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慢性肝炎の概要

執筆者:

Sonal Kumar

, MD, MPH, Weill Cornell Medical College

レビュー/改訂 2020年 12月
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慢性肝炎は肝炎が6カ月以上続く場合をいう。一般的な原因としては,B型およびC型肝炎ウイルス,非アルコール性脂肪肝炎(NASH),アルコール性肝疾患,自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎)などがある。多くの患者では急性肝炎の病歴がなく,最初の徴候は無症候性のアミノトランスフェラーゼ高値である。受診時から肝硬変やその合併症(例,門脈圧亢進症)がみられる場合もある。確定診断とグレードおよび病期の判定のために,ときに生検が必要となる。治療は合併症と基礎疾患を対象とする(例,自己免疫性肝炎に対してコルチコステロイド,ウイルス性肝炎に対して抗ウイルス療法)。非代償性肝硬変は,しばしば肝移植の適応となる。

一般に慢性肝炎は6カ月以上続く肝炎と定義されるが,この期間は恣意的である。

慢性肝炎の病因

一般的な原因

慢性肝炎の最も一般的な原因は以下のものである:

B型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)は,慢性肝炎の一般的な原因の1つであり,HBV感染症例(D型肝炎 D型肝炎 D型肝炎は,B型肝炎ウイルスの存在下でしか複製できない不完全なRNAウイルス(δ因子)によって引き起こされる。頻度は高くないが,B型急性肝炎との同時感染またはB型慢性肝炎への重複感染として発生する。 ( 肝炎の原因, 急性ウイルス性肝炎の概要,および 慢性肝炎の概要も参照のこと。) D型肝炎は通常,血液感染か汚染された血液または体液の粘膜接触によって伝播する。感染した肝細胞内にはB型肝炎表面抗原(HBs抗原)で覆われたδ粒子がみられる。... さらに読む ウイルスの同時感染の有無は問わない)の5~10%とHCV感染症例の約75%が慢性化する。慢性HBV感染症の発生率は小児でより高い(例,感染した新生児の最大90%および幼児の25~50%)。慢性化の機序は不明であるが,肝障害は大部分が感染に対する患者の免疫反応によって決定づけられる。

まれに,慢性肝炎にE型肝炎ウイルスのゲノタイプ3型が関与している例もある。

A型肝炎ウイルスは慢性肝炎を引き起こさない。

NAFLDは,ほとんどの場合,以下の危険因子を少なくとも1つ有する患者で発生する:

  • 肥満

  • 脂質異常症

  • インスリン抵抗性

NASHは,慢性肝炎を引き起こす,進行性の高い病型のNAFLDである。

アルコール性肝疾患(脂肪肝,びまん性の肝炎症,および肝壊死が複合的に発生する病態)は,過度の飲酒によって発生する。

比較的まれな原因

自己免疫性肝炎(免疫による肝細胞傷害)は,ウイルス性肝炎または脂肪肝炎以外の肝炎のうちの多くを占めており,自己免疫性肝炎の特徴としては以下のものがある:

  • 血清学的免疫マーカーの存在(例,抗核抗体,抗平滑筋抗体,抗肝腎ミクロソーム抗体)

  • 自己免疫疾患に共通するHLA(組織適合性抗原)ハプロタイプとの関連性(例,HLA-B1,HLA-B8,HLA-DR3,HLA-DR4)

  • 肝臓の組織学的病変におけるT細胞および形質細胞の優位性

  • In vitroにおける細胞性免疫および免疫調節機能の複雑な異常

  • その他の自己免疫疾患との関連性(例,関節リウマチ,自己免疫性溶血性貧血,増殖性糸球体腎炎)

  • コルチコステロイドまたは免疫抑制薬による治療に対する反応

慢性肝炎には,ときに自己免疫性肝炎と他の免疫性の慢性肝疾患(例,原発性胆汁性胆管炎,原発性硬化性胆管炎)の両方の特徴が認められる。この状態はオーバーラップ症候群と呼ばれる。

