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喘息

喘息(ぜんそく)とは、気道が特定の刺激に反応して、可逆的に狭くなる病気です。

米国の喘息患者は1700万〜1800万人といわれ、その数はさらに増加しています。1982〜1992年の間に、喘息患者数は42%も増加しました。都市に住む黒人が発症するケースが多く(約7%)、都市に住むヒスパニック系アメリカ人の発症率は、それをさらに上回ります(約11%)。症状も重くなっており、入院の必要な患者が増加しています。1982〜1992年の間に、米国での喘息による死亡率は35%も増加しました。喘息は子供のころに発症するのが普通ですが、大人になってから、あるいは高齢になってから発症する人もいます。子供の喘息(呼吸器の病気: 喘息を参照)は、正常な成長と発達を妨げます。

喘息の子供が増えている理由はまだ解明されていませんが、以下の考え方の一方ないし両方が関係していると考えられています。1つの考え方は、子供にワクチンや抗生物質を頻繁に使用するようになったため、体内で感染症に対抗する白血球の特殊なサブグループ(リンパ球)の働きが、アレルギーの発生を促すような化学物質を放出するように変化してしまったのではないかという説です。もう1つの考え方は、近年、子供が家の中で過ごす時間が増えた上に、以前と比べて空気の通りが悪い家で暮らしているため、アレルギーを起こす物質を吸いこむ確率が高くなっているのではないかという説です。どちらの説も裏づけとなるデータはほとんどありません。

喘息の最大の特徴は気道の閉塞です。肺の気道(気管支(肺と気道のしくみと働き: 呼吸器系を参照) )は、筋肉でできた壁をもつチューブ状の組織です。気管支の表面を覆う細胞は、受容体というきわめて小さな構造物を備えています。主な受容体には、ベータ‐アドレナリン作動性、コリン作動性、ペプチド作動性の3種類あります。これらの受容体は、特定の物質の存在を感知すると、その部分の筋肉が伸びたり縮んだりするよう刺激を送り、それによって空気の流れる量が変化します。ベータ‐アドレナリン作動性受容体は、エピネフリンなどの化学物質に反応して筋肉をゆるめるので、気道が拡張して空気の流れる量が増加します。コリン作動性受容体は、アセチルコリンという化学物質に反応して筋肉を収縮させ、空気の流れる量を減らします。ペプチド作動性受容体はニューロキニンと呼ばれる化学物質に反応し、気道の筋肉を収縮させます。

原因

気道の閉塞は、コリン作動性およびペプチド作動性受容体が異常なほど過敏になり、気道の筋肉を収縮させるべきではないときに収縮させてしまうことによって起こります。気道の内部にある特定の細胞、特に肥満細胞は、最初に気道が狭くなる原因と考えられています。肥満細胞は気管支全体に分布しており、平滑筋を収縮させ、粘液の分泌を増加させ、特殊な白血球をその領域内に集める働きをもつヒスタミンやロイコトリエンなどの物質を放出します。喘息患者の気道内部でみられる白血球の1種、好酸球はこれらの物質をさらに放出し、気道をより狭くします。

気道閉塞の起こり方

気道閉塞の起こり方

喘息発作の際に、平滑筋の層がけいれんを起こすため、気道が狭くなります。炎症によって気道を構成する中央の層が腫れ、粘液がさらに分泌されます。気道の一部に粘液のかたまりができ、気道はほぼ、または完全に詰まってしまいます。こうした粘液のかたまりを粘液栓といいます。

喘息発作の際に、気管支の平滑筋層は狭まり(気管支収縮)、炎症のために気道表面の組織は腫れ、粘液が分泌されます。気道の表面の層が損傷を受け、細胞がはがれ落ちます。これらによって気道の直径はさらに狭くなり、肺へ空気を出し入れするのがさらに困難になります。喘息でみられる気道閉塞は回復可能で、適切な治療もしくは自然治癒とともに、気道の筋肉の収縮が止まり、気道閉塞が治まり、肺への空気の出入りが正常に戻ります。

