メルクマニュアル18版 日本語版
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ビタミンD

Larry E. Johnson, MD, PhD

ビタミンDには,2つの型がある:D2(エルゴカルシフェロール)およびD3(コレカルシフェロール)である。ビタミンD3は,日光(紫外線照射)に暴露することにより皮膚で合成され,また主に魚肝油や卵黄などの食物からも得られる。先進国によっては,牛乳やその他の食品はビタミンDが強化されている。ヒトの母乳は,ビタミンDの含有量が低く,ビタミンD強化牛乳のわずか10%しか含まれていない。ビタミンDの必要量は年齢とともに増加する。

ビタミンDは,ホルモンとして働くいくつかの活性化代謝物をもつプロホルモンである。ビタミンD3は,肝臓で25(OH)Dに代謝され,その後腎臓により1,25(OH)2D(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール,カルシトリオール,または活性ビタミンDホルモン)に変換される。血液中での主な形態である25(OH)Dに,ある程度代謝活性はあるが,1,25(OH)2Dの代謝活性が最も高い。1,25(OH)2Dへの変換は,それ自体の血中濃度,副甲状腺ホルモン(PTH),血清中のカルシウムおよびリン酸濃度により調節されている。

ビタミンDは多くの臓器系に影響を与えているが(ビタミンの欠乏症,依存症,および中毒症: ビタミンDとその代謝物の作用表 6: 表参照),主に小腸からのカルシウムやリン酸吸収を高め,正常な骨形成や石灰化を促進している。ビタミンDや関連類似物質は,乾癬,副甲状腺機能低下症,腎性骨ジストロフィ,そして中には白血病,乳癌,前立腺癌,大腸癌を治療するために使用されることがあり,免疫抑制にも使用される。

表 6

ビタミンDとその代謝物の作用

対象器官

作用

より多くのアルカリホスファターゼやオステオカルシン(ビタミンK依存性の骨蛋白)を産生し,コラーゲンの産生を減らすため,骨芽細胞を刺激して骨形成を促進する。

単核細胞を刺激して,マクロファージに分化し,マクロファージは破骨細胞と融合し,カルシウムの動員を増加させる。

免疫系

免疫原性および抗腫瘍作用を刺激

小腸

カルシウムおよびリン酸輸送を増強(吸収)

腎臓

尿細管によるカルシウム再吸収を増強

副甲状腺

副甲状腺ホルモン分泌を抑制

ビタミンD欠乏症と依存症

日光への暴露が不十分だと,ビタミンD欠乏症が起こりやすくなる。欠乏症により,骨石灰化が損なわれ,小児ではくる病を,成人では骨軟化症を引き起こし,また骨粗鬆症の原因となる可能性がある。治療は通常,ビタミンD,カルシウム,リン酸の経口投与による。予防は多くの場合可能である。まれに,遺伝性疾患によりビタミンDの代謝障害が起こる(依存症)。

くる病と骨軟化症は,他の条件(例,様々な腎尿細管疾患,家族性低リン酸性[ビタミンD抵抗性]くる病[腎輸送異常: 低リン酸血症性くる病を参照 ],慢性代謝アシドーシス,副甲状腺機能低下症[ビタミンDの吸収低下をまねく],食事によるカルシウム摂取が不十分であること,骨基質の石灰化を損なう疾患または薬物)によっても起こりうる。

病因と病態生理

ビタミンD欠乏症は,摂取不足,吸収低下,代謝異常,ビタミンD効果への抵抗性により起こりうる。

臨床上の欠乏に至るには,通常,日光への暴露およびビタミンD摂取が不十分な状態が同時に起こる必要がある。欠乏症に陥りやすい人は,高齢者(しばしば栄養不良にあり,日光への暴露が不十分),ある状況に置かれた人々(例,家に閉じこもっているか,または全身と顔を衣服で覆っている女性や小児)などである。ビタミンDの貯蔵が不十分な状態は,高齢者,中でも特に家に閉じこもりがちであったり,施設に入所していたり,入院している場合,または股関節骨折した高齢者に一般的にみられる。まれに,カルシウムまたはリン酸の摂取が非常に少ない場合に,ビタミンD欠乏症が引き起こされることがある。吸収不良により,食事から摂取したビタミンDや25(OH)D(後者はその少量が腸管再循環される)が体に供給されない可能性がある。

