腫れたリンパ節が臓器を圧迫して、痛みや息切れなどの症状が現れる場合もあります。
診断にはリンパ節や骨髄の生検が必要になります。
治療法としては、放射線療法、化学療法、モノクローナル抗体による免疫療法と、それらの併用療法などが考えられます。
ほとんどの場合、治癒が期待できますが、そうでなくても何年にもわたって生きることができます。
(リンパ腫の概要 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です... さらに読む と ホジキンリンパ腫 ホジキンリンパ腫 ホジキンリンパ腫は、リンパ球と呼ばれる 白血球のひとつががんになる病気で、リード・シュテルンベルク細胞と呼ばれる特殊ながん細胞が認められることで区別されます。 発生原因は分かっていません。 リンパ節の腫れがみられますが、通常は痛みを伴いません。 ほかにも、がん細胞が増殖している場所によっては、発熱、かゆみ、息切れなどの症状が出ることがあります。 診断にはリンパ節の生検が必要になります。 さらに読む も参照のこと。)
リンパ腫は、 リンパ球 獲得免疫 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む と呼ばれる 白血球 免疫系の構成要素 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です。Bリンパ球は、いくつかの感染症に対する防御に不可欠な 抗体 抗体 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む を生産します。
非ホジキンリンパ腫は、B細胞またはT細胞(リンパ球)が関与する実に50種類を超える異なる疾患を集めたものです。これらのリンパ腫は、それぞれが顕微鏡ではっきりと判別でき、細胞パターンも、症状や予後のパターンも異なっています。非ホジキンリンパ腫の大半(80~85%)がB細胞由来の腫瘍です。T細胞由来の腫瘍は15~20%未満です。
非ホジキンリンパ腫の方がホジキンリンパ腫より多くみられます。米国で6番目に多いがんであり、すべてのがんによる死亡の4%を引き起こしています。年齢が高くなるほど多くみられます。
米国では、毎年8万人以上が新たに非ホジキンリンパ腫と診断され、この新規症例数は特に高齢者と免疫系が正常に機能しない人を中心に増加しています。臓器移植を受けた人やC型肝炎ウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している人では、非ホジキンリンパ腫が発生するリスクが高くなります。
白血病 白血病の概要 白血病は、白血球または成熟して白血球になる細胞のがんです。 白血球は骨髄の幹細胞から成長した細胞です。ときには成長がうまくいかずに、染色体の一部の並びが変化してしまうことがあります。こうして異常となった染色体により正常な細胞分裂の制御が失われ、この染色体異常がある細胞が無制限に増殖するようになったり、細胞がアポトーシス(不要になった細胞が... さらに読む も白血球から発生するがんです。白血病では、がん化した白血球のほとんどが血流中と骨髄内にみられます。リンパ腫では、がん化した白血球のほとんどがリンパ節の内部と脾臓や肝臓などの臓器内にみられます。しかし、リンパ腫で血流中にがん化した白血球がみられたり、白血病でリンパ節や臓器にがん細胞がみられたりすることがあるため、白血病と非ホジキンリンパ腫には重複した特徴がときにみられます。
非ホジキンリンパ腫の原因
ほとんどの非ホジキンリンパ腫の原因は明らかになっていませんが、一部のまれなタイプでは、ウイルスの関与を強く裏付ける証拠が得られています。日本の南部とカリブ海諸島にみられる非ホジキンリンパ腫で、急速に進行するまれなタイプは、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1:ヒトTリンパ球向性ウイルス1型、成人T細胞白血病ウイルスとも呼ばれます)という ヒト免疫不全ウイルス(HIV) ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む に似たレトロウイルスによる感染が原因と考えられます。 エプスタイン-バーウイルス 伝染性単核球症 エプスタイン-バーウイルスは、伝染性単核球症をはじめ、いくつかの病気を引き起こします。 この ウイルスはキスを介して広がります。 症状は様々ですが、最も多いのは極度の疲労感、発熱、のどの痛み、リンパ節の腫れです。 血液検査を行って診断を確定します。 アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は発熱と痛みを和らげます。 