喘息の患者では、健康な人の気道には普通、影響を与えないような刺激に反応して、気道が狭くなります。気道の狭窄は、花粉、チリダニの糞(ふん)や死がい、ゴキブリの分泌物、羽毛、動物の皮膚からはがれた鱗屑(りんせつ)など、さまざまなアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を吸いこんだことがきっかけとなって起こります。アレルゲンが、肥満細胞の表面で免疫グロブリンE(抗体の1種)と結びつくと、肥満細胞から喘息を起こす化学物質が放出されます。このタイプの喘息をアレルギー性喘息といいます。食べものに対するアレルギーで喘息を起こすことはまれですが、貝類やピーナツなど、特定の食べものに過敏な人では重症の喘息発作が起こります。

タバコの煙、冷たい空気、ウイルス性感染症なども喘息発作を起こします。さらに、喘息の患者は運動後に気管支収縮を起こすことがあります。ストレスや不安をきっかけとして、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンが放出されて、気道の平滑筋とつながっている迷走神経を刺激し、これによって平滑筋が収縮し、気管支が狭くなることもあります。

アニメーション

気道はどのように狭くなるか

気道はどのように狭くなるか

症状と合併症

喘息発作の頻度や重症度はさまざまです。喘息の患者の中には、ほとんどいつも症状がなく、ごくたまに短時間の軽い息切れがみられるだけの人がいます。また、常にせきや喘鳴(ぜんめい)があり、ウイルスへの感染や運動の後、アレルゲンやタバコの煙などの刺激物質を吸いこんだ後などに、ひどい発作を起こす人もいます。泣いたり大笑いすることによって発作を起こす人もいます。喘息の患者の中には、ときに透明で粘り気の強いたんが出る人がいます。喘息の発作は、治療薬の効果が薄れ、体が気管支収縮を抑える力も最も弱い早朝に最もよく起こります。

喘息発作は、喘鳴やせき、息切れを伴って突然始まります。喘鳴は、息を吐き出すときに特に目立ちます。また、喘息発作がゆっくりと始まり、徐々に症状が悪化していくこともあります。どちらの場合も、患者はまず息切れ、せき、胸が締めつけられるような感じに気づきます。発作は数分間で治まることもあれば、数時間から数日間続くこともあります。特に子供の場合、胸や首のかゆみが初期症状ということがあります。夜間や運動の途中に乾いたせきが出るのが唯一の症状という場合もあります。

喘息の発作で息切れがひどくなると、極端に不安な気持ちになることがあります。患者は本能的に背筋を伸ばしてまっすぐに座って前かがみになり、首と胸の筋肉を使ってなんとか呼吸しようとしますが、それでもさらに空気を吸おうともがき苦しみます。呼吸する苦労と不安から、発汗がよくみられます。脈は速くなり、胸に激しい動悸(どうき)を感じます。

きわめて重症の喘息発作では、患者は呼吸を止めない限り、ほんの2〜3言しか話すことができません。けれども、空気がほとんど肺に出入りしないため、喘鳴は小さくなります。意識障害、昏睡、チアノーゼ(指先や唇などの皮膚の色が青っぽく変化すること)など、酸素の供給が非常に低下している徴候がみられる場合は救急治療が必要です。普通、どんなに重症の喘息発作であっても、適切な治療を受ければ完全に回復します。まれに、急速に発作が悪化し、自分で発作への応急措置ができないまま意識を失う患者がいます。そのような可能性のある患者は緊急医療カードを常に身に着け、いつでも救急車を呼べるよう携帯電話を持つべきでしょう。

まれに肺にある小さな空気の袋(肺胞)が破裂し、肺と胸壁を覆う2層の粘膜の間の空間(胸膜腔)に空気が入りこみます。これを気胸(胸膜疾患: 治療を参照)といいますが、この合併症は息切れを著しく悪化させるため、胸膜腔内にチューブを挿入して空気を抜き、つぶれた肺を再びふくらませることが必要になります。