ビタミンD欠乏症は,25(OH)D産生異常により起こることがある。活性ビタミンD代謝物の産生を阻害する状態(例,肝臓または腎疾患)では,正常量のビタミンD補給に反応しない(すなわち,ビタミンD抵抗性がある)。

ビタミンD欠乏症は,1,25(OH)2D効果への抵抗性にも起因する。タイプⅠの遺伝性ビタミンD依存性くる病は,腎臓において25(OH)D から1,25(OH)2Dへの変換が欠損しているか,障害されている常染色体劣性疾患である。タイプⅡの遺伝性ビタミンD依存性くる病にはいくつかの型があるが,これは1,25(OH)2Dレセプターの突然変異による。このレセプターは,腸,腎臓,骨,および他の細胞の代謝に影響を及ぼす。1,25(OH)2Dは豊富にあっても,レセプターが機能的ではないため,無効となる。抗痙攣薬(例,フェニトイン,フェノバルビタール)は,末端器官の1,25(OH)2Dへの抵抗性を生み,骨軟化症をもたらす。

腎疾患のある場合,腎臓の1,25(OH)2D産生が減少し,リン酸値が上昇するため,一般的にくる病または骨軟化症が発現する。ビタミンDに反応しないくる病は,腎尿細管性アシドーシス,X連鎖家族性低リン酸血症,またはファンコニー症候群によっても発症することがある。

ビタミンD欠乏により低カルシウム血症が起こるが,これにより副甲状腺ホルモン(PTH)の産生が刺激され,副甲状腺機能亢進症が引き起こされる。副甲状腺機能亢進症により,吸収,骨の供給,腎のカルシウム保持力が高まるが,リン酸の排泄が増加する。その結果,カルシウムの血清レベルは正常であっても,低リン酸血症のため,骨の無機質化が障害される。

症状と徴候

ビタミンD欠乏症により,どの年齢層にも筋肉痛,筋力低下,骨の痛みなどが起こりうる。

妊婦がビタミンD欠乏症であれば,胎児に欠乏症が起こる。ときとして,母親が骨軟化症を発症するほど重度の欠乏症では,新生児は骨幹端の病変を伴うくる病を発症する。生後間もない乳児では,くる病により頭蓋骨全体が軟化(頭蓋癆)する。触診すると,後頭および頭頂骨後方がピンポン玉のように感じられる。年長の幼児では,泉門閉鎖の遅れとともに,座ったり,はったりするのが遅れ,頭蓋骨の隆起,肋軟骨の肥大がみられる。肥大した肋軟骨は,胸壁側面に沿ってビーズ状の隆起のように見える(くる病じゅず)。1〜4歳の小児では,橈骨,尺骨,脛骨,腓骨の下端における骨端軟骨が拡大し,そして後側側彎症が発現し,歩行が遅れる。年長の小児や青年では,歩行時の痛みがあり,極端なケースでは内反膝(O脚)や外反膝(X脚)のような変形がみられる。

くる病テタニーは低カルシウム血症によって起こり,幼児や成人のビタミンD欠乏症に付随して起こる。テタニーにより,口唇,舌,指の感覚異常,手根,足および顔面の攣縮が起こることがあり,きわめて重度の場合は,痙攣発作が起こる。母親の欠乏症により,新生児がテタニーを発症しうる。

骨軟化症は骨折の素因となる。高齢者では,股関節骨折はごく小さな外傷から起こることがある。

診断

診断は,日光への暴露が不十分な場合や不適切な食事摂取歴のほか,くる病,骨軟化症,新生児テタニーの症状および徴候や,X線上における骨変化の特徴に基づいて推測される。骨石灰化減少の原因がビタミンD欠乏症によるものか,他の原因によるものかを鑑別するために,橈骨と尺骨のX線に加えて,カルシウム,リン酸,アルカリホスファターゼ,副甲状腺ホルモン(PTH),25(OH)Dの血清レベルが必要である。

