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食道癌

最も一般的な食道癌は扁平上皮癌と腺癌で、食道粘膜に発症します。このような癌は食道のどの部位にも発生し、食道が狭くなったり(狭窄)、食道内に腫瘤(しゅりゅう)ができる、粘膜に扁平な病変(斑)ができる、食道と気管につながる異常な通路(瘻)ができるといった形で現れます。

米国では食道癌は年間約10万人に3人の割合で発症しています。扁平上皮癌と腺癌のいずれも女性より男性に多くみられます。扁平上皮癌は黒人に、腺癌は白人に多くみられます。特に1970年代から、白人の男性を中心に腺癌の発症頻度が急激に増加しています。

まれなタイプの食道癌

あまりみかけませんが、食道癌の中には悪性リンパ腫(リンパ系の癌)や平滑筋肉腫(食道の平滑筋にできる癌)、転移性癌(別の部位から食道に転移した癌)があります。いずれも女性よりも男性に多くみられます。

悪性リンパ腫を発症する危険因子は、ヘリコバクター‐ピロリ(H.ピロリ)によると思われる感染症(H.ピロリによって潰瘍が生じます)、免疫機能不全、放射線の被ばく(偶発的に浴びた場合や、食道付近の癌を治療するための放射線療法に伴うもの)です。食道への癌転移の危険因子は、どの部位に最初の癌が発生したかによって異なります。肝臓癌、乳癌、皮膚癌の1種である黒色腫は、他の部位の癌に比べて、食道へ転移(転移性癌)しやすい傾向があります。平滑筋肉腫については、発症の危険因子はわかっていません。

悪性リンパ腫は、化学療法と放射線療法の併用で生存期間が延び、治癒することもあります。平滑筋肉腫は、手術で腫瘍を切除すると症状は一時的に改善しますが、癌が完治する見込みはありません。手術後に化学療法を行うと、わずかに生存期間が延びます。転移性癌は、食道を閉塞するおそれがあるので、チューブ(ステント)を留置したりレーザー治療で閉塞部を治療します。転移性癌に対する化学療法または放射線療法の適応は、食道へ転移した癌のタイプによって異なります。

危険因子

喫煙と飲酒は食道癌の最大の危険因子であり、腺癌よりも扁平上皮癌の発症と密接に関係しています。ヒトパピローマウイルス感染症を患っている人、頭頸部癌の既往がある人、あるいは食道周囲の器官の癌で放射線療法を受けている人は、食道癌になりやすい傾向があります。

食道アカラシア、食道ウェブ、強酸など腐食性物質の誤飲などが原因による食道障害のある人も、食道癌になるリスクが高い人たちです。また、強い胃酸が食道に逆流して炎症を繰り返すこと(胃食道逆流)で食道粘膜が長期間刺激を受け続けると、バレット食道と呼ばれる前癌状態を呈します。多くの先進国では、バレット食道から食道癌を発症するケースは少ないのですが、他の食道癌と比べて頻度の増加が速くなっています。

症状

早期の食道癌は無症状です。固形物を食べたときに、のどのつかえから初めて気がつくことがよくあります。これは癌が大きくなって食道の内側が狭くなったためです。数週間もすると軟らかい食べものや水分も飲みこみづらくなります。この状態が続くと食欲はあっても体重が減ってきます。

癌が進行すると周囲のさまざまな神経、組織、器官を障害します。声を調節している神経を腫瘍が圧迫すると声がかすれます。頸部交感神経を圧迫するとホルネル症候群(まぶたが下がるホルネル症候群を参照)を起こし、痛みやしゃっくりを生じます。癌が進行して肺に転移すると息切れがしますし、肝臓に転移すると発熱と腹部の腫れがみられ、骨に転移すると激しい痛みを伴います。脳にまで癌が転移すると頭痛、錯乱、けいれん発作が現れ、腸に転移すると嘔吐、血便、鉄欠乏性貧血がそれぞれ認められます。腎臓に転移した場合は、しばしば症状がありません。

食道癌の末期になると食道が完全に閉塞します。その結果、飲みこむことがまったくできなくなり、唾液まで口の中にたまるようになるため大変苦痛です。

診断

食道癌が疑われた場合、最も確実な診断方法は、内視鏡を口から入れて食道の様子を観察する内視鏡検査です。検査中に食道の組織を採取して(生検)、その細胞を顕微鏡で調べます(ブラシ細胞診)。食道造影と呼ばれるX線検査(X線に映るバリウム溶液を飲んでから行う検査)でも、狭窄や食道外からの圧迫がわかりますが、この方法では粘膜の微小病変の検出は困難です。CT検査や超音波検査、超音波内視鏡と呼ばれる新しい画像診断技術を使い、より詳細に癌の広がりを調べることもあります。

経過の見通しと治療

食道癌は転移するまで発見されないことが多く、死亡率の高い病気です。5年以上生存できる人は5%未満です。多くの人が初期の症状に気づいてから1年以内に死亡しています。ほとんどのケースの食道癌は致死的なので、痛みと嚥下機能のコントロールを目的に治療をします。この痛みと嚥下障害は、患者にとってもその家族にとっても生活を大きく脅かすもので(死と終末期: 消化器の障害を参照)。

手術で癌を摘出すると、症状が軽減する期間は長くなりますが、完治することはまずありません。食道癌は手術をする前にすでに転移しているためです。化学療法の単独または放射線療法との併用療法を行うと、症状は改善し2〜3カ月ほどは延命できます。放射線療法と化学療法の併用療法の後に手術をすると治癒率が上がることもあります。その他の方法は症状を軽減するためのみの治療で、食道の狭窄部位を広げてチューブ(ステント)を留置したり、腸の一部を引き上げて食道バイパスを形成したり、食道を閉塞している腫瘍に対して、高エネルギーの光線を照射して破壊するレーザー焼灼法などがあります。

症状を軽減する最新の治療法は、光力学療法です。これは光感受性の物質を治療開始の48時間前に静脈内投与します。この物質は食道周囲の正常細胞よりも腫瘍細胞に多く取りこまれます。内視鏡からレーザー光を照射するとこの物質が活性化され癌細胞だけを殺傷させ、食道を広げることができるのです。光力学療法は、体力がないために手術を受けられない人にとっては、放射線療法や化学療法よりも早く症状を改善できます。

食道癌ではいずれの治療を行うにしても、治療に耐えられるように適切な栄養管理が必要です。食べものを飲みこむことができる場合は、濃縮した液体状の栄養補給剤を摂取します。飲みこむことができない場合は、鼻または口から胃まで通したチューブで流動食を補給したり、静脈から直接栄養を補給する必要があります。

食道癌は死亡する可能性があるため、患者は先のことを考えておく必要があります。このためどのようなケアを望んでいるのか、また終末期ケアの必要性について、医師とは何でも話し合っておく必要があります。意思が通じるときに事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)(法的問題と倫理的問題: 事前指示書を参照)を作成しておく場合もあります。

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