メルクマニュアル18版 日本語版
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腱炎および腱鞘炎

これらの状態は,変性(腱障害)と腱に関連する炎症(腱炎)または腱鞘内層(腱滑膜炎)の炎症である。症状には,通常運動時の痛みと触診時の圧痛がある。慢性の腱の変質または炎症は,運動を制限する瘢痕を生じることがある。診断は臨床的に行う。治療には,安静,NSAID,ときにコルチコステロイド注射がある。

腱障害は,腱の断裂または変性変化(ときにカルシウム沈着を伴う)を含む。腱炎および腱鞘炎は炎症を伴い,最もよくみられる部位は,腱を囲んでいる滑膜で覆われた鞘である(腱鞘)。

腱炎および腱鞘炎の最も一般的な部位は,肩関節とその関連する腱(回旋筋腱板),上腕二頭筋長頭腱,橈側手根屈筋または尺側手根屈筋,指屈筋,膝窩筋腱,アキレス腱(運動とスポーツ損傷: アキレス腱損傷を参照 ),共通の線維性鞘を通る長母指外転筋および短母指伸筋(ドゥケルヴァン症候群―手の障害: ドゥケルヴァン症候群を参照 )である。

病因

原因はしばしば不明である。ほとんどの症例は腱の血管分布が減少する中年期以降に起こり;反復性微小外傷が原因となりうる。反復性または激しい外傷(断裂の手前),挫傷,過度の(不慣れな)運動もおそらく原因である。腱炎もまた全身性疾患(最も一般的にはRA,全身性硬化症,痛風,反応性関節炎,糖尿病,きわめてまれにアミロイドーシスまたは血中コレステロール値の著しい上昇)と関連している。若年成人,特に女性では,播種性淋菌感染は急性移動性腱滑膜炎を起こすことがある。

症状,徴候,診断

罹患した腱は,通常運動時に痛みを伴い;その腱鞘は腫脹し,液体を蓄積しうる。腫脹は触知可能であるのみかまたは目に見えることもある。全身性硬化症では,腱鞘は乾燥したままでありうるが,摩擦を生じ,腱がその腱鞘内で動くときにそれは聴診器により感じるか音を聴くことができる。腱に沿って,触診すると様々な重症度の,限局化した圧痛が存在する。

腱板腱炎(運動とスポーツ損傷: 回旋筋腱板損傷を参照 )は,肩関節の痛みの最も一般的な原因である。40〜120°のアークの自動外転と内回旋は痛みを生じる。他動外転の痛みはより少ない。腱のカルシウム沈着は,ときにX線上で目に見える。

上腕二頭筋腱炎では,二頭筋腱の痛みは肩関節の屈曲または前腕の回外の抵抗によって増悪する。圧痛は,二頭筋腱を(検者の親指の腹で)“はじく”(ころがす)ことにより上腕二頭筋溝の上の近位部に誘発されることがある。

掌側屈筋腱滑膜炎(指の腱炎については手の障害: 指の屈筋腱炎および腱鞘炎も参照 )は,最もよくみられる筋骨格の疾患単位の1つであり,しばしば見逃される。痛みは,手掌の母指またはその他の指の掌側面に生じ,遠位に放散する。診断は,腱および鞘を触診すると圧痛を誘発され,腫脹と,ことによると小結節がみられることによって確定する。後期の段階では,屈曲時に弾発現象(ばね指)が生じる。

大腿骨転子滑液包炎は,実際は中殿筋腱炎である。 それは大腿骨大転子の外側隆起上に生じて,通常この部位の慢性の圧力,外傷,または炎症(例,RAの場合)と関連している。限局性の圧痛が特徴である。

治療

症状の軽減は,安静または腱の固定(副木またはギプス包帯),加温(慢性炎症)または冷却(急性炎症),7〜10日間の高用量NSAIDの投与(関節疾患: 関節リウマチの非ステロイド性抗炎症薬療法を参照 表 2: 表)によって可能である。痛風が原因であればインドメタシンまたはコルヒチンが役立つことがある(結晶誘発性関節炎: 痛風を参照 )。炎症が抑制された後,徐々に関節可動域を広げる運動を1日数回,特に拘縮が急速に進みやすい肩関節で行うべきである。

腱鞘への徐放性コルチコステロイドの注射(例,部位に応じて,酢酸デキサメタゾン8mg/mLまたは酢酸メチルプレドニゾロン20〜40mg/mL)は有用でありうる。局所麻酔薬(例,0.5%ブピバカイン)と等量または2倍量を同じ針により注射して,速効性の鎮痛効果が得られる場合,診断を確定できる。腱自体に注射すると(注射時に顕著な抵抗があることにより認識される)腱を弱め,断裂の危険性を増すことになるので,注意をしなければならない。注射部位を安静にすると,断裂のわずかな危険性を減らせる。まれに注射後24時間以内に症状が悪化することがある。

注射の反復と対症療法が必要なことがある。外科的精査と炎症個所やカルシウム沈着物の除去または腱板の修復,そしてそれに続く段階的な理学療法は,難治性の症例にまれに必要とされる。手術は,機能を制限する瘢痕の解放またはRAにおける慢性炎症の腱鞘切除術に,ときに必要とされる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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