|
ひどいやけどを負ったときのように、皮膚を広範囲に損傷した場合には皮膚移植を行います。この場合、最も成功率が高いのは自分自身の皮膚の一部を用いる方法です。もし自分の皮膚が使えないときは、一時的な措置として、ドナーやブタなどの動物の皮膚を用います。これらは短期間しかもちませんが、正常な皮膚ができてくるまで損傷個所を一時的に保護する役割を果たします。移植に必要な量の皮膚を得るためには、本人の皮膚小片を組織培養して増やすか、移植に用いる皮膚に細かい切り込みをたくさん入れて引き伸ばし、大きな領域をカバーするという方法が取られます。
軟骨は、免疫抑制薬を使用せずに移植できます。移植軟骨に対しては免疫システムの拒絶反応が他の組織に比べてずっと穏やかだからです。小児では耳や鼻の欠損を治すのに軟骨移植が行われ、成人では、関節炎によって損傷した関節を治すのに行われます。
眼の表面を覆っている透明な半球体である角膜も、免疫抑制薬を使用せずに移植できます。
骨は、体のある部分から他の部分へ移植できます。ドナーから移植した骨は長くはもちませんが、新しい骨の成長を促しながら、新しい骨ができるまで問題部位を固定して、新しい骨が埋めるべき空間にフレームを形成します。
小腸の移植は、まだ研究段階です。腸が疾患により破壊されてしまった場合、あるいは、十分機能せず生命が維持できない場合の最後の手段として用いる方法です。小腸には多くのリンパ組織があるので、移植組織がレシピエントを攻撃する細胞をつくり、移植片対宿主病を引き起こしやすいからです。
パーキンソン病患者には、自分の副腎から脳に組織を移植するという治療方法があります。あるいは、流産で死亡した胎児からの脳組織を用いる方法もあります。どちらの処置もパーキンソン病の症状を和らげることができます。しかし流産で死亡した胎児の組織を使うことが倫理的に受け入れられる方法かどうかは、議論の余地があります。
ディ・ジョージ症候群として知られる生まれつき胸腺のない小児には、中絶や流産で死亡した胎児から胸腺を移植する方法があります。胸腺がないと免疫システムに欠陥が生じます。人は免疫システムにより異物から身を守っていますが、その重要な部分である白血球は胸腺で成熟するからです。胸腺を移植すると免疫システムは回復しますが、移植した胸腺はレシピエントを攻撃する細胞をつくり、移植片対宿主病を引き起こすことがあります。
|