さらに読む は、 バーキットリンパ腫 バーキットリンパ腫 バーキットリンパ腫は、B細胞(Bリンパ球)から発生する白血球のがんで、非常に増殖の速い 非ホジキンリンパ腫です。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです( リンパ腫の概要も参照)。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です。Bリンパ球は、いくつかの感... さらに読む という別のタイプの非ホジキンリンパ腫に関係しています。ウイルス性の原因として疑われているものに、 C型肝炎ウイルス 肝炎の概要 肝炎とは肝臓の炎症です。 ( 急性ウイルス性肝炎の概要と 慢性肝炎の概要も参照のこと。) 肝炎は世界中でみられる病気です。 肝炎には以下の種類があります。 急性(経過が短い) さらに読む 、 カポジ肉腫 カポジ肉腫 カポジ肉腫は 皮膚がんの一種で、複数の平坦な皮疹または隆起が皮膚にでき、ピンク色、赤色、または紫色をしています。原因はヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)感染症です。 足の指や脚に1つまたは少数の斑点が現れる場合があり、またあらゆる部位の皮膚や口腔内または陰部にも現れる場合があり、内臓を含む他の部位に転移します。 このがんは外観から確認できることが多いですが、通常は生検も行います。... さらに読む 、 ヘルペスウイルス ヘルペスウイルス感染症の概要 よくみられるウイルス感染症の一部はヘルペスウイルスによって引き起こされています。人に感染するヘルペスウイルスとしては以下の8種類があります。 単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルス(ヘルペスウイルス3型、 水痘および... さらに読む などがあります。HIVに感染している人は、一部の種類の非ホジキンリンパ腫を発症するリスクが高くなります。 ヘリコバクター・ピロリ ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染症 ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(ピロリ菌[H. pylori])感染症は、胃の炎症( 胃炎)、 消化性潰瘍(かいよう)、ある種の 胃がんを引き起こす細菌感染症です。 この感染症は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(ピロリ菌[H. pylori])という種類の細菌によって引き起こされます。... さらに読む などの細菌もリンパ腫(特に胃のリンパ腫)のリスクを高めます。
そのほかに非ホジキンリンパ腫のリスクが高いのは、以下に該当する人です。
毛細血管拡張性運動失調症 毛細血管拡張性運動失調症 毛細血管拡張性運動失調症は遺伝性疾患で、協調運動障害と毛細血管拡張、および感染症にかかりやすくなる免疫不全を特徴とします。 毛細血管拡張性運動失調症がある小児では、通常は歩き始めの頃に協調運動障害が発生し、筋力が徐々に低下して、重い身体障害が生じます。 診断には血液検査を行います。 治療には抗菌薬(感染症予防のため)と免疫グロブリン製剤が用いられます。 ( 免疫不全疾患の概要も参照のこと。) さらに読む 、 クラインフェルター症候群 クラインフェルター症候群 クラインフェルター症候群は、男児が(1つではなく)2つ以上のX染色体と1つのY染色体をもった状態(XXY)で生まれる 性染色体異常です。 クラインフェルター症候群は、男児が余分なX染色体をもっている場合に発生します。 症状として、学習障害、長い腕と脚、小さな精巣、不妊症などがみられます。 この症候群は、ほとんどの症状が現れる思春期に疑われます。 テストステロンによる治療が有益になる場合があります。 さらに読む 、 チェディアック-東症候群 チェディアック-東症候群 チェディアック-東症候群は、非常にまれな遺伝性免疫不全疾患で、細菌による呼吸器感染症などの感染症が繰り返し生じ、髪、眼、皮膚の色素が欠乏すること(白皮症)が特徴です。 チェディアック-東症候群の患者は通常、皮膚が青白く、髪の色が薄いか白髪で、眼がピンク色か薄い青灰色をしています。 医師は血液のサンプルを調べて異常の有無を確認し、遺伝子検査を行って診断を確定します。 治療では、感染症を予防するための抗菌薬や、免疫系の機能改善を助ける他の薬... さらに読む 、 ウィスコット-アルドリッチ症候群 ウィスコット-アルドリッチ症候群 ウィスコット-アルドリッチ症候群は、抗体(免疫グロブリン)の生産異常とT細胞(Tリンパ球)の機能不全、血小板数の減少、湿疹などを特徴とする遺伝性の免疫不全疾患です。 ウィスコット-アルドリッチ症候群の患者は出血しやすく、通常は血性下痢が最初の症状です。 診断は、血液検査の結果のほか、ときに遺伝子検査の結果に基づいて下されます。 生存のためには幹細胞移植が必要です。 ( 免疫不全疾患の概要も参照のこと。) さらに読む などの 遺伝性の免疫不全症候群 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む
