|
骨粗しょう症とは骨密度が減少し、徐々に骨がもろくなり骨折しやすくなる病気です。
骨はカルシウムやリンなどのミネラルを含み、これらの成分が骨を硬く密にしています。骨密度を維持するためには、カルシウムやその他のミネラルを適切な量摂取することが不可欠です。同時に、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、カルシトニン、エストロゲン、テストステロンなどの数種類のホルモンが体内で必要な量つくられていることが必要です。食物からカルシウムを吸収して骨に取りこむためにはビタミンDも必要となります。ビタミンDは食事から吸収されるほか、太陽光を浴びると皮膚内でも合成されます(ビタミン: ビタミンDを参照)。
骨にかかる負荷は時とともに変化します。そうした変化に対応していくために、骨の内部では古くなった骨を壊して、新しい骨を生成する骨の再構築(リモデリング)(筋骨格系のしくみと働き: 骨を参照)が常に行われています。このプロセスでは、骨組織の小さな領域が吸収され、新たに形成された骨組織で置き換えられます。このプロセスが骨の各所で繰り返し行われ、健康な骨を維持しているのです。リモデリングが適切に行われているかどうかは、骨の形状や骨密度に影響を与えます。若いうちは体の成長に伴って骨の幅が広がり、軸方向へも伸長します。成長期を過ぎてからは骨の幅や厚みが増すことはありますが、伸長を続けることはありません。
成人の若年層では骨吸収よりも骨形成が活発に行われるため、30歳ごろまでは骨密度が増加します。その後、骨吸収が骨形成を上回って行われるようになると、骨密度は徐々に減少していきます。体内で十分な骨形成が行われなくなると、骨密度は減り続け、骨が次第にもろくなり、ついには骨粗しょう症になります。
骨粗しょう症の分類
米国では、約800万人の女性と約200万人の男性が骨粗しょう症になっているとみられています。骨粗しょう症には2つのタイプがあります。第1のタイプは原発性(一次性)骨粗しょう症で、特に原因となる病気がなく、骨の形成や吸収にかかわる機能の異常によって起こります。第2のタイプは続発性(二次性)骨粗しょう症です。これは原因となる別の病気があるために起こるもので、骨粗しょう症全体の5%未満がこのタイプです。続発性骨粗しょう症の原因となる病気には、慢性腎不全や内分泌疾患(クッシング症候群、副甲状腺機能亢進、甲状腺機能亢進、性腺機能低下、糖尿病など)があります。また、続発性骨粗しょう症を起こす薬剤には、コルチコステロイド薬、バルビツール酸、抗けいれん薬などがあります。アルコールの過剰摂取や喫煙も骨粗しょう症を悪化させますが、それが原因になるわけではありません。
原発性骨粗しょう症はさらに、(1)閉経後骨粗しょう症、(2)老人性骨粗しょう症、(3)特発性骨粗しょう症という3つの病型に分けられます。高齢の女性にみられる骨粗しょう症には、閉経後骨粗しょう症と老人性骨粗しょう症の2つの要素が混在しています。
閉経後骨粗しょう症: 閉経後骨粗しょう症(I型骨粗しょう症)は、主要な女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏が原因で起こります。エストロゲンは女性の体内で、骨へのカルシウムの取りこみを調節する働きをしています。I型骨粗しょう症は女性に多くみられ、男性の6倍の割合で発症しますが、高齢などでテストステロン値が低い男性や、去勢手術を受けた男性にも発症することがあります。閉経後骨粗しょう症は普通、51〜75歳の閉経後の女性に発症しますが、この年齢よりも早く、あるいは遅く発症する人もいます。女性では、閉経までの間は骨密度の低下が徐々に進みますが、閉経後は急速に減少します。女性の閉経後5〜7年の間の骨密度の低下幅は最大20%にもなります。しかし、すべての女性が閉経後骨粗しょう症を発症するわけではありません。たとえば、体重の軽い人の方が閉経後骨粗しょう症を発症するリスクが高くなります。それには2つの理由が考えられます。
白人の中でも肌の色が白く、ほっそりしたやせ型の女性は、骨粗しょう症を発症するリスクが高くなります。黒人やヒスパニックの女性では、白人やアジア系の女性と比べて骨粗しょう症を発症するリスクが低くなります。黒人やヒスパニックの女性では成人期の初期に強い骨がつくられるため、加齢や閉経に伴い骨密度が減少しても、持ちこたえられるのです。その他の危険因子には、高齢、若い年齢での閉経や外科手術による閉経、月経周期の異常(無月経)、神経性無食欲症などがあります。