喘息重積発作への対応法

喘息発作の中で、症状が最も重いタイプを喘息重積発作と呼びます。この状態になると、肺は体に十分な酸素を補給できなくなり、また二酸化炭素を十分には排出できなくなります。酸素が不足すると、多くの器官が機能不全に陥ります。二酸化炭素が体内に蓄積していくのでアシドーシスになり、血液の酸性状態は体のほぼすべての器官の機能に影響を及ぼします。血圧は低下します。気道は狭くなり、肺への空気の出入りが困難になります。

喘息重積発作は、さまざまな薬を最大服用量で投与しなければならないことに加え、気管内挿管や人工呼吸器の助けも必要になります。アシドーシスを改善するための補助的な治療も行います。

診断

医師は、患者が訴える特徴的な症状から喘息を疑います。喘息との診断は、スパイロメーター(肺活量計)を使った検査で確定できます。この検査によって、喘息の発作中に空気の流れる量が減少していること、それが数時間または数日間で回復し、元に戻ることがわかります。普通、医師は、ベータ刺激薬を吸入させる前と後に、スパイロメーターを用いた検査か肺機能検査(肺と気道の病気の症状と診断: 肺機能検査を参照)を行います。ベータ刺激薬を吸入した後の検査結果で著しい改善が認められれば、喘息と診断されます。最初の検査の際に気道が狭窄していなかった場合、健康な人には影響が出ないものの、喘息患者では気道の狭窄が生じる程度の少量の化学物質(普通はメタコリンですがヒスタミンが使われることもある)を吸入させ、診断を確定します。

スパイロメーターを使った検査は、気道の閉塞の程度を調べる場合と、治療の効果を確認する場合に使用されます。また、最大呼気流量(息を深く吸って一気に吐き出したときの一番速い息の出る速度)は、ピークフローメーターという小型で持ち運びしやすい器具を用いて測定できます。この検査は、喘息の病状を自宅で記録しておく際によく使われます。ピークフロー値(最大呼気流速度)は午前4〜6時の間が最も低く、午後4時に最も高くなります。それぞれの時間帯の検査値に30%以上の開きがある場合は、中等度から重度の喘息と確定します。

写真

ピークフローメーター

ピークフローメーター

喘息を起こす原因を特定するのは容易ではありません。回避できるような物質が発作を誘発している疑いがある場合、アレルギー検査を行います。皮膚テストは喘息症状を起こすアレルゲンを特定するのに役立ちます。しかし、皮膚テストでアレルギー反応が起きても、そのアレルゲンが必ずしも喘息の原因というわけではありません。患者はこのアレルゲンにさらされた後に発作が起きたかどうかを必ず書きとめておきます。特定のアレルゲンが疑われる場合は、そのアレルゲンに反応する抗体の血液中の濃度を測定する検査(放射性アレルゲン吸着試験[RAST])を行い、アレルギーの程度を調べます。

運動誘発性喘息の検査には、トレッドミル(速度と傾斜が変化するベルトコンベヤーの上を歩く)や自転車エルゴメーターを使った運動の前後に、スパイロメーターで1秒間の努力肺活量を測定します。1秒間の努力呼気量が15%以上減少した場合は、運動誘発性喘息です。

喘息の診断に、胸部X線検査はほとんど役に立ちません。他の病気が考えられる際に胸部X線検査を行います。喘息の患者でも、入院が必要な場合や、重度の喘息で集中治療室での治療が必要な場合には胸部X線検査を行います。

予防と治療

喘息発作の予防と治療のために、さまざまな薬が使われています。喘息の予防に使われている多くの薬は、その服用量を多くするか服用方法を変えて、喘息発作の治療にも使われます。症状によっては、予防や治療のために2種類以上の薬が必要な場合もあります。

