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痛風

執筆者:

Brian F. Mandell

, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

レビュー/改訂 2020年 10月
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痛風は,高尿酸血症(血清尿酸値が6.8mg/dL[0.4mmol/L]を超える状態)により尿酸一ナトリウム結晶が関節内と関節周囲に析出する疾患であり,ほとんどの場合,急性または慢性関節炎が繰り返し発生する。痛風の最初の発作は通常は単関節性であり,第1中足趾節関節を侵すことが多い。痛風の症状としては,重度の急性疼痛,圧痛,熱感,発赤,腫脹などがある。確定診断には滑液中での結晶の同定が必要である。急性発作の治療は抗炎症薬による。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),コルヒチン,またはその両方を定期的に使用することにより,またアロプリノール,フェブキソスタット,または尿酸排泄促進薬(プロベネシドなど)で血清尿酸値を持続的に低下させることにより,発作の頻度を減らすことができる。

痛風の病態生理

高尿酸血症がより重度で長引くほど,痛風が発生する可能性が高い。尿酸値は以下の理由で上昇することがある:

  • 腎排泄(最も一般的)または消化管排泄の減少

  • 産生の亢進(まれ)

  • プリン体の過剰摂取(通常は排泄減少が併存)

血清尿酸(尿酸塩)値の高い人々の一部のみに痛風発作が起きる理由は不明である。

腎排泄の減少は,高尿酸血症の圧倒的に最も多い原因である。これは遺伝性である場合があり,また利尿薬の投与を受けている患者および糸球体濾過量(GFR)を低下させる疾患の患者でも発生する。エタノールは肝臓におけるプリン体の異化を促進して,乳酸の生成を増し,それにより尿細管による尿酸分泌が妨げられ,またエタノールは肝臓の尿酸合成を促進することがある。鉛中毒およびシクロスポリン(移植患者に通常高用量投与する)は尿細管を損傷し,尿酸の貯留につながる。

尿酸の産生増加は,血液疾患(例,リンパ腫,白血病,溶血性貧血)ならびに細胞増殖および細胞死の速度が増加した状態(例,乾癬,細胞傷害性のがん治療,放射線療法)における核タンパク質の代謝回転の亢進によって起こることがある。尿酸の産生増加はまた,原発性の遺伝性異常として起こることもあり,尿酸産生は体表面積と相関するため,肥満においても起こる場合がある。ほとんどの症例で,尿酸の過剰産生の原因は不明であるが,少数の症例で酵素異常が原因であるとされる;ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼの欠損症(完全な欠損症は レッシュ-ナイハン症候群 レッシュ-ナイハン症候群 プリンは,細胞のエネルギー系(例,ATP,NAD),信号伝達(例,GTP,cAMP,cGMP),およびピリミジンとともにRNAおよびDNA産生に重要な成分である。 プリンは,de novo合成される場合と,正常な異化からのサルベージ経路によって再利用される場合がある。 完全なプリン異化の最終産物は尿酸である。 プリンサルベージ経路の異常に加え,プリン代謝異常症には以下の疾患も含まれる(... さらに読む )が原因である可能性があり,ホスホリボシルピロリン酸合成酵素の過剰な活性も同様である。

プリン体を多く含む食品(例,肝臓,腎臓,アンチョビ,アスパラガス,コンソメ,ニシン,グレービーソース/ブイヨン,キノコ,ムール貝,イワシ,胸腺/膵臓)の摂取量の増加が高尿酸血症の一因となることがある。ビール(ノンアルコールビールも含む)には,プリンヌクレオシドであるグアノシンが特に豊富に含まれている。しかし,厳格な低プリン食の食事療法は,血清尿酸値を約1mg/dL(0.1mmol/L)下げるにすぎない。

尿酸塩は尿酸一ナトリウム(MSU)の針状結晶として析出し,無血管組織(例,軟骨)または比較的血管のない組織(例,腱,腱鞘,靱帯,滑液包壁),ならびに温度がより低い遠位の関節および組織周囲の皮膚(例,耳)で細胞外に沈着する。長期にわたる重度の高尿酸血症では,尿酸一ナトリウム結晶は,より大きな主要な関節および腎臓などの臓器の実質に沈着することがある。pHが酸性の尿では,尿酸塩は小さな板状結晶またはダイヤモンド形の尿酸結晶として容易に析出し,そうした結晶が凝集して尿の排出を妨げうる尿砂または結石を形成することがある。痛風結節は,関節および皮膚組織に発生することが最も多い尿酸一ナトリウム結晶の凝集物である。通常は線維性の基質に包まれており,それにより急性炎症が引き起こされなくなっている。

