声がかれたり、首にしこりができたり、呼吸困難やものを飲み込みにくくなる(嚥下困難)などの症状が出たりします。
診断には生検が必要です。
予後(経過の見通し)はがんの進行の程度によって変わります。
治療としては通常は手術や放射線療法を行いますが、ときに化学療法が行われることもあります。
(口、鼻、のどのがんの概要 口、鼻、のどのがんの概要 口、鼻、のどのがんは、米国では毎年ほぼ6万5000人に発生しています。これらのがんは、女性喫煙者より男性喫煙者の数が多い状況が続いており、男性の方が口内の ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の頻度が高いため、男性で多くみられます。患者の大部分は50~70歳です。しかし、HPVを原因とするがん(主に... さらに読む も参照のこと。)
喉頭は声を出す場所で、気管の最上部や声帯が含まれます。
喉頭の位置
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喉頭がんのほとんどは扁平上皮がんで、これは喉頭を覆っている扁平上皮細胞から発生するがんです。
喉頭がんは頭と首のがん(頭頸部がん)の中では発生率の高いがんで、女性よりも男性に多くみられます。喉頭がんの男性患者の大半は60歳以上です。喫煙が最大の危険因子で、患者の95%以上が喫煙者です。過度の飲酒もリスクを高めます。喉頭がんを発症する人の数は減少していて、その理由はおそらく喫煙習慣の変化による可能性が高いと考えられます。
声帯のがんは通常、早期に症状が発生し、あまり広がらず、喉頭の他の部位のがんよりも治癒することが多いがんです。
喉頭がんの症状
喉頭がんは主に声帯に発生し、急速に声がれを生じます。声がれが2~3週間以上続く場合は、医師の診察を受ける必要があります。
喉頭の他の部位から生じるがんは、ゆっくりと発生し、声がれ以外に次のような症状を最初に引き起こします。
体重減少
のどの痛み
耳の痛み
「熱いジャガイモが口に入っているような」声(熱いものが口の中に入っているかのように話す)
嚥下困難や呼吸困難
しかし、ときにがんが リンパ節 リンパ器官 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む に 転移 がんの概要 がんは、細胞が異常に増殖する病気です(通常は1つの異常な細胞から発生します)。がん細胞は正常な制御メカニズムを失っているため、増殖を続けたり、周辺の組織に侵入したり、体の離れた部位に移動したり、がん細胞が栄養を獲得できるように新しい血管の成長を促したりすることができます。悪性(がん)細胞は全身のあらゆる組織から発生する可能性があります。... さらに読む して首にしこりが生じ、他の症状より先にそのしこりに気づくこともあります。
喉頭がんの診断
喉頭鏡検査
生検
病期診断のための画像検査
喉頭がんの診断を下すには、まず咽頭を直接観察するための柔軟な細い管状の機器(喉頭鏡 内視鏡検査 現在、様々な検査方法が広く利用されています。特定の病気または関係する疾患群に特化して行われる検査(本書では通常、これらの検査については関連する疾患のページで説明しています)も多くある中で、いろいろな病気で広く行われる検査もあります。 検査を行う理由は様々で、その理由としては以下のものがあります。... さらに読む )で喉頭を観察し、組織のサンプルを採取して顕微鏡で調べる検査(生検 生検 患者の症状と身体診察の結果、ときに スクリーニング検査の結果に基づいて、医師はがんを疑います。外傷など、別の理由で撮影されたX線画像で、がんが疑われる異常が見つかることもときにあります。がんの存在を確定するには、他の検査(診断検査)が必要になります。 がんの診断がついたら、病期診断が行われます。 病期(ステージ)とは、がんの大きさや、隣接する組織に広がっているかどうか、遠く離れたリンパ節や他の臓器に転移しているかどうかなどを基準として、... さらに読む )を行います。生検はほとんどの場合手術室で、患者に 全身麻酔 全身麻酔 手術とは、従来、病気やけが、体の変形を治療する目的で組織を手作業で切ったり塗ったりする処置(外科的処置といいます)を指すのに用いられてきた用語です。しかし、手術手技の進歩により、この定義はより複雑になっています。組織を切るのにメスではなくレーザーや放射線、その他の手法が用いられることもあれば、縫合せずに傷口を閉じることもあります。... さらに読む をかけて行われます。がんがある場合は、がんがどの程度広がっているかを判断するために、以下のような 病期診断検査 がんの病期診断 患者の症状と身体診察の結果、ときに スクリーニング検査の結果に基づいて、医師はがんを疑います。外傷など、別の理由で撮影されたX線画像で、がんが疑われる異常が見つかることもときにあります。がんの存在を確定するには、他の検査(診断検査)が必要になります。 がんの診断がついたら、病期診断が行われます。 病期(ステージ)とは、がんの大きさや、隣接する組織に広がっているかどうか、遠く離れたリンパ節や他の臓器に転移しているかどうかなどを基準として、... さらに読む も受けることがあります。
