メルクマニュアル18版 日本語版
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黄疸

新生児における代謝,電解質,および中毒性障害: 高ビリルビン血症も参照 。)

黄疸とは,循環血液中のビリルビン過剰により皮膚,強膜,その他の組織が黄変することをいう。

ビリルビン代謝の概要

ヘムが分解するとビリルビン(不溶性の老廃物)およびその他の胆汁色素が生じる。ビリルビンが排泄されるためには水溶性に変化しなければならない。この変化は5つの段階を経る:生成,血漿輸送,肝臓への取り込み,抱合,および胆汁排泄。

生成: 毎日約250〜350mgの非抱合型ビリルビンが生成されている;70〜80%は変性した赤血球の分解産物であり,20〜30%(早期標識ビリルビン)は主に骨髄や肝臓中にある他のヘム蛋白に由来する。ヘモグロビンは鉄とビリベルジンに分解され後にビリルビンへと変換される。

血漿輸送: 非抱合型(間接反応型)ビリルビンは水に溶けないため,アルブミンに結合した状態で血漿中の輸送が行われる。これは糸球体膜を通過し尿中に出ることができない。アルブミン結合はある状況下で弱くなり(例,アシドーシス),また物質によっては(例,サリチル酸,ある種の抗生物質)結合部位が競合する。

肝臓への取り込み: 肝臓は急速にビリルビンを取り込むが,結合した血清アルブミンは取り込まない。

抱合: 肝臓内の非抱合型ビリルビンは抱合されて,主にビリルビンジグルクロニドと呼ばれる抱合型(直接反応型)ビリルビンを生成する。この反応は,ミクロソーム酵素であるグルクロン酸転移酵素によって触媒されてビリルビンを水溶性に変える。

胆汁排泄: 隣接する肝細胞で形成された微小な毛細胆管は次第に連合し,集合胆管,小葉間胆管,および大きな肝管になる。肝門の外では,総肝管は胆嚢由来の胆嚢管と連合し総胆管を形成し,ファーター膨大部で十二指腸に注ぐ。

抱合型ビリルビンは他の胆汁成分とともに毛細胆管へ排出される。腸管では細菌によってビリルビン代謝が行われウロビリノーゲンが生成され,その大部分はさらにステルコビリンに代謝されて便を褐色に着色する。胆管の完全閉塞があると,便は正常色を失い,薄い灰色(粘土色便)を呈する。一部のウロビリノーゲンは再吸収され,肝細胞によって濃縮され,胆汁中へ再排泄される(腸肝循環)。ごく少量は尿中に排泄される。

抱合型ビリルビンは尿中へ排泄されるが非抱合型ビリルビンは排泄されないため,ビリルビン尿は抱合型高ビリルビン血症(例,肝細胞性または胆汁うっ滞性黄疸による)のみでみられる。

病因

黄疸はビリルビン生成の増加または肝胆道疾患(肝胆汁性黄疸)により生じる。肝胆汁性黄疸は肝細胞機能不全または胆汁うっ滞により生じる。胆汁うっ滞の原因は肝内性と肝外性がある。

ビリルビン生成量の増加および肝臓への取り込みを障害するような肝細胞性疾患や,抱合力の低下は非抱合型高ビリルビン血症をもたらす。胆汁排泄障害は抱合型高ビリルビン血症を生じる。これらのメカニズムは明確であるように思われるが,臨床現場では,特に肝胆道疾患による黄疸でほぼ常に複数の問題がみられる;その結果は非抱合型と抱合型の両方による高ビリルビン血症(混合型高ビリルビン血症)である。

まれに,特定の疾患によって非抱合型または抱合型が圧倒的な高ビリルビン血症が起こる。ビリルビン生成増加による非抱合型高ビリルビン血症は溶血性疾患でみられることがある;ジルベール(Gilbert)症候群(軽度)およびクリグラー-ナジャー(Crigler-Najjar)症候群(重度)による抱合低下が原因となる。

排泄障害による抱合型高ビリルビン血症はデュービン-ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群で生じる場合がある。肝内胆汁うっ滞による抱合型高ビリルビン血症は,肝炎,薬物毒性,およびアルコール性肝疾患などが原因となる。まれな原因として,原発性胆汁性肝硬変,妊娠に伴う胆汁うっ滞,および転移癌が挙げられる。肝外性胆汁うっ滞による抱合型高ビリルビン血症は総胆管結石または膵癌などが原因となる。まれにみられる原因としては,良性の総胆管狭窄(通常,過去に行われた手術に関連する),胆管癌,膵炎や膵仮性嚢胞,および硬化性胆管炎がある。

