたんが出ます。10〜20%の人には発疹が現れます。貧血、関節痛、髄膜炎などの神経系疾患がみられることもあります。症状は1〜2週間続き、徐々に快方に向かいます。人によっては数週間、脱力感や疲労感が続きます。マイコプラズマ肺炎は軽症であることが多く、ほとんどの人は治療をせずに回復しますが、重症化する場合もあります。

マイコプラズマ肺炎は、X線検査で見つかります。血液検査でマイコプラズマは確定できますが、血液検査を行うことはほとんどありません。

症状やX線検査の結果からマイコプラズマ肺炎が疑われる場合は、マイコプラズマと診断が確定する前でも治療を開始します。マイコプラズマ肺炎に対して使用される主な抗生物質は、エリスロマイシンとドキシサイクリンです。クラリスロマイシン、アジスロマイシン、フルオロキノロンなども効果があります。抗生物質を投与すると、熱が下がりはじめ、肺への影響も少なくなり、回復が早まります。しかし、マイコプラズマ肺炎は抗生物質ですぐには完治せず、治療しても数週間にわたって体内に生息し、他の人に感染します。

クラミジア肺炎: 肺炎クラミジアは、5〜35歳の人に肺炎を起こすもう1つの主な原因ですが、高齢者にもかかります。この病気は、せきによってまき散らされたつばが空気中を運ばれて、人から人へと感染します。症状はマイコプラズマ肺炎とよく似ています。ほとんどの人は重症になりません。X線検査で肺炎の所見は認められますが、血液検査やたんのサンプルの検査を行わないと、原因がクラミジアだとは確定できません。

エリスロマイシン、ドキシサイクリン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、フルオロキノロンなどの抗生物質はこの肺炎に効果があります。治療を早めに中止すると、症状が再発する傾向があります。

珍しいタイプの肺炎「オウム病」について

オウム病は、オウム病クラミジアによって起こる珍しい肺炎です。この細菌は主にオウム、インコ、ボタンインコなどの鳥で見つかります。ハト、スズメ、ニワトリ、シチメンチョウなどからも見つかります。普通、感染している鳥の羽や糞から生じた小さな粒子を吸いこんで感染します。この細菌は感染している鳥にかまれるとうつりますが、まれにせきで飛んだつばによって、人から人へもうつります。オウム病は、主にペットショップや養鶏場で働く人がかかります。

細菌への感染から約1〜3週間後に発熱、悪寒、疲労感、食欲不振などが生じます。せきも出ますが、最初は乾いたせきで、後に緑がかったたんを伴います。発熱は2〜3週間続き、徐々に下がります。症状の程度は、患者の年齢や感染した肺組織の範囲によって決まります。血液中の抗体を調べる検査は、診断を確定する上で最も信頼できる手段です。

鳥を養育したり飼育している人は、病気にかかった鳥の羽や鳥かごにたまったほこりを吸いこまないようにすれば、感染を避けることができます。輸入業者には、病気になりやすい鳥について、45日間のテトラサイクリンの投与が求められており、この治療で一般的に微生物は除去されます。オウム病では、経口用のテトラサイクリンを少なくとも10日間服用させ、治療します。特に重症の場合は、回復までにより長い期間がかかります。治療を行わなかった重症例での死亡率は、30%にも達します。

ウイルス性肺炎: ウイルスの多くは肺に感染し、ウイルス性肺炎を起こします。インフルエンザウイルス(ウイルスによる感染症: 症状と診断を参照)では、A型、B型と呼ばれる2種類が肺炎を起こします。水痘ウイルスも成人の肺炎の原因となります。パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルスは、小児や高齢者の肺炎で多くみられます。麻疹ウイルスも、特に栄養状態の良くない小児に対し、肺炎を起こすことがあります。免疫力が低下している人は、年齢にかかわらず、サイトメガロウイルスによる重症の肺炎を起こします。

ウイルス性肺炎では、たんを伴わないせき、または白っぽいたんを伴うせきが出ます。多くの人に頭痛、発熱、筋肉痛などの症状がみられます。

X線検査では、細菌性肺炎でみられたようなはっきりした陰影のあるパターンは認められません。気道からの分泌物の染色は、RSウイルスやインフルエンザウイルスなど、特定のウイルスの検出に使われます。ほとんどのウイルスは培養できますが、時間がかかる上に費用も高いので、あまり臨床的には役立ちません。特定のウイルスに対する抗体が増えているかどうかも調べることができますが、結果がわかるころには、ほとんどの患者は回復しています。

医療関係者や高齢者、肺気腫、糖尿病、心臓病、腎臓病などの慢性的な病気のある患者は、毎年インフルエンザワクチンを接種することが勧められます。多くのウイルス性肺炎は、原因であるウイルスを殺す薬で治療できます。

ウイルス性肺炎では、ウイルスがいなくなった後もしばらくの間せきが続きます。その上、ウイルスが気道の内部を傷つけるため、多くの人はウイルス性肺炎の後で二次的な細菌性肺炎を発症します。このように、別の感染症を治療している間に細菌による感染症を起こしてしまった場合、抗生物質による治療が必要になります。

ウイルス性肺炎で使われる治療薬

  • A型インフルエンザ
    • アマンタジン、リマンタジン、オセルタミビル、ザナミビル
  • B型インフルエンザ
    • オセルタミビル、ザナミビル
  • RSウイルス
    • リバビリン
  • 水痘ウイルス
    • アシクロビル
  • 単純ヘルペスウイルス
    • アシクロビル
  • サイトメガロウイルス
    • ガンシクロビル、ホスカルネット、シドフォビル

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