メルクマニュアル18版 日本語版
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肝硬変

肝硬変は正常な肝構造がびまん性組織破壊にまで進行する線維症で,緻密な線維組織に囲まれた再生性結節を特徴とする。症状は何年も現れず,しばしば食欲不振,疲労,体重減少などのように非特異的である。後期にみられる症状として,門脈圧亢進症,腹水,肝不全などがある。診断には生検が必要となる。一般に支持的な治療を行う。

肝硬変は世界的にも上位を占める死亡原因である。肝硬変の原因は,線維症と同様である(線維症と肝硬変: 線維症を引き起こす疾患と薬剤表 1: 表参照)。先進国では,ほとんどの症例は慢性アルコール依存症または慢性C型肝炎ウイルス感染による。アジアやアフリカの多くの地域では,肝硬変は慢性B型肝炎による。病因不明の肝硬変(潜在性肝硬変)は,特定の原因(例,慢性C型肝炎,脂肪肝)が明らかになるにつれて少なくなってきている。原発性胆汁性肝硬変については線維症と肝硬変: 原発性胆汁性肝硬変で考察,原発性硬化性胆管炎については胆嚢および胆管疾患: 原発性硬化性胆管炎(PSC)で考察で考察されている。

病態生理

同様の刺激に対しても,線維化から肝硬変への進行度合や肝硬変の形態学については個人差がある。このような差の理由は不明である。

傷害に反応して,増殖調節因子は肝細胞過形成(再生性結節を形成する)および動脈の成長(血管新生)を引き起こす。増殖調節因子としてはサイトカインと肝成長因子(例,上皮増殖因子,肝細胞増殖因子,トランスフォーミング増殖因子α,腫瘍壊死因子)がある。またインスリン,グルカゴンおよび肝内血流パターンは,結節がどの部位にどのように生じるかを示す。

血管新生では結節を囲む線維鞘の中で新しい血管が生じる;これらの“橋”は肝動脈と門脈を肝静脈へつなぎ,肝内の循環経路を回復させる。こうした接続血管は,比較的低容量で高圧の静脈排出路となり,これは正常な血液量を収容できず,門脈圧を上昇させる。このような結節への血流異常は,再生性結節による肝細静脈の圧迫とともに,門脈圧亢進症を助長する。

肝硬変は肺内で右左シャントおよび換気/灌流不適合を生じ,その結果低酸素症を引き起こす。進行性の肝機能低下は肝不全および腹水に至る。肝細胞癌は肝硬変を頻繁に合併し,特に慢性B型およびC型肝炎ウイルス,ヘモクロマトーシス,アルコール関連性肝疾患,α1抗トリプシン欠損症,および糖原病による肝硬変で多い。

組織病理学: 肝硬変は再生性結節および線維症の両方を伴う。不完全な肝結節,線維化を伴わない結節(結節性再生性過形成),および先天性肝線維症(すなわち,再生結節を伴わない広範囲に及ぶ線維化)は真の肝硬変ではない。肝硬変は小結節性または大結節性が生じうる。小結節型肝硬変は,均一の小結節(直径3mm未満)と規則的な厚い結合組織帯を特徴とする。典型的に,結節には小葉構造が欠落している;終末(中心)肝細静脈および門脈三管の変形がみられる。時間とともに,しばしば大結節性肝硬変が生じるが,その結節の大きさは様々で(直径3mmから5cm),門脈三管や終末肝細静脈のおいて比較的正常な小葉構造をいくつか含む。様々な厚さの広い線維帯が大きな結節を囲む。正常な肝臓構造の崩壊は,線維性瘢痕の中に門脈三管が集中していることによって示唆される。混合型肝硬変(不完全中隔肝硬変)は,小結節性と大結節性肝硬変の要素が組み合わさったものである。

症状と徴候

肝硬変は何年もの間症状がみられないことがある。しばしば初期症状は非特異的で,全身の脱力感,食欲不振,倦怠,体重減少などがみられる。典型的に肝臓は触知可能で硬く鈍縁を呈するが,ときに小さく触知困難である。通常,結節は触知不可能である。

