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肺ランゲルハンス細胞組織球症

(好酸球性肉芽腫症;pulmonary granulomatosis X,肺ランゲルハンス細胞肉芽腫症,histiocytosis X)

執筆者:

Joyce Lee

, MD, MAS, University of Colorado School of Medicine

レビュー/改訂 2019年 9月
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肺ランゲルハンス細胞組織球症(PLCH)は,肺間質および気腔におけるランゲルハンス細胞の単クローン性の増殖である。病因は不明であるが,喫煙が主な役割を果たす。症状は,呼吸困難,咳嗽,疲労,および胸膜性胸痛である。診断は,病歴および画像検査,またはときに気管支肺胞洗浄および生検所見に基づく。治療は禁煙である。多くの症例でコルチコステロイドが投与されるが,その効力は不明である。禁煙と併用すれば,肺移植は通常治療効果がある。5年生存率は約74%である。患者はがんのリスクが高い。

肺ランゲルハンス細胞組織球症は,CD1a陽性の単クローン性ランゲルハンス細胞(組織球の一種)が,リンパ球,形質細胞,好中球,および好酸球を伴って細気管支および肺胞間質に浸潤する疾患である。PLCHは ランゲルハンス細胞組織球症 ランゲルハンス細胞組織球症 ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は,臓器へ局所性またはびまん性で浸潤した樹状単核球の増殖性疾患である。ほとんどの症例は,小児にみられる。症状として,肺浸潤,骨病変,発疹のほか,肝臓,造血,内分泌の機能障害がみられる場合がある。診断は生検に基づく。予後不良の予測因子として,年齢2歳未満と播種があり,特に造血系,肝臓,脾臓,またはこれら複数の部位への播種が重要である。治療法としては,支持療法に加え,化学療法または病変の範囲により適応とな... さらに読む ランゲルハンス細胞組織球症 の1つの発現形態であり,これは臓器を単独に(最も顕著なのは肺,皮膚,骨,下垂体,およびリンパ節)または同時に侵しうる疾患である。PLCHは 85%で単独に起こる。

PLCHの病因は不明であるが,喫煙する20~40歳の白人に専ら発生する。発生率は男性と女性で同じである。女性では発症がより遅いが,性別による発症年齢の違いは喫煙行動の違いを反映している可能性がある。病態生理学的には,タバコの煙に反応して肺胞マクロファージからサイトカインおよび増殖因子が分泌され,それに反応してランゲルハンス細胞の動員および増殖が起こっている可能性がある。

症状と徴候

約15%の患者は無症状で,別の理由で撮影された胸部X線で偶然に疾患が発見される。

診断

  • 高分解能CT(HRCT)

  • 肺機能検査

  • ときに気管支鏡検査および生検

肺ランゲルハンス細胞組織球症は,病歴および胸部X線に基づいて疑われ,HRCTならびに気管支鏡検査と合わせて実施する生検および気管支肺胞洗浄によって確定される。

胸部X線上では,古典的には中肺野および上肺野に左右対称性の結節陰影がみられ,嚢胞性変化を伴い,肺容量は正常または増加している。肺底部はしばしば正常である。見かけ上は 慢性閉塞性肺疾患 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,毒素の吸入(しばしばタバコ煙)に対する炎症反応によって引き起こされる気流制限である。比較的まれな原因として,非喫煙者におけるα1-アンチトリプシン欠乏症および様々な職業曝露がある。症状は数年かけて発現する湿性咳嗽および呼吸困難であり,一般的な徴候には呼吸音の減少,呼気相の延長,および喘鳴などがある。重症例で... さらに読む 慢性閉塞性肺疾患(COPD) (COPD)または リンパ脈管筋腫症 リンパ脈管筋腫症 リンパ脈管筋腫症(LAM)は,肺,肺血管,リンパ管,および胸膜に及ぶ平滑筋細胞の緩徐な増殖である。まれな疾患で,専ら若年女性に起こる。症状は,呼吸困難,咳嗽,胸痛,および喀血である;自然気胸がよくみられる。症状および胸部X線所見に基づいて本症を疑い,高分解能CTで診断を確定する。予後は不明であるが,この疾患は緩徐に進行し,しばしば何年間もかけて患者に呼吸不全や死をもたらす。治療はシロリムスまたは肺移植による。... さらに読む に類似することがある。

中葉および上葉における嚢胞(しばしば奇妙な形)および/または間質の肥厚を伴う結節のHRCT上での確認が,PLCHの診断に有用であると考えられている。

肺機能検査所見は,正常,拘束性,閉塞性,または混合性であり,疾患経過中のどの時点で検査を行うかによって異なる。最も一般的には,肺拡散能(DLCO)が減少し,また運動能力が低下する。

画像検査および肺機能検査で診断がつかない場合,気管支鏡検査および生検が適応となる。気管支肺胞洗浄液中のCD1a細胞が > 5%であれば,この疾患が強く示唆される。生検では,ランゲルハンス細胞の増殖がみられ,ときに細胞性および線維性結節の中心に好酸球の集積を伴い(好酸球性肉芽腫という古い用語の起源),これが星状構造を示すことがある。免疫組織化学染色では,CD1a,S-100タンパク質およびHLA-DR抗原に対して陽性である。

予後

症状が非常に軽い肺ランゲルハンス細胞組織球症では症状の自然消退が起こることがある;5年生存率は約75%,生存期間の中央値は12年である。ただし,疾患が緩徐に進行する症例もあり,その場合の臨床マーカーには以下のものがある:

  • 喫煙の継続

  • 非常に若いまたは非常に高齢

  • 多臓器病変

  • 持続する全身症状

  • 胸部X線で多数の嚢胞

  • DLCO低値

  • 1秒量(FEV1)/努力肺活量(FVC)の比が低い(< 66%)

  • 残気量(RV)/全肺気量(TLC)の比が高い(> 33%)

  • コルチコステロイドの長期使用の必要性

治療

  • 禁煙

  • おそらくコルチコステロイドおよび細胞傷害性薬剤または肺移植

有効性は証明されてないが,コルチコステロイドおよび細胞傷害性薬剤の経験的な使用が一般的である。

要点

  • 肺ランゲルハンス細胞組織球症では,肺胞間質および細気管支におけるランゲルハンス細胞の単クローン性増殖がみられる。

  • 20~40歳の喫煙者で,胸部X線上で上肺野および中肺野に,嚢胞性変化を伴う,両側性左右対称性の結節陰影を認める場合は,PLCHを疑う。

  • 診断は高分解能CT,または結果が不確実な場合は肺生検により確定する。

  • 禁煙を推奨する。

  • コルチコステロイドおよび細胞傷害性薬剤,また禁煙がなされた場合は肺移植も考慮する。

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