精子または卵子が通過する管をふさげば、生殖能力は失われます。
このような避妊法は基本的に、永久的な処置とみなすべきですが、場合によっては元の状態に戻すことができます。
精管切除術は男性に対する短時間の手技で、外来の処置室で行われます。
女性に対する手技(卵管結紮術と呼ばれることが多い)はもっと複雑で、腹部を小さく切開し、そこから挿入した細いチューブを用いて行う場合や、腹部をより大きく切開して行う場合があります。
米国では、家族計画を行っている夫婦の約3分の1が、その方法として不妊手術を選んでおり、特に女性が30歳以上の場合によく選択されています。男性に対する手技は精管切除術です。女性に対する不妊手術の手技には、腹部を小さく切開し、そこから挿入した細いチューブを用いて行う場合(腹腔鏡下手術)や、腹部を切開して行う場合(小開腹手術―以下を参照)があります。女性に対する不妊手術は、しばしば卵管結紮術と呼ばれますが、卵管結紮術という用語は、卵管を縛る具体的な不妊手術の名前でもあります。
避妊手術は非常に効果的です。術後1年間に妊娠する女性の割合は、以下の通りです。
精管切除術の場合:0.15%
卵管が関与する手技の場合:0.6%
男性が精管切除術を受けた後の1年間に妊娠する女性パートナーの割合は0.2%未満です。男性が精管切除術を受けた後の5年間に妊娠する女性パートナーの割合は約1.1%です。
このような避妊法は基本的に、永久的な処置とみなすべきです。しかし、カップルが考えを変えた場合、切断した管を再びつなげたり開通させたりする再吻合(さいふんごう)術によって妊よう性の回復を試みることが可能です。成功するかどうかは、用いられた手技によってある程度決まります。男性の再吻合術は女性と比べて効果が低くなると考えられます。男性の再吻合術後のカップルの妊娠率は、約26%です。
女性の場合、永久避妊の処置を元の状態に戻せる可能性は、以下によって異なります。
用いられた手技
患者の年齢
残っている卵管の長さ
瘢痕化の程度
女性とそのパートナーの妊よう性の検査結果
再吻合術がうまくいかなかった場合、 体外受精 体外受精 生殖補助医療は、精子と卵子、あるいは胚を培養室(体外)で操作して妊娠を達成することを目標とします。 ( 不妊症の概要も参照のこと。) 治療開始から4~6サイクルの月経周期が経過しても妊娠に至らない場合は、体外受精や配偶子卵管内移植(GIFT)などの生殖補助医療を検討します。これらの方法は、35歳未満の女性の方が成功率が高くなります。米国での体外受精の成功率を以下に示します。 35歳未満の女性:体外受精の約30%で出生に至る。... さらに読む により妊娠できることがあります。
男性に対する不妊手術(精管切除術)
精管切除術は、男性に対する永久的な避妊法として用いられます。精管(精巣から精子を送り出す管)を切断して断端を閉じる手術です。精管切除術は泌尿器科医が外来の処置室で行い、約20分間かかり、局所麻酔で行われます。陰嚢の両側を小さく切開して左右の精管の一部を切除し、断端を縛って閉じます。
手術後は、不妊の状態が確認されるまで他の避妊法を併用する必要があります。これは、精嚢にも多くの精子が蓄えられているため、手術後に射精を20回ほど行うまでは完全な避妊にはならないためです。臨床検査により、通常は処置の3カ月後に採取される射精2回分の精液に精子がみられなければ、不妊症が確認されます。
精管切除術の合併症には、以下のものがあります。
陰嚢内の血栓(5%以下)
精子の漏出による炎症反応
自然に起きる再開通(1%未満)
自然に起きる再開通とは、途中で切られた精管が自然に再びつながって妊よう性が回復することです。再開通が起こるとすれば、通常は手術後すぐにみられます。
不妊手術の成功が確認されるまで他の避妊法を用いれば、男性の希望に応じて手術直後も性行為は可能ですが、手術後数日間は痛みが生じることがあるため、射精を控えるべきです。
女性に対する不妊手術
女性に対する不妊手術では卵管(卵子を卵巣から子宮まで送るための管)をふさぐ外科的処置が行われます。あるいは、卵管を完全に摘出することもあります。
卵管が完全に摘出されれば、妊娠は不可能です。卵管の摘出を伴わない手技の後、不妊手術後の最初の10年間に妊娠する女性の割合は約2%です。これらの妊娠のうち約3分の1は、卵管での 異所性(子宮外)妊娠 異所性妊娠 異所性妊娠とは、卵管などの異常な部位に受精卵が着床することです。 異所性妊娠では、胎児は生存できません。 異所性妊娠が破裂すると、しばしば腹痛や性器出血が起こり、治療しなければ死に至ることがあります。 診断は血液検査および超音波検査(主に胎児の位置を調べるために行う)の結果に基づきます。... さらに読む となります。