多くの薬剤(イソニアジド,メトトレキサート,メチルドパ,ニトロフラントイン,タモキシフェン,アミオダロン,まれにアセトアミノフェンを含む)が慢性肝炎の原因となりうる。機序は薬剤によって異なるが,免疫応答の変化,脂肪肝炎の発生,細胞毒性を有する中間代謝物,または遺伝的に規定された代謝障害などが関連する。

頻度は低いが, α1-アンチトリプシン欠乏症 α1-アンチトリプシン欠乏症 α1-アンチトリプシン欠乏症は,肺の主要なアンチプロテアーゼであるα1-アンチトリプシンの先天的欠乏であり,成人においてプロテアーゼを介した組織破壊および気腫の増大を招く。異常なα1-アンチトリプシンの肝臓への蓄積は,小児でも成人でも肝疾患の原因となる。血清α1-アンチトリプシン値が < 11mmol/L(< 80mg/dL)であれば,診断が確定する。治療として,禁煙,気管支拡張薬,感染症の早期治療,および選択された症例では... さらに読む セリアック病 セリアック病 セリアック病は,遺伝的感受性を有する者に免疫を介して発生する疾患で,グルテン不耐症によって引き起こされ,粘膜炎症および絨毛萎縮が生じ,その結果,吸収不良を来す。症状としては通常,下痢や腹部不快感などがみられる。診断は小腸生検により行い,生検では特徴的であるが非特異的な病理的変化である絨毛萎縮が示され,この変化は厳格なグルテン除去食で消失する。 セリアック病は 吸収不良を引き起こす疾患である。... さらに読む セリアック病 ,甲状腺疾患, 遺伝性ヘモクロマトーシス 遺伝性ヘモクロマトーシス 遺伝性ヘモクロマトーシスは,過剰な鉄(Fe)蓄積を特徴とする遺伝性疾患で,組織障害を引き起こす。所見としては,全身症状,肝疾患,心筋症,糖尿病,勃起障害,および関節障害がみられることがある。診断は,血清フェリチン,鉄,およびトランスフェリン飽和度の高値により行い,遺伝子検査により確定する。連続的な瀉血による治療が一般的である。 ( 鉄過剰症の概要も参照のこと。) 遺伝性ヘモクロマトーシスには,変異した遺伝子に応じて,以下に示す1~4型の... さらに読む 遺伝性ヘモクロマトーシス ,または ウィルソン病 ウィルソン病 ウィルソン病では,結果として肝および他の臓器に銅が蓄積する。肝症状または神経症状が出現する。診断は,血清セルロプラスミン濃度の低値,銅の尿中排泄量の高値,およびときに肝生検の結果に基づく。治療は,低銅食およびペニシラミンまたはトリエンチンなどの薬物から成る。 ウィルソン病は,男女ともに罹患する銅代謝の障害であり,約30,000人中1人にみられる。罹患者は,13番染色体に位置する劣性遺伝子変異体がホモ接合型である。人口の約1... さらに読む ウィルソン病 によって慢性肝炎が生じることもある。

慢性肝炎の分類

慢性肝炎の症例は,かつては組織学的に慢性遷延性,慢性小葉性,慢性活動性肝炎に分類されていた。現在の分類法では以下の点が規定されている:

炎症および壊死は可逆的である場合もあるが,線維化は通常は不可逆的である。

慢性肝炎の症状と徴候

慢性肝炎の臨床的特徴は極めて多様である。約3分の1の症例は急性肝炎後に生じるが,多くは新たに(de novo)潜行性に生じる。

多くの患者は,病因に関係なく無症状である。しかし,倦怠感,食欲不振,および疲労がよくみられ,ときに微熱や非特異的な上腹部の不快感を伴う。黄疸は通常みられない。

多くの場合,最初の所見としては以下がみられる:

少数の慢性肝炎患者では,胆汁うっ滞の症状(例,黄疸,そう痒,白色便,脂肪便)が発生する。

自己免疫性肝炎では,特に若年女性においては,ほぼ全身に症状がみられ,ざ瘡,無月経,関節痛,潰瘍性大腸炎,肺線維症,甲状腺炎,腎炎,溶血性貧血などが挙げられる。

C型慢性肝炎は,ときに 扁平苔癬 扁平苔癬 扁平苔癬は,そう痒を伴う再発性の炎症性発疹が生じる疾患で,平坦に隆起した多角形で紫色のはっきりした小丘疹を特徴とし,それらが融合して表面のざらざらした鱗屑を伴う局面を形成することがあり,しばしば口腔病変や性器病変を伴う。診断は通常臨床的に行い,皮膚生検で裏付けが得られる。一般に,治療にはコルチコステロイドの外用または病変内注射が必要となる。重症例では光線療法,またはコルチコステロイド,レチノイド,もしくは免疫抑制薬の全身投与が必要になる... さらに読む 扁平苔癬 皮膚粘膜血管炎 皮膚血管炎 皮膚血管炎は,内臓ではなく皮膚および皮下組織の小型または中型の血管を侵す血管炎のことを指す。皮膚血管炎は,皮膚に限局する場合もあれば,原発性または二次性の全身性血管炎疾患の一要素である場合もある。紫斑,点状出血,または潰瘍が生じることがある。診断には生検が必要である。治療法は病因および疾患の範囲によって異なる。 ( 血管炎の概要も参照のこと。) 血管炎は皮膚の小型または中型の血管を侵すことがある。皮膚の小型の血管(例,細動脈,毛細血管,... さらに読む 皮膚血管炎 糸球体腎炎 腎炎症候群の概要 腎炎症候群は,血尿および様々な程度のタンパク尿を認め,かつ尿沈渣の鏡検で通常は変形赤血球を,さらにしばしば赤血球円柱を認める場合として定義される。しばしば,浮腫,高血圧,血清クレアチニン値上昇,乏尿のうち1つ以上の要素が認められる。原因は原発性および続発性のいずれもある。診断は,病歴,身体診察,ときには 腎生検に基づく。治療および予後は原因によって異なる。 ( 糸球体疾患の概要も参照のこと。)... さらに読む 晩発性皮膚ポルフィリン症 晩発性皮膚ポルフィリン症 晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)は比較的頻度の高い肝性ポルフィリン症であり,主に皮膚が侵される。肝疾患も一般的である。PCTは,ヘム生合成経路の酵素である肝臓のウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素の活性の後天性または遺伝性の低下に起因する( ヘム生合成経路の基質および酵素の表を参照)。ポルフィリンが蓄積するのは,特に,肝細胞に酸化ストレスの亢進が存在する場合であり,この亢進は通常,肝臓の鉄増加に起因するが,アルコール,喫煙,エストロゲン,... さらに読む 晩発性皮膚ポルフィリン症 ,混合型クリオグロブリン血症のほか,おそらくは B細胞性の非ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫は,リンパ節,骨髄,脾臓,肝臓,および消化管を含むリンパ細網部位においてリンパ系細胞の単クローン性悪性増殖が生じる不均一な疾患群である。通常は,初発症状として末梢のリンパ節腫脹がみられる。ただし,リンパ節腫脹は認められないが,循環血中に異常なリンパ球が認められる患者もいる。ホジキンリンパ腫と比べ,診断時に播種性である可能性が高い。通常は,リンパ節生検,骨髄生検,またはその両方に基づいて診断を下す。管理の戦略としては,経... さらに読む 非ホジキンリンパ腫 をも合併することがある。クリオグロブリン血症の症状としては,疲労,筋肉痛,関節痛,神経障害,糸球体腎炎,発疹(蕁麻疹,紫斑,白血球破砕性血管炎)などがあるが,クリオグロブリン血症は無症状である場合の方が多い。

慢性肝炎の診断

  • 肝炎と合致する肝機能検査値

  • ウイルス血清学的検査

  • 場合により自己抗体,免疫グロブリン,α1‐アンチトリプシン値,その他の検査

  • ときに生検

  • 血清アルブミン,血小板数,およびプロトロンビン時間/国際標準化比(PT/INR)

