メルクマニュアル18版 日本語版
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セリアックスプルー(非熱帯性スプルー;グルテン性腸症;セリアック病)

セリアックスプルーは,グルテン不耐症が原因となって遺伝的感受性をもつ者に発症する免疫を介する疾患で,粘膜炎症が起こり,この炎症が吸収不良の原因となる。通常,症状として,下痢および腹部不快感がある。診断は,小腸生検で厳重なグルテン除去食で改善する,特徴的であるが,非特異的な病理学的変化である絨毛萎縮を確認して行う。

(See also the Agency for Healthcare Research and Quality's evidence report summary on celiac disease.)

病因と疫学

セリアックスプルーは,小麦に含まれる蛋白質グルテンの成分であるグリアジンに対する感受性が原因となって起こる遺伝性疾患である;ライ麦および大麦にも同様の蛋白質が含まれる。遺伝的感受性をもつ者では,グルテン由来ペプチドエピトープが存在するとグルテン感受性T細胞が活性化される。炎症反応は,特徴的な小腸粘膜絨毛萎縮を引き起こす。

有病率は,アイルランド南西部の約1/150から,北米の1/5000である。第1度近親者の約10〜20%がこの疾患に罹患する。男女比は1対2である。一般に小児期に発症するが,それ以降に起こることもある。

症状と徴候

典型的な症状はない。一部の患者は無症候性または栄養欠乏の徴候を示すだけである。重大な消化管症状を示す患者もいる。

セリアックスプルーは,食事に穀類を取り入れた後,乳児期および小児期に発現しうる。小児は,発育不全,無気力,食欲不振,蒼白,全身性低血圧,腹部膨満,筋萎縮を示す。粘土色の悪臭の強い軟便を大量に排泄する。年長の小児は,貧血を呈することや正常に成長しないことがある。

成人では,倦怠感,衰弱,食欲不振が最も多くみられる。時に,軽度および間欠性の下痢を認めることがある。脂肪便は軽度から重度(便中脂肪量7〜50g/日)である。一部の患者で体重減少が認められるが,低体重になるほど減少することはめったにない。これらの患者では,通常,貧血,舌炎,口角炎,アフタ性潰瘍がみられる。ビタミンDおよびCa欠乏症状(例,骨軟化症,骨減少症,骨粗鬆症)を認めることが多い。男女ともに妊孕性が低下することがある。

約10%は,肘,膝,臀部,肩,頭皮の伸筋領域に対称的に分布する強いかゆみを伴う丘疹小水疱性発疹である疱疹状皮膚炎を起こす。この発疹は高グルテン食によって引き起こされることがある。セリアックスプルーは,糖尿病,自己免疫性甲状腺疾患,ダウン症候群にも関連している。

診断

臨床所見および吸収不良を示唆する異常検査所見から本疾患の診断が疑われる。家族内の発生は貴重な手がかりとなる。明らかな消化管出血のない鉄欠乏患者については,セリアックスプルーを積極的に検討すべきである。

確認には,十二指腸下行脚の小腸生検を要する。所見として,絨毛の消失または短縮(絨毛萎縮),上皮内細胞増加,陰窩の過形成を認める。しかしながら,そのような所見は,熱帯性スプルー,重度の腸内細菌異常増殖,好酸球性腸炎,乳糖不耐症,リンパ腫でも認められることがある。

生検は特異度が低いため,血清学的マーカーが診断に有用である。抗グリアジン抗体(AGA)と抗筋内膜抗体(EMA,腸の結合組織蛋白に対する抗体)を併用すると,陽性および陰性適中率はほぼ100%となる。これらのマーカーはまた,罹患患者の第1度近親者およびセリアックスプルーに高頻度に合併する疾患を有する患者など,セリアックスプルーの有病率が高い集団のスクリーニングに使用できる。いずれかの検査が陽性であれば,診断的小腸生検を行うべきである。両方が陰性であれば,セリアックスプルーの可能性は極めて低い。これらの抗体の抗体価は,グルテン除去食療法中の患者では低下するため,食事療法のコンプライアンスのモニタリングに有用である。

他の異常検査所見がしばしば認められ,それらを調べるべきである。それらの所見には,貧血(小児の鉄欠乏性貧血および成人の葉酸欠乏性貧血);アルブミン,Ca,K,Na低値;アルカリホスファターゼ上昇およびプロトロンビン時間延長がある。

吸収不良検査はセリアックスプルーに特異的な検査ではない。実施した場合,一般的な所見として,脂肪便10〜40g/日,d-キシロース異常,(重度の回腸疾患において)シリング試験異常が認められる。

治療

グルテン除去食療法を行う(小麦,ライ麦,大麦を含む食品を避ける)。グルテンは非常に広範に使用されているので(例,市販のスープ,ソース,アイスクリーム,ホットドッグ),患者は避けるべき食品の詳細なリストを必要とする。患者は栄養士の助言を求め,セリアック支援グループに参加することが推奨される。グルテン除去食の効果は通常迅速に現れ,症状は1〜2週間で消失する。グルテンを含む食品を少しでも摂取すれば,寛解が妨げられるか再発する恐れがある。

グルテン除去食開始から3〜4カ月後に小腸生検を繰り返すべきである。異常が持続する場合は,絨毛萎縮の他の原因(例,リンパ腫)を検討すべきである。症状および小腸の形態の改善は,AGAおよびEMA抗体価の低下を伴う。

欠乏に応じて,補助ビタミン,ミネラル,造血薬を投与してもよい。軽症例は補給を必要としないことがあるが,重症例は総合的な補給を要することがある。成人では,これは,硫酸鉄300mg,経口にて1日1回から1日3回,葉酸5〜10mg,経口にて1日1回,Caサプリメント,標準的な総合ビタミン剤から成る。初期診断時に重篤な小児(まれに成人)は,腸管安静およびTPNを必要とすることがある。

グルテン除去の効果が不十分な場合は,診断が誤っているか疾患が難治性になったかである。後者の場合は,コルチコステロイドで症状をコントロールできる。

予後

グルテン除去食療法を行わなければ,死亡率は10〜30%である。適切な食事療法を行えば,死亡率は1%未満で,主に最初に重症であった成人が死亡する。合併症として,難治性スプルー,膠原性スプルー,腸管リンパ腫発生がある。セリアックスプルー患者の6〜8%が通常50歳代で腸管リンパ腫に罹患する。他の消化管悪性腫瘍(例,食道癌,中咽頭癌,小腸腺癌)の発生率は上昇する。グルテン除去食の遵守によって悪性腫瘍のリスクが有意に減少する。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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