急性痛風性関節炎は,外傷,医学的ストレス(例,肺炎または他の感染症),手術,サイアザイド系利尿薬もしくは尿酸低下作用を有する薬剤(例,アロプリノール,フェブキソスタット,プロベネシド,ニトログリセリン)の使用,またはプリン体の豊富な食品もしくはアルコールの過剰摂取によって引き起こされることがある。発作は血清尿酸値の突然の増加または突然の減少(後者の方が多い)によって誘発されることが多い。なぜ急性発作がこのような一部の誘発する病態に続いて起こるのかは不明である。関節内および関節周囲の痛風結節は運動を制限し変形を引き起こすことがあり,慢性結節性痛風性関節炎(chronic tophaceous gouty arthritis)と呼ばれる。痛風は 二次性変形性関節症 分類 変形性関節症は,関節軟骨の破綻および潜在的な減少,加えて骨肥大(骨棘形成)など他の関節変化を特徴とする慢性の関節症である。症状としては,活動によって増悪するまたは誘発される徐々に発生する疼痛,覚醒時および安静後に30分未満続くこわばりなどのほか,ときに関節の腫脹がみられる。診断はX線によって確定する。治療には,理学療法,リハビリテーション,患者教育,および薬剤などがある。 変形性関節症(OA)は最もよくみられる関節疾患であり,40代およ... さらに読む 分類 の発生リスクを高める。

痛風の症状と徴候

急性痛風性関節炎は,通常は痛みの突然の発症から始まる(夜間が多い)。母趾の中足趾節関節が侵される(足部痛風[podagra]と呼ばれる)ことが最も多いが,足の甲,足関節,膝関節,手関節,および肘関節もよく侵される部位である。まれに,股関節,肩関節,仙腸関節,胸鎖関節,または頸椎関節が侵される。痛みは次第に激しくなり,通常数時間にわたって続き,しばしば耐えがたいほどである。腫脹,熱感,発赤,および鋭い圧痛は感染症を示唆している可能性がある。患部を覆う皮膚は緊張し,熱をもち,光沢を有し,赤色または紫色になることがある。発熱,頻脈,悪寒,および倦怠感がときに起こる。

経過

通常,最初の数回の発作では,単一の関節のみに症状が現れ,数日しか持続しない。その後の発作はいくつかの関節を同時にまたは連続的に侵すことがあり,無治療では最長で3週間持続する。その後の発作は無症状の期間をおいた後に発生するが,その期間は次第に短くなる。最終的には,毎年複数回の発作が起こることがある。

痛風結節

痛風患者には触知可能な痛風結節が生じるが,まれに急性痛風性関節炎の既往がない患者にそうした結節が生じることもある。通常は硬い黄色または白色の丘疹または小結節であり,単一または複数である。様々な部位(一般的には手指,手,足,および肘頭またはアキレス腱の周辺)に発生しうる。痛風結節は,さらに腎臓および他の臓器ならびに耳の皮下にも発生することがある。変形性関節症のヘバーデン結節がある患者では,結節内に痛風結節が発生することがある。これは利尿薬を服用している高齢女性で最もよくみられ,劇的に炎症を起こして,炎症性の変形性関節症と誤診されることがある。通常は無痛性であるが,痛風結節(特に肘頭の滑液包中)は急速に炎症を起こし痛みを伴うようになることがあり,これは軽度または不顕性の外傷の後に多い。痛風結節は,皮膚を越えて突出することがあり,尿酸結晶のチョーク様の塊を排出する。その瘻孔が感染を起こすことがある。関節内および関節周囲の痛風結節は,最終的に変形と二次性変形性関節症を引き起こすことがある。

痛風の合併症

痛風性関節炎は,痛み,変形,および関節の運動制限を引き起こすことがある。炎症は,他の関節で鎮静化していながら一部の関節で再燃することがある。痛風患者が尿酸結石またはシュウ酸カルシウム結石による尿路結石症を発症することがある。

痛風の合併症としては,二次性の尿細管間質性疾患を伴う腎臓の閉塞や感染症などがある。未治療かつ進行性の腎機能障害(最も多くは併存する高血圧症に関連し,または頻度は低くなるが腎症の他の一部の原因に関連する)によってさらに尿酸の排泄が障害され,組織への結晶沈着が促進される。