先天性梅毒による頭蓋癆は,新生児に起こる場合がほとんどだが,乳児も頭蓋癆があれば,梅毒血清検査を受けるべきであり,またくる病があると,多くの場合2〜4カ月の乳児に頭蓋癆が起こる。軟骨発育不全症は,大きな頭部,短い四肢,太い骨,および正常な血清中カルシウム,リン,アルカリホスファターゼ値を特徴とするので,くる病との鑑別は可能である。

幼児くる病によるテタニーは,他の原因による痙攣発作と臨床的に鑑別できないことがある。血液検査および病歴が,痙攣の原因を鑑別するのに役立ちうる。

X線上にみられる骨変化は,臨床徴候に先行する。くる病において骨変化は,橈骨と尺骨の下端で最も顕著である。骨幹端については,その明瞭でくっきりとした輪郭がなくなり,コップ状になり,さらに斑状またはふさ状の希薄化が起こる。後に,橈骨端および尺骨端が石灰化しなくなり,X線透過性が起こるため,橈骨端や尺骨端と中手骨との距離が増したように見える。他の部位の骨基質もさらにX線透過するようになる。特徴的変形は,軟骨と幹骨の結合部における彎曲によって生じるが,これは幹骨が弱くなるためである。回復が始まると,石灰化の白い細い線が骨端に現れ,石灰化が進むにつれて濃く,厚くなる。後に,骨膜下レベルで骨基質が石灰化し,X線透過しなくなる。

成人では,骨の脱石灰化が,特に脊椎,骨盤および下肢に起こり,X線上に認められるようになり,線維上層板もみられ,脱石灰化の不規則的なリボン状の領域(仮性骨折,ルーザー帯,ミルクマン症候群)が骨皮質に現れる。

血清25(OH)D値は体のビタミンD貯蔵量を反映し,他のビタミンD代謝物の値よりビタミンD欠乏症の症状および徴候との相関があるので,欠乏症の診断には,25(OH)Dの測定が一般的に最適だと考えられている。健康な人では,血清レベルは25〜40ng/mL(60〜100nmol/L)の範囲である。

診断がはっきりしない場合,血清1,25(OH)2D値,および尿中カルシウム濃度を測定する。重度の欠乏症では,血清1,25(OH)2D値は異常に低く,通常検出できない。尿中カルシウム濃度は,アシドーシスと関連している場合を除き,欠乏症のあらゆる病態において低くなる。

ビタミンD欠乏症では,血清カルシウム値は低値,または二次性副甲状腺機能亢進症のため,正常な場合がある。血清リン酸値は通常低下し,血清アルカリホスファターゼ値は通常上昇する。血清PTH値は上昇する。

タイプIの遺伝性ビタミンD依存性くる病では,血清25(OH)D値は正常,血清1,25(OH)2Dおよびカルシウム値は低く,血清リン酸値は正常または低値である。

予防

食事に対するカウンセリングは,構成員にビタミンD欠乏のリスクがあるコミュニティーにおいては特に重要である。母乳栄養の乳児には,出生時から月齢6カ月まで,ビタミンD,5.0μg(200IU)を1日1回補給すべきであり,月齢6カ月になれば,より多様な食事が摂取可能になる。ビタミンD(125μg/kg)を強化した小麦粉で,イースト菌を入れずに作られたチャパティは,イギリスのインド系移民に効果的である。欠乏症のリスクのある青年期の若者では,2.5mg(100,000IU)のエルゴカルシフェロールを秋に1回筋注投与すれば,25(OH)D値を冬中良好なレベルに維持できる。

