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婦人科疾患の主な症状には、腟(ちつ)のかゆみ、おりものの異常、不正出血、骨盤部の痛み、乳房の痛みなどがあります。多くの場合、症状の重さは年齢によって異なります。これは年齢に伴うホルモンの変化が、症状にも関与する場合があるためです。
腟のかゆみ
腟のかゆみには腟だけでなく、外性器(外陰部)のかゆみも含まれます。一時的な腟のかゆみを感じる女性は少なくありませんが、多くの場合は特に治療しなくても治ります。かゆみが続く場合や、激しいかゆみがある場合、繰り返し起こる場合以外は、特に問題視する必要はありません。
化学物質による刺激が原因で腟にかゆみが生じることがあります。たとえば洗濯用の洗剤、漂白剤、柔軟仕上げ剤、合成繊維、せっけん、生理用のナプキンや衛生スプレー、香水、衣料用染料、トイレットペーパー、腟クリーム、腟洗浄液、避妊用の発泡剤などです。また、細菌性腟炎、カンジダ症(真菌感染症の1種)、トリコモナス症(原虫による寄生虫感染症の1種)などの感染症(腟の感染症を参照)が原因の場合もあります。閉経に伴うホルモンの変化によって腟が乾燥し、かゆみが生じることもあります。乾癬(かんせん)や硬化性苔癬(こうかせいたいせん)などの皮膚の病気も原因となります。硬化性苔癬では腟口に薄い白斑が生じるのが特徴です。治療を受けずにいると傷あとのようになり(瘢痕化)、癌(がん)のリスクが高くなります。治療にはコルチコステロイド(クロベタゾールなど)を多量に含むクリームや軟膏(なんこう)が使用されます。
かゆみにおりものが伴うこともあります。かゆみが続いたり、異常な色やにおいのおりものを伴う場合には、診察を受ける必要があります。
おりもの(帯下)の異常
おりものは帯下(たいげ)ともいい、健康な女性にも少量はみられます。おりものの成分は主に子宮頸部(しきゅうけいぶ)から分泌される粘液ですが、腟からの粘液も含まれます。通常はさらさらした薄い液体で、色は透明か乳白色、あるいはやや黄色みを帯びています。量や性状は年齢によって異なります。普通、においはありません。また、かゆみやヒリヒリした痛みを伴うことはありません。
生まれたばかりの女児に、粘液状で血液が少量混じったおりものがみられることがあります。このおりものは出生前に母体から吸収したエストロゲンによるもので、血液中のエストロゲンが減少していくとともに2週間以内に止まります。これ以後は思春期に近づくまでは、健康な女児におりものがみられることはありません。
妊娠可能な年齢にある女性では、おりものの量や性状は月経周期とともに変化します。たとえば、月経周期の中ごろ(排卵期)のおりものは通常よりも量が多く、さらさらになります。妊娠、経口避妊薬の使用、性的興奮によっても、おりものの量や性状は変わります。閉経以降はエストロゲン濃度の低下に伴い、多くの場合おりものの量は減少します。
以下のようなおりものは異常と考えられます。
おりものは腟の炎症(腟炎)によってもみられることがあります。腟炎の原因としては、腟のかゆみと同様に化学物質による刺激、感染症(腟の感染症を参照)があります。殺精子剤、腟用の潤滑剤やクリーム、避妊用のペッサリーなどによっても腟や外陰部が刺激されて炎症を起こすことがあります。ラテックスアレルギーがある場合は、ラテックス製のコンドームが刺激の原因になります。女児では腟内に入った異物によって炎症が起こることがあり、この場合はおりものに血液が混じることもあります。異物の多くはトイレットペーパーが腟内まで入ってしまったものですが、ときにはおもちゃなどの場合もあります。
悪臭や生臭いにおいを伴い、白色、灰色、黄色みを帯びた色の濁ったおりものは、たいていは細菌性腟炎によるものです。濃くて白いカッテージチーズ状のかたまりを伴うおりものは、カンジダ症が原因で生じます。ときに悪臭があり、緑がかった黄色の泡状の濃いおりものは、トリコモナス症が原因で生じます。
血液の混じった水っぽいおりものは、腟、子宮頸部、子宮内膜の癌が原因で生じることがあります。骨盤部の放射線療法によっても異常なおりものが生じることがあります。
おりものの異常がみられる場合、医師は、おりものの性状、年齢、他の症状からその原因を判断します。おりものを少量採取し、顕微鏡で検査して感染の有無や、感染がある場合にはその原因菌を調べます。治療は原因によって異なります。特定のクリーム、パウダー、せっけん、女性用の衛生スプレー、コンドームなどによって持続的なかゆみが生じている場合は、その使用を中止すべきです。
不正出血
腟からの出血は腟から生じることもあれば、子宮をはじめ他の生殖器から生じることもあります。不正出血には、月経の出血量が多すぎる・少なすぎるといった経血量の異常もあれば、月経が頻繁に、あるいは不規則に起こるといった周期の異常もあります。月経周期に関連しない腟からの出血や、思春期以前あるいは閉経以降の出血も不正出血として扱います(月経の異常と不正出血: はじめにを参照)。