痛風患者には 心血管疾患 アテローム性動脈硬化 アテローム性動脈硬化は,中型および大型動脈の内腔に向かって成長する斑状の内膜プラーク(アテローム)を特徴とし,そのプラーク内には脂質,炎症細胞,平滑筋細胞,および結合組織が認められる。危険因子には,脂質異常症,糖尿病,喫煙,家族歴,座位時間の長い生活習慣,肥満,高血圧などがある。症状はプラークの成長または破綻により血流が減少ないし途絶した... さらに読む アテローム性動脈硬化 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は,睡眠時に生じ呼吸停止(10秒を超える無呼吸または低呼吸と定義される)を引き起こす部分的または完全な上気道閉塞エピソードから成る。症状としては,日中の過度の眠気,不穏状態,いびき,反復性覚醒,起床時の頭痛などがある。診断は睡眠歴および睡眠ポリグラフ検査に基づく。治療は,持続陽圧呼吸療法(CPAP),口腔内装置,および難治例では手術による。治療を行えば予後は良好である。ほとんどの症例は未診断かつ未治療の... さらに読む 非アルコール性脂肪性肝疾患 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) 脂肪肝とは,肝細胞内に脂質が過度に蓄積した状態である。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)には単純な脂肪浸潤(脂肪肝と呼ばれる良性の病態)が含まれるのに対し,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は脂肪沈着があって脂肪毒性および肝細胞の炎症性傷害が生じている場合と定義される。組織学的にNASHをアルコール性肝炎と鑑別するのは困難である。したがって,NASHと診断するには,背景因子としての飲酒を除外する必要がある。単純性脂肪肝をNASHと... さらに読む や, メタボリックシンドローム メタボリックシンドローム メタボリックシンドロームは,大きなウエスト周囲長(過剰な腹部脂肪による),高血圧,異常な空腹時血漿血糖値またはインスリン抵抗性,および脂質異常症を特徴とする。原因,合併症,診断,および治療は, 肥満の場合と同様である。 先進国では,メタボリックシンドロームは深刻な問題である。非常によくみられ,米国では,50歳以上の人のうち40%を超える割合でみられる可能性がある。小児および青年がメタボリックシンドロームを発症することがあるが,これらの年... さらに読む を構成する病態がよくみられる。

痛風の診断

  • 臨床基準

  • 滑液の分析

急性の 単関節型関節炎 単関節および単関節周囲の痛み 原因が関節そのものに関連するか腱および滑液包などの関節を取り巻く(関節周囲の)構造に関連するかにかかわらず,患者は「関節の」痛みを訴えることがある;どちらの場合も,単関節または単関節周囲の痛みは単関節痛と呼ばれる。関節内部に起因する痛み(関節痛)は関節の炎症(関節炎)によって引き起こされることがある。炎症は,関節内の体液の貯留(液貯留)お... さらに読む または 少関節型関節炎 複数の関節の痛み 関節は単に痛む(関節痛)だけの場合と,炎症(関節炎)も起こしている場合がある。関節の炎症は通常,熱感,腫脹(関節内の液,すなわち液貯留による),およびまれに紅斑を伴う。痛みは,関節使用時のみ,または安静時にも起こることがある。患者が関節痛であると説明するものが,ときに関節外に発生源(例,関節周囲の構造または骨)がある場合がある。 多関節痛(多発性関節痛)は複数の関節を侵す( 単関節の痛みについては,本マニュアルの別の箇所で考察されている... さらに読む を有する患者(特に高齢者または他の危険因子を有する患者)では,痛風の診断を疑うべきである。足部痛風(podagra)および繰り返す足の甲の炎症は特に本症を示唆する。爆発的に始まり自然に終息した過去の発作もまた特徴的である。似た症状が以下に起因することがある:

回帰性リウマチは,1つまたはときにいくつかの関節もしくは腱鞘またはそれらの近傍における,自然に消退する繰り返す急性の炎症発作を特徴とし,痛みおよび紅斑が痛風と同程度に重度となることがある。発作は1~3日で自然にかつ完全に鎮静化することが多い。このような発作はRAの発症の前兆であることがあり,リウマトイド因子の検査が鑑別に役立つ可能性があり,RA患者の約50%で陽性となる(痛風患者の10%でも陽性となる)。

滑液の分析

急性痛風性関節炎が疑われる場合,初診時に関節穿刺および滑液の分析を行うべきである。痛風とわかっている患者の典型的な再発には関節穿刺は必須ではないが,診断に疑問がある場合,または患者の危険因子もしくは臨床的特徴が感染性関節炎を示唆する場合は,関節穿刺を行うべきである。

