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自殺行動

自殺行動を特徴づけるのは、自殺を図って死に至る、あるいは自殺を試みて失敗するという実際の行動です。

自殺行動は、その人の失意や絶望感を示す明確なシグナルです。自殺行動には、自殺未遂、自殺演技、自殺既遂があります。自殺未遂とは、自殺行為を行ったが死には至らなかった場合をいいます。結果的には同様に自殺未遂であっても、その行為で死に至る可能性があるとは思われない場合を、自殺演技といいます。このような行動(たとえば、アセトアミノフェンを6錠服用するなど)を取る人は、本気で死のうと考えているのではなく、助けを求め、自分に注意を向けさせようとしているのです。自殺既遂とは、自殺により実際に死に至った場合をいいます。

自殺者の数に関する情報源は、主に死亡証明書や調査報告であるため、実際の自殺率よりも低く見積もられている可能性があります。そうだとしても明らかに、自殺行動は日常的に起きている健康問題です。自殺行動の大半は死亡にまでは至らないとはいえ、死ぬ可能性のある手段で自殺を試みた人の10%が、その行為により実際に死亡しています。

自殺行動は年齢や性別にかかわりなく生じます。米国では、青年期の死因として自殺は2番目に多く、成人でも死因の上位10位以内に入っています。自殺により実際に死に至る割合が最も大きいのは70歳以上の男性です。これと対照的に、自殺未遂は中年以下の若い層に多くみられます。自殺未遂が特に多いのは、青年期の若い女性と30代の独身男性です。すべての年齢層を含めると、女性が自殺を試みる割合は男性の2〜3倍ですが、その試みから実際に死に至る割合は男性の方が高くなっています。

既婚者は男女ともに、特に夫婦の仲が安定している場合は、独身者に比べて自殺率がはるかに低くなります。離別、離婚、配偶者との死別などで1人暮らしをしている人の場合は、自殺未遂や自殺既遂の発生率が高くなります。家族に自殺者がいる人の場合もリスクが増大します。

黒人女性の自殺率は過去20年間で80%上昇したため、特に都市部では、黒人全体の自殺率は白人と同等になりつつあります。アメリカ先住民の自殺率も近年やや上昇傾向にあり、一部の部族では全国平均の5倍になっています。世界中のどこでも、自殺率は地方より都市部の方が高くなっています。刑務所内でも多数の自殺が発生します。

多くの宗教団体の熱心な教徒(特にローマカトリック教とユダヤ教)には、自殺が少ない傾向がみられます。これらの人々は一般に、自殺を禁じる教えや信仰心によって支えられ、自己に対する破壊的行為から互いを守る緊密な結束を築いています。しかしながら、宗教団体に所属して強い信仰心をもっていたとしても、挫折や怒り、絶望の渦中で、罪悪感や生きる価値がないとの思いこみにとらわれれば、突発的な自殺行動を起こす衝動を完全に防ぐことはできません。

自殺既遂者の約4人に1人が遺書を残しています。遺書はしばしば、本人が死んだ結果として起こるであろう人間関係や出来事について触れています。年配の人が残す遺書には、残される人を気づかう内容が書かれている場合が多くみられますが、若い人の遺書には、怒りや復讐の内容が多くなります。遺書の内容から、自殺の引き金となるような何らかの精神障害があったことがわかる場合もあります。

自殺のハイリスク要因

  • 55歳以上
  • 男性
  • 痛みや体の不自由さを伴う病気
  • 1人暮らし
  • 借金または貧困
  • 近しい人との死別
  • 屈辱や恥辱
  • うつ病(特に、精神病性の症状や不安を伴うもの)
  • 他のうつ症状が軽快しても悲しみの感情が持続する状態
  • 薬物やアルコールへの依存状態に陥ったことがある
  • 以前に自殺を図ったことがある
  • 家族に自殺をした人がいる
  • 身体的または性的虐待を含む家庭内暴力
  • 自殺のことで頭がいっぱいで、そのことばかり話す
  • 詳細な自殺計画

原因

自殺行動は、概していくつかの要因の相互作用によって起こりますが、その最も多い要因がうつ病です(うつ病と躁病: うつ病を参照)。実際、自殺未遂の50%以上にうつ病がかかわっています。結婚問題、恋愛上のトラブルや破局、両親との確執(青年期の場合)、愛する者との別れ(特に高齢者の場合)などがうつ病を促進します。さまざまな問題の末に、大切な人間関係の破局といった1つの要因が最後の引き金になることがよくあります。

身体疾患に伴う抑うつがもとで、自殺を図る場合もあります。自殺率の上昇と関連する身体疾患の多くは、神経系や脳に直接的な影響を及ぼすもの(エイズ、痴呆、側頭葉てんかんなど)か、その病気の治療によりうつ病を誘発する可能性があるもの(高血圧治療に用いられる一部の薬など)のいずれかです。不安や妄想など精神病性の特徴を伴ううつ病の場合は、こうした徴候がないうつ病に比べて自殺のリスクが高くなります。

小児期に家庭崩壊、親の愛情の欠如、虐待など心に傷を残すような体験がある人は自殺を図る割合が高く、これはおそらく、うつ病になるリスクが高いことによるものです。夫から虐待を受けている妻にも自殺未遂が多く、その多くは小児期にも虐待された経験をもっています。