(American Association for the Study of Liver Diseaseの診療ガイドラインHepatitis C Guidance 2019 Update: AASLD-IDSA (Infectious Diseases Society of America) recommendations for testing, managing, and treating hepatitis C virus infectionおよびU.S. Preventive Services Task Forceの診療ガイドラインHepatitis C Virus Infection in Adolescents and Adults: Screeningも参照のこと。)

以下のうち1つでも該当する項目があれば,慢性肝炎が疑われる:

  • 本疾患を示唆する症状および徴候

  • 偶然指摘されたアミノトランスフェラーゼ値の上昇

  • 過去に診断された急性肝炎

さらに,無症状の患者を同定するため,米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は18歳以上の全ての成人に少なくとも一度は検査を受けるよう推奨している。

肝機能検査

以前に施行されていなければ,肝機能検査が必要であり,検査項目には血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT),アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アルカリホスファターゼ,およびビリルビンを含める。

アミノトランスフェラーゼ値の上昇が最も特徴的な臨床検査値異常である(ALTの正常範囲:男性で29~33IU/L[0.48~55μkat/L],女性で19~25IU/L[0.32~0.42μkat/L][ 1 診断に関する参考文献 慢性肝炎は肝炎が6カ月以上続く場合をいう。一般的な原因としては,B型およびC型肝炎ウイルス,非アルコール性脂肪肝炎(NASH),アルコール性肝疾患,自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎)などがある。多くの患者では急性肝炎の病歴がなく,最初の徴候は無症候性のアミノトランスフェラーゼ高値である。受診時から肝硬変やその合併症(例,門脈圧亢進症)がみられる場合もある。確定診断とグレードおよび病期の判定のために,ときに生検が必要となる。治療は合併症と... さらに読む ])。通常はALT値がAST値より高くなる。アミノトランスフェラーゼ値は,慢性肝炎(特にHCV感染症および 非アルコール性脂肪性肝疾患 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) 脂肪肝とは,肝細胞内に脂質が過度に蓄積した状態である。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)には単純な脂肪浸潤(脂肪肝と呼ばれる良性の病態)が含まれるのに対し,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は脂肪沈着があって脂肪毒性および肝細胞の炎症性傷害が生じている場合と定義される。組織学的にNASHをアルコール性肝炎と鑑別するのは困難である。したがって,NASHと診断するには,背景因子としての飲酒を除外する必要がある。単純性脂肪肝をNASHと... さらに読む [NAFLD]を伴う場合)の休止期には正常値を示すことがある。

アルカリホスファターゼ値は,通常は正常または軽度の高値となるが,ときに著明に上昇することもある(特に原発性胆汁性胆管炎の場合)。

ビリルビン値は通常,重症例や進行例でない限り,正常である。

その他の臨床検査

検査結果が肝炎と合致する場合は,HBVおよびHCVを除外するためにウイルス血清学的検査を施行する(B型肝炎の血清学的検査 B型肝炎の血清学的検査* B型肝炎の血清学的検査* および C型肝炎の血清学的検査 C型肝炎の血清学的検査 C型肝炎の血清学的検査 の各表を参照)。これらの検査でウイルス性の病因が示唆されなければ,さらなる検査が必要である。

次に行う検査としては以下のものがある:

小児と若年成人では,セルロプラスミン値を測定してウィルソン病のスクリーニングを行う。

自己免疫性肝炎は通常,抗核抗体(ANA),抗平滑筋抗体(ASMA),または抗肝腎ミクロソーム1抗体(抗LKM1抗体)の抗体価が1:80(成人)または1:20(小児)となることと,通常は血清免疫グロブリン値が上昇することに基づき診断する。抗ミトコンドリア抗体の発現は原発性胆汁性胆管炎患者で最もよくみられる。(American Association for the Study of Liver Diseaseの診療ガイドライン,Diagnosis and management of autoimmune hepatitis in adults and childrenも参照のこと。)

血清トランスフェリン飽和度が45%を超え,フェリチン値が上昇していれば,遺伝性ヘモクロマトーシスが示唆され,続いてヘモクロマトーシス遺伝子(HFE)の遺伝子検査を行うべきである。