不正出血はけが、感染症、癌などによっても起こりますが、月経を調節するホルモンが変化した場合にも起こります。このようなホルモンの変化は思春期(10代)や閉経期(40代)(月経の異常と不正出血: はじめにを参照)に特に起こりやすくなります。
多毛症
体毛が極度に多い状態、特に顔や胴体(男性のように)、手足の体毛が多い状態を多毛症といいます。意外に感じられるかもしれませんが、多毛症は医学的には婦人科の病気の1つです。多毛症は女性ホルモンと男性ホルモンの異常から起こります。
閉経後の女性には多毛症が多くみられますが、これは女性ホルモンの減少によるものです。下垂体や副腎の異常により男性ホルモン(テストステロンなど)が過剰につくられ、多毛症を引き起こすこともあります。多毛以外にも男性的な特徴が強く現れることもあります(男性化)。また、多嚢胞(たのうほう)性卵巣症候群(月経の異常と不正出血: 多嚢胞性卵巣症候群を参照)が原因となることもあります。まれに、卵巣の腫瘍(しゅよう)、晩発性皮膚ポルフィリン症(皮膚にみられるポルフィリン症の1種)などの病気や、タンパク同化ステロイド、コルチコステロイド、ミノキシジルなどの薬の使用によっても起こることがあります。
血液検査で男性ホルモンと女性ホルモンの濃度を調べることがあります。原因の疑いがある薬は使用を中止します。一時的な解決法としては、毛をそる、毛を抜く、脱毛用ワックスや各種の脱毛剤を使用するなどの方法があります。処方薬であるエフロルニチンの局所用クリームを使用することもあります。この薬は体毛が伸びるのを遅くして、顔の不要な毛を徐々に減らすのに役立ちますが、一時的に皮膚を刺激するため皮膚が赤くなったり、ヒリヒリしたりチクチクしたり、発疹ができたりします。毛が細ければ漂白するのも効果的です。レーザー光線療法は一時的には効果があります。安全で永久的な唯一の方法は、毛包を破壊する電解法(電気脱毛)です。多毛症の原因となっている病気がある場合は、可能であれば治療します。
骨盤部の痛み
骨盤部、すなわち下腹部から腰骨までの部位の痛みは、多くの女性が経験するものです。骨盤部の痛みは生殖器(子宮、卵管、卵巣、腟)、膀胱(ぼうこう)、直腸、盲腸など骨盤内にある臓器に問題があるときに起こります。また、ときに腸、尿管、胆嚢など骨盤外の臓器が原因となることもあります。ストレスやうつなどの心理的要因が、骨盤部の痛みを引き起こすこともあります。
痛みの種類はさまざまで、鋭い痛み、断続的な痛み、締めつけるような痛み(月経痛など)などがあります。激しい痛みに突然襲われることもあれば、鈍い痛みが続くことも、あるいは痛みが徐々に強くなることもあります。患部を圧迫すると痛みが強くなる場合もあります(圧痛)。痛みに発熱、吐き気、嘔吐が伴うこともあります。
下腹部や骨盤部に激しい痛みが突然生じた場合には、早急に原因を突き止め、緊急手術が必要かどうかを判断する必要があります。緊急手術が必要な病気は虫垂炎、穿孔性潰瘍(せんこうせいかいよう)、大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)、卵巣嚢腫の茎捻転(けいねんてん)、性感染症による骨盤内の感染、子宮外妊娠(多くは卵管妊娠)などです。
痛みの原因を特定するため、痛みの持続時間と位置や、他の症状について問診が行われます。同様な痛みが以前にあったかどうかも尋ねられます。食事、睡眠、性交、身体活動、排尿、排便と痛みとの時間的関係や、痛みを悪化あるいは軽減させる要因についての情報も診断に役立ちます。
診察では、腹部全体を触診して圧痛や腫瘤(しゅりゅう)の有無を調べます。内診を行って異常のある臓器を特定し、感染の有無を調べます。このほか全血球計算、尿検査、妊娠検査、超音波検査、CT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、感染の有無を調べるための培養検査などを行います。場合によっては、手術あるいは腹腔鏡検査(内視鏡を使って腹腔や骨盤腔の内部を調べる検査)が必要となることもあります。
痛みの原因となっている病気が特定されれば、その治療によって痛みの軽減を図ります。精神的な問題によって痛みが引き起こされている場合は、カウンセリングなどの治療が痛みの軽減に役立つことがあります。
乳房の症状
乳房に関連した症状もよくみられ、乳房の痛み、しこり(硬い腫瘤や嚢胞)、乳房の皮膚のむくみやへこみ、乳首(乳頭)からの分泌物などが主なものです(乳房の病気: はじめにを参照)。これらの症状は、重大な病気を示す徴候の場合もあれば、そうでない場合もあります。たとえば、月経前のホルモンの変化によって起こる乳房全体の痛みは、重い病気を示すものではありません。ただし、女性にとって乳癌は警戒すべき病気であり、早期に発見して初めて適切な治療が可能となることから、乳房に何らかの変化があった場合は医師の診察を受けるべきです。さらに、月に1回は乳房の自己検診を行うべきです(乳癌の自己検診の方法 を参照)。
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