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はじめに

リケッチアは、ロッキー山紅斑熱や発疹チフスなどの病気を起こす、変わったタイプの細菌です。大気や土壌などの環境中では生きられず、他の生物(宿主)の細胞内にのみ生息して増殖するという点で、他の大半の細菌と異なります。エールリヒアもリケッチアと似た菌で、同じような病気を起こします。

リケッチアやエールリヒアの中には人間を主な宿主とするものもありますが、大部分の種は動物を宿主とします。宿主となる動物を「リザーバー(病原保有体)」と呼びますが、その動物自体は発病する場合としない場合があります。人は通常、リザーバーの血を吸ったマダニ、コナダニ、ノミ、シラミなど「ベクター」と呼ばれる虫に刺されることでリケッチアに感染します。Q熱は、空気感染や食物の摂取で感染します。リケッチアとエールリヒアは、それぞれ決まった宿主とベクターをもっています。

人に感染したリケッチアは、微小血管の内皮細胞を侵し、血管の炎症、血栓、周辺組織への出血などを起こします。これが体のどこに起こるかによって、症状が異なります。

症状と診断

リケッチアによる感染症は、菌の種類が異なっても、いずれも症状は似ており、発熱、激しい頭痛、特徴のある発疹、けん怠感などの症状が現れます。発疹は数日たってからでないと現れないことが多いので、初めはインフルエンザのような普通のウイルス感染症と間違えることがよくあります。

病気が進むと、患者は昏迷(こんめい)に陥り、せき、呼吸困難、ときには嘔吐と下痢も伴った激しい脱力感がみられます。肝臓や脾臓(ひぞう)が腫大し、腎臓が機能しなくなり、血圧が危険なレベルまで低下し、死に至ることもあります。

リケッチアはマダニ、コナダニ、ノミ、シラミから感染するので、これらの虫に刺されたことがあれば、特にリケッチア感染症がよくみられる地域では診断の手がかりになります。とはいっても、刺された覚えのない発病者も大勢います。

リケッチアは一般の検査では検出できないので、診断を早期に確定することは困難です。特殊な培養や血液検査ができる施設は限られ、しかも時間がかかるので、結果を待たずに治療を始める必要があります。いまだに診断では、医師がリケッチア感染症の疑いをもつことが、最も重要な要素です。

治療

リケッチア感染症は、早期に治療すれば、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコールなどの抗生物質にすみやかに反応します。病気が非常に重い場合には静脈内投与で、それ以外は内服薬を使います。症状は1〜2日のうちに目に見えて改善し、熱は2〜3日で熱は下がりますが、抗生物質は最低1週間、熱が下がらない場合はそれ以上続けます。治療が遅れると、症状の改善に時間がかかり、熱も長く続きます。治療を行わない場合や開始するのが遅すぎると、死亡することがあります。

その他のリケッチア感染症

感染症

病原体

発生地域

特徴

発疹チフス 発疹チフスリケッチア、シラミが媒介

宿主:

ヒト
世界各地 7〜14日の潜伏期間後、発熱、頭痛、極度の疲労感(虚脱)を伴って突然発症する。4〜6日目に発疹が現れる。放置すると、特に50歳以上の人では命にかかわる
発疹熱 発疹熱リケッチア、ノミが媒介

宿主:

げっ歯類、フクロネズミ
世界各地 発疹チフスとよく似ているが、症状はそれほど重くない
ツツガムシ病 ツツガムシ病リケッチア、ダニが媒介

宿主:

げっ歯類
日本、インド、オーストラリア、タイに囲まれたアジア太平洋地域 6〜21日の潜伏期間後、発熱、悪寒、頭痛を伴って突然発症する。5〜8日目に発疹が現れる
リケッチア痘瘡 痘瘡リケッチア、ダニが媒介

宿主:

げっ歯類
米国ニューヨーク市で最初に発見され、米国の他の地域、ロシア、韓国、アフリカでも発生 発熱の約1週間前に、中心が黒くボタンのような小さな潰瘍が皮膚に現れる。熱は上下しながら1週間ほど続き、悪寒、大量の発汗、頭痛、日光過敏、筋肉痛などを伴う
Q熱 Q熱リケッチア、感染源はリケッチアを含んだ飛沫や汚染された生乳

宿主:

ヒツジ、ウシ、ヤギ
世界各地 9〜28日の潜伏期間後、発熱、激しい頭痛、悪寒、極度の脱力感、筋肉痛、胸痛、肺炎を伴って突然発症するが、発疹はない
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