抑うつは飲酒によりさらに悪化し、自殺行動を促進することがあります。飲酒で自制心が失われることも自殺傾向を助長します。自殺を図った人の約30%が、事前に飲酒しています。アルコール依存症の人、特に大酒を飲んで酔って騒ぐタイプの人は、酔いがさめたときにしばしば深い自責の念に駆られるため、しらふのときでも自殺傾向があります。

うつ病以外の精神障害がある人でも、自殺のリスクは高くなる場合があります。統合失調症(統合失調症と妄想性障害: 統合失調症(精神分裂病)を参照)などの精神病性障害があると、自殺を命令する幻聴(聴覚性の幻覚)が起こることがあります。境界性人格障害(人格障害: 境界性人格を参照)や反社会性人格障害(人格障害: 反社会性人格を参照)で、特に暴行歴のある人は、自殺演技や自殺未遂を報復や自己主張の手段とする場合があります。

方法

自殺の方法の選択は、文化的背景やそのときに実施が可能かどうかに左右されることが多く、その人が本気かどうかを必ずしも反映しているとは限りません。ほぼ確実に死に至る方法(高層ビルから飛び降りるなど)もあれば、助かる可能性がある方法(薬の過量服用など)もあります。ただし、致死的でない方法を取った人も、致死的な方法を取った人に劣らず本気で死のうとしている場合もあります。

服薬自殺と服毒自殺は、自殺に最も一般的に使われる方法です。自殺未遂で現在最も多く使われているのはアセトアミノフェンですが、抗うつ薬やいろいろな薬を混ぜて飲む方法もよく用いられます。

銃や首つりなどの方法を用いるとほぼ確実に死に至るため、自殺未遂に占める割合はあまり多くありません。米国における自殺既遂者の中では、銃による自殺が最もよく用いられる方法で、圧倒的に男性に多い手段です。女性の場合は、服毒、服薬、入水などの暴力的でない方法を選ぶ傾向がみられます。

予防

自殺未遂や自殺既遂が家族や友人に思いもよらぬ衝撃を与える場合もありますが、ほとんどのケースで本人は、それ以前から明らかな警告サインを発しています。自殺をほのめかす言動や自殺行為は、その人が助けを求めているサインであり、真剣に受け止めるべきです。こうしたサインを無視するようなことがあれば、命が失われるおそれがあります。

自殺をほのめかす言動がみられたり、実際に自殺未遂を起こしてしまった場合は、ただちに警察に連絡し、救急車を呼びます。救急車が到着するまで、受容的な態度で穏やかに話しかけます。

自殺をほのめかす言動がある場合や自殺未遂をした場合は、通常は入院させて様子をみます。米国の大半の州では、自殺のリスクが高いと判断した場合には、本人が入院を拒む場合でもその意思に反して医師が入院させる権限が認められています。

ホットラインで自殺を防ぐ

周囲に自殺をほのめかす人は、いわば危機的状況にあります。苦しみの渦中にある人のため、米国では全国各地にある自殺防止センターが24時間体制で、電話によるホットラインを提供しています(インターネット上の電子メールでのホットラインも利用可能)。自殺防止センターでは、特別な訓練を受けたボランティアのスタッフがその任にあたっています。

自殺の危険があると思われる人がホットラインに電話をかけてきた場合、スタッフはその人と何らかの関係を築く道を探り、名前を繰り返し呼ぶなどして、個人のアイデンティティを思い出させます。ボランティアは、自殺の危機をもたらした問題に対して建設的な助言をし、解決に向けて前向きに行動するよう励まします。また、その人のことを心配し、助けたいと思っている家族や友人がいることを思い出させる場合もあります。さらに緊急時のサポートとして、自殺の衝動に駆られている人が専門家と直接会って援助を受けられるように手配することもあります。

すでに自殺行為をしてしまった(薬を過量服用した、ガス栓を開いたなど)、今から自殺しようと思っているなどと電話をかけてきた場合には、住所を聞き出します。聞き出せないときは、別のボランティアが警察と連絡を取って電話を逆探知し、救助に向かいます。こうした場合は、警察が到着するまで電話で会話を続けます。

自殺の影響

自殺行為は周囲の人に感情的な衝撃を与えます。家族、友人、医師は、自殺を防げなかったことに罪悪感を抱き、自責の念に駆られます。本人に対し怒りの感情がわいてくることもあります。それでもやがて、わかっていても防げなかったかもしれないと考えるようになっていきます。カウンセリングを受けたり、自殺者の遺族などが集まる自助グループに参加することは気持ちの整理に役立ち、罪悪感や悲しみに対処していく上での助けとなります。支援団体などに関する情報は、かかりつけの医師や地域の精神保健サービスを通じて得ることができます。また、全米自殺防止財団(AFSP)などの全国的な機関でも多くの場合、地域の支援団体についての情報を収集しています。インターネットで情報を検索することもできます。

自殺未遂が引き起こす衝撃も同様です。それでもこの場合は家族や友人には、助けを求める声に適切に対応していくことで気持ちの整理をつける機会があります。

自殺ほう助

自殺ほう助とは、自殺願望のある人に対して、医師やその他の医療従事者、家族、友人などが自殺を手助けすることをいいます。医師は通常生命を守ることを目指すものであり、自殺ほう助は正反対の行為であるため、これに関してはさまざまに意見が分かれています。米国ではオレゴン州を除くすべての州で、自殺ほう助は違法行為とされています。オレゴン州以外の州では、医師は体と心の苦しみを軽減させるための治療を行うことはできますが、死を早めることを目的とした行為はできません。

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