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はじめに

うつ病と躁(そう)病は気分障害の両極にあたる状態です。精神障害のうち、長期間にわたり悲しみで過度に気持ちがふさぎこむ(うつ病)、または喜びで過度に気持ちが高揚する(躁病)といった情動的な障害を気分障害といいます。

気分障害は感情障害とも呼ばれます。感情とは、顔の表情やしぐさによって示される心の状態を意味します。

悲しみや喜びは日常生活で普通に経験する感情で、これらは気分障害の特徴である抑うつや躁状態とは異なります。悲しみは、喪失、敗北、失望、心の傷(トラウマ)、破局などに対する自然な反応です。悲しむことで、いやな状況や不快な状況を回避することができ、そのことが回復を助けるため、心理的には有益なことです。

愛する人の死、離婚、失恋など、何らかの喪失や離別に直面した人が嘆き悲しむのは、最も一般的で自然な反応です。ただし死別や喪失も、気分障害の傾向がある人を除いて、多くの場合には日常生活に支障を来すほど抑うつ状態が長引くことはありません。

通常は成功や達成によってもたらされる喜びや高揚感が、抑うつに対する自己防衛として、あるいは喪失の痛みを打ち消すために現れる場合があります。たとえば死を目前にした人が一時的に意気揚々としたり、落ち着かない行動を示すことがあります。また、大切な人を失ったばかりの人が、悲しむのでなく、高揚してはしゃぐことがあります。気分障害の傾向がある人の場合、このような反応は躁病の前兆と考えられます。

気持ちの落ちこみまたは高揚が過度に強く、起きた出来事から考えても長びきすぎていると思われる場合は、うつ病または躁病と診断されます。正常な感情反応とは異なり、うつ病と躁病は身体機能を損ない、社会生活や仕事の上でも大きな支障をもたらします。

米国では人口の約10%の人が、専門的な治療を必要とするほど重度のうつ病を経験します。そのうち3分の1は慢性のうつ病で、残りの大半は、正常な気分の状態の間に散発的に抑うつがみられる反復性のうつ病です。慢性と反復性のいずれも、うつ病だけの場合は単極性と呼ばれます。米国では、躁うつ病と呼ばれる双極性の障害が人口の2%近くにみられ、抑うつと躁状態(または軽躁状態と呼ばれる軽い躁状態)が交互に現れます。抑うつ状態がない躁病の場合も単極性と呼ばれますが、非常にまれです。

季節性感情障害とは

晩秋から冬にかけては多くの人が気分が沈みがちになりますが、日照時間が短くなり、気温が低くなっていくのがその原因とされています。しかし中には、この時期の気分の落ちこみが極度に激しい人がいます。これはうつ病の1種で、季節性感情障害と呼ばれるものです。季節性感情障害は、10〜11月ごろに抑うつが始まり、2〜3月ごろに治まるというサイクルを繰り返すのが特徴です(秋冬うつ病ともいう)。この障害は、冬が長く厳しい南北の高緯度地域によくみられます。季節性感情障害は、普通なら夜間に分泌されるメラトニン(脳の中央部にある松果体が産生するホルモン)の分泌時間が長くなることが原因と考えられています。

主な症状としては、無気力、日常活動に対する関心の低下や引きこもり、過眠、過食などがあります。春になると、症状は徐々に回復します。しかし、季節性感情障害の中には、春になると症状が急転し、エネルギーに満ちて活動的になり、睡眠への欲求が低下し、食欲が減退するなど、冬の症状とは正反対の症状になる人もいます(春夏軽躁病ともいう)。

季節性感情障害の治療には、光線療法が最も効果があります。これは閉めきった部屋で人工光を浴びる方法です。治療の目的で特定の季節を再現するため、光の照射時間を夏は長く、冬は短くといった形でコントロールします。

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