通常肝疾患および胆管閉塞では,抱合型および非抱合型ビリルビンの両方ともが増加し,複数の障害が生じる。

評価

黄疸の評価は,肝胆道系疾患の存在の有無をまず確認することから始める。肝胆汁性黄疸は,胆汁うっ滞または肝細胞機能不全により生じる。胆汁うっ滞は肝内または肝外で起こりうる。黄疸の原因を特定することによって診断が示唆される(例,肝胆道系疾患がなければ溶血性またはジルベール症候群;ウイルス,毒物,全身性疾患による肝症状の発症,または肝細胞機能不全による原発性肝疾患;肝外性胆汁うっ滞における胆石)。臨床検査および画像診断法は不可欠ではあるものの,診断ミスのほとんどは不十分な臨床データおよび検査結果の過信によるものである。

病歴: 悪心や嘔吐が黄疸に先立って起こる場合,しばしば急性肝炎または結石による総胆管閉塞を示唆する;腹痛や硬直は後者に多い。アルコール性肝疾患,慢性肝炎,および癌では徐々に進行する食欲不振および倦怠感がよくみられる。

尿色は黄疸が現れる前に高ビリルビン血症によって濃くなるため,暗色尿の発現は黄疸の発現よりも高ビリルビン血症の発症をより的確に示す。

身体診察: 軽度の黄疸は自然光下で強膜を観察すると最も見やすい;通常血清ビリルビンが2〜2.5mg/dL(34〜43μmol/L)に達すると明らかとなる。暗色尿を伴わない軽度の黄疸は,非抱合型高ビリルビン血症を示唆する(最もしばしば溶血またはジルベール症候群による);より重度の黄疸または暗色尿を伴う黄疸は,肝胆道系疾患を示唆する。門脈圧亢進症または門脈-体循環性脳症の徴候,または皮膚や内分泌性の変化は慢性肝疾患を示唆する。

肝腫大および腹水を伴う患者で頸静脈の怒張がみられる場合,心不全または収縮性心膜炎が示唆される。悪液質および異常に硬いまたはごつごつとした肝臓は,肝硬変よりもしばしば転移病変を示唆する。びまん性のリンパ節腫脹は,急性黄疸の場合は伝染性単核球症,慢性黄疸の場合はリンパ腫や白血病を示唆する。他に慢性肝疾患の徴候がみられない肝脾腫大は浸潤性の疾患(例,リンパ腫,アミロイドーシス,また流行地域では住血吸虫症やマラリア)が原因となる可能性があるが,黄疸は通常わずか,あるいは全くみられない。

検査: 肝疾患および胆道系疾患に対する検査: 臨床検査も参照 )アミノトランスフェラーゼおよびアルカリホスファターゼの値を測定する。アミノトランスフェラーゼおよびアルカリホスファターゼが正常値を示す軽度の高ビリルビン血症(例,ビリルビン<3mg/dL[<51μmol/L])はしばしば非抱合性である(例,肝胆道系疾患よりもむしろ溶血またはジルベール症候群による)。中等度または重度の高ビリルビン血症,ビリルビン尿症,アルカリホスファターゼまたはアミノトランスフェラーゼが高値である場合は肝胆道系疾患が示唆される。非抱合型高ビリルビン血症はビリルビン分画によって通常確認できる。しかしながら,肝胆道系疾患による高ビリルビン血症は大半が抱合型であり,検査結果で肝胆道系疾患が示唆されればビリルビン分画は必要ない。

その他の血液検査は選択的に行う。例えば,急性または慢性肝炎が疑われる場合は肝炎の血清学的検査(を参照 ),肝機能不全が疑われる場合はPTやINR,慢性肝疾患が疑われる場合はアルブミンおよびグロブリン値,原発性胆汁性肝硬変が疑われる場合は抗ミトコンドリア抗体値を調べる。アルカリホスファターゼが単独で上昇した場合には,γグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)を測定する;肝胆道系疾患ではGGT値は上昇するが,アルカリホスファターゼの高値が骨疾患による場合は上昇しない。