喘息の治療薬には主に2種類あります。1つは、気道を狭くするきっかけとなる炎症を抑える抗炎症薬です。もう1つは、気道の緊張をゆるめ、気道を広げる気管支拡張薬です。これら2種類のそれぞれに、いくつかの薬があります。抗炎症薬には、コルチコステロイド(吸入用、内服用、注射用がある)薬、ロイコトリエン拮抗薬、クロモリンなどがあります。気管支拡張薬にはベータ刺激薬やテオフィリン薬などがあります。

定量噴霧式吸入器(MDI)の使い方

定量噴霧式吸入器(MDI)の使い方

  • キャップを外してから、吸入器をよく振ります。
  • 1〜2秒間息を吐きます。
  • 吸入器を口にくわえるか、約3〜6センチメートル口から離して、熱いスープを飲むようにゆっくり息を吸いはじめます。
  • 息を吸いはじめると同時に、吸入器の上部を押します。
  • これ以上吸いこめないところまで、ゆっくりと息を吸います(約5〜6秒かかります)。
  • 4〜6秒間息を止めます。
  • 息を吐き、同じ手順を繰り返します。
  • この方法を行うのが困難な場合、スペーサーを使います。

喘息発作の予防や治療の方法についての教育は、喘息患者にとっても家族にとっても有益なものです。吸入器の正しい使い方は効果的な治療に欠かせません。何が喘息発作を誘発するのか、何が発作の予防に役立つのか、薬の適切な使い方、病院にかかるタイミングなどは、知っておく必要があるでしょう。多くの患者は持ち歩きできるピークフローメーターを使って呼吸状態を把握し、症状が悪化する前に必要な自己治療を行います。頻繁に重い喘息発作を起こす患者は、緊急時の連絡方法を考えておくべきです。

多くの患者は、医師と共同で作成した治療計画をもっています。こうした治療計画によって個人の症状に合わせた発作のコントロールが容易になり、実際に救急治療を受ける回数の減少につながっています。

発作の予防

喘息は予防や完治のできない慢性的な病気ですが、発作を防ぐことはできます。喘息の発作を引き起こす要因を突き止め、これを治療するか回避すれば、発作を予防できます。喘息患者は、タバコの煙のある場所を避けるべきです。運動によって発作が起こる場合、事前に薬を服用すれば防げます。ほこりやアレルゲンが原因であれば、フィルターやエアコン、空気中のチリダニをできるだけ通さないマットレスカバーなどの対策が役立ちます。特定のアレルゲンによって喘息が誘発される患者は、少量のアレルゲンを注射する減感作療法で発作を予防します。

アスピリンやその他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が原因で喘息発作が起こる患者では、これらの薬の服用を避けなければなりません。ベータ刺激薬の効果を妨げる薬(ベータ遮断薬[ベータ‐ブロッカー])の服用は、喘息を悪化させます。

多くの喘息患者は、吸入用または内服用のステロイド薬、ロイコトリエン拮抗薬、長時間作用型のベータ刺激薬、テオフィリン薬、抗ヒスタミン薬、クロモリンなどの薬によって発作を予防しています。予防に用いる方法は、喘息発作の頻度や発作を起こす刺激物質などによって、個々の患者で異なります。

喘息の新しい治療法が研究されており、免疫グロブリンEと結合する特別な抗体(静脈注射か皮下注射により投与)を使って、免疫グロブリンEと肥満細胞との結合を妨げる方法が開発されています。これによって、肥満細胞がアレルギー性喘息を引き起こす物質を放出するのを防ぎます。

喘息発作の原因となる物質の避け方

最も一般的な室内のアレルゲンには、室内のチリダニ、羽毛、ゴキブリ、動物の皮膚からはがれた鱗屑(りんせつ)などがあります。こうしたアレルゲンをできるだけ吸いこまないようにすることで、喘息発作の回数や程度を少なくすることができます。床一面を覆うようなじゅうたんを外し、夏はエアコンを使用してできる限り50%以下に湿度を抑えるようにすると、室内のチリダニを吸いこむ可能性を減らすことができます。また、特別な枕やマットレスのカバーを使用することによっても、チリダニを吸いこむ機会を減らすことができます。ネコやイヌを飼わないようにすれば、動物の皮膚からはがれた鱗屑を吸う機会は目立って減少します。