滑液の分析では,液体に遊離するかまたは食細胞によって取り込まれている,針状で強い負の複屈折性の尿酸結晶を同定することによって診断を確定できる。発作時の滑液は炎症性の特徴を示し(関節内結晶の顕微鏡検査の表を参照 関節内結晶の顕微鏡検査 関節内結晶の顕微鏡検査 ),白血球数は通常2000~100,000/μLで多形核白血球が80%を超える。これらの所見は感染性関節炎とかなり重なり,グラム染色(感度は低い)および培養で感染性関節炎を除外する必要がある。

血清尿酸値

血清尿酸値の高値は痛風診断の裏付けとなるが,特異度と感度がともに低く,炎症性サイトカインであるインターロイキン6(IL-6)の尿酸排泄促進作用が一因となり,少なくとも30%の患者で急性発作中に血清尿酸値が正常となる。しかし,発作がない期間のベースラインの血清尿酸値は,細胞外の混和性尿酸プールの大きさを反映する。新たに痛風と証明された患者については,ベースラインを確立するために血清尿酸値を2回または3回測定すべきである。過剰産生と排泄減少の鑑別を目的とした尿中尿酸排泄の定量はもはや推奨されない;この検査でアロプリノールやフェブキソスタット(尿酸の産生を減少させる)に対する患者の反応を予測することはできない。

画像検査

骨びらんまたは痛風結節を検索するために罹患関節のX線撮影を行ってもよいが,滑液の分析により急性痛風の診断が確定している場合はおそらく不要であり,初回発作時に診断に有用となることはまれである。ピロリン酸カルシウム関節炎では,ときに放射線不透過性の沈着物が,線維軟骨,関節の硝子軟骨(特に膝関節),またはその両方にみられることがある。

痛風の診断においては,単純X線より超音波検査の方が感度(ただし検者の技量に依存する)および特異度が高い。関節軟骨への尿酸の沈着(double-contour sign)と臨床的に明らかでない痛風結節が特徴的な変化である。これらの所見は,最初の痛風発作が起きる前から明らかな場合もある。二重エネルギーCT(DECT)でも尿酸沈着を明らかにすることができ,標準的な臨床的評価および検査で診断がはっきりしない場合,特に滑液の吸引と分析が行えない場合に有用となりうる。

慢性痛風性関節炎の診断

持続する関節疾患または皮下もしくは骨の痛風結節を有する患者では,慢性痛風性関節炎を疑うべきである。第1中足趾節関節または他の罹患関節の単純X線が有用なことがある。それらのX線では,張り出した骨縁辺とともに軟骨下骨の打ち抜き病変を示すことがある(第1中足趾節関節で最もよくみられる);病変がX線で目に見えるようになるには直径が5mm以上でなければならない。関節裂隙は,典型的には疾患経過のかなり後期まで保たれる。通常は慢性の貯留液から得られた滑液所見で診断に至る。

尿酸結晶の沈着を示唆する典型的なdouble-contour signを検出するために,診断を目的とする超音波検査を行うことが増えてきているが,その感度は検者の技量に依存し,ピロリン酸カルシウム結晶の沈着との決定的な鑑別はより困難な場合がある。

痛風の予後

早期に痛風を診断すれば,治療によりほとんどの患者が正常の生活を送れる。進行例の多くで,血清尿酸値を積極的に低下させることにより,痛風結節の消失および関節機能の改善が可能である。痛風は一般に,最初の症状が30歳未満で出現した患者とベースラインの血清尿酸値が9.0mg/dL(0.5mmol/L)を超えている患者では,より重症となる。おそらく,メタボリックシンドロームおよび心血管疾患の有病率の高さから痛風患者の死亡率が増加している。

一部の患者は,治療しても十分に改善しない。通常の理由としては,不十分な患者教育,アドヒアランス不良,アルコール依存症,医師による高尿酸血症の過少治療などがある。

痛風の治療

  • 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),コルヒチン,コルチコステロイド,またはインターロイキン1(IL-1)拮抗薬による急性発作の終息

  • コルヒチンまたはNSAIDの連日投与による繰り返す急性発作の予防

  • 血清尿酸値を低下させることによる,尿酸一ナトリウム(MSU)結晶のさらなる沈着の予防,再燃頻度の減少,および現存する痛風結節の消散(アロプリノールもしくはフェブキソスタットによる尿酸産生減少,ペグロチカーゼ[pegloticase]による沈着物の溶解,またはプロベネシドによる尿酸排泄の増加による)

