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虚血性肝炎

(急性肝梗塞,低酸素性肝炎,ショック肝)

執筆者:

Whitney Jackson

, MD, University of Colorado School of Medicine

レビュー/改訂 2020年 2月
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虚血性肝炎は,血液または酸素の供給不足によりびまん性の肝傷害が生じる病態である。

虚血性肝炎の病因

ほとんどの場合,原因は全身性の異常である:

肝臓の血管構造に生じる局所病変が原因となることは比較的まれである。虚血性肝炎は, 肝移植 肝移植 肝移植は,実質臓器の移植の中で2番目に多い。( 移植の概要も参照のこと。) 肝移植の適応としては以下のものがある: 肝硬変(米国では移植全体の70%;そのうち60~70%がC型肝炎によるもの) 劇症型の肝壊死(fulminant hepatic necrosis)(約8%) 肝細胞癌(約7%) さらに読む 時に肝動脈血栓症が生じた場合や, 鎌状赤血球症の疼痛発作 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症( 異常ヘモグロビン症)は,ほぼ黒人だけに生じる慢性溶血性貧血である。ヘモグロビンS遺伝子がホモ接合性に遺伝することによって生じる。鎌状の赤血球は血管の閉塞を引き起こし,溶血を起こしやすいことから,重度の疼痛発作,臓器虚血,および他の全身性合併症につながる。急性増悪(クリーゼ)が頻繁に起こることがある。感染症,骨髄無形成,または肺病変(急性胸部症候群)を急性発症し,死に至ることがある。貧血がみられ,通常は末梢血塗抹標本で鎌状... さらに読む 鎌状赤血球症 が生じた患者で肝動脈および 門脈に血栓症 門脈血栓症 門脈血栓症は,門脈圧亢進症を引き起こし,それにより通常は下部食道または胃の静脈瘤からの消化管出血を引き起こす。診断は超音波検査に基づく。治療としては,静脈瘤出血を(通常は内視鏡的結紮術,オクトレオチドの静注,またはその両方で)制御するとともに,β遮断薬のほか,ときには外科的シャントや急性血栓症に対する血栓溶解療法を用いて再発を予防する。 ( 肝臓の血管障害の概要も参照のこと。)... さらに読む が発生した(それにより肝臓への二重の血液供給路が障害された)場合に,発生することがある。肝臓の炎症を伴わない小葉中心性壊死が生じる(つまり真の肝炎ではない)。

虚血性肝炎の症状と徴候

症状としては,悪心,嘔吐,圧痛を伴う肝腫大などがある。

虚血性肝炎の診断

  • 臨床的評価と肝機能検査

  • ドプラ超音波検査,MRI,または動脈造影

危険因子と以下の臨床検査値異常がある場合には,虚血性肝炎を疑う:

  • 血清アミノトランスフェラーゼ値は劇的に上昇する(例,1000~3000IU/Lまで)。

  • 乳酸脱水素酵素(LDH)値は虚血から数時間以内に上昇する(急性ウイルス性肝炎とは異なる)。

  • 血清ビリルビン値は若干上昇するのみで,正常上限値の4倍を超えない。

  • プロトロンビン時間/国際標準化比(PT/INR)の延長

画像検査 肝臓および胆嚢の画像検査 胆道疾患の正確な診断には画像検査が不可欠であり,巣状の肝病変(例,膿瘍,腫瘍)の検出にも重要である。肝細胞障害によるびまん性疾患(例, 肝炎, 肝硬変)の検出および診断には限界がある。 従来からの超音波検査は,経腹的に施行され,一定時間の絶食を必要とし,構造的な情報は得られるものの,機能的な情報は得られない。一方で胆道系(特に胆嚢)を画像化する検査としては,最も安価で安全かつ最も高感度の方法である。超音波検査は,以下の目的で最善の検査法... さらに読む 肝臓および胆嚢の画像検査 が原因の特定に役立ち,ドプラ超音波検査,MRI,または動脈造影により,閉塞した肝動脈や 門脈の血栓症 門脈血栓症 門脈血栓症は,門脈圧亢進症を引き起こし,それにより通常は下部食道または胃の静脈瘤からの消化管出血を引き起こす。診断は超音波検査に基づく。治療としては,静脈瘤出血を(通常は内視鏡的結紮術,オクトレオチドの静注,またはその両方で)制御するとともに,β遮断薬のほか,ときには外科的シャントや急性血栓症に対する血栓溶解療法を用いて再発を予防する。 ( 肝臓の血管障害の概要も参照のこと。)... さらに読む を同定することができる。

虚血性肝炎の治療

  • 肝再灌流

治療は原因に対して行い,肝灌流を回復させることを目的とし,特に心拍出量の改善と血行動態不安定の是正に重点を置く。

灌流が回復すれば,アミノトランスフェラーゼ値は1~2週間かけて低下していく。ほとんどの症例で,肝機能は完全に回復する。まれではあるが,すでに 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症, 腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む がある患者では 劇症肝不全 急性肝不全 急性肝不全は,薬物および肝炎ウイルスによって引き起こされる場合が最も多い。主な臨床像は,黄疸,凝固障害,および脳症である。診断は臨床的に行う。治療は支持療法が中心であるが,ときに肝移植および/または特異的な治療(例,アセトアミノフェン中毒に対するN-アセチルシステイン)も行う。 ( 肝臓の構造および機能と 肝疾患を有する患者の評価も参照のこと。) 肝不全には,いくつかの分類法があるが,普遍的に受け入れられているものはない(... さらに読む が生じる可能性がある。

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