タバコの煙など、刺激性のあるガスも避けるべきです。中には、アスピリンや他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)によって発作を起こす喘息患者もいます。錠剤や食品に添加されるタートラジンという黄色色素も発作を誘発します。防腐剤として食品に添加される亜硫酸塩は、それを含む食べものやビールや赤ワインを取った後、喘息を起こしやすい人に発作を引き起こします。

寒い季節に屋外で活動する場合には、喘息患者は鼻や口を覆うスキー用のマスクやマフラーをつけた方がよいでしょう。そうすることで、吸いこむ空気が温まり、湿るからです。

発作の治療

喘息発作は、発作を起こしている本人だけではなく、周囲の家族をも恐怖に陥れます。比較的軽い発作でも、その症状から不安や恐怖が生じます。重度の喘息発作は命にかかわる緊急事態で、ただちに優れた専門的な治療が必要です。素早く適切な治療が行われないと、死亡することもあります。

喘息患者は一般的に、医療関係者の助けがなくても発作に十分対応できます。普通、携帯している短時間作用型のベータ刺激薬を吸入し、新鮮な空気のある場所に移動し(タバコの煙などの刺激物から離れます)、座って安静にします。ベータ刺激薬に加え、ステロイド薬を吸入する患者もいます。発作はだいたい5〜10分で治まります。発作が15分たっても治まらず、悪化するようであれば、医師による治療が必要です。

重症の喘息患者では一般的に血液中の酸素濃度が低下しているため、医師は指先か耳に電極をつけて測る方法か、動脈から血液サンプルを採って分析する方法(肺と気道の病気の症状と診断: 動脈血ガス分析を参照)を使って、酸素濃度を確認します。発作が起きている間、酸素吸入が行われることもあります。重度の発作が起きているときには、二酸化炭素濃度も観察する必要があるため、動脈血のサンプルが必要になります。また、スパイロメーターやピークフローメーターを使って、肺の機能も確認されます。重い喘息発作の患者では、胸部X線検査も必要です。非常に重い発作を起こしている患者には、口や鼻から気道にチューブを通す気管内挿管を行い、それを人工呼吸器(呼吸不全: 人工呼吸器の使用を参照)につなぎます。

一般的に、重度の喘息がある患者で、ベータ刺激薬やステロイド薬を吸入した後も肺機能に改善が認められない場合や、血液中の酸素濃度が著しく低下しているか二酸化炭素濃度が非常に高い場合には入院が必要です。

脱水症状を起こしている場合には点滴が必要です。肺感染症が疑われる場合は抗生物質の投与も必要ですが、こうした感染症の多くはウイルスが原因なので、少数の例外を除けば、治療は必要ありません。

発作の予防薬と治療薬

薬を服用すれば、ほとんどの喘息患者は普通の生活を送ることができます。喘息の治療に使われる薬の大半は、服用量を減らすなどして、発作の予防にも使われます。

短時間作用型ベータ刺激薬: この薬は喘息発作を最もよく緩和する薬で、運動誘発性喘息などの発作を予防します。この薬は、気道を拡張するベータ受容体を刺激するので、気管支拡張薬としても使われます。気管支拡張薬はエピネフリンなど、体内のベータ受容体すべてに作用するので、心拍数の増加、不安、頭痛、筋肉のふるえなどの副作用が起こります。アルブテロールなどの気管支拡張薬は、主に肺の細胞に存在するベータ2受容体に作用し、他の器官にほとんど影響を与えないため、他の薬剤よりも副作用は少なくなります。ほとんどの吸入ベータ刺激薬は数分以内に作用しますが、その効果は2〜6時間しか持続しません。長時間作用型の気管支拡張薬も登場していますが、効果が出はじめるまで時間がかかるため、喘息発作の治療よりも発作の予防のために使われます。長時間作用型ベータ刺激薬は、吸入ステロイド薬と併用すると、より良い効果が得られます。長時間作用型ベータ刺激薬のサルメテロールとステロイド薬を配合した吸入薬もあります。