非ホジキンリンパ腫患者の近親者
非ホジキンリンパ腫の症状
最初にみられる症状では、首、わきの下、脚の付け根のリンパ節が急速に腫れることが多く、痛みは伴いません。胸部リンパ節が腫れると、気道が圧迫されて、せきや呼吸困難が起こり、胸部の血管が圧迫されて、顔面、首、腕が腫れます(上大静脈症候群)。腹部の深いところにあるリンパ節が腫れると、様々な臓器が圧迫されて、食欲不振、便秘、腹痛、脚の進行性浮腫(むくみ)などがみられることがあります。
一部のリンパ腫細胞は血流中や骨髄内にみられる可能性があります。
骨髄内のリンパ腫細胞によって、骨髄が正常な血球を十分に生産する能力が阻害されることがあります。
発熱と大量発汗は感染を示唆している場合があり、 感染は正常な白血球が減りすぎることで起こる場合があります。
脱力、疲労、蒼白は、赤血球が減りすぎること(貧血 貧血の概要 貧血とは、赤血球の数が少ない状態をいいます。 赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少すると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分に供給されないと、貧血の症状が現れます。... さらに読む )で起こる場合があります。呼吸が困難になったり、心拍数が速くなったり、胸に痛みが出たりすることもあります。
血小板が極端に少なくなるために(血小板減少症 血小板減少症の概要 血小板減少症とは、血液中の血小板の数が少なくなった状態で、出血のリスクが高まります。 血小板減少症は、骨髄で作られる血小板が少なすぎる場合や血小板が破壊されすぎたり、腫大した脾臓に蓄積されすぎたりした場合に発生します。 皮下出血やあざがみられます。 血液検査を行って、診断を確定するとともに、その原因を特定します。 ときには治療(血小板輸血、プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]、血小板の生産を増やす薬、または脾臓摘出)が必要になることが... さらに読む )、あざや出血が生じやすくなり、ときには鼻血や歯ぐきからの出血がみられます。一部の患者では、脳や腹部の中で出血が起きることもあります。
非ホジキンリンパ腫は、消化管や皮膚のほか、ときに神経系に浸潤する場合もあり、様々な症状を引き起こします。不明熱と呼ばれる明らかな病因が判明しない発熱が長く続くことがあります。この種の発熱は、一般に病気が進行していることを示しています。
小児で最初にみられる症状には、貧血や発疹のほかに、脱力感や異常感覚などの神経症状があり、これらはリンパ腫細胞が骨髄、血液、皮膚、腸、脳、脊髄に浸潤することから生じている可能性が高いと考えられます。腫れたリンパ節は、通常体の深い場所にあり、次のような症状を引き起こします。
肺の周りに水がたまり、呼吸困難を引き起こす
腸を圧迫し、食欲不振や嘔吐を引き起こす
リンパ管が詰まり、それによりリンパ浮腫と呼ばれる体液の貯留が引き起こされ、これは腕と脚で最も顕著となる
診断と分類
リンパ節の生検
明らかな感染症がみられず、痛みを伴わないリンパ節の腫れが数週間にわたって続いている場合には、非ホジキンリンパ腫が疑われます。別の理由で行った胸部X線検査やCT検査で、胸部や腹部の深い位置にあるリンパ節の腫れが偶然見つかることもあります。
腫れたリンパ節の生検を行って、非ホジキンリンパ腫の診断を下し、同じようにリンパ節の腫れを引き起こすホジキンリンパ腫などの他の病気との鑑別を行います。
生検には様々な方法があり、その選択は腫大しているリンパ節の位置と検査に必要な組織の量によって異なります。ホジキンリンパ腫、感染症、炎症、他のがんなど、リンパ節腫大が起きる別の病気を非ホジキンリンパ腫と鑑別できるように、十分な量の組織を採取しなければなりません。十分な量の組織を確実に得るには、切除生検(小さな切開創からリンパ節の一部を採取する方法)が最も適しています。腫れたリンパ節が体表面に近いところにある場合は、(通常は超音波検査またはCT検査の画像を見ながら)皮膚を通して中空の針をリンパ節に刺す方法(コア針生検)により、十分な量の組織を採取できることがあります。腫れたリンパ節が胸部や腹部の深い位置にある場合は、手術が必要になることもあります。