栄養不良は一般的にみられ,食欲不振で食事の摂取不足,特に胆汁の分泌不足により脂肪や脂溶性ビタミンの吸収不良がある場合に二次的に生じる。一般に,アルコール性肝疾患による肝硬変を伴う患者は膵臓の機能不全もみられ,これも吸収不良の一因となる。

胆汁うっ滞がある場合(例,原発性胆汁性肝硬変),黄疸,そう痒,および黄色板症などが生じることもある。門脈圧亢進症は,食道静脈瘤からの消化管出血,門脈圧亢進性胃障害,または直腸静脈瘤;脾機能亢進症を伴う脾腫;門脈-体循環性脳症;腹水を併発する。最終的に肝機能不全が起こり,凝固障害,場合によっては肝腎症候群(肝疾患がある患者へのアプローチ: 腎臓と電解質異常を参照 )に至り,黄疸や肝性脳症を引き起こす。

その他の以下のような臨床徴候は慢性肝疾患やアルコール依存症を示唆するが,肝硬変に特異的なものはない:筋肉の消耗,手掌紅斑,耳下腺腫大,白色爪,デュピュイトラン拘縮,くも状血管腫(10個未満は正常),女性化乳房,腋毛消失,精巣萎縮,末梢神経障害。

診断

肝硬変は,門脈圧亢進症の症状を呈する患者で疑われる。時折,初期の非特異的な症状を伴う者で,特に既知の危険因子をもつ場合に,肝硬変が疑われる。

診断検査はまず肝機能検査とCBCから始める。臨床検査によって肝硬変の疑いが高くなることはあるが,除外することはできない。臨床検査および臨床データより肝硬変が疑われる場合,肝生検によって確定診断を行う。

肝硬変またはアルコール依存症では,臨床検査結果で正常もしくは非特異的な異常が認められることがある。アミノトランスフェラーゼ値はしばしば中等度に上昇し,アルカリホスファターゼは正常または,特に胆管閉塞で上昇する。通常ビリルビンは正常である。血清アルブミンの低下およびPT延長は肝機能障害を直接的に反映している。肝硬変またはその他の慢性肝疾患では,血清グロブリンが増加する。貧血は一般的に認められ,通常は正球性だが,慢性消化管出血では小球性および低色素性,葉酸欠乏症(アルコール症において)では大球性,脾機能亢進症では溶血性である。アルコールは骨髄を直接抑制し,ときに汎血球減少を引き起こす。脾機能亢進症は白血球減少や血小板減少を引き起こすこともある。

画像診断は,他の状態や肝硬変に特異的な原因を診断するために用いられるが,肝硬変それ自体の診断には適応とはならない。しかしながら,肝硬変を示唆する異常が認められることもある。CTでは結節構造が認められることがある。テクネシウム99m硫黄コロイドを用いた肝スキャンでは,肝において不規則な取り込みがみられ,また脾臓や骨髄への取り込みが増加する。ドプラ超音波検査では門脈圧亢進症を示唆する肝血管に変化がみられことがある。

上部消化管出血が起こらない限り,肝硬変を伴う患者に対し食道静脈瘤スクリーニングのための内視鏡検査をルーチンで行う必要ない。肝硬変および,慢性ウイルス性B型またはC型肝炎またはヘモクロマトーシスを伴う患者では肝細胞癌のスクリーニングを行うべきである(例,αフェトプロテインの測定や超音波検査を6〜12カ月毎に行う。肝腫瘤および肉芽腫: 予防とスクリーニングを参照 )。

予後と治療

予後はしばしば予測不可能である。予後は,病因,重症度,合併症の有無,併存条件,宿主因子,治療の効果に左右される。少量であっても飲酒を継続する患者の予後は非常に悪い。Child-Turcotte-Pughスコアリングシステム(線維症と肝硬変: CHILD-TURCOTTE-PUGHスコアリングシステム表 2: 表参照)は,臨床および検査情報を用いて疾患の重症度,手術リスク,および全体的な予後を階級分けするものである。

表 2

CHILD-TURCOTTE-PUGHスコアリングシステム

臨床および検査測定項目

異常増加に伴う獲得点数*

 

1

2

3

脳症(グレード†)

なし

1–2

3–4

腹水

なし

軽度(または利尿薬にて管理できる)

利尿薬治療下で最低でも中等度

PT(延長した秒数)

< 4

4–6

> 6

[またはINR]