老人性骨粗しょう症: 老人性骨粗しょう症(II型骨粗しょう症)は、加齢に伴うカルシウムやビタミンDの欠乏や、骨吸収と骨形成のバランスが崩れることによって起こるとみられています。老人性骨粗しょう症とは高齢者に発症するものを指します。通常は70歳以上の人に発症し、女性の方が男性の2倍多く発症しています。高齢の女性の中には、老人性骨粗しょう症と閉経後骨粗しょう症の両方の要素がみられる人もいます。
特発性骨粗しょう症: 特発性骨粗しょう症はまれなタイプです。特発性とは原因不明という意味です。小児期や青年期に発症し、体内のホルモンやビタミンの量は正常で明かな原因がないにもかかわらず、骨が弱くなります。
症状
骨密度の低下は非常にゆっくりと進みます。このため骨粗しょう症の初期には症状がなく、病気が進んでも自覚症状がまったく現れないこともあります。
骨密度が少なくなって、骨の変形や骨折が起こると、突然の強い痛み、または徐々に起こるうずくような骨の痛み、体の変形などが現れます。腕や脚などの長骨では、骨の中央部よりもむしろ骨端(骨の付け根)部分が骨折します。脊柱(椎骨)では、背中の中ほどから腰にかけて骨折が起こりやすくなります。特に脊椎は、骨粗しょう症による骨折を起こしやすい部位です。
椎骨の粉砕骨折(脊椎圧迫骨折)は、骨粗しょう症のどのタイプの人にも起こります。このような骨折を骨粗しょう症性骨折といいます。もろくなった椎骨は自然に、またはちょっとしたけがで骨折します。慢性の背中の痛みは、このような骨折が原因で起こります。痛みは突然に起こり、背中の一定の部分に集中して、立ったり歩いたりするとひどくなります。その部位に圧痛がみられることもあります。この痛みや圧痛は、数週間から数カ月後には徐々に治まってきます。いくつかの椎骨が骨折を起こすと、異常な脊椎の弯曲(老人性円背)を来し、強い変形に加え、筋肉の緊張やそれに伴う痛みも起こります。
これ以外の部位でも、軽い負荷や転倒によって骨折しやすくなります。中でも股関節の骨折は特に重大で、高齢者に身体的な障害をもたらし、自立した生活ができなくなる主要な原因となっています(骨折: 股関節の骨折を参照)。手首の骨折はコーレス骨折(骨折: 腕の骨折を参照)と呼ばれ、特に閉経後骨粗しょう症の人に多くみられます。骨粗しょう症の人では、骨折の治癒に時間がかかります。
診断
ちょっとした力が加わっただけで、あるいはまったく力が入っていないのに骨折した場合には、特に高齢の女性では骨粗しょう症を疑います。骨密度(骨に含まれるミネラルの密度)の測定によって、疑わしい症例の診断を確定したり、骨折が起こる前に骨粗しょう症を発見することができます。簡便なスクリーニング検査では、手首やかかとで骨密度を測定します。最も有効な検査は二重エネルギーX線吸収法で、脊椎や股関節など、大きな骨折の起こる可能性がある部位について骨密度を測定します。この検査は痛みを伴わず、5〜15分で行えます。骨粗しょう症のリスクの高い人や他の方法で診断がつかなかった人に行ったり、治療効果をモニタリングするときにも役立ちます。
血液検査で、血液中のカルシウムとリンの量を調べることもあります。治療可能な別の病気が原因となって起こる骨粗しょう症ではないことを確かめるためにその他の検査が必要となることもあります。原因疾患が見つかれば、続発性骨粗しょう症と診断されます。
予防
骨粗しょう症では一般に、治療よりも予防が有効です。失われてしまった骨密度を回復するよりも、骨密度の低下を防ぐ方が容易だからです。骨粗しょう症を予防するには、適量のカルシウムやビタミンDを摂取したり、体重の負荷がかかるような運動を行ったり、一部の人では薬を服用するなどの方法で、骨密度の維持や増加を図ります。
適量のカルシウムやビタミンDの摂取は有効な予防法で、特に骨密度が最大となる30歳ごろより前に行うと効果的ですが、それ以降でも効果は期待できます。1日あたりカルシウム約1500ミリグラムとビタミンD400〜800単位の摂取が勧められます。ビタミンDが強化された牛乳を約240ミリリットルのコップで2杯飲み、バランスの良い食事をとり、ビタミンDのサプリメントを服用することが大切です。また、多くの女性はカルシウムのサプリメントも用いる必要があります。市販されているカルシウムのサプリメントには、ビタミンDを含むものもあります。