肝胆道系疾患における肝細胞性と胆汁うっ滞性黄疸は,ビリルビン分画やビリルビンの上昇の程度で鑑別することができない。500単位を超えるアミノトランスフェラーゼの上昇では肝炎や肝における急性低酸素症など肝細胞性の原因が示唆される;不釣合いなアルカリホスファターゼ上昇(例,正常値の3倍を超えるアルカリホスファターゼおよび200単位未満のアミノトランスフェラーゼ値)は胆汁うっ滞を示唆する。肝浸潤はさらに,アミノトランスフェラーゼに対して不釣合いなアルカリホスファターゼの上昇を生じるが,通常ビリルビン上昇は極めてわずか,または全くみられない。

肝胆道系疾患単独でビリルビン値が30mg/dL(> 513μmol/L)を超えることはまれであるため,これより高値では重度の肝胆道系疾患および溶血または腎機能不全の合併が疑われる。低アルブミンおよびグロブリン高値は急性よりも慢性肝疾患を示唆する。ビタミンK(5〜10mg,筋肉内注射を2〜3日間)投与後にPTまたはINR高値が低下した場合,肝細胞性疾患よりも胆汁うっ滞が考えられるが決定的ではない。

浸潤性および胆汁うっ滞性黄疸の診断には画像診断が最適である。通常はまず初めに腹部超音波検査,CT,またはMRIを行う。これらの検査によって胆道系および局所肝病変における異常を検出できるが,びまん性肝細胞性疾患の診断には精度が低い(例,肝炎,肝硬変)。肝外性胆汁うっ滞では,内視鏡または磁気共鳴胆管膵管造影法(ERCP,MRCP)でより正確な胆道系の評価を行うことができる;ERCPは閉塞の治療にも用いることができる(例,結石除去,狭窄のステント術)。

黄疸の診断に肝生検が必要となることはまれだが,肝内性胆汁うっ滞やある種の肝炎の診断に役立つ場合がある。腹腔鏡検査法では全開腹術のような侵襲を与えることなく肝臓および胆嚢を直接検査できる。原因不明の胆汁うっ滞性黄疸にはときとして腹腔鏡検査,まれに診断的開腹術が必要となる。

胆汁うっ滞性抱合型高ビリルビン血症

胆汁うっ滞(閉塞性黄疸)は抱合型高ビリルビン血症の原因となることがある。胆汁うっ滞は胆汁の流れが阻害されたときに起こる。必ずしも機械的閉塞が存在するとは限らないため,閉塞性黄疸よりも胆汁うっ滞という用語が好ましい。乳児の胆汁うっ滞は,他の年齢層でみられるものとは異なる(新生児および乳児における消化器疾患: 新生児胆汁うっ滞を参照 )。

病因

胆汁の流れは,肝細胞の細胆管からファーター膨大部までのどの部位においても阻害される可能性がある。

肝内性の原因としては肝炎,薬物毒性,およびアルコール性肝疾患が挙げられる。まれな原因として,原発性胆汁性肝硬変,妊娠に伴う胆汁うっ滞,および転移癌が挙げられる。

肝外性の原因としては総胆管結石および膵癌が挙げられる。まれにみられる原因としては,良性の総胆管狭窄(通常,過去に行われた手術に関連する),胆管癌,膵炎や膵仮性嚢胞,および硬化性胆管炎がある。

病態生理

メカニズムは,機械的閉塞でさえも複雑である。病態生理学的作用は腸管の胆汁成分欠乏(ビリルビン,胆汁酸塩,および脂質が最も重要)およびうっ滞を反映し,後者は全身循環への漏出を引き起こす。腸管へ到達するビリルビン量は少ないため,便はしばしば白色である。胆汁酸塩の欠乏は吸収不良を引き起こし,脂肪便および脂溶性ビタミン欠乏(特にA,K,およびD)につながる恐れがある;ビタミンK欠乏はプロトロンビン値を減少させることがある。胆汁うっ滞が長期に及ぶと,ビタミンDとカルシウムの吸収不良を伴い,骨粗鬆症や骨軟化症を引き起こす。

ビリルビン貯留は混合型高ビリルビン血症をもたらす。一部の抱合型ビリルビンは尿に到達し暗色尿を呈する。循環血液中の高濃度の胆汁酸塩はそう痒と関連しているが,そう痒を発症しない場合もある。脂肪の吸収不良があっても,コレステロールとリン脂質の貯留によって高脂血症が生じる(しかしコレステロールの肝臓での合成増加および血漿中でのエステル化低下も関与すると思われる);トリグリセリド値はほとんど影響を受けない。脂質はリポ蛋白Xとよばれ,特異で異常な低比重リポ蛋白として循環している。

