微生物またはタンパク質を含む粉塵は、肺に過敏反応を引き起こすことがあります。
感作された物質に再度さらされると、4~8時間以内に、発熱、せき、悪寒、息切れなどの症状が現れることがあります。
医師は、胸部CT検査と肺機能検査を行って、肺に異常がないかを調べます。
この過敏反応を引き起こしている物質は、ときに血液検査によって特定できることがあり、また患者が職場で病気になった場合は、産業衛生の専門家が職場を調べ、誘因の特定に努めることもあります。
過敏反応を引き起こす可能性が高い物質を扱う労働者は、作業中にフェイスマスクなどの防護具を着用すべきです。
再度さらされないようにすれば、通常回復しますが、肺の炎症を緩和するためにコルチコステロイドの服用が必要になることもあります。
(間質性肺疾患の概要 間質性肺疾患の概要 間質性肺疾患は、びまん性実質性肺疾患とも呼ばれ、間質腔が傷害されるいくつかの病気をまとめた総称です。間質腔とは、肺胞(肺にある空気の袋)の壁や、血管と細い気道の周りの空間を指します。間質性肺疾患は、肺組織に炎症細胞が異常に集積する結果、息切れやせきが生じる病気で、それぞれの病気の画像所見は似ていますが、それ以外の点で関連性はありません。間... さらに読む も参照のこと。)
このような 過敏反応 アレルギー反応の概要 アレルギー反応(過敏反応)とは、通常は無害な物質に対して免疫系が異常な反応をすることを指します。 アレルギー反応は通常、くしゃみ、涙目、眼のかゆみ、鼻水、皮膚のかゆみ、発疹を引き起こします。 アナフィラキシー反応と呼ばれる一部のアレルギー反応は生命を脅かします。 症状からアレルギーが疑われ、アレルギー反応の引き金になった物質の特定には皮膚... さらに読む (アレルギー反応とも呼ばれます)は、吸い込まれた有機粉塵や化学物質に含まれる何らかの物質が、免疫系によって攻撃されることで生じます。免疫系の細胞から放出された物質によって、粉塵のたまった肺が損傷します。この免疫反応を引き起こす粉塵の部位を、抗原と呼びます。
過敏性肺炎の原因
肺に過敏反応を引き起こす物質はたくさんあります。微生物またはタンパク質を含む有機粉塵や、イソシアネートのような化学物質は、過敏性肺炎を引き起こすことがあります。農夫肺は、よく知られた過敏性肺炎の1つの例であり、カビの生えた干し草の中にいる高温を好む(好熱性)細菌を繰り返し吸い込むことで発生します。別の例として愛鳥家肺(鳥飼病)というものもあります。これは、鳥の羽毛(生きた鳥または枕やふとんに含まれるもの)由来の粉塵を吸い込んだときに生じます。
肺の損傷は、 白血球 白血球 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む の一種であるリンパ球によって受けた傷害が原因と考えられています。粉塵に初めてさらされるとリンパ球が敏感になります(感作)。一部のリンパ球は抗体の生産に関与し、この抗体の働きにより組織が損傷されます。抗原に再度さらされたときに、炎症に直接関与するリンパ球もあります。その後何度も同じ抗原にさらされると、慢性的な炎症反応が生じます。このことは、肺胞や細い気道の壁に白血球が集積していることからも明らかです。このような白血球の集積が進むことで、症状や病気の発生につながります。
過敏性肺炎の症状
症状が現れる速さに応じて、過敏性肺炎は以下の3つに分類されます。
急性
亜急性
慢性
急性の過敏性肺炎では、原因となる大量の有機粉塵に再度さらされてから、通常4~8時間後に、発熱、せき、悪寒、息切れなどがみられます。喘鳴が聞かれるのはまれです。抗原との接触がそれ以上なければ、通常1~2日で症状は消えますが、完治までには数週間かかることもあります。
亜急性の過敏性肺炎は、もう少しゆっくり発生します。乾いたせきや息切れが数日から数週間かけて発生し、悪化します。ときに症状が非常にひどくなることがあり、その場合入院が必要になります。
慢性の過敏性肺炎では、患者は数カ月から数年にかけて抗原との接触を繰り返し、最終的に肺に瘢痕化をきたす(線維症)ことがあります。運動時の息切れ、せき、疲労、体重減少などの症状が、数カ月から数年にわたって徐々に進行します。やがて、この病気から 呼吸不全 呼吸不全 呼吸不全は、血液中の酸素レベルが危険なほど低くなったり、血液中の二酸化炭素濃度が危険なほど高くなる病気です。 呼吸不全の原因としては、気道をふさぐ病気、肺組織を損傷する病気、呼吸を制御する筋肉を衰えさせる病気、呼吸を促す仕組みが抑制される病気などがあります。 激しい息切れ、皮膚の青みがかった変色、錯乱または眠気などの症状がみられることがあ... さらに読む に進行することもあります。高齢者は長年にわたって抗原にさらされているため、慢性化して徐々に病気が悪化する傾向にあります。