< 1.7

1.7–2.3

> 2.3

アルブミン(g/dL)

> 3.5

2.8–3.5

< 2.8

ビリルビン(mg/dL)

< 2

2–3

> 3

*スコアリングシステム:5〜6点,グレードA(最低危険度);7〜9点,グレードB;10〜15点,グレードC(最高危険度)。

†1度:睡眠障害;集中力低下;抑うつ,不安,または興奮性。

2度:嗜眠;見当識障害;短期記憶障害;脱抑制性行動。

3度:傾眠;錯乱;健忘;怒り,パラノイア,またはその他奇異な行動。

4度:昏睡。

一般的に,治療は支持療法に基づき,有害薬剤の投与中止,栄養補給(ビタミン補充を含む),基礎的な原因および合併症の治療などがある。全てのアルコールおよび肝毒性薬剤は避ける必要がある。肝で代謝される薬剤の投与量を少なくする。

静脈瘤を伴う患者は,出血を予防する治療が必要である(肝疾患がある患者へのアプローチ: 予後と治療を参照 )。肝の線維化を遅延させる治療で,さらなる利益が得られる(線維症と肝硬変: 治療を参照 )。末期の肝不全を呈する適応患者には,肝移植を行うべきである。

肝硬変を伴う人の中にはアルコール乱用を継続する人がいる。医師は入院時の禁断症状に備えるべきである。

原発性胆汁性肝硬変

原発性胆汁性肝硬変は自己免疫性肝疾患であり,肝内胆管の進行性崩壊を特徴とし,胆汁うっ滞,肝硬変,および肝不全に至る。患者は診察時には通常無症状であるが,場合によっては疲労感があり,または胆汁うっ滞(例,そう痒,脂肪便)や肝硬変(例,門脈圧亢進,腹水)の症状が認められる。臨床検査では,胆汁うっ滞,IgMの上昇,および特徴的所見として血清中に抗ミトコンドリア抗体が認められる。肝生検は通常,診断および病期分類を行うために必要である。治療としては,ウルソデオキシコール酸,コレスチラミン(そう痒のため)の投与,脂溶性ビタミンの補給,および進行した疾患に対しては肝移植を行う。(See also the American Association for the Study of Liver Disease's practice guideline Management of Primary Biliary Cirrhosis.)(See also the American Association for the Study of Liver Disease's practice guideline Management of Primary Biliary Cirrhosis.)

病因と病態生理

原発性胆汁性肝硬変(PBC)は,成人で最も一般的にみられる慢性胆汁うっ滞性肝疾患である。症例の90%以上が35〜70歳の女性に生じる。疾患は家族性に認められる。原因は不明だが,95%を超える症例で,ミトコンドリア膜内に存在する抗原に対する抗体が認められることから自己免疫性の機序が疑われる。これらの抗ミトコンドリア抗体に細胞毒性はなく,胆管障害には関与していない。PBCは一般に他の自己免疫疾患(RA,全身性硬化症,シェーグレン症候群,クレスト症候群,自己免疫性甲状腺炎,および尿細管性アシドーシスなど)と関連しており,これも自己免疫性機序を示唆する。

CD4およびCD8Tリンパ球は,特徴的に細胆管上皮における炎症を媒介する。胆管は増殖する。胆汁酸は滞留し,肝実質に炎症をもたらし,門脈周囲領域の線維化に至る。最終的に肝臓の炎症は減少し,肝線維症は肝硬変へと進行する。

症状と徴候

約30〜50%の患者は症状を伴わない;PBCは,肝機能検査の異常(典型的にアルカリホスファターゼの上昇)に伴い偶然に検出される。症状や徴候はどの病期でも生じる可能性があり,疲労が含まれていたり,胆汁うっ滞(およびそれに起因する脂肪吸収不良からビタミン不足や骨粗鬆症を生じる),肝細胞機能不全,または肝硬変を反映している場合がある。症状は通常潜行的に生じる。そう痒,疲労,または両者が初期症状として50%を超える患者で認められ,数カ月または数年他の症状に先行することもある。診察時のその他の一般的特徴としては,硬く肥大した非圧痛性の肝(25%);脾腫(15%);色素増加症(25%);黄色板症(10%);および黄疸(10%)が挙げられる。最終的に,肝硬変における全ての症状と合併症が発現する。PBCに関連して,末梢性神経障害やその他の自己免疫性疾患が起こることもある。