評価

病歴,身体診察,および診断検査に基づいて評価を行う。原因が肝内性であるか肝外性であるかを鑑別することが重要である。

病歴: 胆汁うっ滞は黄疸,暗色尿,白色便,および全身性そう痒を生じる。慢性胆汁うっ滞は出血(ビタミンK吸収不良による)または骨痛(ビタミンDおよびカルシウムの吸収不良による骨粗鬆症)を生じる。腹痛および全身症状(例,食欲不振,嘔吐,発熱)は胆汁うっ滞そのものよりも,根底にある原因を反映する。肝炎,アルコールの大量摂取,または胆汁うっ滞を生じる薬剤を最近服用した場合にみられる症状は肝内性の胆汁うっ滞を示唆する。硬直,胆石仙痛,または膵臓疾患に典型的な痛み(例,膵癌)は肝外性の胆汁うっ滞を示唆する。

身体診察: 慢性の胆汁うっ滞ではしばしば泥状の皮膚色素沈着や,掻き傷(そう痒による),または皮膚への脂質沈着(黄色板症や黄色腫)がみられる。慢性肝細胞性疾患の徴候(例,くも状血管腫,脾腫,腹水)では肝内性の胆汁うっ滞が示唆される。胆嚢炎の徴候(胆嚢および胆管疾患: 治療を参照 )は肝外性の胆汁うっ滞を示唆する。

検査: 病因にかかわらず,アルカリホスファターゼ値の特徴的な上昇がみられるが,これは排泄障害というよりは合成増加に起因する。アミノトランスフェラーゼ値は通常中等度にのみ上昇する。ビリルビン値は様々である。他の肝臓の検査値が正常な場合,高値のアルカリホスファターゼが肝臓由来であるかを確認するためには,GGTを測定する。肝機能不全が疑われる場合,PT(通常INRで報告される)を測定する。しかしながら,アルカリホスファターゼ,GGT,ビリルビン値はいずれも胆汁うっ滞の原因を示唆しない。

その他の臨床検査は,時折胆汁うっ滞の原因を明らかにすることもある。アミノトランスフェラーゼ値の著しい上昇は肝細胞性の原因を示唆するが,ときには特に総胆管結石が原因の急性閉塞のような肝外性胆汁うっ滞でもみられる。血清アミラーゼ値が高くなることはまれだが,総胆管閉塞を示唆する。ビタミンK投与後のPTやINR延長の回復は肝外性の閉塞を示唆するが,肝細胞性の疾患でも反応することがある。抗ミトコンドリア抗体の存在は,原発性胆汁性肝硬変を強く示唆する。

胆道の画像診断は必要不可欠である(肝疾患および胆道系疾患に対する検査: 画像診断を参照 )。胆管拡張は通常機械的閉塞に伴う症状が現れた数時間後に起こるが,信頼性のある検出方法として超音波,CT,MRIがある。また閉塞の根底にある原因を検出できることがある;一般的に胆石は超音波,膵臓病変はCTの信頼度が高い。安価で電離放射線が発生しないことから通常は超音波が好まれる。超音波によって肝外性の閉塞が認められたがその原因が不明な場合,より確定的な方法として通常は内視鏡的もしくは磁気共鳴胆管膵管造影(ERCP,MRCP)が適応となる。肝外性の閉塞が進行性で,画像診断で原因が特定されない場合,診断的腹腔鏡検査法または開腹術がまれに適応となる。

肝生検は肝内性の胆汁うっ滞が疑われ,非侵襲性の検査では明らかな診断が得られない場合に適応となる。胆管系を穿刺し腹膜炎を引き起こす危険性があるため,生検を行う前には(超音波やCTにて)胆管拡張を除外する必要がある。

治療

肝外性胆管閉塞では機械的な減圧を施す必要がある。その他に,根本原因,症状,および合併症(例,ビタミン吸収不良)の治療を目標とする。

肝外性胆管閉塞の減圧は通常開腹手術,内視鏡(例,胆石を除去するため),また狭窄や部分的閉塞部位にはステントおよびドレナージ用カテーテル挿入が必要となる。手術不可能な癌による閉塞には,経肝的または内視鏡的にステントを設置してドレナージを行う。