  • 併存する高血圧症,高脂血症,および肥満の治療ならびにときに食事による過剰なプリン体摂取の回避

急性発作の治療

非ステロイド系抗炎症薬(NSAID) 非オピオイド鎮痛薬 は急性発作の治療に効果的であり,一般に忍容性が高い。しかしながら,消化管障害,消化管出血,高カリウム血症,クレアチニン増加,体液貯留などの有害作用を引き起こすことがある。高齢患者と脱水患者はとりわけリスクが高い(特に腎疾患の既往がある場合)。抗炎症作用がある(高)用量で用いるNSAIDは実質的にどれも効果的であり,数時間後に鎮痛効果を及ぼす可能性が高い。再発を予防するために,痛みおよび炎症の徴候が消失した後数日間治療を続けるべきである。

従来の治療法であるコルヒチンの経口投与を症状の出現直後に開始すれば,しばしば劇的な反応が得られ,急性発作から12~24時間以内に開始した場合に最も効果的となる。1.2mgの投与に続いて1時間後に0.6mgを投与することがある;関節痛は12~24時間後に軽減する傾向があり,ときに3~7日以内に消失するが,通常は消失には継続投与が必要である。コルヒチンに耐えられる場合は,発作が鎮静化しても,0.6~1.2mgの1日1回投与を続けることができる。腎機能不全および薬物相互作用(特にクラリスロマイシンとの相互作用)のため,投与量の減少または他の治療法の利用が必要になることがある。消化管障害と下痢が頻度の高い有害作用である。

静注用コルヒチンは米国ではもはや利用できない。

コルチコステロイドは急性発作の治療に用いられている。罹患関節の吸引に続いてコルチコステロイドエステル結晶懸濁液を点滴注入すると,非常に効果的である(特に単関節の症状に対し);テブト酸プレドニゾロン4~40mgまたは酢酸プレドニゾロン5~25mgを,罹患関節の大きさに応じた用量で用いることがある。経口プレドニゾン(約0.5mg/kgを1日1回),筋注もしくは静注コルチコステロイド,または80単位の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)筋注の単回投与も非常に効果的である(特に複数の関節が侵されている場合)。再発を予防するため,NSAID療法と同様に,コルチコステロイドは発作が完全に消失しきるまで続けるべきである。

単剤療法が無効であるか毒性のために用量(例,NSAID)が制限される場合は,コルヒチンをNSAIDまたはコルチコステロイドと併用することができる。

NSAIDまたはコルチコステロイドに加えて,鎮痛補助薬,安静,氷冷,および炎症を起こしている関節の副子固定が助けになることがある。急性発作が始まった時点で患者が尿酸降下薬の投与を受けている場合,その薬剤は同じ用量で継続すべきであり,用量の調節は発作が治まるまで延期する。適切な抗炎症療法が行われていれば,急性発作時に血清尿酸値を低下させることに対する禁忌はない。

コルチコステロイド,コルヒチン,およびNSAIDが禁忌または無効である場合,アナキンラ(anakinra)などのIL-1拮抗薬を用いることがある。アナキンラ(anakinra)は,発作の消失を早め,他の薬剤の使用を制限する併存症を複数併発した患者の入院期間を短縮する可能性がある。アナキンラ(anakinra)は典型的には100mg,皮下,1日1回の用法・用量で,症状が消失するまで投与される。

繰り返す発作の予防

急性発作の頻度は,コルヒチン0.6mg錠を1日1~2錠(耐容性および重症度に応じる)服用することによって減少する。発作の前兆が最初に現れたときに,追加でコルヒチン0.6mg錠を2錠服用すると,発作が阻止されることがある。患者がコルヒチンの予防投与を受けていて,過去2週間の間に急性発作を治療するために高用量のコルヒチン投与を受けたことがある場合,発作を予防する試みには代わりにNSAIDを用いるべきである。

長期のコルヒチン服用中には(可逆的な)神経障害および/またはミオパチーが発生することがある。この病態は,腎機能不全患者,および特定のスタチン系薬剤またはマクロライド系薬剤の投与も受けている患者で起こる可能性が高いが,これらの危険因子のない患者に起こることもある。

発作の頻度は,低用量のNSAIDの連日投与でも減少することがある。

血清尿酸値の低下

コルヒチン,NSAID,およびコルチコステロイドは,いずれも血清尿酸値を低下させないため,痛風結節によって引き起こされる進行性の関節損傷を遅らせることはない。尿酸降下薬により,関節の損傷は予防可能であり,損傷がある場合は回復可能である。結節性の沈着は,血清尿酸値を低下させることによって再吸収される。血清尿酸値を飽和溶解度未満(通常は6mg/dL[0.4mmol/L]未満を目標とする)に維持することにより,沈着物が溶解していき,最終的に急性の関節炎発作の頻度が減少する。この減少は以下によって達成される:

