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アミノ酸代謝異常症

アミノ酸はタンパク質の構成成分であり、体内で多くの機能を果たしています。アミノ酸代謝における遺伝性の異常は、アミノ酸の分解における欠陥かアミノ酸を細胞内に取りこむ能力に欠陥があるために起こります。これらの異常は早くから症状が現れるため、よくみられるものに対しては新生児スクリーニング検査が行われます。米国ではフェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、チロシン血症の新生児スクリーニング検査が一般的に行われますが、スクリーニング実施の有無は州によって異なります。

フェニルケトン尿症

フェニルケトン尿症(PKU)は、アミノ酸のフェニルアラニンの蓄積を特徴とする病気です。このフェニルアラニンは必須アミノ酸で、体内で合成することはできず食品中から摂取します。正常であれば過剰なフェニルアラニンは、別のアミノ酸のチロシンとなって体外に排出されます。しかしフェニルアラニンをチロシンに換える酵素が欠損していると、血中にフェニルアラニンがたまり、脳に対して毒性をもちます。このため精神遅滞が起こります。

PKUはどの人種にもみられます。PKUの家族歴があれば、家族の中で遺伝的変異がある人のDNAと胎児のDNAを分析して、胎児にこの病気があるかどうかを判別します。胎児のDNAは羊水穿刺か絨毛穿刺で採取します。

新生児の場合、多くはルーチンのスクリーニング検査で発見できます。PKUの新生児にすぐに症状が出ることはほとんどありませんが、ときには活気がなかったり、ほ乳不良なことがあります。適切な治療をしなければ、生後2〜3年で精神遅滞を来し、やがて重症になります。このほかの症状にはけいれん、吐き気や嘔吐、湿疹様の発疹、皮膚や毛髪の色が家族の健常な者に比べて明るい、攻撃的または自傷的ふるまい、多動などがあり、精神医学的症状が出ることがあります。治療されないと体臭や尿が「ネズミ臭く」なります。汗や尿にフェニルアラニンの代謝産物のフェニル酢酸が含まれるためです。

精神遅滞を防ぐため、生後2〜3週目からフェニルアラニンの摂取制限を始めますが、生きるためにはある程度のフェニルアラニンが必要であるため完全には除去しません。あらゆる天然のタンパク源はPKUの子供には過剰なフェニルアラニンを含んでいるため、この病気の子供は肉や牛乳などのタンパク質を含む普通の食べものを摂取することはできません。こうした食べものの代わりに、フェニルアラニンを含まない特別に作られたいろいろな加工食品を摂取しなければなりません。果物や野菜のような低タンパクの天然の食べものと、限られた量の加工穀物食は食べることができます。

食事制限を早くから良好に維持できると正常な発達は可能です。しかし、この非常に厳しい食事制限を続けなければ、学校生活を送ることが困難になりはじめます。2〜3歳を過ぎてから食事制限を始めた場合は、極端な多動やけいれんを抑えることができ、IQ値も上がりますが、精神遅滞は回復しません。しかし最近、精神遅滞のある一部の成人のPKU患者(新生児スクリーニングの実施前に生まれた)の機能が、PKU食を取り入れることで改善することが明らかになっています。

フェニルアラニン制限食は一生続ける必要があり、中止すると知能が低下し、神経障害や精神医学上の異常が起こります。

メープルシロップ尿症

メープルシロップ尿症の子供では一部のアミノ酸を代謝できず、これらのアミノ酸の代謝産物が蓄積します。このため神経系に変化が起こり、けいれんや精神遅滞なども起こります。こうした代謝産物によって、尿や汗などにメープルシロップのようなにおいがします。この病気はメノナイト派教徒の家系に多くみられます。

メープルシロップ尿症にはさまざまなタイプがあり、重症度も異なります。最も重症のタイプでは、生後1週目でけいれんや昏睡などの神経系の異常を起こし、数日から数週間以内に死亡します。これより軽症のタイプの場合、初期には正常のようにみえますが、感染症や手術などで身体的なストレス状態になると、嘔吐、よろめき歩行、錯乱、昏睡、メープルシロップのにおいなどの症状が現れます。

いくつかの州ではこの病気に対し、血液検査による新生児スクリーニングをルーチンで行っています。

重症の乳児には透析療法(腎不全: 透析を参照)が行われます。軽症の子供には、ビタミンB1(チアミン)の注射が効果的な場合もあります。この病気を抑えることができた後も特別食、つまり代謝異常を起こすアミノ酸を除いた食事を常に摂取しなければなりません。

ホモシスチン尿症

この病気の子供はアミノ酸のホモシスチンの代謝ができず、このアミノ酸と毒性のある代謝産物が蓄積してさまざまな症状を引き起こします。症状は軽症であることも重症であることもあり、原因となる酵素の欠損によって異なります。

この病気の乳児は出生時には正常です。しかし多くは3歳を過ぎると最初に眼の水晶体レンズの偏位などの症状が現れ、視力がひどく低下します。ほとんどの子供に骨粗しょう症も含めた骨格異常がみられます。そのため、四肢が長く、クモを思わせる長い指をもち、背骨の曲がった細くて背の高い体形になります。精神障害や行動障害、精神遅滞が多くみられます。ホモシスチン尿症では血液が凝固しやすくなるため、脳卒中、高血圧など多くの重い病気が起こります。

いくつかの州では、出生時の血液検査でホモシスチン尿症に対するスクリーニングを行っています。診断を確定するには、肝臓か皮膚の細胞で酵素の働きを測定する検査を行います。

ホモシスチン尿症の子供の中には、ビタミンB6(ピリドキシン)やビタミンB12(コバラミン)を投与すると改善する場合もあります。

チロシン血症

チロシン血症の子供では、アミノ酸のチロシンを完全に代謝することができません。このアミノ酸の代謝産物が蓄積するため、さまざまな症状が現れます。米国の一部の州では、新生児のスクリーニング検査でこの病気を調べています。

チロシン血症にはI型とII型の2つのタイプがあります。I型チロシン血症が最も多くみられるのは、フランス系カナダ人やスカンジナビア系の子供です。普通、生後1年以内に肝臓や腎臓の機能障害、神経障害が起こります。そのため過敏性やくる病が現れたり、肝不全を起こして死亡することがあります。チロシン制限食はほとんど役に立ちません。治験段階の薬剤の中には毒性の代謝産物の生成を防ぐものがあり、I型チロシン血症の子供に効果があります。I型チロシン血症の子供の多くは、肝臓移植が必要になります。

II型チロシン血症はI型よりもまれな病気です。この病気の子供は精神遅滞を起こすことがあり、眼や皮膚にたびたび潰瘍が発生します。I型チロシン血症と異なり、チロシン制限食で病気の進行を防ぐことができます。

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