骨に体重の負荷を与える運動(ウオーキング、階段を上るなど)は、骨密度を増加させます。水泳などの骨に負荷を与えない運動では、骨密度は増加しません。平衡感覚を養う運動も、転倒による骨折を防ぐために大切です。なお、閉経前の女性が運動選手のするような激しい運動をすると、卵巣からのエストロゲン分泌量が抑えられ、骨密度がやや減少してしまうという興味深い現象が知られています。
アレンドロン酸やリセドロン酸といったビスホスホネート製剤は、骨粗しょう症を予防する治療に使用され、エストロゲンと組み合わせて服用する場合もあります。
エストロゲン補充療法は、女性が骨密度を維持するのに役立ちます。この治療は、閉経後4〜6年以内に始めると最も効果がありますが、それ以降に始めても骨密度減少の進行を遅らせることができ、骨折するリスクは低くなります。閉経後、エストロゲン補充療法を実施するかどうかの判断は複雑です(閉経と更年期: ホルモン療法を参照)。それは、この治療には副作用やリスクを伴い、子宮癌(しきゅうがん)になるリスクが高くなったり、乳癌になるリスクもわずかに高くなったりするためです。エストロゲンとともにプロゲステロンを服用すると、子宮癌になるリスクは減りますが、乳癌になるリスクは変わりません。
ラロキシフェンはエストロゲンと似た薬です。骨密度減少の予防効果はエストロゲンほどではありませんが、エストロゲンを服用したときの典型的な副作用である乳癌と子宮癌の発症リスクがありません。この薬はエストロゲンが服用できない人や服用したくない人に使われています。
治療
骨粗しょう症の治療は、骨密度を増やすことが目的となります。それには毎日適量のカルシウムとビタミンDを摂取するようにします。
ビスホスホネート製剤(アレンドロン酸、リセドロン酸)は、骨粗しょう症のすべてのタイプに対する予防や治療に有用です。この薬は脊椎や股関節の骨密度を増やして骨折を防ぐ効果があります。起床直後にコップ1杯の水(180〜240ミリリットル)で服用します。服用後30分は食事、飲みもの、ほかの薬などはとらないようにします。また、ビスホスホネート製剤は食道粘膜を刺激するため、服用後少なくとも30分間、ならびにその後何か食物を摂取するまでは横にならないようにします。
ものを飲みこむ力が弱い人は、ビスホスホネート製剤を内服することができません。このような人には、別のビスホスホネート製剤であるパミドロン酸の静脈注射を行います。また、食道や胃に障害がある人、妊婦や授乳中の女性、血液中のカルシウム濃度が低い人、重度の腎疾患がある人には、ビスホスホネート製剤を使用できません。
カルシウムとビタミンDのサプリメントの使用は、通常、男女を問わず推奨されます。特に検査でカルシウムの吸収が不十分であることがわかった人には効果があります。男性は、エストロゲンによる治療は効果的ではありませんが、テストステロン値が低い人では、テストステロン補充療法が有効な場合があります。ビスホスホネート製剤による治療は、男性にも効果があります。
カルシトニンは、骨吸収を抑制する働きがあり、骨粗しょう症の治療にも使用されています。特に、痛みを伴う椎骨骨折に有効です。カルシトニンは、静脈注射またはスプレー式点鼻薬で投与します。この薬は血液中のカルシウム濃度を減少させることがあるため、治療中はその値をモニタリングします。
副甲状腺ホルモンを毎日少量ずつ静脈注射で投与して、新しい骨の形成を促し、骨密度を増加させることで骨折を防ぐ方法もあります。骨粗しょう症の治療法として期待されていますが、まだ試験段階にあります。
フッ化物のサプリメントの摂取も骨密度を増やすことがありますが、その結果できた骨は正常ではなくもろいため、あまり勧められません。骨質に対する副作用のない、新しいフッ化物製剤が現在試験中です。
骨粗しょう症によって起こった骨折の治療も必要です。股関節の骨折では、骨の一部または全部を人工関節で置き換える手術を行います(骨折: 股関節の骨折を参照)。手首の骨折では、手術をするか、骨折部位をギプスにより固定します。脊椎の圧迫骨折があり痛みを伴う人には、背中を支えるためのコルセットが使用されます。
脊椎の圧迫骨折には、椎体形成術も行われます。この手術に要する時間は、1つの椎体につき1時間ほどです。ポリメチルメタクリレートと呼ばれるアクリル樹脂の「骨セメント」をつぶれた椎体に注射器で注入することで、痛みを和らげ、骨の変形を防ぎます。圧迫骨折セメント固定は、椎体形成術と似ていますが、バルーンを用いてつぶれた椎体を押し広げて正常な形に戻し、そこにアクリル樹脂の骨セメントを注射器で注入するという方法です。
|