一般的に、ベータ刺激薬は定量噴霧式吸入器(加圧式のガス内蔵の小型カートリッジ[MDI])を使って吸入します。これは容器を加圧し、一定量の粉末状の薬を細かい霧状にして吸入するものです。吸入された薬は直接気道内に入ってすみやかに作用しますが、気道の閉塞が重度の場合には奥まで薬が到達しません。定量噴霧式吸入器がうまく使えない患者は、スぺーサーやチャンバーなどの吸入補助具(定量噴霧式吸入器から噴霧したガスを一時的にためておく容器)を利用します。どのようなタイプの吸入器を使うにしても、器具を適切に使わなければ薬剤が気道に到達しないので、正しい使い方の習得が不可欠です。また、ドライパウダー(粉末状の薬)を自分で吸いこむ方法もあります。呼吸に合わせて吸入する必要がないため、ドライパウダーが使いやすいという患者もいます。

ビデオ

定量噴霧式吸入器の使い方

定量噴霧式吸入器の使い方

ベータ刺激薬は、肺に直接届くような電動式のネブライザーを使って吸入されることもあります。ネブライザーは霧状にした薬を連続的に発生させるので、呼吸に合わせて使う必要がありません。ネブライザーは従来のものと比べると小型化しており、車のシガレットライターに電源プラグを差しこんで使えるものもあります。

ベータ刺激薬にはまた、シロップや錠剤、注射薬などもあります。しかし、内服用の薬は吸入用や注射用より効果が出るのが遅い上に、副作用を起こす可能性が高くなります。過剰投与によって不整脈を起こすことがあります。

その他の気管支拡張薬には、テオフィリンの1種、アミノフィリンの静脈注射や抗コリン薬のイプラトロピウムのネブライザーによる吸入などがあり、これらは急性発作を抑えるためにベータ刺激薬とともに使用されます。定量噴霧式吸入器用の、イプラトロピウムとアルブテロールの配合薬もあります。

喘息の発作が、ベータ刺激薬を指示された服用量より多く使わなければ治まらないと感じたときは、急いで医師の診察を受けます。これらの薬の使いすぎは大変危険です。持続的な使用が必要ということは、重度の気管支収縮の存在を示しており、呼吸不全や死に至るおそれがあります。

テオフィリン: テオフィリンは、気管支を拡張させるもう1つの薬です。普通は内服薬として使われますが、病院では静脈注射も行われます。テオフィリンの内服薬には、短時間作用型の錠剤やシロップから、長時間作用型の徐放剤や錠剤まで、さまざまな剤形があります。テオフィリンは喘息の予防と治療の両方に使われます。

血液中のテオフィリン濃度は検査室で測定でき、医師による慎重な観察が必要です。血液中の薬の濃度が低すぎるとほとんど効果がなく、逆に高すぎると生命にかかわる不整脈やけいれんを起こす可能性があります。喘息患者は、テオフィリンを初めて服用した際に、やや神経過敏になったり頭痛を起こす場合があります。こうした副作用は、体が薬に慣れてくるとだいたい消失します。多量に服用すると、心拍数の増加、吐き気、動悸が起こります。不眠や興奮、嘔吐、けいれんが起こる患者もいます。

抗コリン薬: イプラトロピウムなどの抗コリン薬は、平滑筋を収縮させたり、気管支内の過剰な粘液の分泌を引き起こすアセチルコリンを抑制します。これらの薬剤は普通、吸入しますが、病院では静脈注射も行われます。これらの薬剤は、すでにベータ刺激薬を投与された患者の気道をさらに広げます。しかし、抗コリン薬は救急治療の場で、主にベータ刺激薬と併用して使います。単独使用の場合、抗コリン薬には限られた効果しかありません。