不妊手術は、前もって手術日を決めておき待機手術として行うことや、帝王切開の際、または経腟分娩の1~2日後に行うことができます。
子宮を摘出する手術(子宮摘出術)も結果として不妊になります。この方法は通常、不妊手術としてではなく、病気の治療を目的として行われます。
腹腔鏡による不妊手術
腹腔鏡による不妊手術(卵管結紮術)はよく行われています。この手技は手術室で行います。女性に全身麻酔をかけた後、へそのすぐ下を小さく切開します。切開口から挿入した観察用の細い管状の機器(腹腔鏡 腹腔鏡検査 医師は、 スクリーニング検査を勧めることがあります。スクリーニング検査とは、症状がない人に対して病気の有無を調べるために行われる検査です。女性に生殖器系に関連する症状(婦人科疾患の症状)がある場合、症状を引き起こしている病気を特定するための検査( 診断目的の検査)が必要になることがあります。 婦人科領域では以下の2つのスクリーニング検査が重要です。 子宮頸がん(子宮の下部のがん)の有無を調べるためのパパニコロウ検査などの細胞診またはヒト... さらに読む )から、以下のいずれかの方法によって卵巣を摘出したり、ふさいだり、閉じたりします。
電気焼灼術(電流により熱を生じて組織の切開や凝固を行う装置)により、左右の卵管を完全に摘出するか、それぞれ約2~3センチメートルにわたってふさぐ
プラスチック製バンドや金属製クリップなどの器具を使用して、卵管を遮断するか、つまんで閉じた状態にする
この手術は、通常は日帰り手術が可能です。最大6%の人で切開部の皮膚の感染または痛みや便秘などの軽い合併症がみられます。出血や膀胱または腸の穿孔といった重大な合併症が起こる人の割合は1%未満です。
卵管をふさぐ:女性に対する不妊手術
左右の卵管(卵子を卵巣から子宮まで送るための管)を切断する、ふさぐ、あるいは遮断して、精子が卵子にたどり着いて受精が起きないようにする不妊手術です。 |
小開腹手術
小開腹手術は、女性が出産後すぐに不妊手術を受けたい場合に、腹腔鏡による不妊手術に代えて行われることがあります。
全身麻酔、区域麻酔、局所麻酔のいずれかが用いられます。出産後の入院期間以上に入院する必要はありません。腹部を小さく切開(約2.5~7.5センチメートル)した後、通常は左右の卵管を一部切除します。腹腔鏡下手術と比べて、小開腹手術は痛みが強く、回復にやや長くかかります。
子宮鏡による不妊手術
2018年12月31日をもって、この手技に必要な特殊な器具が米国で入手できなくなりました。
この手術では、切開は不要です。局所麻酔が用いられます(眠くなる薬剤[鎮静薬]を併用する場合もあります)。
子宮鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を腟から子宮を通して卵管内まで挿入します。次にコイル(マイクロインサート)を卵管内に挿入して卵管をふさぎます。このコイルが卵管の組織を刺激し、瘢痕組織が形成されます。瘢痕組織により卵管がふさがれます。瘢痕組織が形成されるまでに最長で3カ月かかるため、医師が卵管の遮断を確認するまで別の避妊法を用いる必要があります。通常、手術を受けた女性は手術当日に帰宅できます。
約3カ月後には、造影剤を腟から子宮と卵管に注入してからX線撮影を行い(子宮卵管造影検査)、卵管が遮断されていることを確認します。造影剤が卵管の端から出てこなければ、医師は卵管の遮断を確認することができます。
通常、この種の不妊手術を行うと、元の状態に戻すことはできません。
意図しない妊娠の発生率は、永久的な避妊法として子宮鏡による手術または腹腔鏡による手術のどちらを用いても同程度です。しかしながら、子宮鏡による手術の後には2回目の手術が必要となる可能性が高くなります。
起こりうる問題
女性の不妊手術では、問題が起こることはほとんどありません。起こりうる問題には以下のものがあります。
死亡:女性100,000人当たり1~2人
出血または腸の損傷:女性の約0.5%
卵管遮断の失敗、痛み、その他の合併症:女性の最大約5%
妊婦に持続性の痛みまたは性器出血がある場合は、マイクロインサートの除去が必要になることがあり、典型的には、子宮鏡手術により除去しますが、マイクロインサートの一部が卵管外にある場合は腹腔鏡下手術が必要になることがあります。