50種類を超える異なった病気が、非ホジキンリンパ腫という1つの病名で呼ばれますが、大きく2つのグループに分類することがあります。
インドレントリンパ腫というグループの特徴は以下の通りです。
生存期間が長い(何年も生きられる)
多くの治療法に対して効果が速く現れる
寛解期間は様々であるが、現在の標準治療では治癒は得られない
アグレッシブリンパ腫というグループの特徴は以下の通りです。
治療しないと進行が速い
標準化学療法による治癒率が高いが、治癒しない場合は生存期間が短い
非ホジキンリンパ腫は中年齢層から高年齢層に多くみられる病気ですが、小児や若年成人にもみられることがあります。小児や若年成人に発生するリンパ腫では、アグレッシブリンパ腫が多くみられます。
非ホジキンリンパ腫の病期診断
画像検査
骨髄生検
血液検査(肝臓と腎臓の働きを調べる検査など)
非ホジキンリンパ腫の多くは、診断時点ですでに病変が広がっています。病変が1つの領域に限局される人は、わずか10~30%です。非ホジキンリンパ腫では、 ホジキンリンパ腫 ホジキンリンパ腫 ホジキンリンパ腫は、リンパ球と呼ばれる 白血球のひとつががんになる病気で、リード・シュテルンベルク細胞と呼ばれる特殊ながん細胞が認められることで区別されます。 発生原因は分かっていません。 リンパ節の腫れがみられますが、通常は痛みを伴いません。 ほかにも、がん細胞が増殖している場所によっては、発熱、かゆみ、息切れなどの症状が出ることがあります。 診断にはリンパ節の生検が必要になります。 さらに読む と同様の手順で 病期診断 病期診断 ホジキンリンパ腫は、リンパ球と呼ばれる 白血球のひとつががんになる病気で、リード・シュテルンベルク細胞と呼ばれる特殊ながん細胞が認められることで区別されます。 発生原因は分かっていません。 リンパ節の腫れがみられますが、通常は痛みを伴いません。 ほかにも、がん細胞が増殖している場所によっては、発熱、かゆみ、息切れなどの症状が出ることがあります。 診断にはリンパ節の生検が必要になります。 さらに読む が行われます。
治療法の選択や予後の予測は病期に基づいて行われるため、病期診断が重要です。非ホジキンリンパ腫の病期診断や評価のために、いくつかの検査が行われます。血算や肝機能と腎機能の検査などの基本的な血液検査のほか、 ヒト免疫不全ウイルス(HIV) ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む 、 B型肝炎 肝炎の概要 肝炎とは肝臓の炎症です。 ( 急性ウイルス性肝炎の概要と 慢性肝炎の概要も参照のこと。) 肝炎は世界中でみられる病気です。 肝炎には以下の種類があります。 急性(経過が短い) さらに読む 、 C型肝炎 肝炎の概要 肝炎とは肝臓の炎症です。 ( 急性ウイルス性肝炎の概要と 慢性肝炎の概要も参照のこと。) 肝炎は世界中でみられる病気です。 肝炎には以下の種類があります。 急性(経過が短い) さらに読む の感染の検査も行われます。
PET検査 PET検査 PET(陽電子放出断層撮影)検査は 核医学検査の一種です。放射性核種とは放射線を出す元素のことで、エネルギーを放射線の形で放出することで、安定した状態になろうとする原子です。放射性核種の多くは高いエネルギーの光子をガンマ線の形で放出しますが、PET検査では陽電子と呼ばれる粒子を放出する放射性核種を使用します。 PET検査では、体内で使用(代謝)されるグルコース(ブドウ糖)や酸素などの物質を... さらに読む とCTを組み合わせた検査(PET-CT検査 PET-CT検査 PET(陽電子放出断層撮影)検査は 核医学検査の一種です。放射性核種とは放射線を出す元素のことで、エネルギーを放射線の形で放出することで、安定した状態になろうとする原子です。放射性核種の多くは高いエネルギーの光子をガンマ線の形で放出しますが、PET検査では陽電子と呼ばれる粒子を放出する放射性核種を使用します。 PET検査では、体内で使用(代謝)されるグルコース(ブドウ糖)や酸素などの物質を... さらに読む )は、がん性病変の位置や大きさ、がん細胞の活動性を判定する最も感度の高い検査法です。PET-CT検査が利用できない場合は、胸部、腹部、骨盤部の造影CT検査を行います。神経系の症状がみられる場合は、脳または脊髄の MRI検査 MRI検査 MRI検査は、強い磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強い磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置の中で発生するような強い磁場の中に... さらに読む など、他の検査が行われます。
