メルクマニュアル18版 日本語版
検索のヒント
ABCDEFGHI
JKLMNOPQR
STUVWXYZ
記号

セクション

トピック

亜鉛

亜鉛(Zn)は主に骨,歯,毛髪,皮膚,肝,筋肉,白血球および精巣に含まれる。亜鉛は,多数のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)デヒドロゲナーゼ,RNAポリメラーゼ,DNAポリメラーゼ,DNA転写因子のほか,アルカリホスファターゼ,スーパーオキシドジスムターゼ,炭酸脱水酵素など,数百の酵素の成分である。繊維質およびフィチン酸塩の豊富な食事(例,全粒粉のパンを含む食事)により,亜鉛の吸収は減少する。

欠乏症: 先進国では,食事による欠乏はまれであり,二次性欠乏症の方がよくみられる。二次性の亜鉛欠乏症は,一部の肝不全患者(亜鉛を保持する能力が失われるため),利尿薬を投与している患者のほか,糖尿病,鎌状赤血球症,慢性腎不全,吸収不良またはストレスの大きい状態(例,敗血症,熱傷,頭部損傷)を抱える患者に現れる。亜鉛欠乏症は,施設入所および在宅の高齢者,肺疾患患者にきわめて多くみられる。母体の亜鉛欠乏症では,胎児奇形および低出生体重が引き起こされることがある。

小児の亜鉛欠乏症では,成長障害および味覚障害(味覚鈍麻)がみられる。小児の徴候および症状にはこのほか,性的成熟の遅れおよび性腺機能低下症がある。小児及び成人では,症状として,乏精子症,脱毛症,免疫障害,食欲不振,皮膚炎,夜盲症,貧血,嗜眠および創傷治癒の障害が挙げられる。二次性の欠乏症では,テストステロン欠乏症,夜盲症,無気力および易刺激性がみられることがある。

典型的な症状または徴候が認められる栄養不足患者については,亜鉛欠乏症を疑うべきである。しかしながら,症状と徴候の多くが特異的なものではないため,軽度の亜鉛欠乏症を臨床的に診断するのは難しい。臨床検査による診断もまた困難である。血清中濃度も不正確なことが多く,診断には通常,血清または組織中(例,赤血球,白血球,血小板,唾液,毛髪または爪)の亜鉛低値と尿中亜鉛排泄量の上昇とが併存していることが必要である。アイソトープ試験を利用できれば,亜鉛の状態をさらに正確に測定できる。治療は,成分亜鉛15〜70mg/日,経口投与,6カ月間である。

腸性肢端皮膚炎(まれで,かつては致死的疾患であった常染色体劣性疾患)は亜鉛の吸収不良を引き起こす。この疾患は眼,鼻,口の周囲,臀部および先端分布型にpsoriasiform dermatitis(乾癬性皮膚炎)を生じる。脱毛,爪囲炎,免疫障害,反復性感染症,成長障害および下痢がみられる。症状および徴候は通常,乳児が離乳した後に現れる。このような症例では,医師がこの疾患を疑い,血漿,WBCまたは毛髪の亜鉛濃度の低下を測定すれば,診断が確定する。硫酸亜鉛30〜150mg/日,経口投与により,完全寛解する。

中毒症: 中毒症はきわめてまれである。100〜150mg/日の成分亜鉛の摂取により,銅の代謝が阻害され,血中銅濃度の低下,小赤血球血症,好中球減少および免疫障害を引き起こす。亜鉛の大量摂取(200〜800mg/日)は,通常,亜鉛メッキ容器に入った酸性食品や酸性飲料の摂取によるものであり,嘔吐および下痢を引き起こすことがある。溶接工の悪寒または亜鉛性振戦とも呼ばれる金属フューム熱は,産業性酸化亜鉛蒸気の吸入によって生じ,神経障害を来す。症状は,亜鉛の存在しない環境で12〜24時間過ごすと消散する。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

ページの先頭へ

前へ: セレニウム

イラスト
個人情報の取扱いご利用条件