ロイコトリエン拮抗薬: モンテルカスト、ザフィルルカスト、ザイリュートンなどのロイコトリエン拮抗薬は、喘息のコントロールを助ける最新の薬です。これらの薬は抗炎症薬で、体内でつくられ、気管支収縮を起こす化学物質のロイコトリエンの作用や合成を防ぎます。経口用のロイコトリエン拮抗薬は、喘息発作を治療するというよりもむしろ予防のために使われますが、ロイコトリエンは急性喘息の際に増加するので、発作時にもこれらの薬が使われます。

クロモリンとネドクロミル: これらの吸入薬は、肥満細胞から炎症性化学物質が放出されるのを抑え、気道が狭くなるのを防ぎます。したがって、これらの肥満細胞安定化薬(メディエーター遊離抑制薬)も抗炎症薬です。喘息発作の予防効果はありますが、治療効果はありません。小児喘息の患者や、運動誘発性喘息の患者には有効です。クロモリンとネドクロミルは非常に安全な薬ですが、症状のないときも定期的に服用しなくてはなりません。

ステロイド薬: これらの薬は体の炎症反応を抑え、喘息の症状を軽減するのに非常に効果があります。ステロイド薬は最も強力な抗炎症薬であり、喘息治療において重要な役割を果たしています。ステロイド薬は、発作の予防や肺機能の改善を目的とした場合には吸入します。重度の発作を起こしている患者には多量のステロイド薬を内服させます。ひどい発作の後は、少なくとも数日間続けて経口投与を行います。ステロイド薬の服用方法には数通りあります。薬が直接気道に届き、全身に送られる薬の量が最小限にとどまる吸入が、最も良い方法とされています。薬の強さに数種類ありますが、普通は1日2回の使用です。口腔内の感染症(口腔カンジダ症(真菌による感染症: カンジダ症を参照))を防ぐため、吸入後は口をゆすぎます。経口用または注射用のステロイド薬は、重度の喘息発作を軽減するために高用量で使い、普通は1〜2週間続けます。経口用のステロイド薬が長期間にわたって処方されるのは、他の治療法では症状が調節できなかった場合のみです。

ステロイド薬を長期間服用すると、さまざまな刺激に対して気道が敏感に反応しなくなるので、徐々に喘息発作が起こらなくなります。しかしステロイド薬の長期間の服用、特に内服で服用量が多い場合には、副作用が起こります。

薬の種類

薬剤名

主な副作用

備考

ベータ刺激薬

 

アルブテロール(短時間作用型)

サルメテロール(長時間作用型)

心拍数の増加、ふるえ

アルブテロールは内服薬として、あるいは定量噴霧式吸入器やネブライザーを使って吸入する。サルメテロールは吸入薬のみ

キサンチン誘導体

 

テオフィリン

心拍数の増加、ふるえ、胃のむかつき。(血液中の濃度が高い場合は)けいれんや重い心拍異常

予防と治療に使用する。内服のほか、病院では静脈注射することもある

抗コリン薬

 

イプラトロピウム

口の渇き、心拍数の増加

救急治療の場で、主にベータ刺激薬と併用して使用する

肥満細胞安定化薬(メディエーター遊離抑制薬)

 

クロモリン

ネドクロミル

せき、喘鳴

発作の予防に有効だが、治療には使われない

コルチコステロイド(吸入用)

 

ベクロメタゾン

ブデソニド

フルニソリド

フルチカゾン

トリアムシノロン

口腔内の真菌感染症(口腔カンジダ症)、声の変化

喘息を長期間にわたってコントロールする予防目的で吸入する

ロイコトリエン拮抗薬

 

モンテルカスト

ザフィルルカスト

ザイリュートン

チャーグ‐ストラウス症候群、ザイリュートンによる肝機能検査値の上昇

治療よりも長期間のコントロールのための予防目的で使用する

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