骨髄生検 骨髄検査 赤血球、ほとんどの 白血球、 血小板は、骨髄という骨の中にある脂肪に富んだ柔らかい組織でつくられます。場合によっては、血球が異常となった原因や、特定の種類の血球が少なすぎたり、多すぎたりする原因を特定するために、骨髄サンプルを調べなければならないことがあります。骨髄サンプルを採取するには、次の2つの方法を用いることができます。 骨髄穿刺(こつずいせんし):骨髄に針を刺して骨髄液と細胞を吸引することによって、骨髄液と細胞を採取する方法... さらに読む が行われることがあり、特に血液検査で貧血や血小板数の低下が認められた場合に行われます。一部の種類の非ホジキンリンパ腫では、PET-CT検査によって確実に骨髄浸潤を検出できるため、骨髄生検は必ずしも必要ではありません。それら以外の非ホジキンリンパ腫では、PET-CT検査で確実に骨髄浸潤を検出することができず、病期診断によって治療法の選択が変わる場合は骨髄生検が必要になることがあります。
ホジキンリンパ腫は、広がりの程度によって4つの病期(I期、II期、III期、IV期)に分類されます。病期の数字が大きいほど、リンパ腫の広がり程度が大きいことを示します。
限局期にはI期とII期、進行期にはIII期とIV期があります。I期とII期で、非ホジキンリンパ腫がリンパ系以外の器官に存在する場合は、IE期またはIIE期に分類されます。バルキー病変とは、胸部に腫瘍のかたまり(大きさはリンパ腫の種類によって異なる場合があります)がある場合に用いられる用語です。
非ホジキンリンパ腫の治療
化学療法、放射線療法、またはその両方
免疫療法(がん細胞を攻撃する抗体でできた薬)、単独または化学療法を併用
ときに幹細胞移植
非ホジキンリンパ腫の治療法は、その種類によって非常に様々です。
インドレントリンパ腫では、最初にリンパ腫と診断された時点で、治療の必要がない場合があります。待機することで結果が悪くなることはなく、必要以上に早い段階での治療による副作用を避けられることが、研究によって示されています。インドレントリンパ腫で治療が必要な場合は、治療によって生存期間を延ばし、何年にもわたって症状を軽減します。
アグレッシブリンパ腫の場合は、治癒が期待できるため、治療せずに待機することは通常ありません。
治癒や長期生存の見込みは、非ホジキンリンパ腫のタイプや治療開始時の病期によって異なります。やや矛盾するようですが、インドレントリンパ腫は治療に速やかに反応して寛解(病勢が抑えられた状態)が得られ、長期生存が可能になることが多い半面、治癒することは通常はありません。これとは対照的に、アグレッシブ非ホジキンリンパ腫では、寛解に至るまでには非常に強い治療が必要になるのが普通ですが、十分に治癒する可能性があります。
I期の非ホジキンリンパ腫:限局期
病変が極めて限局したインドレントリンパ腫(I期)の治療では、多くの場合、 放射線療法 がんに対する放射線療法 放射線は、コバルトなどの放射性物質や、粒子加速器(リニアック)などの特殊な装置から発生する強いエネルギーの一種です。 放射線は、急速に分裂している細胞や DNAの修復に困難がある細胞を優先的に破壊します。がん細胞は正常な細胞より頻繁に分裂し、多くの場合、放射線によって受けた損傷を修復することができません。そのため、がん細胞はほとんどの正常な細胞よりも放射線で破壊されやすい細胞です。ただし、放射線による破壊されやすさはがん細胞によって異な... さらに読む でリンパ腫とその周囲の領域に限定して照射します。この方法では、照射領域に再発がみられることはほとんどありませんが、治療から10年経過しても、体の他の部分に非ホジキンリンパ腫が再発することがあるため、経過観察を長期にわたって行う必要があります。ごく初期のアグレッシブリンパ腫の治療では、多剤併用化学療法が必要で、放射線療法を併用することもあります。
II期の非ホジキンリンパ腫:限局期または進行期
II期の非ホジキンリンパ腫には通常、限局期(I期)に似た挙動がみられますが、ときに進行期の挙動がみられることもあります。医師は、その挙動に応じた治療を選択します。
III期からIV期の非ホジキンリンパ腫:進行期
インドレントリンパ腫は、ほぼすべてがII期からIV期の状態で見つかります。必ずしも最初から治療を行う必要はありませんが、最初の診断から、ときには数年にわたって経過観察を行い、リンパ腫が進行して治療が必要になっていないか調べます。より進行したインドレントリンパ腫では、早期に治療を開始することで生存期間が延びるという証拠は得られていません。リンパ腫が進行し始めた場合でも、様々な治療選択肢があります。
