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ベル麻痺

ベル麻痺は、顔面の筋肉を刺激する第7脳神経(顔面神経)の機能不全により、顔の片側の筋肉に突然の脱力と麻痺が起こる病気です。

およそ10万人に23人の割合で何らかの時期に発症します。ベル麻痺の原因は不明ですが、顔面神経の腫れには、免疫疾患やウイルス感染がかかわっていると考えられます。腫れによって神経が圧迫され血流が減少します。通常の原因は、単純ヘルペスウイルスによるウイルス感染であることを示唆する証拠があります。米国北東部では特に、ライム病もベル麻痺の一般的な原因です。黒人では、サルコイドーシスも一般的な原因です。

症状

最初の症状は耳の後ろの痛みで、顔の筋力低下が起こる数時間から1〜2日前に現れます。ベル麻痺では顔面の脱力は突然に起こり、軽度の筋力低下から完全な麻痺までさまざまです。脱力は48時間以内に最高潮に達します。顔の片側だけが侵され、脱力が起きた側は、平坦な無表情になります。しかしながら患者には顔がしばしば引きつるように感じられ、それは表情がつくられるたびに、正常な側の筋肉が顔を引っぱりがちになるからです。感覚が正常なまま残っていても、ほとんどの人が顔面にしびれや、重さを感じます。

顔の上部が侵されると、障害が起きた側のまぶたが閉じにくくなったり、閉じ方が不完全になったりします。完全に閉じることができないため、眼が乾いて痛み、眼が傷ついたり失明に至ることさえあります。また、眼を閉じようとすると眼球が上方に回転する傾向があります。

ベル麻痺は、唾液の産生や舌の前部にある味覚、または涙の産生を阻害することがあります。侵された側の耳では、鼓膜を伸展させる筋肉が麻痺するために、音が異常に大きく聞こえる聴覚過敏と呼ばれる状態が起こります。

ときには、顔面神経の治癒に伴って異常な接続を形成するようになり、そのためにいくつかの顔面筋が予想外の動きをしたり、唾液の分泌中に眼に涙がたまる「クロコダイルの涙」と呼ばれる現象が現れたりします。

診断

ベル麻痺の診断は、症状に基づいて行われます。脳卒中による脱力は、顔全体よりも顔の下側だけに急に起こるため、ベル麻痺と区別できます。また脳卒中では、片側の腕や脚の筋力低下を起こすのが典型的です。

顔面神経の麻痺を引き起こすその他のまれな病気は、症状の現れ方が遅いため、ベル麻痺とは区別がつきます。そのような病気には脳腫瘍、顔面神経を圧迫するその他の腫瘍、中耳や乳突蜂巣の感染症、頭蓋底の骨折などがあります。医師は通常これらの病気を、その人の病歴、X線検査、CT検査やMRI検査に基づいて除外します。ライム病やサルコイドーシスのチェックには、血液検査が行われます。ベル麻痺に特有の検査はありません。

治療と経過の見通し

ベル麻痺は、単純ヘルペスウイルスを原因とみなして治療します。ウイルスの複製を阻害するために、アシクロビルと呼ばれる抗ウイルス薬が投与されます。プレドニゾロンなどのコルチコステロイドは、神経の腫れを抑えるために服用します。最大の治療効果を得るには、発症後2日以内に治療を開始し1〜2週間継続します。

顔面の筋肉が麻痺して眼が完全に閉じられない場合は、失明のリスクを減らすために眼を乾燥から保護しなければなりません。人工涙液や生理食塩水を含む点眼薬を、眼が完全に閉じられるようになるまで続けます。眼帯も必要です。

神経への弱い電気刺激や、顔面の筋肉のマッサージは、効果が証明されていません。6〜12カ月たっても顔面の動きが回復しない場合には、第12脳神経(舌下神経)と顔面神経をつなぐための、舌下神経‐顔面神経吻合術が行われます。この手術によって顔面の動きは部分的に回復しますが、食べたり話したりが困難になるため、めったに実施されません。

顔面の麻痺が部分的な場合は、治療の有無にかかわらず、ほとんどの人が1〜2カ月以内に完全に回復します。麻痺が顔全体に起きているときには、治療結果に差が出ます。完全に回復しない患者も多く、顔の筋力低下が残り、顔が垂れ下がってきます。

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