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はじめに

出生時欠損あるいは先天異常は、赤ちゃんが生まれる前の段階で生じる身体的な異常のことをいいます。これらの異常はたいてい出生時、あるいは生後1年までの間に明らかになります。

先天異常は体のどの部分のどの臓器にも生じる可能性があり、非常によくみられるものから、そうでないものまでさまざまです。米国では、先天異常は乳児の死亡原因の上位にあります。5歳までのすべての小児のうち約7.5%に先天異常がみられますが、それらの多くは軽度のものです。主な先天異常は、新生児の約3〜4%にみられます。1人の乳児に複数の先天異常が生じることもあります。

そのほかの先天異常

主要な器官

先天異常の種類

どのような異常が生じるか

治療

心臓 左心低形成症候群 左心室の発育不全により、体に血液を送り出すことができない 左心室を再建するための分離手術を行う
消化管 臍ヘルニア、胃壁破裂症 腹部の筋肉の裂け目や弱くなった部分から、腹腔内の臓器が外にはみ出してしまう 腹部を閉じる手術を行う
筋骨格 先天性斜頸 頭部と頸部が異常に曲がっている (1)理学療法、(2)手術、(3)ボツリヌス毒素の注入、などがある
  プルーンベリー症候群 腹部の筋肉層が欠損しているため腹部がふくらむ。尿路系の異常がしばしば発生する 尿路系の異常で尿の流れが妨げられている場合は手術を行う
神経系 脳孔症 脳組織が欠損し、液体で満たされた嚢に置き換わっている 治療法はない。脳室シャントで圧力を軽減できる場合がある
  水無脳症 重篤な脳空洞症で脳組織がほとんど欠損している 治療法はない
生殖器 精巣の欠損(両側性無精巣、精巣退行) 先天的に両方の睾丸が欠損している 思春期前に男性ホルモン(テストステロン)の投与を行う
先天性緑内障 先天的に緑内障が存在する。眼球の圧力が上昇しており(普通は両眼とも)、眼球が腫大することもある。外見的にもゆがむ場合がある 通常は生後すぐに手術を行うが、手術までの間は点眼薬を使用する。緑内障を治療せずに放置すると失明の可能性がある
  先天性白内障 先天的に眼の水晶体に白内障(濁った部分)が存在する。普通は視力障害を伴う 視力を正常に回復させるには白内障の切除手術をできる限り早期に行う

原因とリスク

1つの受精卵が1人の人間を構成する数百万もの分化した細胞へと成長していく過程の複雑さを考えれば、先天異常が珍しくないのも当然のことです。ほとんどの先天異常の原因は不明ですが、ある種の遺伝的要因と環境要因は先天異常が発現する可能性を高くします。これらの要因は、放射線への暴露、ある種の薬剤(たとえば、重症のにきびの治療に使われるイソトレチノインなど)、アルコール、栄養不足、母親におけるある種の感染症、外傷、遺伝性疾患などです。リスクの中には回避可能なものもあります。妊婦がどんなに厳密に健康的な生活習慣を守っていたとしても起こってしまう先天異常もあります。

有害物質(催奇物質)への暴露: 催奇物質とは、先天異常を引き起こす、あるいはその可能性を高める物質のことです。放射線(X線を含む)、ある種の薬剤、毒物(アルコールを含む)などは催奇物質です。催奇物質にさらされた妊婦のほとんどは、異常のない新生児を生みます。先天異常が起こるかどうかは妊婦が催奇物質にいつ、どの程度の量、どのくらいの期間さらされたかによって決まります。催奇物質にさらされると、ちょうどそのときに成長している胎児の臓器が最も影響を受けます。たとえば胎児の脳のある部分が成長する時期に催奇物質にさらされると、この決定的な時期の前や後にさらされる場合より異常を引き起こしやすくなります。多くの先天異常は、女性が自分が妊娠していることに気づく以前に発生します。

栄養: 胎児を健康な状態に保つには、栄養のある食事を取り続けていることが必要です。たとえば食事中の葉酸(葉酸塩)が不足すると、胎児が二分脊椎(にぶんせきつい)やそのほかの脳の異常、あるいは神経管閉鎖不全(遺伝病の検査: 神経管欠損を参照)として知られる脊椎の異常などを引き起こす可能性が高くなります。同様に母親の肥満は神経管閉鎖不全のリスクを高めます。

遺伝および染色体に関する要因: 染色体と遺伝子にも異常が生じることがあります。これらの異常は両親から遺伝しますが、親自身にこの異常の影響が出ている場合もあれば、本人には症状が現れずに因子だけを引き継いでいる場合もあります(遺伝と遺伝子: 遺伝子の発現を参照)。しかし多くの先天異常は、子供の遺伝子に予測や説明のできない変化(突然変異)が起こることが原因となります。遺伝的要因で生じる先天異常のほとんどは、体の1カ所だけの明らかな奇形にとどまらず、ほかの部分にも影響が現れます。

感染症: 妊婦がある種の感染症にかかると、先天異常の原因となります。感染症が先天異常を引き起こすかどうかは胎児の週齢によります。最もよく先天異常を引き起こす感染症には、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、パルボウイルス(伝染性紅斑)、風疹、水ぼうそう(水痘)、トキソプラズマ症(猫のトイレ砂から感染します)、梅毒などがあります。これらの感染症は、成人では症状がわずかしか出ないかまったく出ないこともあるので、女性はかかっても気づかない可能性があります。

診断

妊娠中に、先天異常を伴う赤ちゃんが生まれるリスクが高いかどうか調べます(遺伝病の検査: 出生前診断を参照)。その可能性が高いのは、35歳以上、何度も流産を経験している、染色体異常や先天異常のある子供がいる、あるいは子供が原因不明で死亡したことのある女性、などです。このような女性は赤ちゃんが正常かどうかを調べるための特別な検査が必要となります。

出生前超音波検査を行うと、ある特定の先天異常を発見できることがしばしばあります。血液検査でわかることもあります。たとえば、母親の血液中のアルファフェトプロテイン値が高い場合、脳か脊髄(せきずい)に欠陥がある可能性があります(アルファ‐フェトプロテインの異常値の意味を参照)。確定診断のために羊水穿刺(胎児の周囲にある液体を採取すること)、あるいは絨毛穿刺(発育する赤ちゃんの周囲にある嚢から組織を採取すること)が必要となることがあります。だんだん、先天異常は赤ちゃんが生まれる前に診断されるようになってきています。

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