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骨盤内炎症性疾患

骨盤内炎症性疾患は、女性の上部生殖器の感染症です。

骨盤内炎症性疾患が影響を及ぼす部位としては、子宮頸部(粘液膿性子宮頸炎)、子宮(子宮内膜炎)、卵管(卵管炎)があり、ときには卵巣に影響が及ぶこともあります(卵巣炎)。骨盤内炎症性疾患は米国では、不妊の原因のうち予防可能なものとして最も多くみられます。患者のうち約5分の1が不妊となり、約3分の1では再発がみられます。

骨盤内炎症性疾患は、性的に活発な女性によくみられます。初潮以前や妊娠中、閉経後の女性にはまれな病気です。24歳以下の女性でバリアー型の避妊具(コンドーム、ペッサリーなど)を使用していない人、多数のセックスパートナーがいる人、性感染症や細菌性腟炎にかかっている人、子宮内避妊具(IUD)を使っている人では骨盤内炎症性疾患のリスクが高くなります。

感染症は多くの場合、腟(ちつ)に入った細菌によって引き起こされます。細菌が入る原因として最も多いのは性交です。普通、骨盤内炎症性疾患を起こすのは、淋菌感染症の原因菌である淋菌や、クラミジア感染症を起こすクラミジア‐トラコマチスといった細菌です。淋菌感染症とクラミジア感染症はいずれも性感染症です。細菌は腟洗浄のときに腟内に入ることもあります。まれに腟からの分娩(ぶんべん)、流産、子宮頸管拡張と子宮内掻爬(そうは)などの処置の際に細菌が入ることもあります。

多くの場合、骨盤内炎症性疾患は子宮頸部や子宮から発症します。普通は両側の卵管に感染がみられますが、どちらか片側により重い症状が現れることもあります。感染が特に著しい場合以外は、通常は卵巣に及ぶことはありません。

症状

骨盤内炎症性疾患の症状は、月経の終わりごろや2〜3日後をピークとして周期的に現れる傾向があります。最初の症状としてみられるのは微熱、軽度から中等度の腹痛(うずくような痛みであることが多い)、腟からの不規則な出血、悪臭のするおりものなどです。感染が広がると下腹部の痛みが次第に激しくなります。嘔吐や吐き気を伴うこともあります。その後、熱が高くなり、おりものが黄緑色の膿(うみ)のようになります。ただし、クラミジア感染症では、おりものやその他の症状がみられないことがあります。

卵管が感染すると閉塞を起こすことがあります。閉塞が起こると、液体が閉じこめられるため卵管が腫れます。治療を受けずにいると、下腹部の痛みが続き、不正出血が起こることがあります。感染が腹膜(腹腔と腹部臓器を覆っている膜)など周辺の組織に広がることもあります。腹膜が感染すると腹膜炎が起こり、腹部全体に突然に激しい痛みを生じることがあります。

卵管の感染が淋菌感染症やクラミジア感染症によるものである場合は、肝臓周囲の組織に広がることがあります。このような感染症では、胆嚢(たんのう)の病気や胆石の場合に似た痛みが右上腹部に生じます。この合併症をフィッツ‐ヒュー‐カーティス症候群といいます。

卵管に感染が起きている女性の約15%では、卵管または卵巣に膿がたまって膿瘍(のうよう)ができます。膿瘍が破れて膿が骨盤腔に流れ出すと腹膜炎が起こります。このような状態になると、下腹部に激しい痛みが生じ、その直後に吐き気や嘔吐、著しい低血圧が起きます(ショック状態)。感染が血液に広がり敗血症を起こすと、命にかかわることがあります。

骨盤内炎症性疾患は膿状の液体を生じることが多く、これが原因で生殖器内や腹部臓器の間に瘢痕(はんこん)や癒着(異常な瘢痕組織による結合)が生じます。その結果、不妊になることもあります。炎症の期間が長く重症度が高いほど、また、再発を繰り返すほど、不妊などの合併症のリスクが高くなります。リスクは感染を起こすたびに高くなります。

骨盤内炎症性疾患にかかったことがある女性では、子宮外妊娠(卵管妊娠)の発生率が6〜10倍に増加します。卵管妊娠とは、胎児が子宮ではなく卵管の中で成長する状態です。卵管妊娠は母体の生命を脅かします。また、胎児は生存できません。

予防

骨盤内炎症性疾患の予防は、女性が健康を保ち、妊娠能力を維持する上で不可欠です。感染を予防する最善の方法は性交を控えることです。しかし、セックスパートナーが1人で、どちらも性感染症にかかっていない場合は、骨盤内炎症性疾患にかかる危険性は非常に低くなります。腟洗浄を控えることも予防に役立ちます。

バリアー型の避妊具(コンドームなど)の使用や、腟用発泡剤などの殺精子剤とバリアー型の避妊具の併用は、骨盤内炎症性疾患の予防につながります。

診断と治療

痛みの程度と部位から骨盤内炎症性疾患が疑われると、内診などの診察が行われます。子宮頸部から分泌物などを採取し、淋菌感染症やクラミジア感染症にかかっていないかどうかを調べます。他の症状や臨床検査の結果も診断の確定に役立ちます。通常は白血球数の増加がみられます。骨盤部の超音波検査が行われることもあります。これらの方法で診断が確定できない場合や、治療の効果が得られない場合は、へその近くを小さく切開して腹腔鏡を挿入し、腹腔内部を観察することがあります。

通常はすぐに抗生物質が投与されます。一般的には、さまざまな細菌に効果がある抗生物質2種類が使用されます。多くは通院で治療可能ですが、48時間以内に改善がみられない場合、症状が重篤な場合、妊娠中の場合、膿瘍が確認された場合は、入院が必要になります。

抗生物質を投与しても膿瘍が消失しない場合は手術を行うことがあります。膿瘍が破裂した場合は、緊急手術が必要です。

抗生物質の投与が終わり、感染が完治したことが医師により確認されるまでは、たとえ症状が消えていても性交を控える必要があります。セックスパートナーは全員、感染症の検査と治療を受けるべきです。骨盤内炎症性疾患は、診断と治療が適切であれば完治する可能性が高い病気です。

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