メルクマニュアル18版 日本語版
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疼痛および炎症の治療

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疼痛も参照 。)

疼痛および炎症の治療は運動促進および,筋肉や関節の協調運動向上を目的としている。薬物を用いない治療には,しばしば理学療法士に施術されるものがあり,それには温熱,冷却,電気刺激,頸部牽引,マッサージ,鍼などがある。これらの治療は多くの筋肉,腱,靱帯の障害に適応される(リハビリテーション: 非薬物疼痛治療の適応表 4: 表を参照)。 処方者は診断,治療法(例,超音波,温熱パック),施術部位(例,右肩,腰部),頻度(例,1回/日,隔日),期間(例,10日,1週間)を記載すべきである。それ以上の詳細(例,用法,個別治療期間)は,療法士が決定するため不要である。これらの治療の必要性を医師が確信できない場合,医師は理学療法士に相談する。

表 4

非薬物疼痛治療の適応

治療

適応症

温熱(例,赤外線熱,ホットパック,パラフィン浴,ハイドロセラピー)

関節痛

関節炎(様々な型)

背痛

結合組織炎

筋痙攣

筋炎

神経痛

捻挫

挫傷

腱鞘炎

むち打ち症

ジアテルミー(短波またはマイクロ波)

骨盤感染による疼痛

副鼻腔炎による疼痛(急性または慢性)

尿路結石による疼痛

超音波

骨損傷

滑液包炎

複雑局所疼痛症候群

拘縮

変形性関節症

腱炎

冷却

炎症(急性)

腰痛(急性)

筋痙攣

筋膜痛

外傷性疼痛

経皮電気神経刺激(TENS)

神経痛,筋骨格痛,末梢血管疾患

頸部牽引

椎間板脱出痛

頸椎症による頸部痛(慢性)

斜頸

むち打ち症

マッサージ

関節炎*

打撲傷

滑液包炎*

脳性麻痺*

萎縮組織

結合組織炎*

骨折

片麻痺*

関節損傷

腰痛*

多発性硬化症*

神経炎*

対麻痺*

関節周囲炎*

末梢神経損傷

四肢麻痺*

捻挫

挫傷

鍼†

疼痛(慢性)

脳卒中(リハビリテーション増強)

*マッサージが検討されるべきである

†鍼はその他の治療とともに用いられる。

温熱

温熱は,亜急性または慢性の外傷性あるいは炎症性の疾患(例,捻挫,挫傷,結合組織炎,腱鞘炎,筋痙攣,筋炎,背部痛,むち打ち損傷,様々な関節炎,関節痛,神経痛)に対して一時的な緩和をもたらす。温熱は血行,および結合組織の伸長を促進し,関節の硬直,疼痛,筋痙攣を減少させ,炎症,水腫,滲出液の軽減をもたらす。温熱の適用は表層性または深部性がある。生理学的な効果の程度と持続性は,主として患部組織の温度,温度上昇率,治療される部位に依存する。

赤外線熱は通常1日20分間のランプ使用によって与えられる。禁忌には,進行性心臓疾患,末梢血管疾患,皮膚感覚障害(特に温度および痛みに対して),重大な肝または腎不全が挙げられる。熱傷を避けるために予防措置が必要である。

ホットパックは,ケイ酸塩ゲルを詰めた木綿の布袋で,湯または電子レンジで温めてから皮膚に当てる。パックが熱すぎてはいけない。パックをタオルに何重にも包むことで,皮膚の熱傷を防ぐことができる。禁忌は赤外線熱の場合と同じである。

パラフィン浴では,49°Cに熱した溶融ワックスに,患部をくぐらせたり,浸漬したり,またはそれを塗布する。患部は20分間タオルで包まれ,温熱が保たれる。パラフィンは通常,小関節に適応され,典型的に,手であればくぐらせるか浸漬によって,膝または肘については塗布によって行う。パラフィンは開放創やパラフィン・アレルギーの患者に使用すべきでない。

ハイドロセラピーは傷の治癒を早めるために行われる。攪拌された湯は血行を刺激し,熱傷や傷の清拭を行う。この療法はしばしば35.5〜37.7°Cに温めた湯を入れたハバードタンク(大きな工業用渦流浴槽)を用いて行われる。37.7〜40°Cに温めた湯に全身を浸けることで,筋肉をほぐし,痛みを和らげる効果がある。ハイドロセラピーは関節可動域訓練とともに特に有用である。

