肝嚢胞

執筆者:Danielle Tholey, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2020年 4月
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    孤立性肝嚢胞は一般的に,腹部超音波検査またはCTで偶然発見される(1)。それらの嚢胞は通常は症状を引き起こさず,臨床的な意義はない。まれな疾患である先天性多発性肝嚢胞(congenital polycystic liver)は,一般的には腎臓の多嚢胞性疾患や他臓器の多嚢胞性疾患に合併する。成人では,進行性かつ結節性の肝腫大(ときに巨大となる)を引き起こす。しかしながら,肝細胞の機能は著しく良好に維持されており,門脈圧亢進症の発生はまれである。ときに,非常に大きな嚢胞が他臓器を圧迫して疼痛や症状を引き起こす。このような例では,嚢胞の開窓術やドレナージなどの介入を考慮してもよいが,しばしば嚢胞が再発する。そのため,まれに,重大な症状やQOLの問題により肝移植が検討されることもある。

    その他の肝嚢胞としては以下のものがある:

    • 包虫(エキノコックス)嚢胞

    • カロリ病:肝内胆管の区域性の嚢胞性拡張を特徴とするまれな常染色体劣性遺伝疾患で,成人期に症状が出現することが多く,結石形成,胆管炎,ときに胆管癌を合併する。

    • 嚢胞腺腫:ときに疼痛や食欲不振を引き起こし,超音波検査で明らかとなるまれな疾患で,治療は嚢胞の切除である。

    • 嚢胞腺癌:おそらく嚢胞腺腫の悪性化により生じるまれな疾患で,しばしば多小葉性に発生し,治療は肝切除である。

    • その他の真性嚢胞性腫瘍:この種の腫瘍はまれである。

    参考文献

    1. Marrero JA, Ahn J, Rajender Reddy K, et al: ACG clinical guideline: The diagnosis and management of focal liver lesions.Am J Gastroenterol 109(9):1328-1347, 2014. doi: 10.1038/ajg.2014.213.

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