亜鉛欠乏症

執筆者:Larry E. Johnson, MD, PhD, University of Arkansas for Medical Sciences
レビュー/改訂 2020年 5月
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    亜鉛(Zn)は主に骨,歯,毛髪,皮膚,肝臓,筋肉,白血球,および精巣に含まれる。亜鉛は,多数のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)デヒドロゲナーゼ,RNAポリメラーゼおよびDNAポリメラーゼ,ならびにDNA転写因子のほか,アルカリホスファターゼ,スーパーオキシドジスムターゼ,および炭酸脱水酵素など,数百の酵素の成分である。

    繊維およびフィチン酸塩が豊富な食事(例,全粒粉のパン)は,亜鉛の吸収を低下させる。

    ミネラル欠乏症および中毒の概要も参照のこと。)

    食事による欠乏症は健常者では可能性が低い。二次性亜鉛欠乏症が以下で生じることがある:

    母体の亜鉛欠乏症により,胎児奇形および低出生体重が生じることがある。

    小児の亜鉛欠乏症は,成長障害,味覚障害(味覚低下),性的成熟の遅れ,および性腺機能低下症を引き起こす。小児または成人では,脱毛,免疫障害,食欲不振,皮膚炎,夜盲症,貧血,嗜眠,創傷治癒の障害などがみられる。

    典型的な症状または徴候を伴う低栄養患者では,亜鉛欠乏症を疑うべきである。しかし,症状と徴候の多くは非特異的であるため,軽度の亜鉛欠乏症を臨床的に診断するのは困難である。臨床検査による診断もまた困難である。亜鉛欠乏症でよくみられるアルブミン低値によって,血清亜鉛濃度の解釈が困難になる;診断には通常,血清中の亜鉛の低値と亜鉛の尿中排泄量の上昇の組合せが必要である。利用できるのであれば,アイソトープ試験によって亜鉛の状態をより正確に測定できる。

    亜鉛欠乏症の治療として,症状および徴候が消失するまで,成分亜鉛15~120mgを1日1回経口投与する。

    腸性肢端皮膚炎

    腸性肢端皮膚炎(まれで,以前は致死的であった常染色体劣性遺伝疾患)は亜鉛の吸収不良を引き起こす。乾癬様皮膚炎が,眼,鼻,口の周囲;殿部および会陰;および肢端部で生じる。さらに,脱毛,爪囲炎,免疫障害,反復性感染症,成長障害,および下痢を引き起こす。症状および徴候は通常,乳児が離乳した後に出現する。そのような場合,医師は腸性肢端皮膚炎を疑う。診断が正しければ,硫酸亜鉛30~150mg/日の経口投与により,通常は完全寛解に至る。

    亜鉛欠乏症
    肛門周囲および会陰部の皮膚炎を伴う腸性肢端皮膚炎
    肛門周囲および会陰部の皮膚炎を伴う腸性肢端皮膚炎
    乾癬様皮膚炎が発生することがある。

    © Springer Science+Business Media

    肛門周囲および会陰部の重度の皮膚炎を伴う腸性肢端皮膚炎
    肛門周囲および会陰部の重度の皮膚炎を伴う腸性肢端皮膚炎
    乾癬様皮膚炎が進行して局所性の紅皮症となっている。

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    爪囲炎を伴う腸性肢端皮膚炎
    爪囲炎を伴う腸性肢端皮膚炎
    皮膚炎が爪郭を侵し,爪囲炎に進行することがある。

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    小児の腸性肢端皮膚炎
    小児の腸性肢端皮膚炎
    目に見える特徴的な所見には,脱毛および顔面の乾癬様皮膚炎などがある。

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    重度の顔面の皮膚炎を伴う腸性肢端皮膚炎
    重度の顔面の皮膚炎を伴う腸性肢端皮膚炎

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