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ほとんどの大腸癌は結腸と直腸の粘膜の分泌腺組織にできる腺癌です。初めは、結腸や直腸の粘膜やポリープがボタンのようにふくらんできます。癌が進行すると結腸壁や直腸壁に浸潤します。周囲のリンパ節にも浸潤します。腸壁、特に直腸壁からの血液は肝臓へ流れるため、肝臓へ広がりやすく(転移)、その後すぐにリンパ節にも転移します。
欧米諸国では大腸癌は2番目に多い癌で、癌による死亡原因でも第2位になっています。大腸癌の発症は40歳以降から多くなり、60〜75歳が最も多くなります。米国では年間約10万人に50人の割合で発症しています。大腸癌のうち、結腸癌は女性に多く発症し、直腸癌は男性に多く発症します。結腸癌または直腸癌患者の約5%には、結腸と直腸に別々に発生したと思われる2つ以上の癌がみられます。
危険因子
家族に大腸癌患者がいたり大腸ポリープの家族歴(消化器系の腫瘍: 大腸と直腸のポリープを参照)がある人は、リスクが高まります。潰瘍性大腸炎やクローン病のある人は、大腸癌の発症リスクがさらに高いグループとみられ、この人たちのリスクは発病年齢や罹患期間と関係しています。
大腸癌の発症リスクの高い人たちは、食事が高脂肪食で食物繊維の足りない傾向がみられます。空気汚染や水質汚染がひどい所で生活している場合は特に、発癌物質(癌を誘発する物質)の影響によってリスクがさらに高くなります。
症状
大腸癌はゆっくりと進行し、長い間無症状です。症状は癌の種類やできた部位、範囲によって異なります。
症状は、潜血(見た目ではわからないほどの出血量)からくる疲労や脱力があるくらいです。腫瘍が結腸の左側(下行結腸)にあると、早期に腸が閉塞する可能性があります。それは下行結腸は細く、腸内の便がすでに半固形状態になっているため、そこで癌が発育すると便が詰まってしまうからです。癌は結腸のこの部位に輪状に生じ、閉塞に至る前には便秘と下痢を頻繁に繰り返します。けいれん性の激しい腹痛を起こし排便障害が起こるので、すぐに治療を受けなければいけません。結腸の右側(上行結腸)に癌ができた場合は、そこにできた癌が末期になるまで閉塞することはありません。上行結腸は太く、腸内の便はまだ水様性だからです。癌は腹部の触診で大きなしこりとして発見されることもあります。
ほとんどの結腸癌は出血しますが、進行はゆっくりです。血液が便に筋状についたり便に混じっていることが多いのですが、出血が認められないこともあります。この場合は便潜血反応の検査をします(消化器の病気の症状と診断: 便潜血反応検査を参照)。直腸癌の初期の症状は排便時の出血です。たとえその人に痔核や憩室があるとわかっていても、血便が認められれば癌との鑑別診断をしなければなりません。このほかの症状として、排便時の痛みや残便感があります。座るときに痛むことがありますが、普通は周囲に癌が転移するまでは痛みはありません。
診断
まず日常的なスクリーニング検査で便の潜血反応を調べます。この検査を正確に行うためには、便を採取する3日前から赤身の肉を除いた食物繊維の多い食事を取るようにします。この検査結果とは別に、直腸の触診から得た便を調べます。出血が認められればさらに詳しい検査をします。
スクリーニング検査では、S状結腸鏡(大腸の下部の様子を見るための内視鏡)検査も行います。大腸癌のリスクが高い人は大腸内視鏡で大腸全体を調べます。発育した癌が見つかればその場で内視鏡による切除をします。手術で切除しなければならない場合もあります。
血液検査は大腸癌の診断には役に立ちませんが、腫瘍を切除した後の治療効果をみるのに役立ちます。たとえばCEA(癌胎児性抗原)は切除前には高値ですが、切除後は下がります。したがってCEA値が再び高くなると癌が再発していることがわかります。このほかにもCA19-9、CA125といった腫瘍マーカーがあり、CEAと同様に、大腸癌の進行度や治療効果を判定する指標となっています。
経過の見通しと治療
結腸癌は、転移する前に早期に腫瘍を切除できれば完治する可能性があります。結腸粘膜に深く入りこみ結腸壁へ達している癌は、確認できなくてもしばしば転移しています。主な治療は手術で、およそ70%の患者が治癒しています。
ほとんどの結腸癌では、癌に侵された部位とその周囲のリンパ節を摘出して、残った正常な腸を再びつなぎます。癌が大腸壁を穿孔(せんこう)している場合や非常に限られた周囲のリンパ節に転移がある場合は、手術で目に見える癌をすべて摘出した後に化学療法を行うと、生存期間が長くなります。しかしその治癒効果はあまり期待できません。
直腸癌の治療では、肛門からの位置と直腸壁への深達度に応じて、さまざまな手術法があります。直腸と肛門を全摘出する場合は、永久的な人工肛門形成術を行います。大腸と腹壁の間に便を排泄するための人工的な開口部をつくります。これによって大腸の内容物(便)は腹壁を通して人工肛門バッグへ入ります。できれば直腸の切除を必要最小限にして、癌を摘出した直腸の先端部と正常な肛門を残しておきます。その後、直腸端と結腸端を再びつなぎます。
直腸癌が直腸壁を穿孔していた場合や非常に限られた周囲のリンパ節に転移がある場合は、手術で目に見える癌をすべて摘出した後に化学療法を行うと、生存期間を延ばせる可能性があります。また癌を切除した後に放射線療法を行うと、残存腫瘍の増殖を抑え、再発を遅らせて生存期間を延ばすことも期待できます。
癌が結腸や直腸からリンパ節、腹腔粘膜、他の臓器へ転移している場合は手術だけでは完治しません。こういうケースでは、一般的に生存期間はわずか7カ月ほどです。化学療法薬(抗癌剤)のフルオロウラシル(効果を高めるために他の化学療法薬と併用する場合がある)を使用した化学療法は、手術後の補助療法として行われていますが、化学療法によって生存期間が長くなることはほとんど期待できません。ですから、患者本人や家族は主治医や医療・看護スタッフと終末期のケアについて話し合っておかなければなりません(死と終末期: はじめにを参照)。癌が広く転移している場合でも、大腸の閉塞を改善したり閉塞を起こさせない目的で手術が行われることがあります。
癌が肝臓のみに転移した場合は、肝臓へ流れる動脈に化学療法薬を直接注射する方法があります。動いても大丈夫なように皮下に固定した小さなポンプか、あるいはベルトで体に装着した小ポンプから、化学療法薬を持続的に注入します。この方法は従来の化学療法と比べて有効ですが、今後さらに研究が必要です。癌が肝臓よりも遠隔に広がった場合はこの方法は適応できません。
体力がないために手術ができない人には、デシケーションという、癌の水分を乾燥させて縮小させる方法もあります。これには癌の表面に高周波電流を通電したプローブをあてる方法(電気焼灼法)や、高周波電流によりイオン化したアルゴンガスで癌を乾燥・凝固させる方法(アルゴンプラズマ凝固法)があります。いずれの方法も大腸内視鏡を使って行われます。癌が小さくなるので症状が軽減し、生存期間もやや長くなりますが、この治療で完治することはありません。
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