肝機能と重症度を評価するため,血清アルブミン値,血小板数,およびPTを測定すべきであり,血清アルブミン低値,血小板数低値,またはPT延長は 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症, 腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む ,さらには 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の予防のほか,ときに門脈下大静脈吻合術または肝移植を行う。... さらに読む を示唆する。

肝炎の原因が同定されたら,肝線維化の程度を評価するために非侵襲的検査(例,超音波エラストグラフィー,血清マーカー)を行うことができる。

生検

急性肝炎の場合と異なり,慢性肝炎では診断または病因の確定に生検が必要になることがある。

軽症例では,軽微な肝細胞壊死と炎症細胞浸潤が通常は門脈域にみられるのみで,小葉構造は正常で,線維化はほとんどまたは全くみられない。このような症例では,臨床的に重要な肝疾患や肝硬変に至ることはまれである。

より重度の症例では,一般的に肝生検で単核細胞浸潤を伴う門脈周囲の壊死(piecemeal necrosis)がみられ,様々な程度で門脈周囲の線維化と胆管増生を伴う。小葉構造は虚脱や線維化を来した領域によって歪んでいることがあり,ときには明らかな肝硬変と進行中の肝炎の徴候が併存することもある。

生検はグレードと病期を判定するためにも用いられる。

合併症のスクリーニング

診断に関する参考文献

  • 1.Kwo PY, Cohen SM, Lim JK: ACG Clinical Guideline: Evaluation of Abnormal Liver Chemistries.Am J Gastroenterol 112 (1):18–35, 2017. doi: 10.1038/ajg.2016.517 Epub 2016 Dec 20.

慢性肝炎の予後

慢性肝炎患者の予後は極めて多様であり,しばしば原因と治療の利用可能性に依存する。

薬剤により生じた慢性肝炎は,原因薬剤を中止すると完全に回復する場合が多い。

HBVが原因の症例では,無治療の場合,治癒に至るか(まれ),急速に進行するか,数十年かけて緩徐に進行して肝硬変を引き起こす。治癒は一時的な重症化に続いて始まる場合が多く,結果としてB型肝炎e抗原(HBe抗原)陽性から抗B型肝炎e抗原抗体(HBe抗体)陽性に変化するセロコンバージョンがみられる。HDVとの同時感染は,最重症型の慢性HBV感染症を引き起こし,無治療では同時感染患者の最大70%で肝硬変が発生する。

HCVによる慢性肝炎を無治療で放置すると,20~30%の患者で肝硬変が発生するが,その発生までには数十年を要する場合もあり,慢性肝疾患の他の危険因子(飲酒や肥満など)が関係している場合も多いため,経過は様々である。

自己免疫性の慢性肝炎は通常治療に反応するが,ときに進行性の線維化を引き起こし,最終的に肝硬変に至ることもある。

慢性肝炎の治療

  • 支持療法

  • 原因の治療(例,自己免疫性肝炎に対するコルチコステロイド,HBVおよびHCV感染に対する抗ウイルス薬)

一般的治療

肝炎を引き起こす薬剤を中止するべきである。アセトアミノフェンは,重度の肝障害または重度の活動性肝疾患がある患者では禁忌である。重度の肝障害がある患者ではNSAIDも避けるべきである。

基礎疾患を治療すべきである。NAFLDおよびアルコール性肝疾患の患者には,生活習慣の改善を推奨すべきである。

非代償性肝硬変には肝移植が必要になることがある。

B型およびC型慢性肝炎

B型慢性肝炎に対する特異的な抗ウイルス療法 治療 B型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。患者は無症候性または疲労および倦怠感のように非特異的症状を呈することがある。診断は血清学的検査による。無治療の場合,しばしば肝硬変を起こし,肝細胞癌のリスクが高まる。抗ウイルス薬を使用すれば,治癒は得られないものの,ウイルスをコントロールすることができる。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および B型急性肝炎も参照のこと。) 一般に慢性肝炎は6カ月以上続く肝炎と定義されるが,この期間は恣... さらに読む (例,第1選択薬としてのエンテカビルおよびテノホビル)と, C型慢性肝炎に対する特異的な抗ウイルス療法 治療 C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する。治療は直接作用型抗ウイルス薬による;検出可能なウイルスRNAの永続的な排除が可能である。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および C型急性肝炎も参照のこと。) 一般に6カ月以上持続する肝炎が慢性肝炎と定義されるが,この期間... さらに読む (例,インターフェロンを含まない直接作用型抗ウイルス薬のレジメン)がある。

