メルクマニュアル18版 日本語版
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胸腔穿刺

胸腔穿刺は胸水を吸引するための胸壁の穿刺である。胸水の病因を判定するため(診断的胸腔穿刺),胸水によって生じる呼吸困難を軽減させるため(治療的胸腔穿刺),およびときに胸膜癒着術を施行するために用いる。

相対的禁忌には,検査をしても胸水の位置が不確かである;胸水の量が少ない;胸壁の解剖学的構造が変化している;肺疾患が重症で合併症が生命を脅かすものになる(肺の診断と治療に関する手技: 胸腔穿刺を参照 );出血性素因;咳がコントロールできない;凝固障害などがある。胸腔穿刺には,この手技を患者が拒絶する,または同意能力がない場合を除けば,絶対的禁忌はない。

胸腔穿刺は患者のベッドサイドまたは外来診療で安全に行うことができる。胸水の存在と位置は,身体診察(胸部打診)または画像診断によって確認される。胸部X線が不明確な場合,胸腔穿刺を試みたが成功しなかった場合,または胸水が多胞性の場合は,超音波検査またはCT,もしくは双方が有用である。

胸腔穿刺は,患者が座位をとり,体を少し前へ傾け,支えるものに腕をのせた体勢が最もうまく行える。横臥位または仰臥位での胸腔穿刺(例,人工呼吸器の患者)は可能だが,超音波またはCTのガイド下で最もうまく行える。病状が安定していない患者,および合併症により代償不全となる危険が大きい患者に限り,モニタリング(例,パルスオキシメーター,心電図)が必要である。

無菌状態で,皮膚の麻酔に1〜2%のリドカインを25ゲージ針で注射する。次に,麻酔薬を入れたさらに太い針(20または22ゲージ)を胸水液面下肋間の肋骨上縁で肩甲線上に挿入する。麻酔針は定期的に吸引しながら進めていき(不注意による血管への挿入や血管内注入を避けるため),麻酔薬を徐々に深いレベルへ注入していく。皮膚を通過後の部位で最も痛みを感じるのは壁側胸膜なので,そこに最も浸潤させるべきである。麻酔針は次に壁側胸膜を超え,胸水が吸引されるところまで進め,その地点で針の深さを確認しておくべきである。径の太い(16〜19ゲージ)胸腔穿刺針用カテーテルに,三方活栓を取り付け,そこに30〜50mLの注射器をつなぎ,これによって胸水を容器へ排出する。胸腔穿刺針は皮膚,皮下組織を通り,肋骨の上縁に沿って胸水中に,麻酔中に確認した深さと同じ深さに挿入する。カテーテルは針内に通して挿入し,針は気胸の危険を軽減させるために引き抜く。その後,胸水を吸引することができ,ストップコックを1回転させて,この後に行う検査のために管や袋の中に集めることができる。胸水の除去は段階的に,1.5L/日を超えない程度に行う;血圧低下や肺浮腫は,一度に1.5Lを超える胸水の除去,もしくは真空または吸引ビンを用いた胸膜腔からの急速な排出で起こりうる。大量の胸水除去が必要な場合は,血圧を持続してモニタリングすべきである。

胸腔穿刺の後に胸部X線撮影を行い,気胸を除外し,除去した胸水の程度を明らかにし,除去前は胸水で不明瞭であった肺葉を確認するのが標準的診療であるが,ルーチンの胸部X線は,無症状患者には必要ないことを示す証拠がある。

肺の再膨張に伴い,よく咳が起こる;これは,気胸を意味するものではない。胸膜の病変過程が炎症性であれば,胸水を除去するにつれ,炎症のある臓側胸膜と壁側胸膜が接近することによる胸膜痛または胸膜摩擦音の聴取もしくはその両方が出現しうる。大量の胸水を胸腔から取り除く場合,吸引の途中で定期的に注射器のピストンから手を放すべきである。もし,注射器内の陰圧が下がったときに注射器内の胸水が胸膜腔に戻るならば,胸腔内圧は過剰に陰圧である可能性があり,また,胸膜の癒着または腫瘍によって肺の再膨張が制限されている可能性もある。

合併症には気胸,肺穿刺による喀血,胸水を大量に急速に除去した後の再膨張性肺水腫または低血圧,肋間血管の損傷による血胸,脾臓または肝臓の穿刺,血管迷走神経性失神などがある。胸水を収集している管の中で凝固しない血性胸水は,胸腔内の血液流出ではフィブリンが速やかに除去されることから,胸膜腔内の血液が医原性ではないことを示す。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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