喉頭がんの予後(経過の見通し)
喉頭がんが大きいほど、またより広範囲に広がっているほど、予後は悪くなります。筋肉、骨、または軟骨までがんが広がっている場合、治癒の見込みは低くなります。声帯の小さながんで転移がない場合は、5年間生存する患者は約85~95%であるのに対し、所属リンパ節への転移がある喉頭がんの場合は45%未満です。所属リンパ節を超えてさらに遠くへ転移している場合は、5年以上生存する確率は約35%です。
喉頭がんの治療
手術
放射線療法
化学療法
喉頭がんの治療法は、がんの病期と正確な位置によって異なります。
早期のがんの治療
早期の喉頭がんに対しては、 手術 がんの手術 手術は、がんに対して昔から用いられてきた治療法です。大半のがんでは、リンパ節や遠く離れた部位に転移する前に除去するには、手術が最も効果的です。手術のみを行う場合もあれば、 放射線療法や 化学療法などの治療法と併用する場合もあります( がん治療の原則も参照)。医師は以下の他の治療を行うことがあります。 手術前に腫瘍を小さくする治療(術前補助療法) 手術後にできるだけ多くのがん細胞が除去されるようにする治療(術後補助療法)... さらに読む または 放射線療法 がんに対する放射線療法 放射線は、コバルトなどの放射性物質や、粒子加速器(リニアック)などの特殊な装置から発生する強いエネルギーの一種です。 放射線は、急速に分裂している細胞や DNAの修復に困難がある細胞を優先的に破壊します。がん細胞は正常な細胞より頻繁に分裂し、多くの場合、放射線によって受けた損傷を修復することができません。そのため、がん細胞はほとんどの正常な細胞よりも放射線で破壊されやすい細胞です。ただし、放射線による破壊されやすさはがん細胞によって異な... さらに読む のどちらかが行われます。声帯にがんがある場合には、医師は手術に比べて治療後も通常の声を残せる見込みのある放射線療法を選択することがあります。しかし、非常に早期の喉頭がんであれば、マイクロサージャリーが選択されることもあります。そのようながんに対し、マイクロサージャリーでは放射線療法と同等の効果が得られる上、放射線療法と違い1回の治療で完了するためです。マイクロサージャリーでは、器具か高エネルギーの光線がついた喉頭鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を使用します。メスを使い患者の声を損なう可能性がある従来の手術とは違い、マイクロサージャリーでは患者の飲み込みや発声に問題が起こることは少なくなっています。
中期のがんの治療
付近の組織にわずかに広がっている可能性がある比較的大きな喉頭がんに対しては、手術ではなく 化学療法 化学療法とがんに対する他の全身療法 全身療法とは、がんに対して直接行うのではなく、身体全体に影響を及ぼす治療法です。化学療法は全身療法の一種であり、薬物を用いてがん細胞を死滅させるか、または増殖を阻止します。 がんの全身療法には次のようなものがあります。 ホルモン療法 化学療法(抗がん剤) 分子標的療法 さらに読む を併用した放射線療法(化学放射線療法)が行われることがあります。この治療法は手術と同程度に効果的でありながら患者の声を損なうリスクは低くなります。ただし、化学放射線療法を行った後にがんが残っている場合は、やはり手術でがんを取り除かなければならないことがあります。
進行期のがんの治療
喉頭がんが骨や軟骨に広がっている場合、通常は喉頭と声帯を部分的または全体的に切除する手術(喉頭部分切除術または喉頭全摘出術)と、その後に放射線療法、ときには化学療法の使用が選択されます。がんがあまりに進行していて手術も放射線療法もできない場合は、化学療法が痛みの緩和やがんの縮小に役立ちますが、治癒の見込みはあまりありません。
治療の副作用
手術であれ手術以外であれ、治療にはほぼ必ず重い副作用が伴います。
放射線は、皮膚の変化(炎症、かゆみ、脱毛など)や瘢痕化(はんこんか)、味覚の喪失、口腔の乾燥を引き起こし、ときに正常な組織を破壊することがあります。患者の歯が放射線にさらされる場合は、放射線療法の前に歯の病気を治し、悪い歯を抜いておく必要がありますが、これは放射線療法の後には歯の治療がうまくいきにくくなり、あごの骨に重度の感染症が起きやすくなるためです。
一般的には、化学療法では使用する薬の種類に応じて様々な副作用が生じます。そうした副作用には吐き気、嘔吐、難聴、感染症などがあります。
手術、その他の治療法、および腫瘍そのものによって、飲み込みや発声に影響が出ることがあります。このような場合、リハビリテーションが必要です。声帯を摘出した人でも話せるようになる方法がいくつか開発されていて、その多くで良好な成果が上がっています。罹患した組織によっては、再建手術を行うこともあります。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国がん協会(American Cancer Society):喉頭がんと下咽頭がん