診断

古典的症状または胆汁うっ滞性の肝生化学検査値が中年の女性に認められた場合,PBCが疑われる:アルカリホスファターゼおよびγグルタミルトランスペプチダーゼの上昇が認められるが,アミノトランスフェラーゼの異常は最小限である(ALTおよびAST)。通常,初期の血清ビリルビンは正常である;数値の上昇は疾患の進行および予後の悪化を意味する。血清IgMは顕著に高い。血清中抗ミトコンドリア抗体が陽性である場合(ときに1型自己免疫性肝炎にでは低力価で陽性)は,PBCの診断が強く示唆される。PBC患者でみられる他の自己抗体として,リウマチ因子(66%),抗平滑筋抗体(66%),抗甲状腺抗体(40%),および抗核抗体(35%)が含まれる。肝生検は確定診断を行うために通常行われ,初期段階で特徴的な胆管病変が認められることがある。しかしながら,PBCは4つの病期に分類され,線維化が進行するにしたがってPBCは他の肝硬変と形態学的な区別ができなくなる。

肝外性胆管閉塞は,必要であれば画像診断(すなわち,超音波,磁気共鳴胆管膵管造影,およびときにERCP)によって除外する。

予後

通常PBCは15〜20年かけて末期へ進行するが,進行の度合いは様々である。生活の質は,長年にわたり低下しないこともある。症状を伴わない患者は2〜7年の間に発症する傾向にあるが,場合によっては10〜15年間症状がみられないこともある。いったん症状が発現した場合,平均余命の中央値は10年間である。急速な進行を予測する因子としては,症状の急速な悪化,進行した組織学的変化,高齢,浮腫の存在,関連する自己免疫疾患の存在,およびビリルビン,アルブミン,PTまたはINRの異常が挙げられる。そう痒の消失,黄色腫の縮小,血清コレステロールの減少を呈する場合,予後が悪い。

治療

治療目標としては,肝障害の停止または回復,合併症の治療(慢性胆汁うっ滞および肝不全),および最終的には肝移植が挙げられる。飲酒や肝毒性のある薬剤は全て中止するべきである。ウルソデオキシコール酸(4.3〜5mg/kg,1日3回経口投与,または3.25〜3.75mg/kg,1日4回食事とともに経口投与)は肝障害を抑え,生存期間を延長し,肝移植の必要性を遅らせる。(See also the Cochrane review abstract on ursodeoxycholic acid for primary biliary cirrhosis.)約20%の患者では4カ月以上たっても生化学的な改善が認められない;このような患者では疾患が進行していると考えられ,数年後には肝移植が必要となる。肝障害を抑えるために提案されているその他の薬剤で,総合的な臨床的な結果を回復させたものはないか,または議論が進行中である。これらの薬剤としては,コルチコステロイド,ペニシラミン,コルヒチン,メトトレキサート,アザチオプリン,シクロスポリン,およびクロラムブシルなどがある。

そう痒はコレスチラミン6〜8g,1日2回の経口投与で管理できる場合もある。そう痒を呈する患者の一部は,ウルソデオキシコール酸や紫外線に反応することがある;その他はリファンピンまたはナルトレキソンなどのオピオイド拮抗薬の試験的投与を必要とする。脂肪吸収不良では,CaやビタミンA,D,E,Kの補給が必要なことがある。骨粗鬆症では,CaやビタミンDの補給に加え,荷重運動,ビスホスホネート,エストロゲン,またはラロキシフェンが必要となる。後期には,関連する門脈圧亢進症(肝疾患がある患者へのアプローチ: 門脈圧亢進症を参照 )または肝硬変(線維症と肝硬変: 肝硬変を参照 )の治療が必要となる。

肝移植は優れた結果をもたらす。一般的な適応は非代償性肝疾患(管理不能な静脈瘤出血,難治性腹水症,難治性そう痒,および肝性脳症)である。肝移植後の1年生存率は90%超;5年生存率は80%超である。PBCは,最初の数年間のうちに約15%の患者で再発がみられるが,この所見は臨床的に重要ではない。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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