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潜水による障害の概要

執筆者:

Richard E. Moon

, MD, Duke University Medical Center

レビュー/改訂 2021年 6月
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深い海に潜るダイビングやスキューバダイビングには、いくつかの障害のリスクが伴い、そのほとんどは圧力の変化によって引き起こされます。同様の障害は、海底トンネルの工事や、ケーソン(防水の箱型の構造物で、建設現場などで使用します)内で作業する人にも起こります。水の浸入を防ぐために、海底トンネルやケーソンでは気圧を高くしているからです。

水中の圧力

水中ではその上にある水の重さが加わるため圧力が高くなりますが、これは地表の気圧(大気圧)が空気の重さによって生じていることと同じ原理です。ダイビングでは水中の圧力を、深さの単位(フィートまたはメートル)か、または絶対気圧で表します。絶対気圧で示される気圧には水の重さが加算されます。例えば水深10メートルでは1気圧(1平方センチメートル当たり1.03キログラム)に、水面の大気圧である1気圧を加えます。すなわち水深10メートルまで潜ったダイバーは合計で2絶対気圧、つまり水面の2倍の気圧にさらされることになります。さらに10メートル潜る毎に1気圧ずつ高くなります。

圧に関連するダイビングの障害は以下のような原因で起こります。

どちらのプロセスでも動脈内に気泡が生じ各器官への血流を妨げることがあります(動脈ガス塞栓症 動脈ガス塞栓症 動脈ガス塞栓症は、動脈中に生じた気泡によって各器官への血液供給が妨げられる状態です。圧縮空気を呼吸するスキューバダイバーなどの水中ダイバーの主な死因の1つです。 水面に到達後、数分以内にダイバーに意識の喪失か 脳卒中に似た症状が現れる場合があります。 このようなときは、酸素を与えて横にさせ、できるだけ早く再圧チャンバーへ送ります。... さらに読む )。非常に深く潜水する場合など、高圧下で呼吸すると酸素や窒素などの気体によって障害(酸素中毒 酸素毒性 窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素などの気体の毒性作用がダイビング中の障害となることがあります。 ( 潜水による障害の概要も参照のこと。) 空気は窒素と酸素を主成分とする混合気体で、微量ですが他の気体も含まれています。それぞれの気体の分圧は、その気体の空気中の濃度と大気圧によって決まります。酸素と窒素は、分圧が高くなると悪影響を及ぼします... さらに読む 窒素酔い 窒素酔い 窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素などの気体の毒性作用がダイビング中の障害となることがあります。 ( 潜水による障害の概要も参照のこと。) 空気は窒素と酸素を主成分とする混合気体で、微量ですが他の気体も含まれています。それぞれの気体の分圧は、その気体の空気中の濃度と大気圧によって決まります。酸素と窒素は、分圧が高くなると悪影響を及ぼします... さらに読む )が引き起こされます。

ダイビング関連の他の障害

水温が低いときにダイビングをすると、体温が危険なレベルにまで低下する 低体温症 低体温症 低体温症(危険なほど体温が低下した状態)は、寒冷な環境にさらされることによって発生したり悪化したりするため、 寒冷障害と呼ばれることが多くあります。 非常に寒い環境に身を置いたり、特定の病気があったり、動くことができない状況にある場合、低体温症による害が生じるリスクが高くなります。... さらに読む が起こり、動作がぎこちなくなり、判断力が低下します。 冠動脈疾患 急性冠症候群(心臓発作、心筋梗塞、不安定狭心症) 急性冠症候群は、冠動脈が突然ふさがる(閉塞する)ことによって起こります。この閉塞により、その位置と程度に応じて、不安定狭心症か心臓発作(心筋梗塞)が起こります。心臓発作とは、血液供給がなくなることにより心臓の組織が壊死する病気です。 急性冠症候群を発症すると、通常は胸部の圧迫感や痛み、息切れ、疲労などが起こります。... さらに読む 急性冠症候群(心臓発作、心筋梗塞、不安定狭心症) がある場合は、冷たい水が引き金となり、まれに致死的な 不整脈 不整脈の概要 不整脈とは、一連の心拍が不規則、速すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、あるいは心臓内で電気刺激が異常な経路で伝わるなど、心拍リズムの異常のことをいいます。 不整脈の最も一般的な原因は心臓の病気(心疾患)です。 自分で心拍リズムの異常に気づくこともありますが、ほとんどの人は、脱力感や失神などの症状が起きるまで不整脈を自覚しません。... さらに読む 不整脈の概要 を起こすこともあります。ダイビングに関するその他のリスクとしては以下のものがあります。

  • 溺水

  • 海洋生物による咬み傷や刺し傷

  • 日焼けや熱中症

  • 切り傷、挫傷

  • 乗り物酔い

  • 浸水性肺水腫

薬(処方薬、レクリエーショナルドラッグ、一部の市販薬)やアルコールは、様々な医学的疾患と同様に、水深が深い場所では予期しない危険な作用を示すことがあります(ダイビングの妨げとなりうる医学的疾患 ダイビングが禁止される医学的疾患 ダイビングが禁止される医学的疾患 を参照)。

ダイビング関連の障害によって以下のいずれかが生じると、 溺水 溺水 する可能性があります。

  • 思考障害や眠気

  • 意識不明、筋力低下

  • パニック

  • 平衡感覚の喪失と見当識障害

ダイバーズアラートネットワーク(Divers Alert Network[24時間緊急ホットライン:+1-919-684-9111])では、世界中のファンダイビングを行うスキューバダイバーのニーズにこたえるため、主に以下の2種類の活動を行っています。

  • 医師がダイバーに対して救命救急処置を行う手助けをする。

  • 調査研究、教育的活動、ダイビング関連製品の販売などを通じて安全なダイビングを推進する。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  • ダイバーズアラートネットワーク(Divers Alert Network):24時間緊急ホットライン、+1-919-684-9111

  • デューク潜水医学(Duke Dive Medicine):医師による24時間救急相談、+1-919-684-8111

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