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性同一性

性同一性とは、本人が自分自身の性別をどうみているか―すなわち自分が男性、女性、あるいはその中間のいずれであると考えているのかということです。これに対し、性役割とはその人が客観的に、あるいは世間の目からみて、男性、女性、あるいはその中間のいずれとみなされているのかということです。ほとんどの人では、性同一性と性役割が一致しています。たとえば多くの男性は心の中で自分を男性として認識するとともに、世間的にも男らしくふるまいます。

性同一性は小児期の初め、1歳半から2歳ごろまでに形成されます。子供のうちから、男児には自分が男であるという認識が、また女児には自分が女であるという認識がはぐくまれます。子供はときに、どちらかというと異性の子供に向いているとされる遊びを好むことがあります。しかし、たとえば女の子なのに野球や取っ組み合いが好きだとしても、本人が自分を女だと思い、そのことに満足している限り、性同一性に問題があるわけではありません。同様に、スポーツや荒っぽい遊びよりも人形遊びや料理が好きな男の子でも、本人が自分を男だと思い、そのことに満足しているのであれば、性同一性障害ではありません。

男女の性別がはっきりしない生殖器をもって生まれた子供の場合は、どちらかの性に決めて育てれば、たとえ本人の身体的性別とは反対の性役割として育てられたとしても、性同一性障害にはなりません。しかし、この方法が失敗して、大きく報道されたケースがいくつかあります。

性同一性障害と性転換症

身体的な性別と自分自身の内的な感覚が一致せず、自分の性(男性なのか女性なのか、その中間なのか、あるいは中性なのか)に著しい違和感を感じている人は多くの場合、性同一性障害です。性同一性障害の極端な形が性転換症(トランスセクシュアリズム)と呼ばれるものです。

性転換症の人は、自分は生物学的な偶然の出来事の犠牲者で、自分の真の性同一性に適合しない体に無残にも閉じこめられていると信じています。性転換を希望する人のほとんどが身体的には男性で、たいていは小児期の早期から自分は女性であると感じていて、自分の生殖器や男性的な外見に嫌悪感を抱いています。性転換症はおおよそ、男性の3万人に1人、女性の10万人に1人の割合で生じるとみられています。

性転換症の人は、自分が不快に感じる体をもって生きるつらさに対処していくための助力や、性転換というプロセスに立ち向かうための精神的な支えを求めることがあります。多くの場合、カウンセリング、ホルモン療法、電気脱毛、性転換手術を組み合わせた対応が役立っているようです。

性転換症の人の中には、自分の身体的性別とはかかわりなく職種、生活スタイル、服装などを選択し、自分の社会的な性役割を変えることで満足するケースもあります。性役割が変わったことの確証になる証明書(運転免許証など)を入手するといった行動を取ることもあります。この人たちはどのような方法であれ、自分の体の構造を実際に変えようとはしません。この人たちの多くは「トランスジェンダリスト」と呼ばれ、精神障害としては扱われません。

性転換症の人の中には、身体的性別とは逆の性の行動、服装、しぐさをするだけでなく、性ホルモンの投与を受けて第二次性徴を変える人もいます。身体的性別が男性である場合は、女性ホルモンのエストロゲンを使用すると胸が大きくなる、男性器がしぼむ(性器萎縮)、勃起状態が持続しなくなるなど体の変化が生じます。身体的性別が女性の場合は、男性ホルモンのテストステロンを使用すると、顔の毛が濃くなる、声が低くなる、体臭が変わるなどの変化が起こります。

さらに、性転換手術を受けたいと考える人もいます。身体的性別が男性の場合は、陰茎(ペニス)と睾丸(こうがん)を除去し、人工腟を形成します。身体的性別が女性の場合は、乳房と生殖器(子宮、卵巣)を除去し、腟を閉鎖し、人工ペニスを形成します。男女とも、手術の前に性ホルモンの投与を受けます(男性から女性の転換にはエストロゲン、女性から男性への転換にはテストステロン)。

性転換手術を受けると子供はつくれなくなりますが、多くの場合、かなり満足がいく性的関係をもつことはできるようになります。術後もオルガスムに達する能力は保たれることが多く、初めて性的な快感が得られたと報告する人もいます。しかし、別の性として性的な機能を果たせるようになりたいという目的だけで性転換手術を受けるケースはほとんどなく、通常は性同一性を一致させることが主な動機です。

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