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膀胱癌

米国では、年間に約5万4300人が新たに膀胱癌と診断されています。男性が膀胱癌になる割合は女性の約2.5倍です。単独の危険因子としては喫煙が最大で、新たな症例のうち少なくとも半数で、基礎にある原因の1つとみられています。工業用に使われる化学物質の中にも尿中に濃縮されて癌を引き起こすものがありますが、近年はこうした化学物質にさらされることは少なくなってきています。住血吸虫症という寄生虫感染症や膀胱結石による慢性的な刺激でも、膀胱癌が発生しやすくなります。しかし膀胱癌の全症例の原因に、こうした刺激が占める割合はわずかです。

膀胱癌は大半が移行上皮癌で、腎盂や尿管の上皮細胞癌と同じタイプです。

症状と診断

尿に血液が混じっていると、たいていはまず膀胱癌が疑われます。定期健康診断で行う尿の顕微鏡検査で赤血球が検出され、尿に血が混じっていることがわかる場合もありますが、肉眼でわかるほど尿が赤くなることもあります。後から現れる症状には、排尿時の痛みと灼熱感、切迫した尿意、頻尿などがあります。膀胱癌の症状は膀胱感染症(膀胱炎)(尿路感染症: 膀胱炎を参照)の症状に似ていて、両者が同時に生じることもあります。膀胱炎の治療で症状が消えなければ、膀胱癌が疑われます。尿の特殊顕微鏡検査(細胞診)(腎臓と尿路の病気の症状と診断: 尿の細胞診を参照)で、しばしば癌細胞が見つかります。

膀胱造影や静脈性尿路造影(造影剤を静脈に注射してX線撮影を行う検査)で膀胱壁に不規則な変形が見つかれば、癌の可能性があります。超音波検査、CT検査、MRI検査でも膀胱の異常を発見できますが、たいていは別の病気の診察中に偶然見つかります。これらの検査で腫瘍が見つかれば、尿道から膀胱鏡を挿入して膀胱内部を調べ、疑わしい部位から組織片を採取して顕微鏡で調べます(生検)。

経過の見通し

進行が遅い表在性腫瘍の場合は、膀胱癌で死亡するリスクは5%未満ですが、進行が速いものや、膀胱の筋層近くまで浸潤している場合、リスクは約15〜20%に上昇します。筋肉の表層に浸潤した腫瘍の場合の5年生存率はやや悪く、死亡のリスクは20〜35%になるとされています。このような場合、化学療法で生存率が上がることもあります。筋層深部か筋層を越えて広がっている腫瘍の場合、5年生存率は45〜60%です。癌がリンパ節やその他の部位に転移している場合、5年生存率は20〜45%です。

治療

癌が膀胱の内側の粘膜にとどまっている場合や、浸潤があっても粘膜の下にある筋層の表層だけにとどまっている場合には、膀胱鏡で完全に取り除くことができます。しかし、取り除いてもその後しばしば新たに癌が発生し、同じ場所にできることもありますが、多くは膀胱の別の部位に生じます。膀胱鏡で癌を完全に取り除いた後で、化学療法薬またはBCG(体の免疫系を活性化させる物質)を繰り返し膀胱に注入することにより、膀胱の内側の表面に限局された癌については再発を防ぐことができます。この方法は、膀胱鏡で癌を取り除くことができない患者の治療にも役立ちます。

筋層深部まで、あるいは膀胱壁を越えて広がった癌は、膀胱鏡で完全に取り除くことはできません。この場合には、膀胱の全体または一部を取り除く膀胱切除術を行います。癌を根治させる目的で、放射線療法や、放射線療法と化学療法を組み合わせた治療法も併用されます。

膀胱全体を取り除かなければならない場合は、尿を排出する手段が必要です。通常は、腸管で形成された回腸ループという通路を経て、腹壁に設けた開口部(腹部ストーマ)から尿を排出させる方法を取ります。尿は体の外に装着した集尿袋にたまります。

尿の経路を変える方法はこれ以外にもいくつか開発され、一部の患者で使用されています。新しい方法は、排尿型代用膀胱形成術と自己導尿型代用膀胱形成術の2種類に分けられます。いずれも、尿をためる体内式リザーバーを腸管からつくります。

排尿型代用膀胱形成術では、リザーバーを尿道につなぎます。患者は、骨盤の筋肉をゆるめて腹圧をかけることによってリザーバーを空にするやり方を練習します。この方法をマスターすれば、尿は自然に尿道を通過するようになります。日中は尿を漏らすことはほとんどありませんが、夜間は失禁が起こることもあります。

自己導尿型代用膀胱形成術では、腹壁に設けたストーマにリザーバーをつなぎます。尿はこのリザーバーにたまり、患者自身がカテーテルをストーマからリザーバーに入れて尿を排出するため、集尿袋はいりません。患者はこれを1日に数回、定期的に行ってリザーバーを空にします。

膀胱からリンパ節や他の臓器に転移した癌は、化学療法で治療します。このタイプの癌には複数の薬を組み合わせて用いる併用療法が有効で、特に転移がリンパ節に限られている場合によく用いられます。膀胱切除や放射線療法は化学療法が効く患者に対して行われることがありますが、治癒する患者数は比較的少数です。治癒が望めない患者に対しては、痛みの軽減と終末期のケアに向けた取り組みが行われます(死と終末期: 痛みを参照)。

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