  • キサンチンオキシダーゼ阻害薬(XOI)(アロプリノールまたはフェブキソスタット)による尿酸産生の阻止

  • 尿酸排泄促進薬(プロベネシドまたはロサルタン)による尿酸排泄量増加

  • 重度の結節性痛風または高用量のXOIに耐えられない患者には両タイプの薬剤を併用

以下がみられる患者は尿酸低下療法の適応となる:

  • 結節性の沈着

  • 頻回または生活に支障を来す痛風性関節炎発作(例,年2回を超える)

  • 尿路結石症

  • 発作頻度は少ないが,血清尿酸値が9.0mg/dL(0.5mmol/L)を超える患者,または発作により著しい困難が生じている患者

  • 急性発作の治療に用いる薬剤(NSAIDまたはコルチコステロイド)に対して相対的禁忌である複数の併存症(例,消化性潰瘍,慢性腎臓病)

高尿酸血症は,痛風発作がない場合は通常治療しない。

尿酸低下療法の目標は血清尿酸値を低下させることである。痛風結節がなければ,妥当な目標値は6mg/dL(0.4mmol/L)未満であり,これは飽和状態の値(正常の深部体温およびpHで6.8mg/dL超[0.40mmol/L超])よりも低い。触知可能な痛風結節がある場合,または結節性の沈着による著明な障害がある場合は,それをより迅速に溶解することが治療目標となり,そのためには目標値をより低く設定する必要がある。妥当な目標値は5mg/dL(0.30mmol/L)で,尿酸値が低いほど痛風結節の消失は早まる。これらの目標値を無期限に維持すべきである。

薬剤が血清尿酸値の低下に効果的である;プリン体の食事制限はそれほど効果的ではないが,プリン体が豊富な食物,アルコール(特にビール),およびノンアルコールビールの多量の摂取は避けるべきである。インスリン値が高いと尿酸排泄が抑制されるため,炭水化物の制限および減量によってインスリン抵抗性の患者の血清尿酸値が下がることがある。低脂肪の乳製品の摂取を推奨すべきである。尿酸低下療法の最初の1カ月間は急性発作が起きる傾向があるため,そのような治療は,1日1回または1日2回のコルヒチンまたはNSAIDとともに,無症状のうちに開始すべきである。

痛風結節の消失には,たとえ血清尿酸値を低値に維持しても何カ月もかかることがある。血清尿酸値を定期的に測定すべきである(通常,必要な薬剤の用量を決めようとしている間は毎月,その後は治療の有効性を確かめるために毎年,または薬剤の変更もしくは体重増加がある場合はより頻回)。尿酸低下療法は発作が起きても中止すべきではない。

尿酸合成を阻害するアロプリノールが,初回の尿酸低下療法に最もよく処方され,最も望ましい。尿酸結石または尿砂はアロプリノール療法中に溶解することがある。治療は通常50~100mg,経口,1日1回で開始し,最大800mg,経口,1日1回まで徐々に増量できる。1日1回の投与で消化管障害が生じる場合は,投与を分割してもよい。まれであるが重度の全身性過敏反応の発生率を抑えるために,腎機能不全のある患者では開始量を減らすこと(例,クレアチニンクリアランスが約60mL/min/1.73m2未満の場合は50mg,経口,1日1回)を推奨する臨床医もいるが,この介入の有効性を確認できるデータは限られている。アロプリノールの最終用量は,目標とする血清尿酸値によって決定すべきである。最も一般的な1日量は300mgであるが,この用量で効果的に血清尿酸値が6.0mg/dL(0.4mmol/L)未満まで低下する痛風患者は,全体の40%未満である。用量が300mgを超えるとアロプリノールの吸収が低下する可能性があるため,このような高用量では分割投与(例,1日2回投与)がしばしば行われる。