治療

カルシウムとリンを十分に摂取していれば,骨軟化症の成人や合併症のないくる病の小児は,ビタミンD40μg(1600IU)を1日1回経口投与することにより治癒可能である。血清25(OH)Dおよび1,25(OH)2D値は,定期的に測定する必要はないが,1,2日以内に上昇し始める。約10日以内に,血清カルシウム値およびリン酸値は上昇し,血清アルカリホスファターゼ値が低下する。3週目には,十分なカルシウムとリンが骨組織に沈着しているのがX線上でみられる。約1カ月後には,用量を10μg(400IU),1日1回の通常維持レベルまで徐々に減少させることができる。テタニーがある場合,ビタミンDの補給は,1週間を限度としてカルシウム塩の静注投与とともに行うべきである(水分と電解質代謝: 治療を参照 )。

ビタミンD代謝物の産生障害から生じたくる病と骨軟化症はビタミンD抵抗性があり,不十分なビタミンD摂取が原因のくる病には通常有効となる用量に対し,反応しない。内分泌学的評価が必要である。多量投与(600〜1200μg のビタミンD2 またはD3を1日1回)に反応する場合もあるが,毒性が現れることもある。25(OH)D産生に障害がある場合,25(OH)D 50μgを1日1回投与することにより,血清濃度が上昇し,臨床的改善がみられるようになる。腎疾患のある場合,1,25(OH)2Dの補給が必要である。

タイプⅠの遺伝性ビタミンD依存性くる病は,1,25(OH)22D 1〜2μgの1日1回経口投与に反応する。タイプⅡの遺伝性ビタミン依存性くる病の一部の患者には,きわめて高用量(例,10〜24μg/日)の1,25(OH)2Dに反応する者もいるが,その他の患者は,カルシウムの長期注入が必要となる。

ビタミンD中毒症

通常,ビタミンD毒性は過剰用量の服用から起こる。著明な高カルシウム血症により,一般的に症状が生じる。診断は典型的には,上昇した血中25(OH)D濃度に基づいて行う。治療は,ビタミンD服用の中止,食事によるカルシウム摂取の制限,血管内容量不足を回復させることからなり,毒性が重度であれば,コルチコステロイド,またはビスホスフォネートの投与を行う。

ビタミンDの強力な代謝物,1,25(OH)2Dの合成は,厳密に調整されているので,ビタミンD毒性は通常,過剰用量(処方またはビタミン大量投与による)を服用した場合のみ起こる。乳児に,ビタミンDを1000μg(40,000IU)/日投与すれば,1〜4カ月以内に毒性を示し,50〜75μg(2000 〜3000IU)/日といった少量でも数年にわたって服用すると,中毒症を生じる。成人では,数カ月にわたって2500μg(100,000IU)/日服用すれば,中毒症を生じることがある。副甲状腺機能低下症の治療の際,ビタミンD中毒症が医原的に起こる場合がある(水分と電解質代謝: 治療を参照 )。

症状と診断

ビタミンD中毒症の主な症状は,高カルシウム血症により起こる。食欲不振,悪心,嘔吐が起こり,次いでしばしば多尿,多飲症,脱力,神経過敏,かゆみが生じ,やがて腎不全に陥ることがある。尿蛋白,尿円柱,高窒素血症,異所性石灰化(特に腎臓において)が生じる可能性がある。

過剰なビタミンD摂取歴のみが,ビタミンD中毒症による症状と高カルシウム血症によるものと鑑別する手がかりとなる。中毒症症状が現れる際,常にみられる所見は,血清カルシウム値が12〜16mg/dL(3〜4mmol/L)に上昇することである。ビタミンD中毒症が発症した場合,血清25(OH)D値が15倍にも跳ね上がる。1,25(OH)2Dレベルは,診断を確定するために必要ではないが,通常は正常である。

ビタミンD,特に強力な1,25(OH)2Dの大量投与を受けている患者は全員,血清カルシウム値を頻繁に(初めは毎週,後に毎月)測定するべきである。

治療

ビタミンDの摂取を中止した後,コルチコステロイド,またはビスホスフォネート(骨吸収を抑制する)が,血中カルシウム値を下げるために使用される。

腎障害または異所性石灰化があれば,不可逆的になる可能性がある。

最終改訂月 2007年4月

最終更新月 2005年11月

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