多くの治療選択肢があり、治療法の選択は、リンパ腫の種類、広がりの程度、患者の症状、併存する医学的状態など、様々な要因によって異なります。治療法には、モノクローナル抗体(リツキシマブなど)単独、または 化学療法 化学療法とがんに対する他の全身療法 全身療法とは、がんに対して直接行うのではなく、身体全体に影響を及ぼす治療法です。化学療法は全身療法の一種であり、薬物を用いてがん細胞を死滅させるか、または増殖を阻止します。 がんの全身療法には次のようなものがあります。 ホルモン療法 化学療法(抗がん剤) 分子標的療法 さらに読む との併用があります。ほとんどの治療薬は静脈投与されます。ときには、経口薬が使用されることもあります。普通は治療により寛解になります。平均的な寛解持続期間は、治療の強さによって異なります。ときに維持療法(初回治療後に再発予防を目的として行う治療)が追加されることがあります。
II期からIV期のアグレッシブリンパ腫では、早急に 併用化学療法薬 がんの併用療法 抗がん剤は、複数の薬を組み合わせて使用する場合に最も効果的です。併用療法の原理は、異なる仕組みで作用する薬を用いることで、治療抵抗性のがん細胞が発生する可能性を減らすというものです。異なる効果をもつ薬を併用する場合は、耐えがたい副作用を伴うことなくそれぞれの薬を最適な用量で使用できます。( がん治療の原則も参照のこと。) 一部のがんでは、 がん手術、 放射線療法、 化学療法または他の抗がん剤を組み合わせるのが最善の方法です。手術と放射線... さらに読む を行いますが、リツキシマブを加えることもよくあります。化学療法薬の中で有効と考えられる組合せが多くあり、使用されています。化学療法薬の組合せの多くは、含まれている薬のそれぞれの頭文字を並べた名前で呼ばれています。例えば、最も古くから使われており、現在でもよく使われている併用療法の1つは、CHOP療法(シクロホスファミド、[ヒドロキシ]ドキソルビシン、ビンクリスチン[オンコビン]、プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン])として知られています。リツキシマブの追加によりCHOPの治療成績が向上したことが報告されており、現在では決まってこの併用療法に追加されています(R-CHOP療法)。進行したアグレッシブ非ホジキンリンパ腫のR-CHOP療法による治癒率は約60~70%です。他の薬の組合せによる併用療法が現在も研究されています。化学療法の多くは、様々な種類の血球の数を減少させますが、血球の増殖と成長を促進する増殖因子と呼ばれる特殊なタンパク質も一緒に投与すると、治療に十分耐えられる場合があります。
治療後の戦略
放射線療法を受けると、二次がんのリスクが高まり、治療後10年以上経ってから放射線を照射した領域内にある臓器にがんが発生することがあります。行った治療法にかかわらず、非ホジキンリンパ腫に対する治療が成功して何年も経ってから、 白血病 白血病の概要 白血病は、白血球または成熟して白血球になる細胞のがんです。 白血球は骨髄の幹細胞から成長した細胞です。ときには成長がうまくいかずに、染色体の一部の並びが変化してしまうことがあります。こうして異常となった染色体により正常な細胞分裂の制御が失われ、この染色体異常がある細胞が無制限に増殖するようになったり、細胞がアポトーシス(不要になった細胞が... さらに読む が発生する場合もあります。
治療が終了した後は、定期的に医師の診察を受け、リンパ腫の再発がないか検査する必要があります(治療後のサーベイランス)。検査の種類は患者の危険因子と受けた治療の種類によって異なります。
再発
アグレッシブリンパ腫が再発した人のほとんどが、化学療法薬の大量投与と自身の幹細胞を用いた自家 幹細胞移植 造血幹細胞移植 造血幹細胞移植とは、健康な人から幹細胞(未分化細胞)を採取し、重篤な血液疾患がある人にそれを注射することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 幹細胞は未分化の細胞で、分裂しながら、より分化した他の細胞に変わっていきます。幹細胞は以下のものから採取することができます。 静脈からの採血 骨髄(骨髄移植) さらに読む を受けています。この治療法によって、一部の人は治癒します。場合によっては、兄弟姉妹や非血縁者のドナーからの幹細胞(同種移植)を使用することもできますが、この移植法では、合併症のリスクがさらに大きくなります。ときには、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞という、リンパ腫と戦うように遺伝子工学を用いて作られたT細胞による治療が行われることがあります。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
白血病リンパ腫協会:非ホジキンリンパ腫(Leukemia & Lymphoma Society: Non-Hodgkin Lymphoma):診断、治療、支援を含めた非ホジキンリンパ腫に関する包括的な情報