過敏性肺炎の診断
胸部CT検査
医師が過敏性肺炎の診断を下す際は、症状や臨床的特徴に基づくほか、可能であれば原因物質の特定(患者の証言や産業衛生の専門家による職場の調査結果、血液検査での抗体存在による)を行います。
医師は胸部X線所見に基づいて、過敏性肺炎を疑います。しかし通常は、診断を確定するのに胸部CT検査が必要になります。 肺機能検査 肺機能検査 肺機能検査では、肺にためることができる空気の量、肺から空気を出し入れする能力、肺に酸素を取り込む能力を測定します。 肺機能検査は、肺疾患の具体的な原因を突き止めるというより、一般的なタイプや重症度を調べるのに適していますが、 喘息や 慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの特定の病気を診断するために使用されることもあります。 ( 肺疾患に関する病歴聴取と身体診察および 呼吸器系も参照のこと。)... さらに読む で、肺にためることができる空気の量、肺の空気を取り込んだり吐き出す能力や酸素と二酸化炭素を交換する能力などを測定し、その結果を用いて、肺がどれくらい機能しているか評価することが、過敏性肺炎の診断の裏付けに役立つ場合があります。
それでも診断がつかず、特に感染症が疑われる場合、肺から小さな組織片を採取して顕微鏡で調べる検査(肺生検)が行われることがあります。組織片を採取する際は、管状の機器を胸壁から挿入することで(胸腔鏡検査 胸腔鏡検査 胸腔鏡検査は、観察用の管状の機器(胸腔鏡)を介して肺の表面や胸腔を観察する検査です。 胸腔鏡検査は、肺や肺の周囲の空間(胸腔)を観察するために行われます。より侵襲性の低い検査で結論が出ない場合に、肺や胸膜を観察するため用いられることがあります。 胸腔鏡検査は特定の外科手術のために用いられることもあります。胸腔鏡を用いた手術は胸腔鏡下手術(VATS)と呼ばれます。 生検のために肺の組織サンプルを採取する最も一般的な方法は、胸腔鏡を用いるも... さらに読む )、同時に肺の表面や胸腔を調べることができます。また、 開胸術 開胸術 開胸術は、胸壁を切り開いて、胸部にある内臓を観察したり、検査用の組織サンプルを採取したり、肺、心臓、主要な動脈などの病気を治療したりする手術です。 開胸術は大手術ですので、他の診断検査ほど頻繁には行われません。開胸術が行われるのは、 胸腔穿刺や 気管支鏡検査、 縦隔鏡検査などの他の診断検査で十分な情報が得られなかった場合です。サンプルを採取する場所をしっかり見て選ぶことができるだけでなく、大きな組織サンプルを採取できるため、開胸術を行っ... さらに読む という方法で胸壁を開く手術をしなければならないこともあります。場合によっては、鋭利な器具で組織を採取する方法に加えて、またはそれに代わって、気管支鏡検査の際に、肺を生理食塩水で洗浄(気管支肺胞洗浄)し、検査用の細胞を回収することもあります。
ときに、過敏反応を引き起こしている物質の手がかりをつかんだり、ほかに可能性のある原因を除外するために、血液検査が必要になります。
過敏性肺炎の予防
最善の予防策は抗原にさらされないようにすることですが、これはあまり現実的とはいえません(例えば、職場を変えられない場合)。粉塵の除去や低減、防塵マスクの着用、高性能の換気設備の設置は、感作と再発のいずれにも予防効果が期待できます。しかし、どんなに優れた予防策を講じても効果が得られない場合があります。
過敏性肺炎の治療
コルチコステロイドまたは免疫抑制薬
過敏性肺炎の急性発作を起こした患者は、同じ物質に再び接触しないようにすれば、一般に回復します。発作が重い場合は、プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)などのコルチコステロイドの投与により症状が緩和され、重度の炎症の軽減に役立つ場合があります。発作が長引いたり再発を繰り返したりする場合は、病気が不可逆的になって進行性の障害につながることがあり、長期間の免疫抑制が必要になります。