アロプリノールの有害作用には軽度の消化管障害や発疹などがあるが,これらはスティーブンス-ジョンソン症候群,生命を脅かす肝炎,血管炎,または白血球減少症の前兆である場合がある。有害作用は,腎機能障害がある患者でより多くみられる。一部の民族(例,韓国人[腎疾患を有する],タイ人,漢民族,アフリカ系アメリカ人)はアロプリノールに対する反応のリスクが高く,HLA B*5801がこれらの民族集団におけるリスクを反映する遺伝子マーカーとして商業ベースで利用可能になっている(1 治療に関する参考文献 痛風は,高尿酸血症(血清尿酸値が6.8mg/dL[0.4mmol/L]を超える状態)により尿酸一ナトリウム結晶が関節内と関節周囲に析出する疾患であり,ほとんどの場合,急性または慢性関節炎が繰り返し発生する。痛風の最初の発作は通常は単関節性であり,第1中足趾節関節を侵すことが多い。痛風の症状としては,重度の急性疼痛,圧痛,熱感,発赤,腫脹などがある。確定診断には滑液中での結晶の同定が必要である。急性発作の治療は抗炎症薬による。非ステロイド... さらに読む 治療に関する参考文献 )。2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Goutでは,アジア人およびアフリカ系アメリカ人に対してはHLA B*5801の検査を行い,この遺伝子マーカーが認められる場合は代替薬を使用することが推奨されている。アロプリノールは,アザチオプリンまたはメルカプトプリンを服用している患者では,これらの薬剤の代謝を下げ,それによりこれらの薬剤の免疫抑制作用および細胞傷害作用を増強することがあるため,禁忌である。

フェブキソスタットは,はるかに費用がかさむ(米国内)が尿酸合成の強力な阻害薬である。アロプリノールに耐えられない患者,アロプリノールの禁忌がある患者,またはアロプリノールにより十分に尿酸値が下がらない患者において特に有用である。投与は40mgの1日1回経口投与で開始し,尿酸値が6mg/dL未満に低下しない場合,80mgの1日1回経口投与まで増量する。フェブキソスタットは,(アロプリノールと同様に)アザチオプリンまたはメルカプトプリンを服用している患者ではこれらの薬剤の代謝を下げることがあるため禁忌である。フェブキソスタットは,心血管疾患が判明している患者を対象とした1つの研究で死亡リスクを上昇させたため,心疾患が判明している患者では慎重に使用すべきである(2 治療に関する参考文献 痛風は,高尿酸血症(血清尿酸値が6.8mg/dL[0.4mmol/L]を超える状態)により尿酸一ナトリウム結晶が関節内と関節周囲に析出する疾患であり,ほとんどの場合,急性または慢性関節炎が繰り返し発生する。痛風の最初の発作は通常は単関節性であり,第1中足趾節関節を侵すことが多い。痛風の症状としては,重度の急性疼痛,圧痛,熱感,発赤,腫脹などがある。確定診断には滑液中での結晶の同定が必要である。急性発作の治療は抗炎症薬による。非ステロイド... さらに読む 治療に関する参考文献 )。この知見はその後の研究で確認されていない。トランスアミナーゼ値が上昇することがあり,定期的に測定すべきである。

ペグロチカーゼ(pegloticase)は,ペグ化された遺伝子組換えウリカーゼである。ウリカーゼは,尿酸をより溶解度の高いアラントインに変換する酵素である。ペグロチカーゼ(pegloticase)は非常に高価であり,主に他の治療による血清尿酸値の低下が不成功に終わった痛風患者に使用される。過剰な尿酸沈着が完全になくなるまで,何カ月もの期間(典型的には6~9カ月間)にわたって2~3週間毎に静脈内投与するが,しばしば血清尿酸値が1mg/dL(0.1mmol/L)未満まで低下する。ペグロチカーゼ(pegloticase)は,溶血およびメトヘモグロビン血症を引き起こす可能性があるため, G6PD欠損症 グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症 グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症は,黒人に多くみられるX連鎖性の酵素欠損症であり,急性疾患後または酸化性薬物(サリチル酸系,スルホンアミド系など)の摂取後に溶血を引き起こすことがある。診断はG6PDの測定に基づくが,急性溶血時には網状赤血球の存在によって(網状赤血球は老化した細胞と比較してG6PDが豊富)検査結果がしばしば偽陰性となる。治療は支持療法である。... さらに読む グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症 患者では禁忌である。ペグロチカーゼ(pegloticase)の投与後も尿酸値が6mg/dL未満に下がらなかった場合は,pegloticaseに対する抗体が存在する可能性が高く将来のアレルギー反応のリスクが高いことが示唆されるため,以降は定期的な投与を中止する。他の尿酸降下薬がペグロチカーゼ(pegloticase)の無効を覆い隠すことを避けるため,他の尿酸降下薬をpegloticaseと併用すべきではない。