短波ジアテルミーは振動高周波電磁場を用いて患部組織を温熱治療する。この方法は蓄電板と伝導コイルからなる器械により処方される。短波ジアテルミーが非常に効果的であることはまれである;しかしながら尿結石,骨盤感染,急性および慢性副鼻腔炎の痛みの治療にときに用いられる。禁忌には,癌,出血性障害,末梢血管疾患,感覚喪失,除去不能な装具,ペースメーカー,電気生理学的装具などが挙げられる。(注意:患者が治療を受ける部位またはその周囲に金属インプラントをもつ場合には,短波ジアテルミーを使用してはならない。)

マイクロ波ジアテルミーは短波ジアテルミーより処方も簡単で,快適で出力もより正確に調整できる。マイクロ波ジアテルミーは皮膚を不必要に熱することなく,深部にまで熱を供給できるが,これはマイクロ波(電磁波の一種)が水分含有率の高い組織(例,筋肉)に選択的に吸収されるためである。直接接触型アプリケーターをもつ,915MHzマイクロ波ジアテルミーは筋肉に均等に熱を与える。適応症および禁忌は短波ジアテルミーと同じである。

超音波治療は組織の深部(4〜10cm)にまで到達する高周波数の音波を使用し,その作用は温熱的,物理的,化学的,生物学的である。腱炎,滑液包炎,拘縮,変形性関節症,骨損傷,および複雑局所疼痛症候群に対して適応である。超音波は虚血性の組織,局所麻酔部位,急性感染部位に,また,出血性素因や癌の治療にも用いるべきではない。また,眼,脳,脊椎,耳,心臓,生殖器官,腕神経叢,癒合しつつある骨にも用いるべきではない。

冷却

温熱療法と冷却療法の選択は,しばしば経験に基づく。温熱でうまくいかない場合,冷却が用いられる。しかしながら,急性の損傷または疼痛には,温熱よりも冷却の方が適しているようである。冷却は筋痙攣,筋膜または外傷性の疼痛,急性腰痛,急性炎症を軽減し,また局所麻酔の導入にも有効である。冷却は通常,損傷直後の数時間または当日に行われるため,理学療法で行われることはめったにない。

冷却は患部に氷バッグや冷却パックを使用するか,または揮発性の液体(例,エチルクロライド,気化冷却スプレー)を用い,蒸発によって冷却する。皮膚上での冷却の広がりは,表皮の厚さ,その下の脂肪と筋肉,組織の水分含有量,血流の程度によって左右される。ケアの際は,組織の障害と低体温を避ける注意が必要である。冷却は血液灌流の悪い場所に用いてはならない。

電気刺激

経皮電気神経刺激(TENS)は,痛みを軽減するために低周波の弱い電流を用いる。患者は筋肉の緊張を増すことなく,優しくくすぐられるような感覚を感じる。疼痛の強さにもよるが,20分から数時間の刺激が1日に数回与えられる。しばしば,患者がTENS機器の使用法と,治療のタイミングを教授される。TENSは不整脈をもたらすことがあるので,進行性心臓疾患,またはペースメーカー装着患者には禁忌である。眼に用いることも厳禁である。

頸部牽引

頸部牽引は,頸椎症,椎間板脱出,むち打ち症,斜頸などによる慢性的な頸部の疼痛にしばしば適用される。垂直牽引(患者が座位での)は水平牽引(患者がベッド上に横臥位での)よりも効果的である。電動間欠律動牽引は7.5〜10kgが最も効果的である。最もよい効果を得るには,患者が頸を15〜20度曲げた状態で牽引を行うべきである。一般的に,頸部の過伸展は避けるべきであるが,それにより椎間孔内で神経根の圧迫を増大することになるからである。牽引は通常,運動や人力でのストレッチを含む他の理学療法と組み合わされる。

マッサージ

マッサージは拘縮した組織を動かし,疼痛を緩和し,外傷(例,骨折,関節損傷,捻挫,挫傷,打撲傷,末梢神経損傷)に関連する腫脹および硬結を軽減する。マッサージは,腰痛,関節炎,関節周囲炎,滑液包炎,神経炎,結合組織炎,片麻痺,対麻痺,四肢麻痺,多発性硬化症,脳性麻痺などに用いるとよい。感染や血栓性静脈炎の治療に用いてはならない。資格をもつマッサージ療法士だけが傷害治療のためのマッサージを施術できる。

身体の特定部位において皮膚に細い針を刺すものであるが,多くは疼痛部位から遠いところである(補完代替医療: 中国伝統医学を参照 )。鍼はときに,慢性疼痛管理および脳卒中後のリハビリテーション増強など他の治療に伴って施される。

最終改訂月 2005年11月

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