そう痒は,基礎疾患の改善,またはコレスチラミン1日2回,2〜8g,経口投与で通常回復するが,この薬剤は腸内で胆汁酸塩と結合する。しかしながら,コレスチラミンは完全胆管閉塞には効果がない。重度の肝細胞障害がなければ,フィトナジオン(ビタミンK1)1日1回,5〜10mgを2〜3日間皮下投与することで低プロトロンビン血症は改善する。カルシウムおよびビタミンDの補給は,ビスホスホネートの有無にかかわらず,長期にわたる不可逆的な胆汁うっ滞における骨粗鬆症の進行をほんのわずかに抑えることができる。ビタミンAの補給は欠乏症を予防し,食品中の脂肪の一部を中鎖脂肪酸で置換することで重度の脂肪便を最小限に抑えることができる。

非胆汁うっ滞性抱合型高ビリルビン血症

胆汁うっ滞を伴わない抱合型高ビリルビン血症を生じるビリルビン代謝障害では,黄疸以外の症状や後遺症はみられない。ジルベール症候群でみられる非抱合型高ビリルビン血症とは対照的に,ビリルビンは尿中に出現することがある。通常はアミノトランスフェラーゼとアルカリホスファターゼ値は正常である。治療は必要ない。

デュービン-ジョンソン症候群: このまれな常染色体劣性疾患はビリルビングルクロニドの排泄障害に関連する。通常肝生検により診断される;肝臓には細胞内のメラニン様物質により濃い色素沈着がみられるが,その他は組織学的に正常である。

ローター(Rotor)症候群: このまれな疾患は,臨床的にデュービン-ジョンソン症候群と類似しているが,肝臓に色素沈着はなく,その他にも代謝に微妙な相違点がある。

非抱合型高ビリルビン血症

非抱合型高ビリルビン血症は,ビリルビンの生産過剰または抱合異常などに伴うビリルビン代謝障害である。

溶血: 赤血球溶血は,ビリルビン生成亢進の臨床的に重要な原因として最も頻繁にみられる。正常な肝臓は過剰量のビリルビンを抱合できるが,溶血によって肝臓が対応しきれない量までビリルビンが増加することがある。溶血が活発であっても,血清ビリルビンが5mg/dL(86μmol/L)を超えることはまれである。しかしながら,肝疾患に伴う溶血ではより高値が得られる;このような例では集合胆管排泄も障害され,抱合型高ビリルビン血症を生じる。(溶血による貧血で考察)

ジルベール症候群: 無症状で軽度の非抱合型高ビリルビン血症以外に明らかな異常がみられないジルベール症候群はおそらく生涯に及ぶものと思われる。慢性肝炎やその他の肝疾患と間違いやすい。ジルベール症候群は5%もの人が罹患する。家族が罹患していることもあるが,はっきりと遺伝型を確定するのは困難である。

病因は,肝臓のビリルビンの取り込みにおける複雑な欠陥が関与すると思われる。グルクロニルトランスフェラーゼ活性は低いが,クリグラー-ナジャー症候群Ⅱ型ほどではない。多くの患者でわずかに赤血球の崩壊が促進されるが,このことは高ビリルビン血症の原因を説明づけるものではない。肝の組織学的所見は正常である。

ジルベール症候群はビリルビン値の上昇によって最もしばしば若年層に偶然に検出されるが,この値は通常2〜5mg/dL(34〜86μmol/L)を変動し,絶食やその他のストレスによって上昇する傾向にある。

ジルベール症候群は,ビリルビン分画にて非抱合型が優勢であること,その他の肝機能検査結果が正常,および尿中ビリルビンがみられないことから,肝炎と鑑別できる。貧血や網状赤血球増加がみられないことにより溶血との鑑別ができる。治療は必要ない。患者には肝臓の病気ではないことを納得させるようにする。

クリグラー-ナジャー症候群: このまれな遺伝性疾患はグルクロニルトランスフェラーゼとよばれる酵素欠乏が原因で生じる。常染色体劣性Ⅰ型(完全型)疾患をもつ患者は重度の高ビリルビン血症を呈する。通常1歳までに核黄疸で死亡するが,成人まで生存する場合もある。治療としては光線療法および肝移植などがある。常染色体優性Ⅱ型(部分型)疾患をもつ患者(様々な浸透率をもつ)は,しばしば軽度の高ビリルビン血症(20mg/dL[342μmol/L]未満)を伴う,通常神経損傷を伴うことなく成人まで生存する。フェノバルビタール(1.5〜2mg/kg,1日3回,経口投与)は部分的に欠乏したグルクロニルトランスフェラーゼを誘導するため効果的な場合がある。

原発性短絡性高ビリルビン血症: このまれな家族性の良性疾患は,早期標識ビリルビンの産生過剰と関連する。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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