HBVによる慢性肝炎では,患者への接触者に対する予防(免疫学的予防を含む)が役立つ可能性がある。HCV感染患者への接触者に使用できるワクチンはない。

B型およびC型慢性肝炎では,コルチコステロイドと免疫抑制薬は,ウイルスの複製を促進するため,使用を避けるべきである。B型慢性肝炎の患者がコルチコステロイドによる治療,免疫抑制療法,または細胞傷害性薬剤による化学療法を必要とする他の疾患を併発している場合は,B型肝炎の急性増悪または再活性化やB型肝炎による急性肝不全を予防するため,抗ウイルス薬による治療を同時に行うべきである。C型肝炎が活性化されたり,C型肝炎によって急性肝不全が引き起こされたりする同様の状況は報告されていない。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

(American Association for the Study of Liver DiseaseのThe diagnosis and management of nonalcoholic fatty liver diseaseも参照のこと。)

  • 体重の減量

  • 危険因子と併存症のコントロール

具体的には以下が含まれる:

  • 食習慣の変更と運動により体重を7~10%減量することを推奨する

  • 高脂血症やインスリン抵抗性などの併存する代謝関連の危険因子を治療する

  • NASHと関連のある薬剤(例,アミオダロン,タモキシフェン,メトトレキサート,プレドニゾンやヒドロコルチゾンなどのコルチコステロイド,合成エストロゲン)を中止する

  • 毒性物質(例,殺虫剤)への曝露を回避する

自己免疫性肝炎

(American Association for the Study of Liver Diseaseの診療ガイドライン,Diagnosis and management of autoimmune hepatitisも参照のこと。)

コルチコステロイドは,アザチオプリンの併用または併用なしで,生存期間を延長させる。プレドニゾンは通常30~60mgの1日1回経口投与で開始し,アミノトランスフェラーゼ値が正常またはほぼ正常の値に維持できる最低の用量まで漸減する。コルチコステロイドによる治療が長期に必要になる状況を回避するため,コルチコステロイドの導入療法を完了したら,アザチオプリン1~1.5mg/kg,経口,1日1回またはミコフェノール酸モフェチル1000mg,1日2回に移行し,その後はコルチコステロイドを漸減する投与法を選択できる。大半の患者で,コルチコステロイドを含まない長期かつ低用量の維持療法が必要となる。

遺伝性ヘモクロマトーシス

遺伝性ヘモクロマトーシスは瀉血により治療する。

慢性肝炎の要点

  • 慢性肝炎では,通常は急性肝炎の先行はみられず,しばしば無症状である。

  • 肝機能検査の結果(例,原因不明のアミノトランスフェラーゼ値の上昇)が慢性肝炎と合致する場合は,B型およびC型肝炎に対する血清学的検査を施行する。

  • 血清学的検査で陰性の場合は,他の病型の肝炎に対する検査(例,自己抗体,免疫グロブリン,α1‐アンチトリプシン値)を施行する。

  • 非侵襲的検査で診断がつかない場合は,慢性肝炎の確定診断および重症度評価のために肝生検を考慮する。

  • 肝線維化の程度を評価するには,非侵襲的検査(例,エラストグラフィー,血清マーカー)を利用することができる。

  • B型慢性肝炎に対する第1選択薬としては,エンテカビルまたはテノホビルを考慮する。

  • C型慢性肝炎は,ゲノタイプを問わず,インターフェロンを含まない直接作用型抗ウイルス薬のレジメンで治療する。

  • 自己免疫性肝炎はコルチコステロイドで治療し,アザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチルによる維持療法に移行する。

  • 非アルコール性脂肪性肝疾患の患者には,減量のために食習慣の改善と運動を推奨する。

  • 遺伝性ヘモクロマトーシスは瀉血により治療する。

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