尿酸排泄促進薬を用いる治療法は,尿酸排泄が低下しており(高尿酸血症がある患者の大多数),正常な腎機能を有し,腎結石の既往がない患者で有用である。プロベネシドは,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)が承認している唯一の尿酸排泄促進薬である。

プロベネシドは,アロプリノールとフェブキソスタット両方の禁忌があるか,どちらの使用も耐えられない場合に,単剤療法として使用することができる。プロベネシドは,腎機能の低下に伴い効力が失われるため,糸球体濾過量が50mL/min/1.73m2未満の患者には一般に有用ではない。プロベネシドによる治療は,最初は250mg,経口,1日2回で開始し,必要に応じて最大1g,経口,1日3回まで増量する。XOIに追加しても効果的である。

降圧薬のロサルタンとトリグリセリド値を低下させる薬剤のフェノフィブラートは,どちらも尿酸排泄促進作用を有しており,これらの薬剤の対象疾患を有する患者において尿酸値を低下させる目的で使用することができる。低用量のサリチル酸系薬剤は,高尿酸血症を悪化させることがあるが,それは軽微にとどまるため,他に心血管疾患の二次予防のような適応がある場合は使用を避けるべきではない。

その他の治療法

全ての患者(特に慢性的に尿砂または尿酸結石を排泄する患者)で1日3L以上の水分摂取が望ましい。

尿酸値を下げる治療と十分な水分補給にもかかわらず尿酸による尿路結石症が持続する患者には,尿のアルカリ化(クエン酸カリウム20~40mEqを1日2回経口投与,またはアセタゾラミド500mgを就寝時に経口投与)もときに効果的である。しかしながら,尿の過度のアルカリ化は,リン酸カルシウム結晶やシュウ酸カルシウム結晶の沈着につながる可能性がある。

腎結石を砕くために体外衝撃波砕石術が必要になることがある。

健康な皮膚部位の大きな痛風結節を外科的に除去することがある;他の全ての場合では,尿酸値を下げる十分な治療で緩徐に消失させるべきである。

治療に関する参考文献

  • 1.Jutkowitz E, Dubreuil M, Lu N, et al: The cost-effectiveness of HLA-B*5801 screening to guide initial urate-lowering therapy for gout in the United States.Semin Arth Rheum 46:594-600, 2017.doi: 10.1016/j.semarthrit.2016.10.009

  • 2.White WR, Saag KG, Becker MA, et al: Cardiovascular safety of febuxostat or allopurinol in patients with gout.N Engl J Med 378:1200-1210, 2018.doi: 10.1056/NEJMoa1710895

痛風の要点

  • プリン体の過剰摂取および産生増加が高尿酸血症に寄与することもあるが,痛風の最も一般的な原因は腎疾患または遺伝的変異に起因する尿酸排泄の減少である。

  • 突然かつ説明のつかない急性の単関節または少関節型の関節炎がある患者では痛風を疑う(特に母趾または中足部が侵されている場合,および自然な寛解を伴う突然の説明のつかない急性関節炎の既往がある場合)。

  • 滑液中に針状で強い負の複屈折性の尿酸結晶を認めること,または二重エネルギーCTもしくは超音波検査の所見により診断を確定する。高尿酸血症の記録だけでは,痛風性関節炎の診断を確定するには不十分である。

  • 痛風の急性発作は経口コルヒチン,NSAID,コルチコステロイド,またはコルヒチンとNSAIDもしくはコルチコステロイドの併用で治療する。

  • コルヒチン,NSAID,および血清尿酸値を下げる薬剤を処方することにより,将来の発作のリスクを低下させる。

  • 痛風結節がある患者,年2回を超える頻度で痛風の再燃がみられる患者,尿路結石症がある患者,および急性発作を緩和するための薬剤の禁忌となる併存症が複数ある患者には,血清尿酸値を低下させる薬剤を投与し,それ以外の患者では尿酸低下療法を個別化する。

  • 通常はアロプリノールまたはフェブキソスタットを単剤または尿酸排泄促進薬との併用で処方することで,尿酸値を低下させる。

無症候性高尿酸血症

無症候性高尿酸血症は,臨床的痛風のない7mg/dL(0.4mmol/L)を超える血清尿酸値の上昇である。

一般に,無症候性高尿酸血症に治療の必要はない。ただし,尿酸の排泄過多がみられ,尿路結石症のリスクが高い患者には,アロプリノールを投与してもよい。

データが蓄積されつつあり,高尿酸血症が慢性腎臓病,心血管疾患,および青年における本態性高血圧の進行の一因である可能性が示唆されている。

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